肺がんの検査方法まとめ|胸部X線からCT、確定診断のための生検まで

肺がんの検査方法まとめ|胸部X線からCT、確定診断のための生検まで

肺がんは早期に見つけるほど治療の選択肢が広がり、生存率も大きく向上します。しかし初期段階では自覚症状がほとんどないため、検査を受けるタイミングや方法がわからず不安を感じている方も多いでしょう。

この記事では、胸部X線やCTといった画像検査から、気管支鏡や生検による確定診断まで、肺がんの検査で用いられる方法を一つひとつ丁寧に解説しています。

検査の流れや各検査で何がわかるのかを事前に把握しておくと、受診時の緊張もやわらぎます。ぜひ最後まで読んで、ご自身やご家族の健康管理にお役立てください。

肺がんの検査はどう進む?最初の一歩から確定診断までの全体像

肺がんの検査は、まずスクリーニング(ふるい分け検査)で疑わしい所見を拾い上げ、その後に精密検査、そして確定診断へと段階的に進みます。一度にすべてを行うわけではなく、結果を見ながら医師が次の検査を判断していく流れです。

健診や人間ドックが発見のきっかけになることが多い

肺がんが見つかる入り口として多いのが、自治体の住民検診や職場の定期健診です。40歳以上の方には毎年の胸部X線検査が推奨されており、その検査で異常な影が指摘されると精密検査へ進みます。

自覚症状がないまま検診で偶然見つかるケースは珍しくありません。「まさか自分が」と驚く方も多いですが、だからこそ定期的な検診が命を守る鍵となります。

スクリーニング検査と精密検査はどう違う?

スクリーニング検査は、多くの人の中から「がんの疑いがある人」を効率よく見つけ出すための検査です。胸部X線検査や喀痰細胞診がこれにあたります。

一方、精密検査はスクリーニングで疑いが生じた人に対して、がんかどうかをより詳しく調べる段階です。CT検査や気管支鏡検査、さらに組織を採取する生検などが精密検査に該当します。

肺がん検査の段階と代表的な方法

検査の段階代表的な検査方法目的
スクリーニング胸部X線・喀痰細胞診異常の有無をふるい分ける
精密検査CT検査・PET検査病変の位置や大きさを詳しく把握する
確定診断気管支鏡検査・生検がん細胞の有無を直接確認する

検査結果が出るまでの期間と心構え

画像検査の結果は当日から数日以内に伝えられることがほとんどです。ただし、生検で組織を採取した場合は病理検査に1〜2週間ほどかかるのが一般的でしょう。

結果を待つ間は誰でも不安になるものです。疑問点があれば遠慮せず担当医に質問し、正確な情報をもとに気持ちを整理するよう心がけてみてください。

胸部X線検査(レントゲン)は肺がん発見の第一関門

胸部X線検査、いわゆるレントゲンは、肺がんを疑うきっかけとしてもっとも広く使われている画像検査です。被ばく量が少なく、短時間で撮影が終わるため、検診の場で無理なく受けられるというメリットがあります。

胸部X線検査ではどこまで肺がんを見つけられる?

胸部X線は肺全体を一枚の画像として写し出します。腫瘍が一定の大きさ(おおむね1cm以上)に成長していれば、白い影として確認できることが多いでしょう。

ただし、心臓や骨と重なる位置にある腫瘍は写りにくく、数ミリの小さな病変も見逃す場合があります。そのため、X線だけで「がんではない」と断定するのは難しいといえます。

見落としを防ぐために知っておきたいX線検査の限界

X線は二次元の画像です。肺の奥行きが重なって一枚に映るため、構造物の陰に隠れた腫瘍は判別しにくくなります。

特に肺の上部(鎖骨の裏側)や縦隔(じゅうかく:左右の肺の間にある部分)に生じた腫瘍は、X線だけでは見つけにくい傾向があります。医師が「念のためCTも撮りましょう」と勧めるのは、こうした死角を補うためです。

X線検査を受ける際の準備と所要時間

撮影自体は数秒で終わり、痛みもありません。ボタンやファスナーなどの金属が写り込まないよう、検査着に着替える程度の準備で済みます。

妊娠中もしくは妊娠の可能性がある方は、被ばくの影響を考慮して事前に申し出てください。検査費用も比較的安価なので、年に一度は定期的に受けておきたい検査です。

胸部X線検査の特徴

項目内容
検査時間数秒〜1分程度
痛みなし
被ばく量ごくわずか(約0.06mSv)
得意な検出1cm以上の腫瘤影
苦手な検出心臓・骨と重なる部位の小さな病変

CT検査なら数ミリの小さな肺がんも見逃さない

CT(コンピュータ断層撮影)は、X線では捉えきれない小さな病変まで描出できる精密な画像検査です。肺がんの早期発見において、現在もっとも頼りにされている検査といえるでしょう。

低線量CTによる肺がん検診が注目されている理由

従来のCTに比べ被ばく量を大幅に抑えた「低線量CT」が、肺がん検診の分野で関心を集めています。海外の大規模研究では、低線量CTによる検診が肺がんの死亡率を約20%低下させたという報告もあります。

特に長年の喫煙歴がある方など、肺がんリスクが高い方にとっては、低線量CT検診が早期発見の有力な手段となるでしょう。

通常のCTと造影CTの違いを整理する

通常のCT(単純CT)は造影剤を使わずに撮影し、腫瘍の有無や大きさを確認します。一方、造影CTでは点滴で造影剤を注入してから撮影するため、血管や腫瘍への血流がより鮮明に描写されます。

造影剤にアレルギーがある方や腎臓の機能が低下している方は使用できないケースがあるため、事前に医師へ伝えておくことが大切です。

単純CTと造影CTの比較

種類造影剤主な用途
単純CTなし腫瘤の有無・大きさの確認
造影CTあり(点滴注入)血管・リンパ節への浸潤評価

CT検査当日の流れと気をつけたいポイント

検査自体は5〜15分ほどで終了します。撮影中はドーナツ型の装置の中に横たわり、技師の指示に合わせて数秒間の息止めを数回行います。

閉所が苦手な方でも、MRIほどの圧迫感はありません。造影CTの場合は検査4時間前から食事を控えるよう指示されることが多いため、予約時に確認しておきましょう。

喀痰細胞診は痰を調べるだけで肺がんの手がかりがつかめる

喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)は、痰の中にがん細胞が含まれていないかを顕微鏡で調べる検査です。身体への負担がほぼなく、自宅で採取できる手軽さが大きな特長といえます。

喀痰細胞診が得意とするがんのタイプがある

気管支の中心部に発生する「中心型肺がん」に対して、喀痰細胞診は特に有効です。扁平上皮がんや小細胞がんなど、太い気管支に沿って発生するがんは痰の中にがん細胞が混じりやすい傾向があります。

反対に、肺の末梢(はいの外側寄り)に発生する腺がんなどは、がん細胞が痰に混ざりにくいため検出率が下がります。

3日間連続で痰を採取する正しいやり方

精度を高めるために、通常は3日間連続で早朝の痰を専用容器に採取します。起床直後に口をすすぎ、深く咳をして肺の奥から痰を出すのがコツです。

唾液だけでは正確な結果が出にくいため、しっかりと「痰」を出す意識が大切です。採取した容器は冷暗所に保管し、速やかに医療機関へ提出してください。

喀痰細胞診だけでは確定診断にならない

がん細胞が検出された場合は「陽性」と判定されますが、それだけで肺がんと確定されるわけではありません。腫瘍の正確な位置や大きさを把握するためにCTなどの画像検査が必要です。

逆に「陰性」であっても、がんがないとは言い切れません。あくまで検査手段のひとつとして捉え、他の検査と組み合わせて総合的に判断するものだと覚えておきましょう。

  • 中心型肺がん(扁平上皮がん・小細胞がんなど)に高い検出力を発揮
  • 末梢型肺がん(腺がんなど)は検出が難しい場合がある
  • 3日間連続の採痰で検査精度が向上する
  • 陽性でも陰性でも他の検査との組み合わせが必要

気管支鏡検査で肺の内部を直接のぞいて組織を採取する

気管支鏡検査は、細いカメラ(内視鏡)を鼻や口から気管支に挿入し、肺の内部を直接観察しながら組織を採取できる検査です。画像検査だけでは判断がつかない場合に、確定診断へ近づくための重要な手段となります。

気管支鏡検査はどんなときに行われる?

CTで疑わしい影が見つかったものの、それが良性か悪性か判断できないとき、気管支鏡検査が選ばれます。腫瘍が気管支の近くに存在する場合は、直接目で確認しながら組織を採ることが可能です。

加えて、がんの広がり具合を調べたり、気管支内部に異常がないか確認したりする目的でも行われます。

検査中の痛みや苦しさはどの程度か

検査前に局所麻酔(のどへのスプレー麻酔)を行い、必要に応じて軽い鎮静剤を使用します。内視鏡が気管支に入るときに咳が出やすくなりますが、強い痛みを感じることはほとんどありません。

検査時間は30分〜1時間程度です。鎮静剤を使った場合はしばらく安静にしてから帰宅するため、車の運転は控えましょう。

気管支鏡検査の概要

項目内容
検査時間30分〜1時間程度
麻酔局所麻酔(+鎮静剤の併用もあり)
採取方法鉗子やブラシで組織を採取
入院の要否通常は日帰り(状況により1泊入院)
合併症リスク出血・気胸(まれ)

超音波気管支鏡(EBUS)で届く範囲が広がった

近年普及しているEBUS(超音波気管支鏡)は、気管支鏡の先端に超音波装置を搭載した機器です。気管支の壁の外にあるリンパ節にも針を刺して組織を採取できるため、がんの転移診断にも活用されています。

従来の気管支鏡では到達しにくかった部位まで検査範囲が広がり、縦隔リンパ節の評価がより正確になりました。外科的な手術を伴わずにリンパ節の状態を調べられるのは、患者さんにとって大きなメリットです。

生検(バイオプシー)が肺がんの確定診断を下す決め手になる

画像検査で「がんの疑いが強い」と判断された場合、最終的に確定診断を行うのが生検です。腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べ、がん細胞の有無やがんの種類を特定します。

CTガイド下針生検は肺の奥にある腫瘍に強い

CT画像を見ながら体の外から針を刺し、腫瘍組織を採取する方法です。気管支鏡が届きにくい肺の末梢部に腫瘍がある場合に特に有効といえるでしょう。

局所麻酔のもとで行われ、入院期間は1〜2日程度です。合併症として気胸(ききょう:肺に小さな穴が開いて空気が漏れる状態)が起こる可能性がありますが、多くの場合は軽度で自然に回復します。

胸腔鏡下生検(VATS)は診断と治療を同時に行えることもある

胸腔鏡下生検(VATS:ヴァッツ)は、胸に小さな穴を開けてカメラと器具を挿入し、腫瘍の組織を採取する方法です。全身麻酔で行うため身体への負担は針生検より大きくなります。

ただし、検査の結果がんと確定した場合は、そのまま切除手術に移行できるケースもあります。診断と治療を一度の手術で完結できる点は大きな利点でしょう。

生検の結果からわかること|がんの種類と遺伝子変異

採取した組織は病理医が顕微鏡で詳しく観察し、がん細胞の有無だけでなく組織型(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がんなど)まで判定します。

さらに近年では、がん細胞の遺伝子変異やタンパク質発現を調べる検査も行われるようになりました。EGFR変異やALK融合遺伝子、PD-L1発現率といった情報は、分子標的薬や免疫療法の選択に直結するため、治療方針を左右する極めて重要なデータです。

生検の種類と特徴

生検の種類麻酔適した腫瘍の位置
経気管支生検局所麻酔気管支に近い中心部
CTガイド下針生検局所麻酔肺の末梢部
胸腔鏡下生検(VATS)全身麻酔胸膜直下・広範囲の病変

PET検査やMRIで肺がんのステージを正しく見極める

肺がんの治療方針を決めるうえで、がんがどこまで広がっているかを把握するステージング(病期分類)は欠かせない作業です。PET検査やMRI検査は全身への転移を調べるために行われます。

PET検査はがん細胞の活動を全身レベルで映し出す

PET(陽電子放射断層撮影)は、ブドウ糖に似た薬剤(FDG)を静脈注射し、がん細胞が糖を多く取り込む性質を利用して全身の転移を調べます。CTと組み合わせたPET-CTが一般的です。

  • 遠隔転移(骨・肝臓・副腎など)の有無を効率よく確認できる
  • リンパ節転移の評価にも有用
  • 炎症など良性の病変でも集積することがあるため偽陽性に注意
  • 検査前5〜6時間の絶食が必要

脳転移を調べるにはMRI検査が適している

PET検査は脳への転移の検出がやや苦手です。脳はもともとブドウ糖の消費量が多い臓器のため、FDGの集積差が分かりにくくなります。

そのため脳への転移が疑われるケースでは、造影MRIが行われます。MRIは磁気を利用するため放射線による被ばくがなく、脳の軟部組織を高いコントラストで描出できる点が強みです。

検査結果をもとにステージが確定し治療方針が決まる

すべての検査結果がそろうと、がんの大きさ(T)、リンパ節への転移(N)、遠隔転移の有無(M)に基づいてTNM分類が行われ、ステージが確定します。

ステージはI期からIV期までに分類され、早期であれば外科手術による根治が期待できます。進行期には薬物療法や放射線治療が中心となるため、正確なステージングが治療の道筋を決める要になるといえるでしょう。

よくある質問

肺がんの検査にかかる時間はどのくらい?

胸部X線検査であれば数秒で撮影が終わり、CT検査も5〜15分程度と比較的短時間です。一方、気管支鏡検査は前処置を含めて1〜2時間ほどかかる場合があります。

生検を伴う場合は1泊入院となるケースもあるため、担当医に事前にスケジュールを確認しておくと安心でしょう。

肺がんの検査で痛みを感じることはある?

胸部X線やCTは痛みのない検査です。気管支鏡検査では局所麻酔を行いますが、のどに違和感や軽い咳込みが起きることがあります。

CTガイド下の針生検では針を刺す際にチクッとした痛みを感じることがありますが、局所麻酔によって強い痛みはほとんど抑えられます。不安が強い方は鎮静剤の使用について医師に相談してみてください。

肺がんのCT検査はどのくらいの頻度で受けるべき?

喫煙歴がある方やご家族に肺がんの既往がある方は、年に1回の低線量CT検診が推奨されるケースがあります。検診の頻度はリスク因子によって異なるため、かかりつけ医と相談して決めるのが望ましいでしょう。

健康に自信がある方でも40歳を過ぎたら年1回の胸部X線検査を受け、必要に応じてCT検査を追加するという流れが一般的です。

肺がんの確定診断に生検が必要なのはなぜ?

画像検査は腫瘍の位置や形状を映し出せますが、それが良性の腫瘤なのか悪性のがんなのかを確実に判別するには、組織を採取して顕微鏡で細胞を観察する作業が必要です。

生検によってがんの種類や遺伝子変異まで特定できるため、一人ひとりに合った治療法を選択するうえでも欠かすことのできない検査です。

肺がんの検査で「要精密検査」と言われたら必ずがん?

「要精密検査」の判定は、あくまで「詳しく調べる必要がある」という意味であり、がんが確定したわけではありません。実際には精密検査を受けた結果、炎症や良性の結節だったという方も少なくありません。

ただし自己判断で放置すると、万が一がんだった場合に進行してしまうおそれがあります。通知を受け取ったら速やかに医療機関を受診することが大切です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医