温熱療法と放射線の併用効果|相乗効果でがんを叩く仕組みとメリット

温熱療法と放射線の併用効果|相乗効果でがんを叩く仕組みとメリット

温熱療法を放射線治療に加える主な狙いは、がん細胞が放射線の影響を受けやすい状態をつくり、病変がある場所への治療効果を補う点にあります。腫瘍の血流や酸素の状態を変え、放射線で生じたDNAの傷の修復を妨げる働きが考えられています。

上乗せの程度は、がん種、病変の位置、過去の照射歴を基に個別に見極めます。まず放射線治療の目的を定め、その目的を加温でどこまで補えるかを検討します。併用を検討しやすい場面、実際の組み合わせ方、安全に加温するための確認点までを順に整理します。

温熱療法を放射線に併用する狙い

併用の目的は、温熱療法だけでがんを消すのではなく、放射線が働きやすい条件を病変内につくる点にあります。2つの治療は作用する場所が一部異なるため、放射線だけでは反応しにくい細胞にも影響を及ぼせると考えられています。

主役は放射線、加温は効きを支える治療

放射線治療は、がん細胞のDNAに傷をつくり、増殖する力を失わせる局所治療です。温熱療法は病変を含む範囲へ外部からエネルギーを加え、細胞や血流の状態を変えて、その作用を支えます。加温の回数だけを取り出して効果を判断せず、照射線量や治療期間を含む計画全体で捉えることが大切です。

治療計画の中心は、照射する範囲と放射線量です。加温の対象部位や実施時期は照射計画に合わせて決められ、別々の目的で行う2治療を同じ局所へ重ねます。

治療主な働き併用時の狙い
放射線治療DNAへ傷を与えるがん細胞の増殖を抑える
温熱療法病変の温度と血流を変える放射線への反応を助ける
併用異なる働きを近い時期に重ねる局所治療を補強する

上乗せ効果は局所の制御を狙う

期待する中心は、画像や診察で確認できる病変を縮小させたり、同じ場所での増大を抑えたりする局所制御です。全身へ広がったがんを温熱療法だけで治療する発想とは分けて捉える必要があります。

薬物療法も同じ時期に組み合わせる場合は、各治療が担う目的を分けて確認します。放射線、加温、薬物療法が重なる計画では、得られる利益だけでなく通院負担や体調への影響も含めて判断されます。

適応はがん種と治療歴で変わります

温熱療法で期待できる上乗せは、がんの種類によって異なります。病変の深さや広がり、過去に受けた治療、施設が安全に加温できる範囲を照らし合わせて適応を決めます。体表に近い病変と深部の病変では使用する装置や熱の届き方も異なるため、施設の設備も判断材料になります。

研究の蓄積にもがん種ごとの差があります。自分の診断名だけで対象と決めず、今回の治療目標と併用を検討する医学的な理由を主治医へ尋ねると、期待と限界を切り分けやすくなります。

加温で放射線が効きやすくなる理由は2つあります

加温が放射線の作用を助ける道筋は、腫瘍の血流を変えて酸素を届きやすくする働きと、放射線で傷ついたDNAの修復を妨げる働きに大きく分けられます。異なる道筋が同じ細胞へ重なる点が併用の根拠です。

血流の変化が酸素供給を助ける

がんの内部では血管のつくりが不規則で、血液が十分に流れにくい領域が生じます。適切な範囲で温度が上がると血流が増え、血液に含まれる酸素が届きやすい状態へ変わる可能性があります。

酸素は、放射線によって生じたDNAの傷を細胞内に残しやすくする働きに関わります。酸素が乏しかった領域へ供給が増えれば、放射線への反応が改善する余地が生まれます。ただし、血流は腫瘍内で均一ではなく、病変全体へ同じ量の酸素が届くと仮定せずに治療後の反応を評価します。

DNA損傷の修復を遅らせる働き

細胞には、放射線で生じたDNAの傷を修復しようとする仕組みがあります。熱は修復に関わるたんぱく質の働きへ影響し、がん細胞が傷から立ち直る過程を妨げると考えられています。

修復が進みにくい時間帯に放射線の作用が重なると、同じ照射でも傷が残りやすくなるという考え方です。この説明は生物学的な根拠であり、患者さんごとの効果の大きさを約束するものではありません。

加温による変化放射線との関係患者さんが知っておく点
血流が変わる酸素が届く余地が生まれる病変内で均一とは限らない
DNA修復が妨げられる放射線の傷が残りやすくなる近い時間帯での実施が重視される
細胞が熱の影響を受ける反応しにくい細胞を補完する安全な温度範囲で調整する

近い時間帯に2つの治療を重ねる理由

血流やDNA修復への熱の影響は、いつまでも同じ強さで続くわけではありません。放射線の前後の近い時間帯に加温を置く計画は、熱で生じた変化が残る間に照射の作用を重ねる考えに基づきます。

どちらを先にするか、どの程度の間隔を空けるかは、がん種や施設の治療計画で変わります。患者さんが自分で順序を決めるのではなく、放射線治療医と加温を担当する医療者が調整した予定に沿って受けます。予約時刻に幅がある場合も、移動や待機を含めて許容できる間隔を施設側が計画します。

低酸素のがんに温熱療法はどう働く?

酸素が少ない部分は放射線の影響を受けにくいとされ、加温はその弱点を補う手段の1つです。血流を通じて酸素供給を変える作用と、酸素が乏しくても熱そのものが細胞へ影響する面の両方が考えられています。

低酸素部分では放射線の反応が弱まりやすい

腫瘍内の血管は正常組織の血管より形や流れが不規則で、酸素の届きにくい低酸素領域ができます。放射線で生じる化学反応には酸素が関わるため、この領域ではDNAの傷が固定されにくく、細胞が生き残る一因になります。

同じ病変の中でも、血管に近い部分と遠い部分では酸素の量が違います。画像で見える腫瘍を1つの均一な塊と捉えず、内部には放射線への反応が異なる場所が混在すると考えると分かりやすいでしょう。

加温による血流変化が酸素を運ぶ

病変と周囲を安全な範囲で温めると、血管が広がって血流が増えることがあります。血流に乗って酸素が届けば、低酸素だった細胞が放射線へ反応しやすい条件に近づきます。この変化は加温そのものの効果を示す指標ではなく、放射線の作用を支える条件の1つとして位置づけられます。

一方、加温の強さや病変内の血管の状態によっては、期待した血流変化が均一に起きない可能性もあります。温度を上げさえすれば酸素が必ず増えるという単純な関係ではなく、測温と体の反応を見ながら出力を調整します。

腫瘍内の状態放射線への影響加温で期待する変化
酸素が届いているDNAの傷が残りやすい反応をさらに支える
酸素が少ない反応が弱まりやすい血流と酸素供給を補う
血流が不均一部位ごとに反応が異なる温度を管理して条件を整える

がん内部の温度と酸素にはむらが残る

体の表面から加えた熱は、病変の深さ、脂肪や骨の位置、血流による冷却のされ方で伝わり方が変わります。そのため、装置の設定温度と腫瘍内の温度を同じものとして扱うことはできません。

酸素の増え方にも個人差があり、低酸素領域を完全になくす治療ではありません。併用には放射線の弱点を補う合理性がある一方、実際の反応は治療後の画像や診察で評価します。

併用を検討するのは局所治療を強めたい場面です

温熱療法の追加は、病変のある場所をより強く制御したい一方で、放射線だけでは十分な反応を得にくいと予想される場面で検討されます。代表的なのは局所進行がんや、以前に照射した部位へ再発した状況です。いずれも「併用できるか」だけでなく、治療目標に対して期待できる利益が通院や処置の負担を上回るかを検討します。

局所進行がんで追加が検討される理由

局所進行とは、がんが原発部位の周囲へ広がり、手術だけでは扱いにくい状態などを指します。放射線治療が重要な役目を担うため、病変内の低酸素やDNA修復を狙って加温を足す選択肢が検討されます。

局所進行子宮頸がんでは、化学放射線療法へ温熱療法を加えた研究が複数あります。これは対象を限定した知見であり、別のがんへ同じ上乗せをそのまま当てはめる根拠にはなりません。

以前照射した部位に再発した状況

同じ場所への再照射では、周囲の正常組織が過去に受けた放射線量を考慮する必要があります。追加できる放射線量に制約がある中で局所効果を補う目的から、温熱療法との併用が候補になる場合があります。

既照射部位に局所再発した乳がんや、乳がん以外の局所再発を対象に、再照射と温熱療法を組み合わせた臨床研究があります。ただし、再照射が可能かどうかは以前の照射記録、再発部位、正常組織の耐えられる範囲を基に個別に判断されます。前回と今回の照射範囲がどの程度重なるかによって正常組織への影響が変わるため、過去の総線量に加えて範囲の重なりも確認が必要です。

治療場面併用を検討する理由主な確認軸
局所進行放射線への反応を補いたいがん種と病変の広がり
既照射部位の再発再照射量に制約がある過去の照射範囲と線量
深部の局所病変領域全体を加温したい深さと装置で届く範囲

根拠の厚みはがん種ごとに異なります

子宮頸がん、乳がんの局所再発、膀胱がん、前立腺がんなどで放射線との併用が研究されています。ただし、研究の数や治療条件はそろっておらず、研究対象に含まれているだけで標準的な選択肢とは限りません。

診断名が同じでも、初回治療か再発治療か、病変が局所に限られるかで意味は変わります。主治医には、自分と近い状況の根拠があるか、放射線単独と比べて何を上乗せしたいのかを確認します。研究結果を自分に当てはめる際は、対象者の病期、併用した薬物療法、効果を評価した時点が自分の治療計画と近いかも判断材料です。

温熱療法と放射線を組み合わせて受ける流れ

実際には放射線治療の計画を土台にし、その前後の短い時間帯へ加温を組み込みます。放射線の治療期間に合わせて繰り返しますが、順序や間隔は病状と施設の体制に応じて決まります。

まず放射線治療全体の予定を決める

治療前には画像を基に、照射する範囲、正常組織を守る範囲、放射線量を設計します。その上で加温できる部位と深さを確認し、2つの治療を同日に行うか、どの程度の間隔にするかを組み立てます。画像上の病変と実際に電極を当てられる位置を照合することで、狙う範囲を安全に温められるかも確かめます。

以前に放射線治療を受けている場合は、照射記録が重要な判断材料です。治療した医療機関、部位、時期が分かる資料を準備すると、正常組織が受けた線量を踏まえた検討に役立ちます。

放射線の前後に加温を組み込む

加温では病変を挟むように電極などを配置し、体の外からエネルギーを加えます。治療中は温度の指標、装置の出力、熱さや痛みの訴えを確認しながら、予定した範囲を温めます。

放射線照射と加温は別の部屋や装置で行う場合があり、移動や待機を含む通院時間を見込む必要があります。治療日の食事、内服、服装に指示があれば、施設から渡された案内を基準にします。同日に2つの治療を受ける日は通常の照射日より滞在が長くなることがあるため、帰宅手段や付き添いの要否も含めて予定を立てます。

時点受ける内容確かめる点
治療計画前画像と照射歴の確認加温できる部位と深さ
治療日放射線照射と加温順序、間隔、移動時間
治療中出力と温度の調整熱さ、痛み、体調の変化
治療後皮膚と全身状態の確認次回までの注意点

毎回の状態で出力を調整します

同じ患者さんでも、体調、皮膚の状態、電極の当たり方で感じる熱さは変化します。前回と同じ設定を機械的に続けるのではなく、当日の反応に合わせて出力や冷却を調整します。前回の加温後に続いた赤みや痛みがあれば、開始前の情報として共有され、当日の設定を決める材料になります。

熱さや痛みを我慢すると、安全な範囲での調整が遅れるおそれがあります。感じ方の変化は治療効果の判定ではなく、加温を続けられるかを判断する情報として、その場で担当者へ伝えてください。

  • 過去の照射記録
  • 当日の内服と体調
  • 加温中の熱さや痛み
  • 治療後の皮膚の変化

正常組織の負担を抑えるには温度管理が要る

温熱療法を加えても正常組織の負担が必ず大きく増えるわけではなく、適切な温度管理と観察を前提に併用します。熱の伝わり方には差があるため、治療中の測定値と患者さんの感覚を合わせて安全性を確保します。

正常組織も温まるため測定と観察を続ける

加温装置のエネルギーは、がん細胞だけを選んで通るわけではありません。皮膚や皮下組織など正常な部分も通るため、冷却を併用し、温度の指標や皮膚の状態を確かめながら出力を上げます。

医療用の局所・領域温熱療法では、病変を含む範囲をおおむね40〜44℃へ近づける方法が用いられます。体内の全てを同じ温度にする目標ではなく、加温量と正常組織の負担の釣り合いを見て調整します。予定温度へ届くことだけを優先せず、治療を継続できる範囲で熱量と時間を記録し、次回の設定にも反映します。

我慢しない申告が温度調整につながる

装置が示す数値だけでは、局所的な熱さや痛みを全て捉えられません。患者さんの感覚は、安全に加温を続けるための測定情報の一部です。

熱さが急に強くなる、同じ場所へ痛みが集中する、気分が悪くなるといった変化は、その場で担当者へ伝えてください。出力を下げる、電極の位置を直す、冷却を調整するなど、状況に応じた対応が取られます。

主治医と確認したい適応の条件

併用を提案されたら、期待できる局所効果だけでなく、放射線単独を選ぶ場合との違いを確認します。治療の目的が根治を目指すのか、局所の増大を抑えるのかによっても、上乗せを評価する基準は変わります。画像上の縮小、症状の軽減、同じ場所での増大抑制のうち、何を目標にするかを共有すると、治療後の評価を受け止めやすくなります。

  • がん種、病期、治療目標
  • 過去の照射部位と線量
  • 加温する部位と測温方法
  • 放射線と加温の順序
  • 中断や出力調整の基準

効果への期待が大きいほど、「受けられるなら受けたい」と感じるのは自然です。適応を確かめる際は、併用を勧める理由、期待する利益、追加される通院負担を同じ重さで聞き、自分の治療目標に合うかを主治医と整理します。効果判定の時期と方法も先に確認しておくと、治療中の感覚だけで効き目を判断せず、画像や診察の結果を基に次の方針を話し合えます。

よくある質問

併用すれば誰でも放射線治療の効果が上がりますか?

誰にでも同じ上乗せが得られるわけではありません。効果の期待はがん種、病変の部位、初回治療か再発治療か、十分に加温できるかで変わります。

主治医へ、自分と近い病状で併用を支持する根拠があるか、放射線単独と比べて何を改善したいのかを確認します。説明された利益と追加負担を照らし合わせて選択します。

加温は放射線の前と後のどちらに受けますか?

前後のどちらになるかは治療計画によって異なります。熱による血流やDNA修復への影響が残る近い時間帯に組み、当日の順序と移動時間は治療施設へ確認します。

以前照射した場所の再発でも受けられますか?

再照射と温熱療法を併用できる場合はあります。過去に正常組織が受けた線量、再発部位、前回からの期間を確認し、再び照射できる範囲を個別に判断します。

以前の照射記録や治療サマリーが手元にあれば、受診時に持参すると検討が進みやすくなります。記録がない場合は、前に治療した医療機関へ資料を依頼できるか主治医へ相談します。

熱さや痛みを感じても我慢したほうがよいですか?

我慢せず、その場で担当者へ伝えてください。強い熱さや一部へ集中する痛みは、出力、電極の位置、冷却を調整する手掛かりです。

耐えた時間の長さで治療効果が決まるわけではありません。急な気分不良も含め、治療中に変化を感じた時点で申告すると、安全な範囲へ調整できます。

自分が対象か判断するため、主治医に何を聞けばよいですか?

併用を勧める理由、期待する局所効果、放射線単独との違いを最初に聞きます。続いて加温できる部位、放射線との順序、追加される通院時間、調整や中断の基準を確認すると、自分の治療目標に合うか判断しやすくなります。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医