がん入院中の子育て・保育はどうする?ベビーシッター・自治体支援・家族の協力体制

がん入院中の子育て・保育はどうする?ベビーシッター・自治体支援・家族の協力体制

入院日が決まり、園のお迎えや夜の寝かしつけを誰に頼めばよいか迷っているなら、まず大人が不在になる時間を朝から夜まで書き出してみましょう。どの時間に手が足りないかが見えると、頼む相手と頼む内容がはっきりしてきます。

がんで入院するときの子どもの世話は、普段の保育を軸に、家族や地域の支援を組み合わせて整えていきます。預け先と並べて、離れて過ごす間の子どもの気持ちを支える工夫も前もって考えておきましょう。

この記事では、預け先の選び方と自治体への相談、家族の協力体制、入院中の子どもの心を支える工夫を解説します。

がんで入院するときは家族の負担を時間帯で整理する

家族の負担を分けるには、誰が子どもを預かれるかを尋ねる前に、朝から夜までに必要な世話を整理するのが出発点です。親が家を離れると、送迎に加えて、食事の用意や園からの連絡への対応も別の大人が受け持つ形になります。

送迎の前後にも世話が続く

保育園や学校に通っていても、登園前と帰宅後には大人の手が要ります。送迎を頼める人が見つかった段階で、朝食から出発まで、帰宅から就寝までを誰が受け持つかも続けて決めると、時間の空白に気づけます。

時間帯引き継ぐ世話予定が崩れる場面
朝食事、着替え、登園・登校世話をする家族の早出
日中預かり、園や学校からの連絡休園・休校、子どもの発熱
夕方お迎え、夕食、入浴家族の残業、交通機関の遅れ
夜寝かしつけ、夜間の見守り泊まる予定の家族の体調不良

普段使っている保育の時間で埋まる部分を先に残し、大人が足りない時間に支援を足すと、子どもの生活を大きく変えずに組み立てやすくなります。

頼む側の気持ちにも負担がかかる

治療の準備と子どもの段取りが重なると、世話を頼む申し訳なさまで抱えるかもしれません。子育てを誰かに託すのは、治療を受けながら子どもの毎日を守るための準備です。

治療や通院が重なる時期には、親としての自信や子育ての余裕が揺らぎやすいと報告されています。そのため、いつもどおりにできる範囲だけで予定を立てず、連絡の取りまとめも含めて家族に渡しておくと、頼む側の作業も減らせます。

保育料と家族の休みを一緒に見積もる

家族の協力を続けられるかどうかは、預かる時間だけでなく、仕事を休む負担や移動の手間にも左右されます。親のがんは子どもを含む家庭の暮らしにも負担を及ぼしうるため、世話の分担と支出を分けずに話し合いましょう。

必要な支出には、預かりの利用料のほか、送迎の交通費や食事の費用を含めておきます。また、親族なら無理なく頼めると決めつけず、泊まりで来る交通費、休める曜日、続けられる期間まで聞いておくと、途中の交代も頼みやすくなります。

子どもの預け先は普段の保育を軸に組み合わせる

入院中の世話を誰か1人にまとめて頼めないときは、日中、送迎、夜間で依頼先を分けられます。子どもが慣れている場所を残しながら、家庭で不足する時間を埋める組み合わせを作ります。

園や学校の予定から預かり時間を決める

保育園や学童保育を利用中なら、現在の利用時間とお迎えの決まりを先に確かめましょう。

予定表に必要なのは、登園・登校する日だけでなく、行事による早帰りや休日も含めた実際の終了時刻です。親族がお迎えをする場合は、事前登録や本人確認の方法を園に尋ねておくと、当日の引き渡しで困る状況を避けやすくなります。

たとえば、入院前に自宅で園の予定表を開き、水曜日だけ早くお迎えが必要だと分かったら、家族の勤務表と照らし合わせます。その時間に家族が動けなければ、送迎を引き受ける地域の支援やベビーシッターへ、園から自宅までの対応を具体的に依頼できます。

家族と地域の支援で受け持つ時間を分ける

預け先は、入院中の生活全体をまとめて任せる先と、短い時間を補う先に分けると選びやすくなります。子どもの世話を頼める先を前もって確保しておくと、治療の予定を守りやすいという点は、海外のがん治療中の調査でも示されています。

頼める先依頼する場面先にすり合わせる点
家族・親族朝夕の世話や夜間の同居連続して頼める期間、交代日
普段の保育・学童保育日中や放課後の生活利用時間、お迎えをする人
地域の預かり支援送迎や一時的な預かり対象年齢、利用できる時間帯
民間のベビーシッター自宅での保育や送迎依頼範囲、担当者、利用条件

親族が遠方に住む家庭では、移動が必要な協力を日々の送迎に組み込むより、決まった日にまとめて来てもらう方法もあります。担当が変わる時刻と引き渡す場所まで決めると、子どもだけが待つ時間を作らずに済みます。

ベビーシッターには任せる仕事を具体的に伝える

ベビーシッターを依頼するときは、保育の時間に加えて、送迎や食事の介助まで頼めるかを契約前に尋ねます。保育と家事の対応範囲は事業者ごとに違うため、夕食の調理まで含まれると思い込まず、引き受けてもらう作業を言葉にして残しておきましょう。

利用規約では、担当者の資格や経験、事故への備え、緊急時の連絡方法を確認し、料金は延長や交通費も含めて見積もりを取ります。予定変更やキャンセルの期限も合わせて把握しておくと、入院日が動いたときに追加の支出を判断できます。

可能なら入院前に面談し、子どもと担当者が顔を合わせる時間を設けます。短時間の利用で家の鍵や送迎経路の受け渡しまで試しておけば、親が不在になってから説明し直す作業を減らせます。

自治体の支援は日中・送迎・宿泊の用途で選ぶ

家族の協力だけで時間が埋まらないなら、市区町村の子育て支援の担当課へ、入院中に必要な預かりを相談できます。制度名だけを尋ねるより、子どもの年齢と世話をする大人が不在になる時間を伝えると、利用できる支援を絞りやすくなります。

日中だけ預けたいときの一時預かり

一時預かりは、保護者の病気や入院などで家庭での保育が難しいときに、子どもを一時的に預けるための支援です。市区町村によって呼び方や利用条件が異なり、横浜市では一時保育の利用理由に保護者の疾病や入院を挙げています。

日中の数時間を頼みたい家庭では、対象年齢、利用時間、申込方法を居住地の案内で確かめます。普段は家庭で過ごす子どもなら、入院前の面談や慣れるための利用が必要かも尋ね、利用開始までの準備を予定に入れておきます。

ただし、申し込めば希望日に必ず預けられるわけではありません。受け入れ枠や実施施設によって日程が限られるため、予約が成立した日と、まだ世話を頼めていない日を分けて記録します。

宿泊も必要なら子育て短期支援を相談する

夜間に子どもと過ごせる大人がいない場合は、子育て短期支援事業のショートステイを市区町村の子育て支援の担当課に相談しましょう。

自治体の短期支援には、保護者の病気などで家庭での養育が一時的に難しいときの宿泊を伴う預かりや、夕方から夜間の預かりがあります。横浜市の子育て支援事業の資料でも、こうした短期的な預かりが示されています。

相談する内容家庭から伝える情報利用前に確かめる点
宿泊の必要性夜に世話をする大人がいない日受け入れ場所、利用できる期間
子どもの生活年齢、通園・通学先学校へ通えるか、送迎を担う人
受け入れ時の配慮アレルギー、服薬、日常の介助対応範囲、面談や書類
費用と変更予定日と変更の見込み利用料、延長や中止の連絡方法

地域によって実施内容や対象年齢は違うため、日中の預かりと宿泊を同じ条件で使えるとは限りません。入院が迫っているときは、いつまでに預け先が必要かを明確に伝え、受け入れが決まるまで家族の対応も並行して調整します。

送迎の支えになるファミリー・サポート・センター

ファミリー・サポート・センターは、子育ての援助を受けたい人と援助する人をつなぐ地域の相互援助の仕組みです。市区町村の子育て支援の担当課で居住地の事業を尋ね、送迎や預かりを頼みたい曜日、移動区間、終了時刻を伝えて相談します。

横浜市の一時的な預かりの案内では、会員登録をした利用者と援助者を条件に合わせてつなぐ仕組みが紹介されています。ただし、登録の完了と実際の援助の開始は区別し、引き受ける人との顔合わせや日程調整まで済んでいるかを確かめましょう。

また、通常の預かりを子どもの発熱時にも使えるとは限らず、横浜市の子育てサポートの利用案内では病児・病後児の預かりを対象外としています。居住地の条件を確かめ、子どもが病気の日に連絡する相手も別に決めておくと安心です。

家族の協力は担当と引き継ぎを具体的に決める

預け先が決まったら、家族それぞれの担当と連絡の順番を決めると、入院後の調整が進めやすくなります。受け持つ人の名前、時間、交代相手まで書いておくと、善意だけに頼らず協力を続けられます。

世話をする人と連絡をまとめる人を分ける

子どもの世話を直接する人とは別に、家族間の予定を取りまとめる人を決めておくと、入院中の患者さんへの問い合わせを減らせます。家族で共有するのは、誰がいつ子どもと過ごすかを記した予定表です。変更が出たときの連絡先を添え、関係する人が同じ内容を見られるようにします。

患者さんが返事をできない時間にも、取りまとめ役が交代相手へ連絡できるよう、普段の送迎や食事で家族が決めてよい範囲を話しておきます。園や学校へは入院中の第一連絡先を伝え、患者さん本人に電話がつながるまで待つ形を避けられるか相談します。

生活のメモは預かる人が使う情報に絞る

引き継ぎノートには、子どもの生活を続けるために必要な情報をまとめます。家族なら分かるはずと省略しがちな寝る前の習慣や食事の注意も、普段と違う人が読む前提で短く書くと伝わりやすくなります。

情報の種類書いておく内容渡す相手
毎日の生活起床・就寝時刻、落ち着く習慣日常の世話をする人
園や学校連絡先、お迎えの決まり、持ち物送迎と連絡を受け持つ人
健康面アレルギー、服薬指示、かかりつけ先預かる人、受診に付き添う人
緊急連絡保護者につながらないときの連絡順世話に関わる大人

薬や食物アレルギーへの対応は、伝言だけに頼らず、処方時の指示や普段使っている説明書を一緒に渡してください。

病名を含む家庭の情報は、誰にどこまで伝えるかを決め、引き継ぎに必要な範囲で共有します。大勢が見る予定表と健康情報を記したノートを分ける方法なら、送迎だけを頼む相手に細かな事情まで渡さずに済みます。

交代が必要な条件を入院前に話しておく

主に世話をする家族が休める時間も、子どもの予定と同じように確保します。家族全体への支援は親子の心の負担を軽くしうるため、誰かが疲れ切ってから頼み直すより、引き受けられる範囲を最初に話しておく意味があります。

家族の発熱、急な残業、入院の延長が生じたときは、まず誰へ連絡して交代を頼むかを決めます。代わりの大人を確保できない時間が残るなら、入院前に、暮らしや福祉制度の相談を担う医療ソーシャルワーカーへ状況を伝え、地域の支援につなぐ相談を始められます。

がん治療で離れて暮らす子どもの気持ちを支える

子どもの心を支えるうえでは、その日の生活の見通しと、気持ちを話せる相手を用意するのが基本です。入院中に誰と食事をして、どこで眠るのかを年齢に合う言葉で伝え、心配を表したときに受け止められる大人を決めておきます。

毎日の予定は子どもが分かる形で伝える

小さい子どもには、先の長い予定をまとめて伝えるより、今日のお迎えや今夜一緒に過ごす人を具体的に示すほうが、生活に結びつけやすくなります。文字を読む前の年齢なら、家族の写真や園の絵をカレンダーに貼り、預かる大人も同じ予定を指して話せます。

学校に通う年齢では、帰宅先や放課後の過ごし方に加え、本人が気にしている予定を聞いておきます。確定していない退院日を約束にせず、決まっている予定と、分かり次第伝える予定を分けるほうが、変更が起きたときにも説明しやすくなります。

話したがらない日も安心して過ごせる余地を残す

子どもが静かにしていても、心配がないとは限りません。気持ちを言葉にするのをためらう子どももいるため、預かる大人には、質問を重ねるより、話し始めたときに聞いてほしいと伝えておけます。

子どもには年齢に合う説明に加えて、安心して気持ちを話せる場が必要だとされています。「寂しい」と話したらすぐに励まして終わらせず、いつ寂しくなるのかを聞き、寝る前に写真を見るなど、本人が望む過ごし方を一緒に選びます。

一方、遊びたい日や病院の話をしたくない日もあるため、毎回の会話を親への報告にせず、友達や好きな遊びの話ができる時間を残しておくと、子どもが普段の生活を続けやすくなります。

家だけで抱えず園や学校とも様子を共有する

家と園や学校では、子どもの様子が違う場合があります。食事や眠り、友達との過ごし方に変化があれば、いつから何が変わったかを家族と担任で共有し、家庭だけでは気づきにくい困りごとを拾えるようにします。

眠れない状態や登園・登校への強い抵抗が続き、生活に支障が出ているときは、担任やスクールカウンセラーへ具体的な様子を伝えて相談してください。

子どもの心の支えは専門的な支援で後押しできるため、がんに関する暮らしや家族の相談を受ける、がん相談支援センターにも相談できます。親が入院中である点と子どもの変化を伝えれば、利用できる相談先を探す助けを得られます。

入院中の親子のつながりは無理のない形で続ける

親子のつながりは、毎日長く話す形に固定せず、短い通話やメッセージでも保てます。体調と子どもの生活に合わせ、連絡できない日にも別の方法を選べるようにしておくと、双方の負担を増やさずに続けやすくなります。

通話は子どもの生活に合う時間を選ぶ

通話をするなら、子どもが食事や入浴を終え、預かる大人がそばで手伝える時間を選びます。病棟で通話できる場所や時間も確かめ、長く話せる日だけでなく、顔を見て短く挨拶する日があってもよいと家族で共有します。

子どもが画面から離れたり返事をしなかったりしても、その場で会話を続けさせる必要はありません。好きな遊びを見せてもらう、描いた絵を眺めるなど、話す以外のやり取りも選べます。

連絡できない日は声や写真を預ける

体調や予定のために通話が難しい日は、家族を通じて短い音声やメッセージを届ける方法があります。用意しておけるのは、好きな絵本の読み聞かせや、おやすみの挨拶です。子どもが受け取りやすい内容を選び、返事を求めずに渡せます。

通話の約束を変更するときは、預かる大人から子どもへ、その日は話せないと分かった時点で伝えてもらいます。次の通話日が未定なら無理に日付を約束せず、代わりに写真を見たり、送りたい絵を預けたりする過ごし方を選べるようにします。

親を元気づける責任を子どもに負わせない

入院中も会話を続ける大切さは、親の病気を経験した子どもの声からも示されています。子どもが気持ちを隠して親を励ます側に回らないよう、通話では楽しかった話だけでなく、嫌だった出来事も話せる余地を残します。

家事やきょうだいの世話を子どもが手伝うときも、年齢に合う範囲を大人が決め、日々の生活を支える責任は大人が引き受けます。勉強や友達との時間が減っているなら家族の分担を見直し、子どもの頑張りで預かりの不足を埋めないようにします。

よくある質問

急に入院が決まり、子どもの預け先がないときはどうすればよいですか?

病院の医療ソーシャルワーカーと市区町村の子育て支援の担当課へ、入院日と子どもの世話ができない時間を伝えて相談してください。

子どもの年齢、今利用している保育、夜間も預かりが必要かを伝えると、必要な支援が具体的になります。入院まで時間がない点を先に伝え、利用できる預かりと家族が対応できる時間を同時に調整します。

入院期間がまだ決まらなくても、保育の相談をしてよいですか?

期間が未定でも相談を始められます。分かっている日程と未定の部分を分けて伝え、利用日の変更方法や延長の相談先を聞いておくと、日程が決まった後の手配を進めやすくなります。

預かってもらう日に子どもが熱を出したらどうすればよいですか?

予定していた預け先へ発熱を伝え、その日の受け入れ条件を確かめたうえで、代わりに世話をする大人へ連絡します。通常の預かりでは対応できない場合を想定し、子どもの受診に付き添える人も入院前に決めておきます。

代わりの大人がいない場合は、市区町村の子育て支援の担当課へ、病気の子どもを預かる病児保育の利用条件を尋ねます。予約枠や事前登録などの条件があるため、当日に必ず使える前提で予定を組まないようにしましょう。

子どもが通話を嫌がるときも毎日連絡したほうがよいですか?

通話を嫌がる日は、毎日話す約束にこだわらず、写真や短い伝言へ変えて構いません。預かる大人に通話の前後の様子を聞き、疲れている時間を避けるなど、子どもが受け取りやすい方法を選びます。

通話だけでなく食事や眠りにも変化が続いているなら、園や学校での様子も合わせて共有します。子どもの生活への影響が強いときは、がん相談支援センターに家族の相談先を尋ね、親子だけで抱え込まないよう支えを増やせます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医