がん保険の給付金に税金はかかる?非課税の範囲と確定申告が必要なケース

がん保険の給付金に税金はかかる?非課税の範囲と確定申告が必要なケース

がんと診断されたとき、治療費とあわせて気になるのが「給付金に税金はかかるのか」という問題でしょう。結論から言えば、がん保険の給付金は原則として所得税・住民税ともに非課税です。

ただし、医療費控除の計算で給付金を差し引く必要があったり、死亡保険金や満期返戻金には別の税金がかかったりと、すべてが無条件で非課税になるわけではありません。

この記事では、がん保険の給付金と税金の関係を整理し、確定申告が必要になるケースや医療費控除との正しい計算方法をわかりやすく解説します。

がん保険の給付金は原則として非課税になる

がん保険から受け取る入院給付金・手術給付金・通院給付金などは、所得税法上「非課税所得」に該当します。金額の大小にかかわらず、課税の対象にはなりません。

所得税法で給付金が非課税と定められている根拠

所得税法第9条第1項第17号では、「身体の傷害に基因して支払を受ける保険金」は非課税所得として扱うと定めています。がんという疾病は「身体の傷害」に含まれるため、がん保険の給付金もこの条文の適用対象になります。

つまり、がん保険の給付金をいくら受け取っても、所得税の確定申告で収入として計上する必要はありません。住民税についても同様に非課税となるため、翌年の住民税額に影響することもないでしょう。

自分で加入したがん保険も勤務先の団体保険も扱いは同じ

個人で保険会社と契約したがん保険であっても、勤務先の団体保険を通じて加入した場合であっても、「身体の傷害に基因して支払を受ける保険金」であることに変わりはありません。どちらも非課税の対象です。

がん保険の給付金が非課税になる条件

条件内容
支払事由身体の傷害(疾病を含む)に基因すること
受取人被保険者本人またはその配偶者・直系血族・生計を一にする親族
給付の種類入院・手術・通院・診断一時金・放射線治療など
金額の上限上限なし(実費を超えても非課税)

実際の治療費を超えて給付金を受け取っても非課税になる

たとえば入院日額1万円のがん保険に加入していて、実際の入院費用が日額7000円だったとしても、差額の3000円に課税されることはありません。損害保険のように「実損払い」ではなく、契約で定めた金額を受け取れるのが生命保険の特徴です。

このため、がん診断一時金として100万円を受け取り、実際の治療費が50万円だったとしても、残りの50万円に税金がかかる心配は無用です。

非課税の給付金でも確定申告書に記載すべき場面がある

給付金自体は非課税ですが、医療費控除の申告をする場合には「補填される金額」として申告書に記載する必要があります。医療費控除の計算式では、保険金等で補填された金額を差し引くルールがあるからです。

医療費控除については後ほど詳しく説明しますが、非課税=申告不要とは限らない点を覚えておきましょう。

非課税の対象となるがん保険の給付金にはどんな種類がある?

がん保険には複数の給付金があり、そのすべてが原則として非課税です。主な給付金の種類とそれぞれの特徴を把握しておくと、確定申告の際にも慌てずに済みます。

がん診断一時金(診断給付金)は受け取った全額が非課税

がんと診断された時点でまとまった金額を受け取れる「診断一時金」は、50万円から200万円ほどの金額設定が一般的です。治療費だけでなく生活費の補填にも使えるため、多くの方が重視する給付金といえます。

この診断一時金も所得税法上の非課税所得に該当するため、全額を手元に残せます。使い道に制限はなく、住宅ローンの返済や子どもの教育費に充てたとしても課税関係は生じません。

入院給付金・手術給付金・通院給付金も課税されない

入院1日あたり5000円や1万円といった定額で受け取る入院給付金、手術の種類に応じて支払われる手術給付金、退院後の通院時に支給される通院給付金、いずれも非課税です。

がんの治療では入退院を繰り返すケースも少なくありません。そのたびに給付金を受け取っても、累計額が数百万円に達したとしても税金はかかりません。

先進医療特約や抗がん剤治療特約の給付金も同様に非課税

近年のがん保険では、先進医療特約や抗がん剤治療特約など、特定の治療法に対応した特約を付帯できる商品が増えています。これらの特約から支払われる給付金も、身体の傷害に基因する保険金として非課税の対象です。

重粒子線治療や陽子線治療のように高額な先進医療を受けた場合でも、特約から数百万円の給付を受けて課税される心配はありません。

給付金の種類支払事由課税・非課税
診断一時金がんと診断確定非課税
入院給付金がん治療のための入院非課税
手術給付金がん治療のための手術非課税
通院給付金がん治療のための通院非課税
先進医療給付金先進医療の受療非課税
抗がん剤治療給付金抗がん剤治療の実施非課税

がん保険の給付金で確定申告が必要になるケースに要注意

がん保険の給付金そのものは非課税ですが、確定申告との関わりが生じる場面は存在します。とくに医療費控除を受けようとする方は、給付金と申告書の関係を正しく理解しておかなければ損をしかねません。

医療費控除を申告するときは給付金の金額を差し引く

確定申告で医療費控除を受ける場合、その年に支払った医療費の合計から「保険金等で補填された金額」を差し引きます。がん保険の給付金はこの「補填された金額」に該当するため、控除額の計算に影響を与えます。

たとえば年間の医療費が80万円で、がん保険から入院給付金として30万円を受け取った場合、医療費控除の対象額は80万円から30万円と10万円(所得が200万円以上の場合)を差し引いた40万円になります。

給付金の金額を申告しなかった場合のリスク

医療費控除の申告時にがん保険の給付金を記載しなかった場合、過大な控除額を申告してしまうことになります。税務署からの問い合わせや修正申告を求められる可能性があるため、正確に記載することが大切です。

医療費控除の計算で給付金を差し引く際のポイント

項目内容
差し引く範囲給付の対象となった医療費からのみ差し引く
余剰分の扱い他の医療費から差し引く必要はない
未確定の給付金見込額で計算し、確定後に修正申告する

セルフメディケーション税制とがん保険の給付金

通常の医療費控除に代えてセルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費の控除)を選択する場合も、考え方は同じです。対象となる医薬品の購入費用から給付金を差し引く必要があります。

ただし実務上、がん治療に伴う給付金はセルフメディケーション税制の対象医薬品とは直接関係しないケースが多いため、計算に影響が出ることはまれでしょう。

高額療養費制度を利用した場合の給付金との二重控除に注意

高額療養費制度を利用して自己負担額が軽減された場合、その軽減分も「保険金等で補填された金額」に含まれます。がん保険の給付金と高額療養費の両方を受け取った場合、二重に差し引く必要がある点を見落としがちです。

混乱を避けるために、医療費の領収書・がん保険の給付金明細・高額療養費の支給決定通知書の3つを手元にそろえたうえで計算に取りかかりましょう。

医療費控除とがん保険の給付金を差し引く計算でミスが出やすい

医療費控除の計算では、がん保険の給付金をどの医療費から差し引くかが鍵になります。ミスが起きやすい計算のルールをあらかじめ知っておけば、申告時の不安は大幅に減らせます。

給付金は「対応する医療費」からのみ差し引けばよい

がん保険の入院給付金はがんの入院費用から、手術給付金はがんの手術費用から差し引きます。がんとは無関係の歯科治療費や風邪の通院費から差し引く必要はありません。

たとえば、がんの入院費用が20万円で入院給付金が30万円だった場合、差額の10万円は他の医療費(歯科治療や家族の医療費など)から控除する必要はなく、単純にがんの入院費用分をゼロとして扱えばよいのです。

年をまたいで給付金を受け取ったときの申告方法

がんの治療が12月から翌年1月にかけて行われた場合、入院費用と給付金の受取時期がずれることがあります。このとき、給付金は「その給付の目的となった医療費を支払った年分」の医療費控除に反映させます。

たとえば12月に入院し、翌年2月に給付金を受け取った場合でも、12月分の医療費から差し引くのが正しい処理です。確定申告の時点でまだ給付金の金額が確定していなければ、見込額で申告し、確定後に修正申告で調整します。

家族の医療費と合算する場合の計算ルール

医療費控除は、納税者本人だけでなく生計を一にする家族の医療費も合算して申告できます。家族ががん保険の給付金を受け取った場合、その給付金は家族自身の医療費からのみ差し引いてください。

夫ががんで入院し、妻が医療費控除をまとめて申告するケースでは、夫が受け取った給付金は夫の医療費から差し引き、妻の医療費からは差し引きません。この原則を知っておくと、控除額を正しく計算できます。

  • 給付金は対応する医療費からのみ差し引く
  • 余った給付金を他の医療費に充当する必要はない
  • 年をまたぐ場合は医療費の発生年で処理する
  • 家族の分は各人の医療費から個別に差し引く

死亡保険金や満期返戻金にはがん保険でも税金がかかる

がん保険の給付金は非課税ですが、死亡保険金や満期返戻金、解約返戻金はまったく別の扱いになります。これらには所得税・相続税・贈与税のいずれかが課税される可能性があるため、受け取る前に税金の仕組みを確認しておきましょう。

契約者・被保険者・受取人の関係で税金の種類が変わる

がん保険に付帯された死亡保険金は、契約者(保険料を支払っている人)・被保険者(保険の対象者)・受取人の三者の関係によって、課税される税金の種類が変わります。

契約者と被保険者が同一人物で受取人が相続人の場合は相続税、契約者と受取人が同一人物の場合は所得税(一時所得)、三者がすべて異なる場合は贈与税がかかります。

一時所得として課税される場合の計算方法

契約者と受取人が同一のケースでは、死亡保険金や満期返戻金は「一時所得」として所得税の対象になります。一時所得の計算式は、受取金額から支払った保険料総額と特別控除50万円を差し引いた金額の2分の1です。

計算項目内容
総収入金額受け取った保険金・返戻金の額
必要経費支払った保険料の総額
特別控除50万円(他の一時所得と通算)
課税対象額(総収入金額−必要経費−50万円)×1/2

相続税がかかるケースでは「500万円×法定相続人の数」が非課税枠になる

契約者と被保険者が同じ方で、遺族が死亡保険金を受け取った場合には相続税の課税対象になります。ただし、生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。

法定相続人が3人いれば1500万円まで非課税となるため、がん保険の死亡保険金が少額であれば実質的に税負担が生じないケースも多いでしょう。

解約返戻金を受け取ったときも確定申告が必要になることがある

がん保険を途中で解約して返戻金を受け取った場合、支払った保険料総額を上回る部分は一時所得として課税されます。返戻金の額が保険料総額を下回っていれば、差額は損失として扱われますが、他の所得との損益通算はできません。

貯蓄性の高いがん保険に長期間加入していた方は、解約返戻金がまとまった金額になることがあるため、確定申告の要否を事前に確認してください。

がん治療中に知っておきたい給付金と税金の手続きの流れ

がんの治療中は身体的にも精神的にも負担が大きく、税金の手続きまで手が回らないという方は少なくありません。給付金の請求から確定申告までの流れを事前に把握しておくと、いざというとき慌てずに済みます。

がん保険の給付金請求に必要な書類を早めにそろえる

がん保険の給付金を請求するには、保険会社所定の請求書に加え、医師の診断書や入院・手術の証明書が必要です。退院直後は体調が万全でないことも多いため、入院中に主治医へ証明書の作成を依頼しておくとスムーズでしょう。

請求から支払いまでの期間は保険会社によって異なりますが、一般的には請求書類が到着してから5営業日から30営業日程度で振り込まれます。

年末調整だけで済む方と確定申告が必要な方の違い

会社員や公務員の方で、医療費控除を申告しない場合は、年末調整のみで所得税の精算が完了します。がん保険の給付金は非課税なので、年末調整の書類に給付金を記載する欄はありません。

一方、医療費控除を受ける場合やがん保険の死亡保険金・解約返戻金を受け取った場合は、確定申告が必要です。確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日ですが、還付申告であれば1月1日から提出できます。

確定申告書への記載方法と添付書類

医療費控除の申告では「医療費控除の明細書」に医療費と保険金等で補填された金額を記載します。がん保険の給付金の額は、保険会社から届く「支払い通知書」や「給付金明細書」で確認できます。

申告書への添付書類として、医療費の領収書の提出は不要になりましたが、5年間の自宅保管義務があります。給付金の支払通知書もあわせて保管しておきましょう。

  • 医師の診断書や手術証明書は入院中に依頼しておく
  • 医療費控除を受けない方は年末調整のみで完了する
  • 還付申告は1月1日から提出できる
  • 領収書と給付金明細書は5年間保管する

がん保険の給付金を受け取ったとき家族が注意すべき相続税と贈与税

がん保険の給付金や保険金を家族が受け取る場合、思わぬかたちで相続税や贈与税の対象になることがあります。とくに被保険者が亡くなった後に受け取る「未請求の給付金」の扱いは見落としやすいため、家族全員で情報を共有しておきましょう。

被保険者が亡くなった後に受け取る入院給付金は相続財産に含まれる

がん保険の入院給付金は本来「非課税所得」ですが、被保険者が亡くなった後に遺族が未請求分の入院給付金を受け取った場合、その給付金は「被保険者の本来の相続財産」として扱われます。

つまり、相続税の課税対象となる財産に含める必要があるのです。生前に被保険者本人が受け取っていれば非課税だったものが、死後に遺族が請求すると相続財産に加算される点は注意が必要でしょう。

受取時期受取人税金の扱い
生前被保険者本人非課税(所得税)
死後遺族(相続人)相続税の課税対象
生前配偶者・親族非課税(所得税)

保険料を負担していない家族が保険金を受け取ると贈与税がかかる

がん保険の死亡保険金で、契約者(保険料の負担者)と被保険者と受取人がすべて異なる場合、受取人には贈与税が課税されます。贈与税は税率が高いため、契約形態を見直すことで税負担を軽減できる場合があります。

たとえば「契約者=夫、被保険者=妻、受取人=子」という契約では、子が受け取る死亡保険金に対して贈与税がかかります。契約者と受取人を同一にすれば所得税(一時所得)となり、50万円の特別控除や2分の1課税の恩恵を受けられます。

生前贈与としてがん保険の保険料を家族に負担してもらう場合

親ががん保険の保険料を子の代わりに支払っているケースでは、保険料相当額が「贈与」に該当する可能性があります。年間110万円の基礎控除内であれば贈与税はかかりませんが、超える場合には申告と納税が必要です。

がん保険の保険料は年間数万円から十数万円程度のことが多く、保険料だけで年間110万円を超えるケースはまれでしょう。ただし他の贈与と合算して110万円を超える場合もあるため、贈与の全体像を把握しておくことが大切です。

よくある質問

がん保険の診断一時金を受け取った場合、確定申告で所得として計上する必要はありますか?

がん保険の診断一時金は、所得税法上の非課税所得に該当するため、確定申告で所得として計上する必要はありません。金額の大小にかかわらず、受け取った全額が非課税です。

ただし、同じ年に医療費控除を受ける場合は、診断一時金が「保険金等で補填された金額」に含まれるため、医療費控除の明細書に記載する必要があります。所得としての申告は不要ですが、医療費控除を正しく計算するために金額を把握しておくことが大切です。

がん保険の給付金が医療費を上回った場合、超過分に税金はかかりますか?

がん保険の給付金が実際の医療費を上回った場合でも、超過分に所得税や住民税がかかることはありません。給付金は契約に基づいて定額で支払われるものであり、損害保険の実損払いとは異なります。

医療費控除の計算では、給付金は対応する医療費からのみ差し引き、余った金額を他の医療費から差し引く必要もありません。超過分は手元に残しておけるため、治療後の生活資金として活用できます。

がん保険の死亡保険金を遺族が受け取ると、どの税金が課税されますか?

がん保険の死亡保険金にかかる税金は、契約者・被保険者・受取人の関係によって異なります。契約者と被保険者が同一で受取人が相続人の場合は相続税が、契約者と受取人が同一の場合は所得税(一時所得)が課税対象になります。

三者がすべて異なる場合は贈与税が課税されるため、注意が必要です。相続税の場合は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を利用できますが、贈与税にはこの枠がなく税率も高くなりがちです。契約の際に三者の関係を確認しておきましょう。

がん保険の入院給付金を被保険者の死後に遺族が請求した場合、非課税のままですか?

被保険者が亡くなった後に遺族が未請求分の入院給付金を受け取った場合、その給付金は非課税所得ではなく「本来の相続財産」として扱われます。相続税の課税対象に含める必要がある点に注意してください。

生前に本人が受け取っていれば非課税だった給付金が、請求のタイミングによって課税関係が変わるのです。可能であれば、被保険者が存命のうちに給付金の請求手続きを済ませておくことをおすすめします。

がん保険の給付金を受け取っても住民税に影響はありませんか?

がん保険の入院給付金や診断一時金などの給付金は、住民税の計算においても非課税所得として扱われます。翌年度の住民税額に影響することはなく、国民健康保険料の算定基礎にも含まれません。

一方、死亡保険金や解約返戻金で一時所得が発生した場合は、所得税だけでなく翌年度の住民税にも影響します。非課税の給付金と課税対象の保険金を混同しないよう、受け取った金額ごとに種類を整理しておくとよいでしょう。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医