
医師からAIを使う検診について説明を受けるときは、AIが画像を単独で診断するのか、医師の読影を補助するのかを区別することが大切です。現在の主な使い方は、画像の危険度に応じて医師1人または2人が確認するなど、読影体制の一部を支えるものです。乳がんの発見数を保ちながら医師の読影量を減らせる可能性はありますが、その効果は対象者や撮影装置、医師の配置によって変わり、AIだけの性能とは評価できません。
ただし、AIの導入だけで検診後の不安や追加検査が一律に減るわけではなく、高濃度乳房など画像を読み取りにくい条件では見落としも誤った警告も残ります。発見率、要精密検査となる割合、がんではなかった呼び出しを分けて読み、受診する医療機関の運用まで確かめる必要があります。AIは読影を支える道具であり、撮影の質、医師の確認、精密検査へつなぐ体制まで含めて検診の質が決まります。
マンモグラフィ読影は2人の医師が確かめる
乳がん検診のマンモグラフィは、乳房を圧迫してX線で撮影し、しこりや石灰化という白い点の集まりを探す検査です。画像のわずかな変化を扱うため、集団検診では2人の医師が別々に確認する二重読影が用いられる体制もあります。
撮影から判定までに行われる確認
診療放射線技師が左右の乳房を方向を変えて撮影し、放射線科医などの読影医が左右差、過去画像からの変化、腫瘤の輪郭を確認します。以前の画像があれば、同じ場所を並べて比べる比較読影も判断材料です。
| 場面 | 主な担当 | 確かめる内容 |
|---|---|---|
| 撮影 | 診療放射線技師 | 乳房全体が適切に写っているか |
| 画像の確認 | 読影医 | しこり、石灰化、左右差 |
| 判定の調整 | 複数の読影医 | 意見が違う画像と要精査の要否 |
二重読影が拾う小さな違和感
1人目が異常なしと判断した画像でも、2人目が小さな変化を指摘すれば再検討できます。見方の異なる医師が確認する仕組みは見落としを抑える助けになりますが、読影医の確保と多くの画像を読む時間が必要です。
二重読影の採用状況や意見が分かれた際の決め方は、国や検診事業によって異なります。AIの効果を比べる際は、比較相手が1人読影なのか2人読影なのかをそろえて見ると、数字の意味を取り違えにくくなります。
要精密検査は診断ではなく次の確認
画像に詳しい確認が必要な所見があれば、検診結果は要精密検査となります。これは乳がんの確定を意味せず、追加のマンモグラフィ、超音波検査、必要に応じた組織検査へ進む入口です。
- 左右で異なる濃い部分
- 輪郭が不規則なしこり
- 細かな石灰化の集まり
- 前回から現れた変化
検診にはマンモグラフィ以外の方法が選ばれる場面もあり、年齢や症状の有無に応じて受け方が変わります。
AIはマンモグラフィ読影のどこに加わる?
AIの入り方は1つではなく、医師への注意喚起、画像の優先順位付け、2人目の読影を担う方式に分かれます。同じ製品名が示されていても、最終判定までの流れが違えば医師の負担や安全確認の方法も変わります。
疑わしい場所を印で知らせる支援
AIが画像を解析し、乳がんらしさの得点や疑わしい場所の印を読影画面に表示する方式があります。この得点は画像の優先度を示す目安で、乳がんの確率や確定診断をそのまま表す数字ではありません。医師が元の画像と過去画像を確認し、印を採用するか退けたうえで検診結果を判定します。
注意喚起は小さな所見へ目を戻す助けになる一方、正常な乳腺にも印が付けば確認作業が増えるため、評価では発見数だけでなく、誤った警告の数や読影時間も併せて捉えます。
画像の優先順位を変える使い方
AIが低い危険度と高い危険度に画像を振り分け、疑わしい画像を先に医師へ回す運用も考えられます。低い危険度の画像を読む人数を減らす設計なら、医師は精査が必要そうな画像へ時間を配分しやすくなります。ただし、危険度の境目をどこに置くか、低い群を医師が何人で読むかによって、安全性と削減できる読影量は変わります。
| AIの入り方 | 医師の作業 | 主な評価点 |
|---|---|---|
| 注意喚起 | 印と元画像を照合 | 発見数と誤警告 |
| 優先順位付け | 高い危険度から確認 | 結果までの時間 |
| 2人目の読影 | 不一致例を再検討 | 読影量と安全性 |
2人目の読影をAIに置き換える設計
危険度に応じて読影人数を変える方式は、低い危険度を1人、高い危険度を2人の医師が読み、標準的な2人読影と比べて評価されました。乳がん検診でAI支援の安全性を比べるスウェーデンのMASAI試験で約8万人を無作為に割り付けた中間解析では、AI支援群は1000人当たり6.1件、標準群は5.1件のがんを発見し、読影量は44.3%減少しています。低危険度の画像をAIだけで完結させた試験ではない点が、結果を読むうえで重要です。
要精査率はAI支援群2.2%、標準群2.0%で近く、誤って要精査となった割合は両群とも1.5%でした。この成績は無作為化試験として価値がありますが、スウェーデンの検診体制で得られた中間結果です。別の地域では対象年齢、撮影装置、読影医の配置が異なるため、導入後の数字をその地域で確かめる必要があります。
別の集団へ当てはめたときの性能は、オーストラリアの集団検診画像10万8970件を使い、AIと放射線科医を組み合わせる形でも推計されていますが、過去画像によるシミュレーションであり、その体制で実際に受診者を振り分けた試験とは区別して読む必要があります。
検診成績の数字が示す範囲
AIの効果は、がん発見率だけで決まるものではありません。要精査率、がんではなかった呼び出し、医師の読影量を並べると、受診者の利益と医療現場の負担を同じ土台で読めます。さらに、検診と検診の間に症状などをきっかけに見つかる「中間期がん」も、見落としを長い目で確かめる指標になります。
がん発見率は1000人当たりで比べる
がん発見率は、検診を受けた人のうち乳がんが見つかった人数を示します。1000人当たり5件から6件へ増えたなら、受診者1000人につき追加で1件を見つけた計算になり、割合の差だけより実感しやすくなります。ただし、この指標は「乳がんがある人をどれだけ正しく拾えたか」を示す感度とは分母が違うため、名称と単位を確かめて比べます。
見つかった数が増えても、その乳がんが放置すれば健康へ影響する性質だったか、検診後の死亡が減ったかは別の問いです。見つかった乳がんの性質は後続解析でも調べられていますが、長期予後と過剰診断への影響は未評価です。症状を起こさないまま一生を終えた可能性のあるがんまで見つける過剰診断は、発見数の増加だけから判別できず、長期の追跡が要ります。
要精査率と誤った呼び出しを分ける
要精査率は、検診後に詳しい検査を勧められた割合です。その中には乳がんが見つかった人と、追加検査で乳がんではないと分かった人が含まれ、後者が偽陽性と呼ばれます。要精査率が低いだけで優れた検診とはいえず、発見すべき乳がんを拾えているかと組み合わせて評価します。
| 指標 | 示す内容 | 単独では分からない点 |
|---|---|---|
| がん発見率 | 受診者のうち見つかった割合 | 死亡率への影響 |
| 要精査率 | 追加検査へ進んだ割合 | 良性だった人数 |
| 偽陽性率 | がんでないのに要精査となった割合 | 見落とされた人数 |
| 読影量 | 医師が読む画像の件数 | 受診者の長期的利益 |
研究条件の違いが数字を動かす
複数の研究結果をまとめて読むと、がん発見率、要精査率、読影量のいずれにも幅があります。過去画像を解析した検証、運用を仮定した推計、実際の受診者を振り分けた試験が混在し、対象年齢や比較する読影体制も異なるためです。過去画像の検証では結果が既に分かっている画像の選び方が性能に影響し、実際の検診で起こる画像不良や過去画像不足を十分に再現できない場合があります。
結果を見る際は、実際の検診で使った試験か、標準群が何人読影か、対象人数が十分かを確認します。海外の数字を日本の検診へそのまま当てはめず、受診先の説明では採用方式と地域の検診体制を確かめる読み方が安全です。導入施設が自施設の要精査率や見落としを継続的に点検しているかも、製品の公表性能とは別の確認点になります。
- 前向き試験か過去画像の解析か
- 比較相手が1人読影か2人読影か
- 対象年齢と検診間隔
- 発見率と要精査率の両方
AIで不要な呼び出しは減るのか
不要な呼び出しが減るかどうかは、AIの性能だけでなく、どの危険度から要精査とするかで決まります。発見を増やそうと判定基準を広げれば呼び出しも増えやすく、厳しく絞れば見落としへの注意が必要です。
偽陽性が受診者にもたらす負担
呼び出しを受けると、結果を待つ不安に加えて、再撮影や超音波検査のための時間が必要になります。組織検査まで進めば局所麻酔や処置後の痛みを伴う可能性もあるため、がんを見つける利益と偽陽性を減らす利益はどちらも大切です。
呼び出されたのにがんではなかった経験は、次回検診への気持ちにも影響し得ます。不安を抱くのは自然な反応であり、結果通知に記された判定と精密検査の目的を分けて確認すると、今の段階を把握しやすくなります。
1000人の例で人数へ置き換える
仮に1000人中20人が要精査となり、そのうち5人に乳がんが見つかったなら、残る15人は追加検査で乳がんではないと分かった人です。この例では要精査率2.0%、がん発見率0.5%、偽陽性率1.5%となります。
| 1000人の仮定 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 要精査 | 20人 | 2.0% |
| 乳がんを発見 | 5人 | 0.5% |
| 偽陽性 | 15人 | 1.5% |
この人数は指標の関係を示す仮定で、特定の医療機関や製品の成績を表したものではありません。公表値を読むときも、割合の分母が受診者全体か、要精査となった人だけかを確認します。
発見を保ちながら呼び出しを抑える評価
望ましい運用は、治療につながる乳がんの発見を保ちつつ、良性の所見による呼び出しを増やしすぎない形です。比較試験ではAI支援群の発見数が多く、偽陽性率は標準群と同じでしたが、この結果が示すのは試験で用いたAIと読影手順の組み合わせです。製品、対象者、判定基準が変われば発見数と偽陽性率も動きます。
検診事業者が判定基準を変えれば、同じAIでも要精査率は動きます。導入後の発見率と偽陽性率を継続して点検し、画像の品質や地域の受診者に合うかを医療側が確認する運用が求められます。数値が急に変わった場合は、受診者の構成、撮影装置、ソフトウェア更新、判定基準のどこが影響したかを切り分ける必要があります。
高濃度乳房では判定の難しさが残る
高濃度乳房は乳腺の白い部分が多く写る乳房で、乳がんの白い影が背景へ重なり、医師にもAIにも見えにくくなります。AIを使っていても、この重なりによる見落としの可能性は残ります。高濃度乳房は病名や異常の判定ではなく、画像上の乳房構成を表す言葉として受け止めることが大切です。
白い乳腺と病変が重なる条件
マンモグラフィでは脂肪は黒っぽく、乳腺と多くの病変は白っぽく写ります。乳腺が密なほど白い領域の中へ病変が隠れやすく、撮影範囲に入っていても輪郭を区別しにくい状態です。これはAIが注目する形や濃淡の特徴も乏しくなる条件であり、医師とAIの双方に影響します。
| 難しさの要因 | 画像への影響 | 確認の方向 |
|---|---|---|
| 乳腺が密 | 白い影が重なる | 乳房構成を確認 |
| 病変が小さい | 特徴が乏しい | 過去画像と比較 |
| 撮影条件の差 | 見え方が変わる | 画像品質を点検 |
| 対象集団の差 | 性能が再現しにくい | 導入施設で監視 |
学習した画像と受診者の違い
AIは開発時に用いた多数の画像から、病変に関連する形や濃淡の組み合わせを学んでいます。撮影装置、年齢層、乳房構成が開発時の集団と大きく異なると、別の施設で性能が変化する可能性があります。新しい装置やソフトウェアへ更新した後も、導入時と同じ前提で動いているかを医療側が監視する必要があります。
AIと専門医の優劣を判断するには、同じ画像、同じ受診者、同じ判定基準で公平に比べる必要があります。しかし、こうした直接比較は少なく、研究設計や結果報告の質にもばらつきがあります。高い数値だけを切り取らず、開発元とは別の施設での検証や、実際の検診手順に組み込んだ試験があるかを確認する理由です。
異常なしでも症状を優先する判断
検診で異常なしでも、新しく触れるしこり、血液が混じる乳頭分泌、乳房の皮膚のくぼみがあれば、検診結果だけで様子を見続けない判断が必要です。検診は症状のない人を対象とする仕組みなので、症状がある場合は診療として乳腺を扱う医療機関へ相談してください。
高濃度乳房と伝えられた際に追加検査が必要かは、年齢、症状、家族歴などを含めて個別に決まります。超音波などを追加するとマンモグラフィで隠れた所見を調べられる一方、良性の所見を拾って追加確認が増えることもあります。AIの有無だけで検査を足さず、自分の乳房構成と今回の判定を医師へ確認するのが実際的です。
受診者に起こりうる流れの変化
受診者が体感しやすい変化は、撮影方法よりも結果が届くまでの時間と、要精査となった後の案内です。AIを使う施設でも撮影時の圧迫は基本的に同じで、結果の速さは医師の確認体制や検診事業の運用に左右されます。
撮影時の圧迫と被ばくは基本的に同じ
AIは撮影後の画像を解析するため、通常の読影支援では撮影枚数や乳房を圧迫する時間を直接変えません。被ばく線量もAIによる解析そのものでは増えず、追加撮影が必要になった場合に別の画像を撮ります。AI利用料の有無は検診事業や施設によって異なり、撮影方法が同じでも費用が同一とは限らないため、予約時の確認が確実です。
撮影中の痛みが強い場合は、無理に耐え続けず診療放射線技師へ伝えてください。乳房を適切に広げる圧迫は画像のぶれを抑え、必要な範囲を写すために行われます。
結果までの日数は運用で決まる
優先順位付けによって疑わしい画像を早く医師へ回せても、全員へ即日で結果が出るとは限りません。別の医師による確認、過去画像の取り寄せ、結果通知の発送が残る施設では、それらに必要な時間が加わります。早く回されたこと自体は乳がんの診断を意味せず、通知された正式な判定を待って次の行動を決めます。
| 受診場面 | AIで変わり得る点 | 変わりにくい点 |
|---|---|---|
| 撮影 | 通常は大きな変化なし | 圧迫と撮影方向 |
| 読影 | 順番と確認人数 | 医師による最終確認 |
| 結果通知 | 日数が短くなる余地 | 施設の通知方法 |
| 要精査後 | 案内の対象人数 | 追加検査の内容 |
受診前と結果後に確かめる項目
臨床での有効性を確かめる無作為化比較試験は増えているものの、実施施設や診療領域には偏りがあります。マンモグラフィで得られた結果を、別の画像検査や別の受診者層へ広げて考えることはできません。導入済みという表示だけで利益を推測せず、その施設でAIが担う範囲と医師の確認方法を尋ねると判断材料になります。
- AIが注意喚起か読影人数の調整か
- 最終判定を担当する医師
- 結果通知までの目安
- 要精査時の連絡先
要精査の通知が届いたら、AIが印を付けたかどうかより、指定された検査内容と受診期限を優先して確認します。精密検査では検診画像を参照することがあるため、結果票に加えて画像の持参や施設間の取り寄せが必要かも予約時に確認します。費用は検診の実施主体や追加検査の内容で異なり、窓口へ自己負担の範囲を尋ねると見通しを立てやすくなります。
よくある質問
AIが異常を示したら乳がんですか?
AIの表示は乳がんの診断ではなく、医師が画像を確認するための手掛かりです。読影医が画像全体や過去画像を確認し、要精査と判定された場合は追加のマンモグラフィや超音波検査へ進み、必要に応じて組織を調べて診断します。
AIを使う検診を自分で選べますか?
選べるかどうかは検診を行う施設や事業の体制によります。予約時にAI支援の有無だけでなく、注意喚起に使うのか、読影人数の調整に使うのか、最終判定を誰が行うのかを確認すると比較しやすくなります。
AIの使用有無は検診の質を決める要素の一つです。撮影の品質、過去画像との比較、精密検査への案内を含む全体の体制も選択材料です。
高濃度乳房ならAIがあれば安心ですか?
AIを使っても高濃度乳房で病変が見えにくい問題は残ります。結果通知で乳房構成が示されたら、今回の判定と追加検査の要否を医師へ確認してください。
しこり、血液が混じる乳頭分泌、皮膚のくぼみなど新しい症状があるときは、異常なしの検診結果だけで待たずに乳腺を扱う医療機関へ相談します。
要精査の連絡は乳がんが見つかったという意味ですか?
要精査は乳がんの確定ではなく、画像の気になる部分を詳しく確認する判定です。通知に記された検査内容と予約方法を確認し、指定された時期に精密検査を受けます。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医