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PET検査とは?費用・わかること・受けるべき人を解説

「がんかもしれない」という不安を抱えたとき、多くの方が耳にするのがPET検査です。PET検査は、がん細胞が糖を多く取り込む性質を利用して全身のがんを一度に調べられる画像診断で、早期発見の大きな手がかりになります。

費用は検査の目的や施設で異なりますが、保険が使える場合と自費の場合で大きく変わります。

この記事では、PET検査でわかること・かかる費用・受けるべき人の特徴をわかりやすく整理しました。

PET検査とは?がん細胞だけが光る仕組みを知っておこう

PET検査(陽電子放射断層撮影)は、放射性薬剤を体内に注射し、がん細胞に集まった薬剤の分布を画像化する検査です。がん細胞は正常な細胞よりも多くのブドウ糖を消費するため、その代謝の違いを利用して病変の位置を映し出します。

ブドウ糖の「食べすぎ」を見つけるのがPET検査の原理

PET検査で使うFDG(フルオロデオキシグルコース)は、ブドウ糖に似た構造を持つ放射性薬剤です。がん細胞は正常細胞の3〜8倍ものブドウ糖を取り込むとされており、FDGも同じように大量に取り込まれます。

取り込まれたFDGは体内で分解されずにとどまるため、その集積部位を特殊なカメラで撮影すると、がんの疑いがある場所が「光って」映し出されます。CTやMRIが臓器の形の異常を見つけるのに対し、PET検査は細胞の「活動」を捉える点が特徴です。

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PET-CT検査なら形と代謝を同時に確認できる

近年はPETとCTを組み合わせた「PET-CT検査」が主流です。PETの代謝情報とCTの解剖学的情報を1回の検査で同時に取得できるため、がんの位置や広がりを精度高く把握できます。

PET検査とPET-CT検査の違い

項目PET検査PET-CT検査
取得情報代謝活動のみ代謝活動+臓器の形態
検査時間約30分約30〜40分
画像の特徴位置がやや不明瞭臓器との重ね合わせで正確

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PET検査でわかること・見つかりやすいがんと見つかりにくいがん

PET検査はすべてのがんを万能に見つけられるわけではありません。FDGの集積が強いがんは発見しやすく、集積が弱いがんや生理的に集積が高い臓器にできたがんは見逃されやすい傾向があります。

PET検査が得意ながん・苦手ながんを正しく把握する

肺がん、大腸がん、悪性リンパ腫、頭頸部がん、食道がんなどはFDGの取り込みが多く、PET検査の得意分野です。

一方、胃がんの一部や腎臓がん、膀胱がん、前立腺がんはFDGの集積が弱かったり、尿として排出されるFDGの影響を受けたりするため、見つけにくいとされています。

また、1cm未満の小さながんや進行が極めて遅いがんも検出が難しい場合があります。PET検査だけに頼るのではなく、CTやMRI、内視鏡検査など他の検査と組み合わせることが大切です。

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良性腫瘍や炎症で「偽陽性」が出ることもある

FDGはがん細胞だけでなく、炎症が起きている組織や活発に活動する免疫細胞にも集まります。そのため、良性腫瘍や感染症、手術後の炎症部位などが「がんの疑い」と判定される偽陽性(ぎようせい)が起こりえます。

偽陽性が出た場合は、追加のCT検査やMRI検査、場合によっては生検(組織を採取して調べる検査)で確定診断を行います。PET検査の結果だけで「がんが確定した」とは言えない点を覚えておきましょう。

偽陽性が出やすい主な原因

原因具体例対処法
炎症・感染症肺炎、膿瘍、術後の炎症経過観察やCT再検査
良性腫瘍甲状腺腺腫、大腸ポリープ組織生検で良悪性を判定
生理的集積脳、心臓、腎臓・膀胱専門医による画像読影

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PET検査の費用はいくらかかる?自費と保険適用の目安

PET検査にかかる費用は、検査の目的と医療機関によって異なります。がん検診として自費で受ける場合と、医師の判断で保険が使える場合では、自己負担額に大きな開きがあるため、事前の確認が大切です。

自費でPET検査を受ける場合の費用目安

がん検診や人間ドックのオプションとしてPET-CT検査を受ける場合は、全額自己負担になります。一般的な費用目安は8万〜12万円程度で、施設の設備や所在地によっても差があります。

検査料金に加えて、事前の血液検査代や診察料が別途発生する場合もあるため、予約時にトータルの費用を確認しておくと安心でしょう。

PET検査にかかる費用の目安

区分費用の目安備考
自費(がん検診)8万〜12万円全額自己負担
保険適用(3割負担)約3万円前後医師の判断が必要

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PET検査を受けるべき人はどんな人?検査が勧められるケース

PET検査は、がんの有無を調べるだけでなく、治療方針を決めたり再発を確認したりする場面でも活用されています。「自分は受けるべきかどうか」を判断するために、検査が推奨されやすい代表的なケースを確認しておきましょう。

主治医からPET検査を提案されやすいケース

他の画像検査でがんが疑われたものの確定に至っていない場合や、すでにがんと診断されて転移の有無を調べたい場合は、PET検査が大きな判断材料になります。治療後の経過観察で再発の兆候を早期に捉える目的でも行われます。

一方、健康に不安がなくても50歳を過ぎた方やがんの家族歴がある方は、人間ドックの一環としてPET-CT検査を選ぶケースも増えています。

PET検査が推奨される主なケース

  • CT・MRIでがんが疑われ、確定診断の補助が必要な場合
  • がんの病期(進行度)を全身的に評価したい場合
  • 治療後にがんの再発・転移を確認したい場合
  • 50歳以上で全身のがん検診を希望する場合
  • がんの家族歴がありリスクが気になる場合

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PET検査の流れと結果が出るまでの期間

PET検査は予約から結果の受け取りまで、いくつかの段階を踏みます。当日の流れを事前に把握しておけば、緊張も少なく落ち着いて検査に臨めるでしょう。

PET検査当日の流れは「注射→安静→撮影」の3段階

検査当日は、まずFDGを静脈に注射します。注射後は約60分間、安静にして薬剤が全身にいきわたるのを待ちます。この間は読書やスマートフォンの操作も可能ですが、激しく体を動かすと筋肉にFDGが集まり、正確な撮影に支障が出るため注意が必要です。

安静後にPET-CTの撮影台に横たわり、20〜30分程度で撮影が完了します。痛みはほとんどなく、検査全体の所要時間はおおむね2〜3時間が目安です。

PET検査当日の大まかな流れ

段階内容所要時間
受付・問診体調確認・血糖値測定約15分
FDG注射静脈にFDGを注入約5分
安静待機薬剤の全身分布を待つ約60分
撮影PET-CT装置で全身撮影約20〜30分

結果は1〜2週間後が一般的だが、即日報告の施設もある

検査結果は、専門の読影医(どくえいい)が画像を分析したうえで主治医に報告されます。通常は1〜2週間程度で結果が伝えられますが、がん検診として自費で受けた場合は即日に速報を出す施設もあります。

結果は口頭での説明とともに画像つきのレポートとして渡されるのが一般的です。不安な点がある場合は、遠慮なく担当医に質問しましょう。

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PET検査の副作用とリスク|被ばく量や体への影響は?

PET検査は比較的安全性の高い検査ですが、放射性薬剤を使用する以上、ごくわずかな被ばくやアレルギー反応の可能性は存在します。正しい情報を知っておくことで、過度に怖がらず冷静に判断できるようになります。

PET検査の被ばく量は胸部CT1回分とほぼ同程度

PET検査で使うFDGから受ける放射線量は、おおよそ3〜5mSv(ミリシーベルト)とされています。PET-CT検査の場合はCT分の被ばくが加わり、合計で約10mSv前後になるのが一般的です。

日本人の年間自然被ばく量は約2.1mSvであり、それと比較すると決して小さくはありません。

しかし、がんの早期発見によって得られるメリットは被ばくによるリスクを大きく上回ると考えられており、検査の必要性がある場合は過度に心配しなくてよいでしょう。

PET検査と他検査の被ばく量比較

検査種類被ばく量(目安)
胸部レントゲン約0.06mSv
胸部CT約5〜7mSv
PET検査(FDGのみ)約3〜5mSv
PET-CT検査約10mSv前後

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よくある質問

PET検査は何歳から受けられる?

PET検査に厳密な年齢制限はありませんが、がん検診として受ける場合は40歳以上を推奨する施設が多い傾向にあります。若い方でも、医師ががんの疑いを指摘した場合や他の検査で異常が見つかった場合には年齢を問わず実施されます。

まずは主治医に相談し、ご自身の健康状態やリスク因子を踏まえて受診の時期を判断するとよいでしょう。

PET検査の前日や当日に食事制限はある?

PET検査では、検査前5〜6時間の絶食が求められます。FDGはブドウ糖と似た構造を持つため、血糖値が高い状態では正確な結果が得られにくくなります。前日の夕食は通常通りで構いませんが、当日の朝食は控えるよう指示されるのが一般的です。

水やお茶など糖分を含まない飲み物は摂取できます。糖尿病の治療薬やインスリンを使用中の方は、事前に医療機関へ確認しておきましょう。

PET検査で「異常なし」なら本当にがんはない?

PET検査の結果が「異常なし」であっても、100%がんが存在しないとは言い切れません。1cm未満の微小ながんやFDGが集まりにくい種類のがんは、PET検査では検出できない場合があります。

「異常なし」は検査時点でFDGの異常集積が確認されなかったという意味であり、がんの完全な否定ではありません。定期的な検査の継続と、気になる症状があれば早めに医療機関を受診する姿勢が大切です。

PET検査は妊娠中や授乳中でも受けられる?

妊娠中のPET検査は、放射線が胎児に影響を及ぼす可能性があるため、原則として行いません。どうしても検査が必要な場合は、主治医と産科医が連携してリスクとメリットを慎重に判断します。

授乳中の場合、検査後12〜24時間程度は授乳を控えるよう指導されます。FDGは時間の経過とともに体外に排出されるため、指示された時間を守れば授乳の再開に問題はありません。

PET検査を受けた後、周囲の人への放射線の影響はある?

PET検査後は体内にFDGが残っているため、ごく微量の放射線が一時的に体から出ています。ただし、その量は非常に少なく、通常の社会生活を送る分には周囲の方への健康上の影響を心配する必要はありません。

念のため、検査後数時間は乳幼児や妊婦との長時間の密接な接触を避けるよう案内する施設が多いです。帰宅後に水分を多めに摂り、排尿を促すとFDGの排出を早められます。

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この記事を書いた人Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。

【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医