
大腸がんの薬物療法では、がん細胞の遺伝子変異を調べたうえで分子標的薬を選ぶ「個別化医療」が標準的な治療として定着しています。RAS遺伝子やBRAF遺伝子に変異があるかどうかで、使える薬剤は大きく変わります。
この記事では、遺伝子検査の種類や受けるタイミング、検査結果に応じた分子標的薬の使い分けについて、医学的根拠にもとづきながらわかりやすく解説します。ご自身やご家族の治療選択に役立てていただければ幸いです。
「どの薬が自分に合うのだろう」「遺伝子検査って何を調べるの?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。
大腸がんの分子標的薬とは?従来の抗がん剤と何が違うのか
分子標的薬は、がん細胞に特有のタンパク質や遺伝子を「狙い撃ち」にする薬剤であり、従来の抗がん剤よりも正常な細胞へのダメージが少ない傾向があります。大腸がんの治療では、抗がん剤と分子標的薬を組み合わせて使うのが現在の基本方針です。
従来の抗がん剤はがん細胞以外も攻撃してしまう
従来の抗がん剤(細胞傷害性抗がん剤)は、細胞が分裂する仕組みそのものに作用します。がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすため、脱毛や吐き気、白血球の減少といった副作用が起こりやすいという問題がありました。
フルオロウラシル(5-FU)やオキサリプラチン、イリノテカンなどが代表的な薬剤です。これらは大腸がんの薬物療法の土台として、現在も広く使われています。
分子標的薬はがん細胞の「弱点」を突く
分子標的薬は、がん細胞の増殖や転移に関わる特定の分子だけを標的にして効果を発揮します。たとえば、がんの栄養補給路である新しい血管の形成を阻害したり、細胞増殖の信号伝達を遮断したりといった働きがあります。
大腸がんの分子標的薬と従来の抗がん剤の比較
| 項目 | 従来の抗がん剤 | 分子標的薬 |
|---|---|---|
| 作用の対象 | 分裂中の細胞全般 | がん特有の分子 |
| 正常細胞への影響 | 大きい | 比較的小さい |
| 代表的な副作用 | 脱毛・吐き気・骨髄抑制 | 皮膚障害・高血圧・出血など |
| 使い方 | 単独または併用 | 抗がん剤と併用が基本 |
大腸がん治療では抗がん剤と分子標的薬を組み合わせる
現在の大腸がん治療では、FOLFOX療法やFOLFIRI療法といった抗がん剤の併用レジメンに分子標的薬を上乗せするのが標準的な方法です。分子標的薬を加えることで、がんの縮小効果や生存期間の延長が期待できます。
どの分子標的薬を組み合わせるかは、がん細胞の遺伝子変異の有無によって判断されます。そのため、治療を始める前に遺伝子検査を受けることが重要なのです。
RAS遺伝子検査で大腸がんの治療薬が変わる|野生型と変異型の分かれ道
大腸がんの約半数にRAS遺伝子の変異が見つかり、変異の有無によって効果が期待できる分子標的薬がまったく異なります。治療開始前のRAS遺伝子検査は、薬剤選択のために欠かせない手順となっています。
RAS遺伝子とは何か|細胞増殖のスイッチ
RAS遺伝子は、細胞の増殖に関わる信号を伝えるタンパク質をつくる遺伝子です。正常な状態では細胞の増殖と停止を適切に調整しています。
ところが、この遺伝子に変異が起こると「増殖しろ」という信号が出続ける状態になり、がんの発症や進行につながります。大腸がん全体の約50%にRAS遺伝子変異が認められるとされています。
RAS野生型なら抗EGFR抗体薬が使える
RAS遺伝子に変異がない「野生型」の場合、セツキシマブ(アービタックス)やパニツムマブ(ベクティビックス)といった抗EGFR抗体薬の効果が期待できます。これらの薬は、がん細胞の表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)に結合し、増殖の信号を遮断する働きを持っています。
一方、RAS遺伝子に変異がある「変異型」の患者さんには、抗EGFR抗体薬を投与しても効果が得られないことが多くの臨床試験で示されています。変異型の場合は、ベバシズマブなどの血管新生阻害薬を中心とした治療が選ばれるでしょう。
RAS遺伝子検査を受けるタイミング
RAS遺伝子検査は、切除が難しい進行・再発大腸がんに対する薬物療法を始める前に受けるのが原則です。手術や内視鏡検査で採取したがん組織を使って調べます。
検査結果が出るまでには通常1〜2週間かかりますが、この結果がその後の治療方針を大きく左右するため、焦らず結果を待つことが大切です。担当医とよく相談しながら、治療の進め方を決めていきましょう。
| RAS遺伝子の状態 | 抗EGFR抗体薬 | 血管新生阻害薬 |
|---|---|---|
| 野生型(変異なし) | 効果が期待できる | 使用可能 |
| 変異型(変異あり) | 効果が期待できない | 使用可能 |
BRAF V600E遺伝子変異がある大腸がんは治療方針が大きく異なる
BRAF遺伝子の変異は大腸がん全体の約5〜10%に見られ、変異がある場合は一般的な化学療法が効きにくく、予後も厳しい傾向にあります。近年はBRAF阻害薬を含む新しい併用療法が登場し、治療の幅が広がっています。
BRAF遺伝子変異の特徴と頻度
BRAF遺伝子はRAS遺伝子とともに細胞増殖の信号伝達経路に関わっており、変異があると増殖の指令が過剰に出続けます。大腸がんにおけるBRAF変異の90%以上は「V600E」と呼ばれる特定の部位に集中しています。
RAS遺伝子変異とBRAF遺伝子変異が同時に見つかるケースはほとんどなく、互いに排他的な関係にあることも知られています。BRAF変異がある大腸がんは右側結腸(盲腸や上行結腸など)に発生しやすいという臨床的な特徴もあります。
BRAF変異がある場合、抗EGFR抗体薬は効きにくい
- 抗EGFR抗体薬(セツキシマブ・パニツムマブ)単独での効果は乏しい
- FOLFOXIRIとベバシズマブの併用が一次治療で検討される
- エンコラフェニブ+セツキシマブの併用療法が二次治療以降で使える
- MSI-H(マイクロサテライト不安定性が高い)を合併する場合は免疫チェックポイント阻害薬も候補になる
エンコラフェニブを含む新しい併用療法
2020年に国内で承認されたエンコラフェニブ(ビラフトビ)は、BRAF V600E変異を直接阻害する薬剤です。セツキシマブとの併用、あるいはさらにビニメチニブ(メクトビ)を加えた3剤併用で使われます。
従来の治療では効果が限定的だったBRAF変異型の大腸がんに対して、腫瘍縮小や生存期間の改善が報告されており、治療成績の向上が期待されています。ただし副作用の管理も重要ですから、使用経験の豊富な医療機関で治療を受けることが望ましいでしょう。
BRAF遺伝子検査はいつ受ければよいか
BRAF V600E遺伝子検査は、RAS遺伝子検査と同じタイミング、つまり一次治療を開始する前に受けることが推奨されています。同じがん組織の検体から同時に調べられるため、追加の負担は小さくて済みます。
検査結果によって一次治療の方針が変わる可能性があるため、早めに結果を把握しておくことが治療全体を見据えるうえで大切です。
大腸がんの分子標的薬にはどんな種類があるのか|一覧で押さえておきたい薬剤
大腸がんの治療に用いられる分子標的薬は、大きく「抗EGFR抗体薬」「血管新生阻害薬」「マルチキナーゼ阻害薬」「BRAF阻害薬」の4つのカテゴリーに分かれます。それぞれ作用する対象や使い方が異なるため、違いを整理しておくと治療への理解が深まるでしょう。
抗EGFR抗体薬|がん細胞の増殖信号を遮断する
セツキシマブ(アービタックス)とパニツムマブ(ベクティビックス)の2剤が代表的です。どちらもEGFRというタンパク質に結合し、がん細胞の増殖に関わる信号を遮断します。
RAS遺伝子が野生型の患者さんにのみ使用でき、変異型の場合は効果が見込めません。左側大腸(下行結腸・S状結腸・直腸)に原発するがんでは、特に高い効果が報告されています。
血管新生阻害薬|がんへの栄養供給を絶つ
ベバシズマブ(アバスチン)、ラムシルマブ(サイラムザ)、アフリベルセプト(ザルトラップ)の3剤がこのカテゴリーに該当します。がん細胞が新しい血管をつくるのを阻害し、栄養や酸素の供給を断つ「兵糧攻め」の戦略です。
RAS遺伝子変異の有無にかかわらず使用でき、ベバシズマブは一次治療から幅広く用いられています。二次治療ではラムシルマブやアフリベルセプトへの変更も選択肢に入ります。
マルチキナーゼ阻害薬とその他の薬剤
レゴラフェニブ(スチバーガ)は、がんの増殖に関わる複数の因子を同時に抑制する経口薬です。標準的な治療を一通り行った後の後方ラインで使われることが多く、内服薬であるため通院の負担が軽い点が特徴といえます。
また、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(ロンサーフ)も後方ラインで使用される経口薬です。分子標的薬とは分類が異なりますが、進行・再発大腸がんにおける治療の選択肢の一つとして位置づけられています。
| 薬剤カテゴリー | 代表的な薬剤名 | 主な標的 |
|---|---|---|
| 抗EGFR抗体薬 | セツキシマブ、パニツムマブ | EGFR(増殖信号) |
| 血管新生阻害薬 | ベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト | VEGF(血管新生) |
| マルチキナーゼ阻害薬 | レゴラフェニブ | 複数のキナーゼ |
| BRAF阻害薬 | エンコラフェニブ | BRAF V600E |
遺伝子検査の結果で治療はこう変わる|大腸がんの分子標的薬の選び方
RAS遺伝子とBRAF遺伝子の検査結果によって、一次治療から後方ラインまでの薬剤の組み合わせはほぼ自動的に決まっていきます。検査結果をもとにした治療の流れを把握しておくと、主治医との話し合いがよりスムーズになるはずです。
RAS野生型・BRAF野生型の場合の治療の流れ
RAS遺伝子にもBRAF遺伝子にも変異がない場合、一次治療ではFOLFOXやFOLFIRIといった抗がん剤レジメンに、セツキシマブまたはパニツムマブを併用するのが標準的な選択です。左側大腸に原発するがんでは、抗EGFR抗体薬の効果が特に高いとされています。
二次治療では、一次治療で使わなかった抗がん剤レジメンにベバシズマブを併用するのが一般的です。三次治療以降は、イリノテカンと抗EGFR抗体薬の併用や、レゴラフェニブ、ロンサーフなどが候補となります。
RAS変異型の場合の治療の流れ
RAS変異型の大腸がんに対する治療ライン別の薬剤選択
| 治療ライン | 抗がん剤レジメン | 併用する分子標的薬 |
|---|---|---|
| 一次治療 | FOLFOX / FOLFIRI / CapeOXなど | ベバシズマブ |
| 二次治療 | 一次で未使用のレジメン | ベバシズマブまたはラムシルマブなど |
| 三次治療以降 | — | レゴラフェニブまたはロンサーフ |
BRAF V600E変異型の場合はどう対応するか
BRAF V600E変異がある場合、がんの性質が強く進行も速い傾向にあるため、一次治療からFOLFOXIRI(3剤併用)にベバシズマブを加えた強力なレジメンが選ばれることが多いです。患者さんの体力や全身状態を考慮したうえで、治療強度を調整します。
二次治療以降では、エンコラフェニブとセツキシマブの併用療法が候補になります。さらにMSI-H(マイクロサテライト不安定性が高い状態)が確認された場合は、免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブやニボルマブも治療選択肢に加わります。
原発部位(右側・左側)も薬剤選択に影響する
近年の研究から、大腸がんの原発部位も治療効果に関わることがわかっています。盲腸から横行結腸までの「右側大腸」に発生したがんでは、抗EGFR抗体薬の効果が比較的低いとの報告があります。
一方、下行結腸からS状結腸、直腸にかけての「左側大腸」に発生したがんでは、抗EGFR抗体薬が高い効果を示す傾向があります。遺伝子変異の情報に加えて、がんがどこにできたかという情報も、治療方針を決める際の重要な判断材料になっています。
大腸がんの分子標的薬で気をつけたい副作用と日常生活での対処法
分子標的薬は従来の抗がん剤に比べて正常細胞への影響は小さい傾向にありますが、それぞれの薬剤に特有の副作用が現れます。副作用を早期に発見し適切に対処することで、治療を長く続けやすくなるでしょう。
抗EGFR抗体薬に多い皮膚トラブル
セツキシマブやパニツムマブを使うと、にきびのような発疹(ざ瘡様皮疹)が高い頻度で現れます。顔や上半身を中心に赤い発疹が出ることが多く、かゆみを伴う場合もあります。
保湿剤をこまめに塗ることや、日焼け止めで紫外線を避けることが予防に役立ちます。皮膚トラブルが強くなった場合は、皮膚科と連携して塗り薬や飲み薬で対応するのが一般的です。実は皮膚症状が出る患者さんほど薬の効果が高い傾向があるとの報告もあり、副作用と治療効果のバランスを見ながらうまく付き合っていくことが求められます。
血管新生阻害薬に多い高血圧や出血
ベバシズマブをはじめとする血管新生阻害薬では、高血圧、鼻出血、タンパク尿などの副作用に注意が必要です。血圧が上がりやすくなるため、治療中は自宅でも定期的に血圧を測定し、記録しておくとよいでしょう。
まれに消化管穿孔(腸に穴が開くこと)や血栓症が起こることもあります。お腹の強い痛みや、手足のしびれ・腫れなど普段と違う症状があれば、すぐに担当医へ連絡してください。
副作用を和らげるために日常生活で心がけたいこと
分子標的薬の治療中は、体調の変化を早く見つけることが大切です。毎日の体温や血圧、体重、皮膚の状態などを記録しておくと、受診時に担当医への報告がスムーズになります。
食事面では、バランスのよい食事を心がけつつ、食欲が落ちたときは無理をせず食べられるものを少量ずつ取るようにしましょう。十分な睡眠と適度な休息も、治療を続けるうえで体力を維持するために大切です。
- 毎日の血圧測定と体温の記録
- 皮膚の保湿ケアと紫外線対策
- 異常な出血やお腹の痛みがあればすぐに受診
- 栄養バランスを意識した食事と十分な休息
がん遺伝子パネル検査で広がる大腸がんの個別化治療|次の一手を探すために
標準的な治療をひととおり終えた後、次の治療選択肢を探る手段としてがん遺伝子パネル検査があります。100種類以上のがん関連遺伝子を一度に調べることで、個々の患者さんに合った治療薬が見つかるかもしれません。
がん遺伝子パネル検査とは何か
がん遺伝子パネル検査と個別の遺伝子検査の違い
| 項目 | 個別遺伝子検査 | がん遺伝子パネル検査 |
|---|---|---|
| 調べる遺伝子の数 | 1〜数個 | 100種類以上 |
| 主な目的 | 特定の薬剤の適応判定 | 幅広い治療候補の探索 |
| 実施のタイミング | 治療開始前 | 標準治療終了後が多い |
パネル検査を受けられる医療機関と流れ
がん遺伝子パネル検査は、厚生労働省が指定する「がんゲノム医療中核拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」「がんゲノム医療連携病院」で受けることができます。それ以外の医療機関に通院中の方でも、主治医を通じて指定病院への紹介を受けることが可能です。
検査にはがん組織と血液を使います。結果は専門家チーム(エキスパートパネル)が検討し、治療に活かせる遺伝子変異があるかどうかを判定します。結果が出るまでに数週間かかる点は、あらかじめ把握しておくとよいでしょう。
パネル検査で見つかる遺伝子変異は大腸がん患者の約半数
大腸がんの場合、治療選択に役立つ可能性のある遺伝子変異が約半数の患者さんで見つかるとされています。すべてのケースで治療に直結するわけではありませんが、従来の検査では見逃されていた変異が発見される場合もあります。
HER2遺伝子の増幅が見つかった場合にはHER2を標的とした治療が検討されるなど、パネル検査ならではの発見が治療の幅を広げることがあります。主治医と相談しながら、検査を受ける時期や意義についてしっかり確認しておきましょう。
リキッドバイオプシーという新しい検査方法
血液中に浮遊するがん由来のDNA(ctDNA)を調べるリキッドバイオプシーも注目されています。組織を採取する手術や内視鏡が不要で、血液検査だけで遺伝子変異を調べられる点が大きな利点です。
現在は研究段階の部分も多いですが、術後の再発リスク評価や治療効果のモニタリングなど、今後さまざまな場面で活用が広がるとみられています。
よくある質問
大腸がんの分子標的薬はどのような患者が対象になるのか?
分子標的薬の対象となるのは、主に切除が困難な進行・再発大腸がんの患者さんです。手術で取り切れない場合や、肝臓・肺などに転移がある場合に、抗がん剤と組み合わせて使われます。
早期の大腸がんで手術によって根治が見込める場合には、分子標的薬は通常使われません。術後補助化学療法においても、分子標的薬を上乗せする効果は臨床試験で示されていないためです。
治療の対象になるかどうかは、がんの進行度や全身の状態、遺伝子検査の結果などを総合的に判断して決められます。詳しくは担当の主治医にご相談ください。
大腸がんのRAS遺伝子検査とBRAF遺伝子検査は同時に受けられるのか?
RAS遺伝子検査とBRAF遺伝子検査は、同じがん組織の検体を使って同時に受けることが可能です。一度の検査でどちらの遺伝子変異も調べられるため、追加で組織を採取する必要はありません。
検査は、手術や内視鏡検査で採取したがん組織のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックから薄い切片を作製して行います。検体の状態によってはうまく解析できないケースもありますが、多くの場合は問題なく結果が得られるでしょう。
大腸がんの分子標的薬による治療はどのくらいの期間続くのか?
分子標的薬の治療期間は、がんの状態や治療の効果、副作用の程度によって大きく異なります。一般的には、薬が効いている間は治療を継続し、効果が薄れたり副作用が強くなったりした場合に次の治療ラインへ移行します。
数か月から1年以上にわたって同じ治療を続けられる方もいれば、比較的短期間で治療変更が必要になる方もいます。治療の継続期間は画像検査や血液検査の結果をもとに定期的に評価されますので、通院のたびに主治医と治療の方向性を確認することが大切です。
大腸がんの分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬は併用できるのか?
免疫チェックポイント阻害薬が使えるのは、MSI-H(マイクロサテライト不安定性が高い)という特徴を持つ大腸がんの患者さんに限られます。切除が難しい進行・再発大腸がんのうち、MSI-Hに該当するのは全体の約2〜5%程度です。
MSI-Hが確認された場合、ペムブロリズマブ(キートルーダ)やニボルマブ(オプジーボ)といった免疫チェックポイント阻害薬による治療が検討されます。分子標的薬との併用についてはまだ研究段階のものが多く、今後の臨床試験の結果によって新たな治療の組み合わせが広がっていく可能性があります。
大腸がんの分子標的薬の治療中に食事で注意すべきことはあるか?
分子標的薬の治療中に特別な食事制限が必要になることは少ないですが、いくつか気をつけたいポイントがあります。血管新生阻害薬を使用している場合は高血圧のリスクが高まるため、塩分の取りすぎには注意しましょう。
また、治療による食欲低下や下痢が起こることもあるため、消化のよい食事を中心にしつつ、水分を十分に補給することが大切です。
極端な食事制限やサプリメントの大量摂取は、薬の作用に影響を与える恐れがあるため、気になる場合は必ず担当医や薬剤師に相談してください。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医