頸部や血管の状態を診る超音波検査!全身の異常や癌の転移を疑うサインと重要性

頸部や血管の状態を診る超音波検査!全身の異常や癌の転移を疑うサインと重要性

頸部超音波検査は、痛みや放射線被曝を伴わずに、首周辺の臓器や大きな血管の内部構造をリアルタイムで高精細に映し出す優れた手法です。健康状態を評価する上で重要な役割を果たします。

癌のリンパ節転移や頸動脈に生じる動脈硬化の初期変化を捉えることで、早期治療や致命的な血管事故の予防に大きく貢献します。血管壁の微細な変化を逃さず観察できる点が大きなメリットです。

全身の健康状態を評価する入り口として機能するこの検査は、自覚症状のない段階で潜む病的サインをいち早く発見するために極めて重要です。定期的な検査が、将来のリスクを回避する鍵となります。

頸部超音波検査が映し出す全身の健康シグナル

この検査は痛みを伴わずにリンパ節や血管の状態を可視化し、癌の転移や動脈硬化といった全身のリスクを初期段階で特定するために役立ちます。非侵襲的でありながら、得られる情報は多岐にわたります。

リンパ節の腫れが警告する癌転移の可能性

首の周囲には多数のリンパ節が配置しており、体内の免疫機能を支える重要なフィルターの役割を常に果たしています。外部からの侵入者や体内の異常を検知するための、最初の防波堤とも言えます。

癌細胞がリンパ管を通じて転移を開始すると、これらのリンパ節が腫脹し、通常とは異なる形状や内部構造へと変化を遂げます。この変化を超音波で見極めることで、転移の有無を高い精度で予測します。

この段階での発見は、その後の治療計画に重大な影響を及ぼすため、定期的な首のチェックは全身の癌管理において欠かせない要素です。早期発見が治療の選択肢を広げ、予後を大きく改善させます。

主要な観察組織と評価項目

部位主な観察点疑われる疾患
リンパ節形・境界・門部の有無癌の転移・悪性リンパ腫
頸動脈内膜の厚さ・プラーク動脈硬化・脳梗塞リスク
甲状腺結節の有無・内部エコー甲状腺癌・ホルモン異常

血管の厚みが示す血管年齢と将来の病気

頸動脈は脳へ血液を送り込むメインルートであり、この血管壁の厚さを測定することで、全身の動脈硬化の進行度合いを推測します。血管の状態は全身の血管老化を映し出す鏡としての価値を持ちます。

血管の内壁が厚くなる現象は、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病の直接的な反映であり、将来の脳梗塞や心筋梗塞の予兆となります。厚みを数値化することで、健康リスクを可視化できるのが特徴です。

超音波検査では、ミリ単位で血管の「内中膜複合体厚(IMT)」を計測し、実年齢に対する血管の老化具合を客観的に判定します。この計測は、将来発生しうる重篤な合併症を防ぐための基準となります。

こうした客観的なデータを得ることで、食事や運動といった生活改善の必要性が明確になり、重大な病を未然に防ぐ行動へと繋がります。数値を知ることで、自分自身の健康を管理する意識が高まります。

唾液腺や周囲組織の炎症から見える不調

耳下腺や顎下腺といった唾液腺の状態も、この検査を通じて詳細に観察することができ、多くの全身疾患のヒントが隠れています。唾液腺の形態変化は、口腔内だけでなく内分泌系の異常を示す場合もあります。

唾液腺が不自然に腫れていたり、内部に石(唾石)が形成されていたりする場合、全身の水分バランスや免疫異常が疑われます。これらのサインを逃さず捉えることが、診断の精度を高めるために必要です。

また、唾液腺の内部構造が不均一に見える場合は、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患の可能性を考慮して精査を進めます。慢的な口の渇きや不快感がある場合、この検査が原因の特定に有効です。

首全体の組織を網羅的に診ることは、本人が気づいていない微細な炎症のサインを拾い上げるために有効なアプローチとなります。多角的な観察が、総合的な健康判断を支える重要な基盤となります。

癌のリンパ節転移を疑うべき超音波画像の特徴

悪性を疑うリンパ節は、形状が球形に近づき、本来あるべき中心部の脂肪組織が消失して、周囲との境界が不明瞭になるという共通点があります。これらの指標を複合的に見て判断を下します。

扁平化した形状から丸みへの変化

健康なリンパ節は「そら豆」のような細長い扁平な形状を保っていますが、癌細胞が侵入するとその内部で増殖を繰り返します。増殖した細胞が内部の圧力を高め、組織全体を膨らませていくのが原因です。

その結果として、リンパ節は短径(横幅)が急激に増大し、まるでピンポン玉のような丸みを帯びた形へと変化を遂げていきます。この形状の変化は、癌転移を疑う上での最も明確な視覚的指標の一つです。

超音波の画面上で長径と短径の比率を算出することで、客観的な数値に基づいて転移の疑いレベルを評価します。比率が1に近づくほど、そのリンパ節の活動性が高まっている可能性を強く示唆します。

形状のバランスが崩れている場合、たとえサイズが小さくても将来的な悪性化を想定し、より詳細な精密検査へ進む必要性が生じます。初期の変化を捉えることが、根治に向けた治療の第一歩となります。

リンパ節の転移判定基準

評価項目良性の兆候悪性の兆候
形状細長い楕円形丸い球形
中心部(門部)白い線状に見える黒く均一に消失
周辺との境界くっきり明瞭ギザギザで不明瞭

境界線の不明瞭さと内部構造の消失

癌細胞がリンパ節の殻(被膜)を突き破って外へ広がろうとすると、超音波画像では周辺組織との境界線がボヤけて映ります。この「浸潤」の兆候は、癌の進行度を測る上で極めて重要な所見です。

さらに、本来リンパ節の中央にあるはずの明るい脂肪組織(門部エコー)が消え去ることは、内部が癌に占拠された強い証拠です。正常な構造が破壊されている様子が、画像を通じて如実に現れます。

内部の輝度が全体的に黒く(低エコーに)なっている場合、細胞密度が異常に高まっていることを示唆し、早期の生検を検討します。エコーの明るさの分布は、細胞の状態を推測するための指針となります。

こうした微細な画像上の変化を丁寧に読み取ることで、触診だけでは不可能な高い精度での転移予測が可能になります。最新の装置と熟練した技術の組み合わせが、確実な診断を支える根拠となります。

血流パターンの乱れが意味する悪性度

ドプラ機能を用いると、リンパ節内部に流れ込む血管の様子をカラーで確認でき、そこには癌細胞特有の性質が現れます。血流の入り方一つを取っても、良性と悪性では明確な違いが見て取れます。

癌細胞は自身の増殖のために無秩序に新しい血管を作るため、血流がリンパ節の周辺から入り込んだり、蛇行したりします。この無秩序な血管新生こそが、腫瘍が成長し続けるためのライフラインです。

通常の反応性腫脹であれば血流は中心から整然と入りますが、乱雑な血流が見られる場合は腫瘍の増殖スピードが速いことを意味します。血流量の増大は、代謝が活発であることをダイレクトに反映します。

血流の強さと分布を解析することで、その病変がどれほど活動的であるかを判断する重要な材料を得ることができます。非侵襲的に組織の活動性を推測できる点は、超音波検査の大きな強みです。

頸動脈の血管状態から読み解く動脈硬化のリスク

血管壁に付着したプラークの性質や内膜の厚みを分析することで、全身の血管リスクを評価し、脳卒中の発生を事前に防ぎます。首の血管を診ることは、全身の健康を守ることに直結する行為です。

プラークの硬さと剥がれやすさの評価

血管の壁に溜まったコレステロールの塊であるプラークには、安定したものと、剥がれて飛びやすい危険なものの2種類があります。この質を見極めることが、脳梗塞予防において最も重要な焦点となります。

超音波では、石灰化を伴う硬いプラークは白く、脂質を多く含む柔らかいプラークは黒に近いグレーとして画像に映し出します。色の濃淡が、そのままプラークの脆弱性(もろさ)を表しているのです。

柔らかい「ソフトプラーク」は、血流の圧力で表面が破れやすく、中身が脳へ流れていくと血管を即座に詰まらせる原因になります。これが、無症状から突然発症する脳梗塞の主要なメカニズムです。

このため、単にプラークの有無だけでなく、その「質」を詳細に判定することが、突然の脳疾患を回避するために大切です。状態に応じた適切な薬剤の選択が、将来の安全を確保するために求められます。

血管壁の厚さ(IMT)の評価区分

厚さの数値血管の状態主なリスク
1.0mm以下正常低い
1.1mm以上動脈硬化の初期中程度(注意)
プラーク有り局所的硬化高い(精密検査推奨)

血管壁の肥厚が招く脳梗塞の予兆

血管の壁が厚くなる現象は、全身の血管が老化している証拠であり、IMTが1.1ミリを超えると異常ありと判断するのが一般的です。微細な増大も見逃さないことが、リスク管理の第一歩と言えます。

この厚みは加齢と共に増していきますが、高血圧や喫煙といった負荷が加わることで、老化の時計は急激に加速していきます。生活習慣の乱れが、そのまま血管壁の厚みという数値に正直に現れます。

頸部超音波検査で得られた血管のデータは、本人に自身の血管の現状を視覚的に理解させ、生活改善の強い動機付けを提供します。自分の血管の状態を映像で見る体験は、意識を大きく変える力があります。

早期に壁の肥厚を察知できれば、適切な投薬や食事の改善により、取り返しのつかない血管トラブルを高い確率で回避可能です。日常のケアを徹底することが、健康寿命を延ばすための最善の策となります。

血流速度の異常が示唆する狭窄の進行

血管の内部がプラークによって狭くなると、その部分を通過する血液のスピードは物理的な法則に従って著しく上昇します。速度の変化を捉えることで、血管の詰まり具合を機能面から評価できます。

超音波で血流速度(PSV)を計測することで、実際に血管がどの程度の割合で塞がっているかを痛みなく推定できます。この手法は、外科的な治療が必要なレベルかどうかを判断する重要な根拠となります。

速度があまりに速い場合は、血流が滞って脳が虚血状態に陥っている可能性があり、速やかな外科的処置の検討が求められます。早急な対応が、深刻な後遺症を残さないための分かれ道となることもあります。

血管を流れる血液の「勢い」を数値化することは、画像だけでは判断しきれない機能的な障害を見抜く上で有効な指標となります。多角的な視点から血管を評価することが、診断の信頼性を高めます。

甲状腺の結節や腫瘍を見逃さないための観察ポイント

甲状腺に生じる数ミリ単位の微小な結節や内部の石灰化を捉え、癌の可能性を慎重に排除していくことが早期発見の鍵を握ります。丁寧なスキャンが、見逃しを防ぐための唯一の確実な方法です。

微細な石灰化が疑わせる乳頭癌のサイン

甲状腺の中に砂粒のような白い点々が見える場合、それは甲状腺乳頭癌に特有の「微細石灰化」である可能性を常に考慮します。この小さなサインが、重大な疾患を告げるアラートとしての役割を果たします。

この石灰化は非常に小さく、触診では絶対に感知できないため、超音波検査の高分解能な画像だけが唯一の発見手段となります。視診や触診を補完する高度な画像診断こそが、現代医療の基盤です。

結節の形が縦に長い場合や、周辺との境界がノコギリの刃のようにギザギザしているときは、悪性を疑い細胞診へと進みます。複数の異常所見が重なるほど、悪性の確率は高まっていくと考えられます。

こうした特徴を複合的に組み合わせて評価することで、不必要な手術を避けつつ、本当に必要な治療を適時提供することが可能になります。精密な評価が、患者様さんの身体的負担を最小限に抑えます。

甲状腺観察の主要ポイント

  • 結節のサイズと形状が縦長になっていないかの確認
  • 内部に点状の高エコー(石灰化)が含まれているか
  • 周囲の筋肉や気管、血管に浸潤している兆候の有無
  • 甲状腺全体の血流が過剰、または枯渇していないか

水の貯留と固形成分が混在する嚢胞性腫瘍

甲状腺には液体が溜まった「嚢胞(のうほう)」がよく見られますが、その内部に固形の塊が混じっている場合は注意が必要です。一見単なる水溜まりに見えても、その内部に潜むリスクを精査します。

純粋に水だけの袋であれば良性の可能性が高いですが、固形部分に血流があったり、不規則な形をしていたりする場合は癌を疑います。内部の均一性を丁寧にチェックすることが、誤診を防ぐポイントです。

超音波検査では、嚢胞の壁が厚くなっていないかや、内部に不自然な突出物がないかを多角的なアングルから精密に精査します。死角を作らないスキャン技術が、診断の質を担保するために不可欠です。

定期的な経過観察を行うことで、良性から悪性への変化を逃さず、適切な介入のタイミングを計ることが長期的な安心に繋がります。変化の推移を記録することが、将来の健康を守る強力な盾となります。

血流の豊富さが示すホルモン分泌の状態

結節の有無だけでなく、甲状腺全体の血流状態を評価することは、バセドウ病などのホルモン異常を診断する上で大きな助けとなります。形態だけでなく、機能の変化を視覚化できる点が超音波の魅力です。

機能が高まりすぎている場合、甲状腺全体が燃えるような激しい血流を示し、画像上では極めて特徴的な色彩の広がりを見せます。この現象は、ホルモンが過剰に作られている動的な証拠と言えます。

逆に、機能が低下している橋本病などでは、甲状腺組織が破壊されて不均一になり、全体的に血流が乏しい様子を観察できます。炎症の度合いを、血流の強弱からある程度推測することが可能となります。

血液検査の結果と超音波による形態的・機能的な評価を組み合わせることで、より精度の高い内分泌疾患の診断が実現します。多角的なデータ統合が、根拠に基づいた医療を支える土台となるのです。

全身疾患の早期発見における頸部検査の役割

頸部は頭部と胴体を繋ぐ重要な関所であり、ここを詳しく診ることは全身を巡る異常を効率的にキャッチするための戦略的な選択です。限られた検査時間で最大の健康情報を引き出すことが可能です。

生活習慣病が血管に与えるダメージの可視化

糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病がどれほど進行しているかは、採血の数値だけでは実感を伴いづらい側面があります。数値上の改善だけでなく、実際の組織の変化を捉える必要があります。

しかし、頸部超音波で実際に血管が厚くなり、汚れがこびりついている映像を目の当たりにすることで、自身の危機をリアルに把握できます。百聞は一見にしかずの言葉通り、画像は強い説得力を持ちます。

画像という動かぬ証拠は、患者様さんの健康意識を根本から変え、食事制限や運動習慣の定着を強力にサポートする役割を果たします。治療の主体者としての自覚を促すために、画像提示は非常に有効です。

こうした検査データの蓄積が、将来の透析導入や寝たきりの原因となる大きな病を遠ざけるための、確実な一歩へと変わっていきます。予防医学の観点からも、頸部観察の意義は極めて大きいと言えます。

頸部から早期発見できる主なリスク

リスク項目検査でわかること予防できること
心血管疾患血管壁の老化度心筋梗塞・脳卒中
悪性腫瘍リンパ節の異常癌の遠隔転移拡大
免疫機能唾液腺・リンパの質膠原病・慢性炎症

免疫疾患やアレルギー反応の指標としての活用

首のリンパ節は外部からの異物侵入に対して真っ先に反応するため、全身の免疫システムが過敏になっている証拠を捉えやすい場所です。免疫のバランスを測るためのセンサーとして首を活用します。

長期にわたる原因不明の微熱や湿疹がある場合、頸部の深い位置にあるリンパ節を調べることで、潜伏している感染症や炎症が見つかります。隠れた原因を特定するための、糸口を見つけ出すのが目的です。

特定の免疫疾患ではリンパ節が特有の反応を示すことがあり、これを見落とさないことで早期の専門的な治療開始を可能にします。診断の遅れを防ぐことが、患者様さんの心身の負担を減らすことに直結します。

体からの「小さなSOS」を映像として抽出できる超音波検査は、現代の複雑な疾患構造を解き明かすための強力な武器となります。全身を網羅的に捉える検査の先駆けとして、その重要性は増すばかりです。

脳血管疾患の予防に直結するスクリーニング

脳梗塞を一度起こしてしまうと後遺症に苦しむケースが多いですが、その多くは頸動脈の狭窄という予兆を事前に抱えています。事前のスクリーニングが、人生の質を守るための強力な防衛策となります。

無症状の段階でスクリーニングを実施し、血流の滞りを見つけることができれば、内科的なコントロールで発症率を劇的に下げられます。血管をきれいに保つ努力が、健やかな未来を形作るのです。

「自分は大丈夫」という根拠のない自信ではなく、超音波で確認した「実証された健康」を持つことが、安心できる生活の基盤です。客観的なデータこそが、真の心の安らぎを得るための最良の手段です。

検査によって得られた血管のクリアな状態こそが、将来の自由な活動を保障する何よりの財産になることを理解しておく必要があります。首の健康管理は、一生涯の活動を支える最も費用対効果の高い投資です。

検査精度を高めるための受診前の準備と注意点

検査当日の服装やリラックスした姿勢、過去のデータとの比較といった準備が、微細な病変を確実に見つけ出すための鍵となります。受診者自身の協力が、より精度の高い診断結果を導き出します。

食事制限や服薬に関する基本的なルール

頸部の検査単独であれば食事の制限は基本的にありませんが、リラックスして受けるために直前の過度な飲食は控えるのが賢明です。満腹による不快感などが検査に影響を及ぼさないように配慮しましょう。

常用しているお薬がある場合は、主治医から特別な指示がない限り、通常通りに服用して検査に臨んでも大きな問題は生じません。薬の中断による体調の変化を避けることが、安定した検査のために必要です。

ただし、腹部の超音波などとセットで行う場合は、胆嚢の収縮を防ぐために絶食が必要になるため、予約時の案内の確認が大切です。セット検査の内容を把握し、正しいルールを守ることが結果の信頼性を守ります。

体の内部環境を平時と同じ状態に保っておくことが、日々の健康状態を正しく反映した検査結果を得るための第一条件と言えます。無理な絶食や極端な体調の変化がない状態で、リラックスして受診しましょう。

受診時のセルフチェック項目

  • 首回りが大きく開く、着脱のしやすい服装を選んだか
  • ネックレスなどのアクセサリーを事前に外しているか
  • 過去の超音波画像や健診結果を持参しているか
  • 気になる症状(しこりや違和感)をメモにまとめたか

検査時の服装とリラックスして臨む重要性

検査では顎から鎖骨付近まで広くゼリーを塗布するため、タートルネックや襟元の詰まった服は避け、首元がゆったりした服を着用します。検査領域をスムーズに露出できることが、効率的な検査に寄与します。

また、検査中に首の筋肉に力が入ってしまうと、超音波が深部まで届きにくくなり、鮮明な画像が得られない原因となります。リラックスした姿勢が、隠れた異常を見つけ出すための物理的な条件を整えます。

横になった状態で全身の力を抜き、呼吸を一定に保つことで、技師はスムーズにプローブを動かして詳細な観察を行えます。首を動かす際も無理なく従うことで、検査全体の精度を底上げすることが可能です。

少しの協力が検査の質を大きく向上させ、より確信の持てる診断へと繋がることを意識して受診していただくことが望ましいです。受診者と医療スタッフの連携が、質の高い医療を実現するための第一歩です。

過去の検査データを持参する意義と利点

医療において最も重要なのは「前回の結果と比較して何が変わったか」という変化のプロセスを追跡することに他なりません。一つの断面ではなく、時間の流れの中で組織の動きを捉えることが重要です。

かつて「良性」とされた結節がサイズアップしていないかを確認することで、初めてその病変の本当の性質を正確に把握できます。経時的な変化こそが、疾患の本質を暴き出すための最も重要な証拠となります。

以前に他院で受けた検査結果やデータがあれば、遠慮せずに持参して提示することが、二度手間を省き最短で正解に辿り着く近道です。データの一元化が、最も効率的で間違いのない診療方針の決定に役立ちます。

自身の健康の歴史を一つの「線」として繋げることで、未来に向けた最適な予防プランを医師と共に立てることが可能になります。過去の記録は、将来のあなたを守るための強力なリソースとなるのです。

よくある質問

頸部の超音波検査で癌が見つかった場合、すぐに手術が必要になるのでしょうか?

見つかった癌の性質によって対応は大きく異なります。

甲状腺癌の多くを占める乳頭癌などは進行が非常に緩やかであるため、小さなものであれば即座に手術を行わず、定期的な超音波検査で経過を観察する「アクティブサーベイランス」という選択肢が選ばれることも珍しくありません。

一方で、周囲の重要な神経や血管に浸潤する恐れがある場合や、リンパ節転移が広範に及んでいる場合には、早期の外科的介入を検討します。

検査で「プラークがある」と言われましたが、これは治るものですか?

一度形成されたプラーク(血管の壁に溜まった脂質などの塊)を完全に消失させることは、現代の医療でも容易なことではありません。

しかし、強力な脂質低下薬の使用や、徹底した食事療法の継続によって、プラークの内部を縮小させたり、表面を硬く安定させたりすることは十分に可能です。

最も重要な目標は、プラークを消すことそのものではなく、それが破裂して脳梗塞を引き起こすリスクを最小限に抑え、血管の老化スピードを遅らせることにあります。

リンパ節が腫れていると言われましたが、痛みがなくても癌の可能性はありますか?

実は、痛みがない腫れこそが注意すべきサインです。

風邪や喉の炎症によるリンパ節の腫れは、多くの場合、押すと痛み(圧痛)を伴ったり、短期間で腫れが引いたりします。

一方で、癌のリンパ節転移や悪性リンパ腫による腫れは、痛みを感じないまま徐々に、あるいは急速に大きくなり、石のように硬い手触りになることが特徴です。痛くないからと放置せず、超音波で内部の構造を精査することが早期発見のために重要です。

超音波検査だけで全ての異常がわかりますか?

超音波検査は非常に情報の多い優れた検査ですが、それ単独で100%の確定診断を下すものではありません。

例えば、画像で悪性を強く疑うリンパ節や結節が見つかった場合、最終的な診断を下すためには、細い針で細胞を採取して顕微鏡で確認する「穿刺吸引細胞診」が必要になります。

また、周囲組織との広範な関係性を把握するために、CTやMRIといった他の画像検査を併用することもあります。超音波はあくまで、次に行うべきアクションを決定するための「精度の高い羅針盤」とお考えください。

首の検査を受けることで脳卒中の予防になるのはなぜですか?

脳卒中の多くは、脳内の血管が詰まる脳梗塞ですが、その原因の多くは首を通る「頸動脈」に隠れているからです。

頸動脈の血管壁が厚くなったりプラークができたりすると、そこから剥がれたカスが脳の奥深くへと流れ込み、血管を詰まらせます。これが「アテローム血栓性脳梗塞」と呼ばれるものです。

首の検査で事前に血管の狭窄具合を確認し、サラサラにするお薬を飲んだり血圧を管理したりすることで、脳にトラブルが起きる原因そのものを未然に断つことが可能になります。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医