
癌との闘いにおいて、手術や抗癌剤などの標準治療は目に見える病巣を叩く強力な武器です。しかし、体内に潜む微小な癌細胞までは取りきれず、治療後の再発や副作用による体力の消耗が大きな課題となっています。
樹状細胞ワクチン療法は、患者様自身の免疫システムを再教育し、特定の癌細胞を狙い撃ちする力を高める治療です。標準治療と賢く組み合わせることで、再発のリスクを抑え込みながら、普段通りの生活の質を維持する道が開けます。
単なる治療の追加ではなく、それぞれの強みを活かした戦略的な使い分けが、癌の克服と笑顔で過ごせる未来へと繋がります。この記事では、納得して次のステップへ進むための具体的な指針を解説します。
標準治療の限界を補いながら樹状細胞ワクチン療法で癌を抑え込むための基礎知識
癌の治療を開始する際、誰もが最初に検討するのが「標準治療」です。これは世界中の研究者が認めた、現時点で最も効果が期待できる治療法を指します。
しかし、標準治療が万能ではないことも事実です。大きな腫瘍を物理的に取り除くことには優れていますが、全身に散らばったわずかな癌細胞まで追い詰める力には限界があります。
そこで必要となるのが、自分の免疫力を強化して「癌の芽」を摘み取る視点です。樹状細胞ワクチン療法は、標準治療で叩ききれなかった敵を監視し続ける、いわば「生体内の警備網」を構築します。
標準治療が抱える構造的な課題にどう向き合うべきですか
抗癌剤治療は、急速に増殖する細胞を攻撃します。この性質上、癌細胞だけでなく、髪の毛や胃腸の粘膜といった正常な細胞までもが傷ついてしまいます。
この影響で激しい嘔吐や倦怠感が生じ、治療を断念せざるを得ないケースもあります。体力が奪われることで、本来備わっているはずの自己免疫力までもが低下してしまうのは皮肉な結果です。
また、手術で「完全に取り切った」と診断されても、顕微鏡レベルの細胞までは確認できません。この微細な癌細胞が再び増殖を始めることが、数年後の再発を招く直接的な原因となっています。
樹状細胞ワクチン療法が標準治療の弱点をカバーする理由
樹状細胞は、体の中で「癌の情報をリンパ球に伝える司令塔」として働きます。この細胞を体外で育て、癌の目印を覚えさせてから体内に戻すのがこの療法の根幹です。
標準治療が「面」での攻撃であるのに対し、このワクチンは「点」での精密な攻撃を可能にします。指示を受けたリンパ球は、特定の癌細胞だけを執拗に追いかけ、他の細胞を傷つけることはありません。
標準治療によって体へのダメージが大きくなる前に、あるいは治療の合間にこの免疫の網を張っておくことで、癌の再増殖を許さない環境を作ることが可能になります。
治療の特性を整理して比較した内容
| 特徴 | 標準治療(三大療法) | 樹状細胞ワクチン療法 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 巨大な腫瘍の除去・縮小 | 微小癌の監視・排除 |
| 攻撃対象 | 増殖細胞全般 | 特定の癌抗原を持つ細胞 |
| 副作用 | 脱毛、吐き気、倦怠感 | 軽微な発熱程度 |
いつから自由診療の免疫療法を検討し始めるのが良いタイミングか
理想的なのは、癌と診断された直後や、最初の手術を受ける前の段階です。なぜなら、樹状細胞は患者様自身の血液から作られるため、体力が充実している時の方が、質の高い細胞を確保しやすいからです。
抗癌剤を長期間使い続けた後では、免疫細胞の数そのものが減少してしまい、ワクチンの反応が悪くなるケースも見られます。早めに専門家へ相談し、治療全体のスケジュールに組み込むことが大切です。
後回しにするのではなく、標準治療と並走させる意識を持つことが、生存率の向上だけでなく生活の質の維持にも直結します。手遅れになる前に、複数の選択肢を持っておくことは患者様の権利でもあります。
目に見えない癌を逃さない再発予防のための戦略的な使い分け方
手術で癌を摘出した後の「経過観察」という言葉に、不安を感じる方は少なくありません。実は、この期間こそが再発予防において最も重要な時期と言えます。
画像に映らない小さな癌細胞が残っている可能性を考慮し、免疫の力を借りて全身をクリーニングする意識が必要です。標準治療と組み合わせることで、再発の芽を徹底的に排除できます。
ただ待つだけの時間を、能動的な予防の時間に変えることが、将来の安心へと繋がります。それぞれの治療が持つ役割を理解し、タイミングを逃さないことが癌克服の要となります。
手術後の空白期間を樹状細胞ワクチン療法で埋めるメリット
手術によって腫瘍を物理的に除いた直後の体は、癌の総量が最も少なくなっている状態です。この時期は、免疫細胞が敵を見つけ出しやすく、ワクチンの効果が発揮されやすい絶好のタイミングです。
何もせずに次の検査を待つ「空白の期間」に樹状細胞ワクチンを投入することで、術後に散らばった癌細胞を攻撃させます。こうすることで、目に見えない転移が大きな病変へと育つのを未然に防ぎます。
手術という大きな負荷がかかった後の体を癒しながら、同時に防衛力を高める。この二段構えのアプローチこそが、再発という最悪の事態を遠ざけるための賢明な投資となります。
抗癌剤治療が終わった後の免疫メンテナンスが再発を防ぐ
抗癌剤のコースが終了した後は、体内の免疫力が一時的に底を打っています。この無防備な状態で再び癌が動き出すことを防ぐために、免疫の再教育が必要となります。
樹状細胞ワクチンは、疲弊した免疫系に新しい刺激を与え、再び癌細胞を監視する能力を呼び覚まします。薬の力で叩いた後に、自分の力で仕上げを行うようなイメージです。
このメンテナンスを行うことで、治療終了後の「リバウンド」的な癌の増殖を抑えることができます。薬に頼り切るのではなく、自分の体に備わった力を最大限に引き出すことが、長期的な健康維持に繋がります。
再発リスクを抑えるための判断基準
| 状況 | 推奨される手法 | 得られる期待値 |
|---|---|---|
| 術直後 | 速やかなワクチンの導入 | 微小残存細胞の完全排除 |
| 化学療法後 | 免疫機能の再教育 | 治療後の再増殖防止 |
| 定期検診中 | 継続的な免疫監視 | 長期的な寛解状態の維持 |
微小な転移が疑われる場合の免疫による追撃体制の構築
腫瘍マーカーがわずかに上昇したり、画像検査で怪しい影が見つかったりした場合、標準治療では「確定診断が出るまで待つ」という判断が下されることがあります。
しかし、癌細胞が大きくなるのを待つのは、敵に猶予を与えることと同義です。樹状細胞ワクチン療法なら、疑わしい段階から全身のリンパ球を活性化させ、追撃の手を緩めることがありません。
どこに潜んでいるか分からない小さな転移に対しても、血液を介して全身をパトロールする免疫細胞なら到達可能です。この先行投資が、将来的な大きな手術や強い副作用を避けるための盾となります。
体に優しい治療を選択することでQOL(生活の質)を維持する方法
癌治療において「長く生きること」と同じくらい、「苦痛なく自分らしく生きること」が重要視されるようになっています。これを目指すのがQOLの維持です。
樹状細胞ワクチン療法は、自分の細胞を用いるため、これまでの治療法では避けられなかった激しい副作用がほとんどありません。日常生活への影響を最小限に抑えられます。
仕事や趣味を諦めることなく、治療を人生の一部として取り入れることができる。この心の余裕が、結果として病気と向き合う前向きなエネルギーを生み出します。
副作用による苦痛を最小限に抑えるための賢い選択
抗癌剤による吐き気や倦怠感は、単に辛いだけでなく、食事を困難にし、体力を奪い、精神を摩耗させます。これが続くと、生きる意欲そのものが削られてしまいます。
樹状細胞ワクチン療法を柱に据える、あるいは標準治療の副作用が出にくい量に調整して併用することで、こうした地獄のような時間を回避する道が開けます。
投与後に数時間の微熱が出ることはあっても、翌日から普段通りに過ごせる方がほとんどです。体に過度な負担をかけない治療を選択することは、決して逃げではなく、戦略的な英断と言えるでしょう。
仕事を辞めずに通院治療を継続するためのスケジュール管理
入院を余儀なくされる治療とは異なり、樹状細胞ワクチン療法は外来通院での治療が基本です。採血や注射にかかる時間は限られており、会社を休む必要も最小限で済みます。
癌を宣告されると「仕事はやめなければならない」と考えがちですが、経済的な基盤を失うことは大きな不安要素になります。今のキャリアを維持しながら闘病できることは、大きな支えとなります。
社会との繋がりを持ち続けることで、自分自身を「癌患者様」としてだけでなく「一人の社会人」として保つことができます。この精神的な充足感は、免疫力にプラスの影響を与える大切な要素です。
生活の質を守るために大切なこと
- 副作用による寝込み期間を最小限にし、家事や趣味の時間を確保する
- 味覚障害などのリスクを抑え、最期まで自分の口で美味しく食事を楽しむ
- 見た目の変化を気にせず、友人と会ったり外出したりする機会を維持する
- 休職による収入減を抑え、将来に向けた金銭的なゆとりを持って治療に臨む
家族との穏やかな時間を優先するための体力的余裕の確保
癌治療の終わりが見えない中、家族と一緒に過ごす一分一秒は、何物にも代えがたい宝物です。しかし、強い治療の副作用でぐったりしていては、会話を楽しむこともままなりません。
樹状細胞ワクチン療法は、体力を温存できる治療法です。旅行に出かけたり、孫と遊んだり、家族で食卓を囲んだりといった「当たり前の幸せ」を諦める必要がありません。
患者様が笑顔でいられることは、支える家族にとっても最大の救いです。体力の消耗を防ぐことで、家族全員が穏やかな気持ちで過ごせる時間を作り出すことができます。
抗癌剤との併用が相乗効果を生み出す免疫学的な仕組みとは
かつて、抗癌剤と免疫療法は正反対の治療と考えられていました。しかし、今の医学ではこの二つを組み合わせることで、一加一が二以上の効果を生むことが分かっています。
抗癌剤が癌を「物理的」に壊し、樹状細胞がその情報を「学習」する。この見事な連携プレーによって、単独では太刀打ちできなかった癌に対抗する力が生まれます。
この仕組みを正しく活用すれば、薬の量を減らしつつ、治療成績を高めることも夢ではありません。科学の知見を総動員して、癌を追い詰める戦略を立てましょう。
抗癌剤が癌の目印を露出させる好機を逃さない
抗癌剤は癌細胞の膜を破壊します。すると、通常は細胞の中に隠されている「癌の目印(抗原)」が外に漏れ出します。これが樹状細胞にとっての貴重な情報源となります。
何もしていない状態の癌細胞は、免疫に見つからないよう擬態していますが、抗癌剤で叩かれることでその正体を露呈させます。このタイミングで樹状細胞が活発に動いていれば、効率的に敵を認識できるのです。
薬で敵の城壁を崩し、そこから逃げ出した敵を免疫が確実に仕留める。この流れを作ることで、これまで免疫から逃げ延びていた癌細胞も、逃げ場を失うことになります。
免疫抑制を解除して攻撃の手を緩めない工夫
癌細胞は、自分たちの周囲に免疫を眠らせる特別なバリアを張っています。一部の抗癌剤は、このバリアを構成する細胞を一時的に弱める働きがあることが判明しました。
バリアが薄くなった隙を突いて、樹状細胞によって教育された強力なリンパ球軍団を送り込む。こうすることで、これまでは歯が立たなかった鉄壁の癌組織を内部から崩壊させることができます。
「敵の守りを弱める」抗癌剤と、「攻撃力を高める」ワクチンの組み合わせは、現代の癌治療における非常に合理的な攻め方です。この相互作用を最大限に引き出すことが、成功への鍵となります。
抗癌剤とワクチンの協力関係
| 役割 | 抗癌剤の寄与 | ワクチンの寄与 |
|---|---|---|
| 破壊力 | 癌の細胞膜を壊して抗原を露出させる | 露出した抗原を認識し追撃する |
| 環境改善 | 免疫を邪魔するバリアを弱体化させる | 改善された環境で攻撃を継続する |
| 持続性 | 一時的な強力なダメージを与える | 全身を巡り長期の監視を行う |
投与間隔を工夫して免疫細胞を守り抜く手法
抗癌剤は正常な白血球も減らしてしまうため、ワクチンの投与時期には慎重な判断が必要です。白血球が減少しているピークを避け、回復期に合わせてワクチンを投与する工夫が行われます。
この絶妙なスケジューリングによって、抗癌剤の恩恵を受けつつ、大切な免疫細胞を薬の毒性から守ることができます。患者様の体のリズムを丁寧に見守り、無理のないペースで進めることが大切です。
画一的な治療ではなく、その時々のコンディションに合わせてプランを柔軟に変更できるのは、個別化医療を重視するクリニックならではの強みと言えるでしょう。
放射線治療や手術と組み合わせることで局所と全身を同時に叩く
手術や放射線は、特定の場所にある癌を叩く「局所療法」です。対して樹状細胞ワクチン療法は、全身の免疫力を高める「全身療法」です。この二つを合わせる意義は非常に大きいです。
局所での強力な一撃によって癌の勢いを削ぎ、全身を巡る免疫が散らばった敵を始末する。この「包囲網」を敷くことで、再発や転移のリスクを根底から見直すことが可能になります。
どこかに潜んでいるかもしれない見えない敵に対しても、この体制を整えておくことで、安心して療養生活を送るための基盤を固めることができます。
放射線によってその場でワクチンを作る驚きの効果
癌病巣に放射線を当てると、癌細胞が死滅する過程で様々な化学物質が放出されます。これを樹状細胞が現地で取り込むと、非常に精度の高い学習が行われることが分かっています。
照射された部位だけでなく、そこから遠く離れた場所にある転移巣まで免疫細胞が飛んでいき、癌を攻撃し始める現象(アブスコパル効果)を、ワクチンがさらに強力にサポートします。
放射線治療を受けている期間こそ、樹状細胞を活性化させる最大のチャンスです。この相乗効果を狙うことで、部分的な治療を全身の癌治療へと昇華させることができます。
手術前の投与で全身の防衛網をあらかじめ強化する
手術で腫瘍を動かす際、目に見えないほどの癌細胞が血管の中に漏れ出してしまうリスクはゼロではありません。これを「術中散布」と呼び、将来の転移の原因となることがあります。
これを防ぐために、あらかじめ手術前から樹状細胞ワクチンを投与し、全身のリンパ球を「臨戦態勢」にしておく戦略があります。漏れ出した癌細胞を、即座に血中で処理できる状態を作るのです。
戦場(手術室)で敵が逃げ出そうとしても、周りを強力な警備隊(免疫細胞)が囲んでいれば安心です。この先回りした防御策が、術後の経過を劇的に変える可能性を秘めています。
局所治療と連携する際のメリット
- 放射線のダメージを受けた癌細胞を、免疫細胞が効率よく認識できる
- 手術による侵襲で低下した免疫力を、ワクチンの力で早期に回復させる
- 画像に写らないレベルの散らばった癌細胞を、全身パトロールで仕留める
- 局所の治療成果を全身へと広げ、予期せぬ場所での転移発生を抑え込む
大きな腫瘍を小さくしてから免疫で仕留める段階的アプローチ
免疫細胞は一度に大量の敵を相手にするのがあまり得意ではありません。そのため、まずは手術や放射線で癌の「ボリューム」を物理的に減らすことが極めて重要です。
敵の数が圧倒的に少なくなった状態なら、樹状細胞によって鍛えられたリンパ球たちが各個撃破で癌を全滅させられる確率が格段に高まります。
「大きな敵は機械(放射線・手術)で、残った細かい敵は人間本来の力(免疫)で」。この分業体制こそが、体への負担を最小限に抑えつつ、最高の結果を出すための合理的な手順です。
後悔しないために知っておきたい信頼できるクリニックの選び方
樹状細胞ワクチン療法は自由診療のため、どのクリニックを選べば良いか迷われる方が多いはずです。大切なのは、単なる「設備」ではなく「姿勢」と「技術背景」です。
患者様の命を預かる治療ですから、メリットだけでなくデメリットや、今の標準治療との兼ね合いを正直に話してくれるクリニックでなければなりません。
納得のいく選択ができるよう、いくつかの重要なチェックポイントをまとめました。これらを基準に、自分にとって本当に信頼できるパートナーを見極めてください。
医師が標準治療との併用に理解を示しているかを確認する
「標準治療はもうやめて、私たちの免疫療法だけに絞りましょう」と言う医師は、患者様にとって不誠実である可能性が高いです。良心的な医師なら、今の主治医の方針を尊重します。
むしろ、現在の治療状況を詳しく分析した上で、そこにどうワクチンを組み込むのが最も効果的かを論理的に説明してくれる医師こそ、信頼に値します。
主治医との連携を促してくれたり、紹介状の内容を丁寧に読み取ってくれたりするかどうか。この歩み寄りの姿勢があるかどうかが、治療の成否を分ける第一歩となります。
自分の癌細胞や特定の抗原を使えるカスタマイズ性の高さ
癌は人によって性質が全く異なります。誰にでも同じワクチンを使うのではなく、患者様自身の腫瘍組織や、その癌に合った特異的な抗原を選んで作成してくれるかを確認しましょう。
「オーダーメイド」の精度が高ければ高いほど、樹状細胞は正確な情報をリンパ球に伝えることができます。汎用的な製品ではなく、自分のための治療を作ってくれる技術があるかが肝心です。
どのような抗原を使い、なぜそれを選んだのか。その根拠を分かりやすく説明してくれるクリニックを選びましょう。技術の裏付けがあるところほど、説明も明快であるはずです。
選定時に確認したいポイント
| 項目 | チェックすべき内容 | 重要度 |
|---|---|---|
| インフォームドコンセント | リスクや費用について明確な説明があるか | 特大 |
| 連携体制 | 現在の主治医との関係を否定しないか | 大 |
| 細胞培養の質 | 高度な衛生管理がなされた施設で行われているか | 大 |
培養環境の透明性と安全管理が徹底されているか
樹状細胞は非常に繊細な生き物です。それを取り扱う施設(CPC)がどのような認証を受けており、誰がどのように管理しているかは、治療の安全性に直結します。
この部分の情報公開が不透明なクリニックは避け、厳格な基準をクリアしていることを明示している施設を選びましょう。自分の体の一部を預ける場所だからこそ、妥協は許されません。
万が一の時のための緊急対応体制や、過去の実績データなどがしっかり整理されているかも判断基準になります。誠実なクリニックは、こうした情報を隠さず伝えてくれるものです。
治療にかかる費用と将来の健康への投資をどう天秤にかけるべきか
樹状細胞ワクチン療法は高額な自由診療です。この費用を「高い」と感じるのは当然ですが、それを単なる出費ではなく、将来への「投資」として捉え直す視点も必要です。
再発によって失われる時間や、高額な再入院費、働けなくなることによる経済的損失を天秤にかけてみてください。元気なうちに再発を防ぐことの価値が見えてくるはずです。
自分と家族の未来を守るために、今の資産をどう配分するのが最も賢いのか。後悔しないための経済的な考え方について、整理してみましょう。
再発後の高額な入院費用や休職リスクを回避する経済性
一度癌が再発すれば、治療期間は長期化し、さらに入院費や差額ベッド代などが重くのしかかります。仕事を辞めざるを得なくなった場合の損失額は、計り知れません。
樹状細胞ワクチン療法で再発のリスクを例えば3割下げられたとしたら、その「安心」がもたらす経済的なメリットは、初期の治療費を遥かに上回る可能性があります。
「今しかできない投資」を行うことで、将来的な大きな経済的破綻を防ぐ。この予防医学的な考え方は、賢明な資産管理の延長線上にあるものです。
自分の体への投資がもたらす精神的な平穏の価値
「できることはすべてやっている」という感覚は、患者様にとって何よりの精神安定剤になります。不安に怯えながら過ごす毎日は、それ自体が大きなストレスです。
この心の平穏は、自律神経を整え、さらには自然治癒力を高めるプラスのサイクルを生み出します。お金で「安心」と「時間」を買うことは、決して贅沢ではありません。
笑顔で前向きに生きるための権利を得るための費用と考えれば、その価値は数字以上に大きいものです。自分自身の人生を最後まで豊かにするために、納得できるお金の使い方をしましょう。
治療価値を判断するための考え方
- 再発した際の長期入院費用や、高額な新薬の使用による出費をシミュレートする
- 治療を続けながら仕事を継続することで得られる生涯賃金の推移を考慮する
- 副作用による介護負担を減らし、家族の生活や時間を守る価値を換算する
- 「あの時やっておけば」という後悔をなくし、納得感を持って病と向き合う
無理のない支払いプランと家族との合意形成
どれほど魅力的な治療でも、生活を崩してしまっては本末転倒です。多くのクリニックでは、一括払いだけでなく、治療の進捗に合わせた分割払いにも対応しています。
まずは家族と膝を突き合わせて話し合い、家計の状況を考慮しながら、どこまでなら投資できるかを決めることが大切です。家族が同じ方向を向いていることは、最大の支援になります。
専門のカウンセラーに費用の相談をすることも可能です。無理のない範囲で最善の結果を目指すために、知恵を絞ってプランを立てていきましょう。
よくある質問
樹状細胞ワクチン療法は抗癌剤と同時に進めても体に負担はありませんか?
樹状細胞ワクチン療法は患者様自身の細胞を使用するため、強い副作用が出るリスクが極めて低いです。
そのため、抗癌剤治療を行っている方でも、体力を著しく損なうことなく併用することが可能です。むしろ、免疫力を底上げすることで、抗癌剤の副作用に負けない体作りをサポートする効果が期待できます。
ただし、投与のタイミングは白血球の数値などを考慮して調整する必要があります。
樹状細胞ワクチン療法だけで標準治療を受けずに癌を治すことはできますか?
現代の医学においては、大きな腫瘍がある場合、樹状細胞ワクチン療法だけで完治を目指すのは現実的ではありません。
標準治療(手術、放射線、抗癌剤)によって癌の総量を物理的に減らした後に、このワクチンで残存細胞を叩くのが最も合理的な使い分けです。
「メインの攻撃」を標準治療で行い、「仕上げと監視」を免疫療法で行うという二段構えが、生存率を最大限に高める鍵となります。
樹状細胞ワクチン療法による再発予防はどのくらいの期間続けるべきですか?
一般的には数ヶ月をかけて1クール(5~7回程度の投与)を行うケースが多いです。
その後は、免疫の定着具合を確認しながら、半年に1回や1年に1回といったペースでメンテナンス的な投与を行うことで、監視体制を維持します。
特に再発リスクが高いとされる手術後2~3年間を重点的にケアすることが、長期的な寛解を勝ち取るためのポイントとなります。
高齢で体力がない場合でも樹状細胞ワクチン療法を受けることは可能ですか?
はい、もちろんです。むしろ高齢の方ほど、体への負担が少ない樹状細胞ワクチン療法は適した選択肢と言えます。
強い抗癌剤に耐えられない体力であっても、自分の免疫を優しく刺激するこの療法なら、安全に継続できるケースがほとんどです。
最期まで自分らしく、苦痛のない時間を過ごすためのQOL維持として、多くのご高齢者に選ばれている治療法です。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医