免疫療法の適応となるがん種一覧|標準治療として受けられる疾患と条件

免疫療法の適応となるがん種一覧|標準治療として受けられる疾患と条件

がんと診断されたとき、「自分のがんには免疫療法が使えるのだろうか」と不安を感じる方は少なくありません。免疫チェックポイント阻害薬はすべてのがんに使えるわけではなく、がんの種類や病期で適応が変わります。

この記事では、日本で標準治療として承認されている免疫療法の対象がん種を一覧で整理し、薬剤ごとの投与条件をわかりやすく解説します。ご自身やご家族の治療選択にお役立てください。

科学的に効果が証明された免疫療法とそうでないものの違いもお伝えしますので、正しい情報をもとに主治医と相談する際の参考にしていただければ幸いです。

免疫療法が標準治療として認められたがん種は年々広がっている

免疫チェックポイント阻害薬が日本で初めて承認されたのは2014年で、当時は悪性黒色腫(メラノーマ)だけが対象でした。約10年が経った現在、非小細胞肺がんや胃がん、食道がんなど多くのがん種に適応が拡大しています。

免疫チェックポイント阻害薬が承認されるまでの道のり

新しいがん種への適応が認められるには、大規模な臨床試験で治療効果と安全性を証明しなければなりません。通常は数百人から数千人規模の第III相臨床試験が実施されます。

従来の標準治療と比較して生存期間の延長が確認された後、厚生労働省の審査と承認を経て診療ガイドラインに収載されます。厳格な手続きを通過した治療だからこそ信頼できるといえるでしょう。

2014年から現在までの適応拡大の流れ

2014年にニボルマブ(オプジーボ)が悪性黒色腫に承認されたのを皮切りに、2015年に非小細胞肺がん、2016年に腎細胞がんやホジキンリンパ腫へと適応が広がりました。

その後も胃がん、頭頸部がん、食道がんなど承認がん種は増え続けています。

主な免疫チェックポイント阻害薬と適応がん種

薬剤名(商品名)分類主な適応がん種
ニボルマブ(オプジーボ)抗PD-1抗体悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、胃がん、食道がん、頭頸部がんなど
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)抗PD-1抗体悪性黒色腫、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、子宮頸がん、MSI-High固形がんなど
アテゾリズマブ(テセントリク)抗PD-L1抗体非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝細胞がんなど
デュルバルマブ(イミフィンジ)抗PD-L1抗体非小細胞肺がん、小細胞肺がん、胆道がんなど
イピリムマブ(ヤーボイ)抗CTLA-4抗体悪性黒色腫、腎細胞がん、非小細胞肺がんなど(併用)
アベルマブ(バベンチオ)抗PD-L1抗体メルケル細胞がん、尿路上皮がんなど

適応がん種は今後も増える見込み

世界中で臨床試験が進行しており、膵臓がんや脳腫瘍など従来は適応外だったがん種への拡大も検討されています。セミプリマブやチスレリズマブも承認され、選択肢はさらに広がりつつあります。

臨床試験の結果が出るまでには時間がかかるため、現時点で未承認のがん種については担当医に治験参加の相談をしてみるとよいでしょう。

免疫チェックポイント阻害薬の種類と対象になるがんを一挙に紹介

日本で承認されている免疫チェックポイント阻害薬は9種類あり、がん種ごとに使い分けられています。抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体の3カテゴリーに大別されます。

抗PD-1抗体はもっとも多くのがん種に使われている

ニボルマブ(オプジーボ)とペムブロリズマブ(キイトルーダ)は承認がん種の数が多い薬剤です。ニボルマブは悪性黒色腫や非小細胞肺がん、腎細胞がん、胃がん、食道がんなど幅広く使われています。

ペムブロリズマブも多くのがん種に適応を持ちます。PD-L1発現が高い非小細胞肺がんでは1次治療から単独使用が可能です。

さらにMSI-Highを有する固形がんにも臓器横断的に使える点が注目されています。

抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体にはそれぞれ得意分野がある

アテゾリズマブ(テセントリク)は肺がんや肝細胞がんが主な対象です。デュルバルマブ(イミフィンジ)は局所進行非小細胞肺がんの維持療法に広く用いられています。

アベルマブ(バベンチオ)はメルケル細胞がんや尿路上皮がんの維持療法に適応があります。

イピリムマブ(ヤーボイ)はニボルマブとの併用で悪性黒色腫や腎細胞がんなどに使われるのが一般的です。トレメリムマブもデュルバルマブとの併用で肝細胞がんなどに用いられています。

薬剤ごとに投与スケジュールも異なる

免疫チェックポイント阻害薬は点滴で投与します。ニボルマブは2週間または4週間ごと、ペムブロリズマブは3週間または6週間ごとが基本です。投与時間は30分から1時間程度で、外来通院が可能です。

どの薬剤を選ぶかは、がんの種類や病期、PD-L1発現状況、全身状態を総合的に判断して決定します。主治医と相談し、納得のいく方針を立てましょう。

抗PD-1抗体の主な適応がん種一覧

がん種ニボルマブペムブロリズマブ
悪性黒色腫
非小細胞肺がん
腎細胞がん
ホジキンリンパ腫
頭頸部がん
胃がん
食道がん
尿路上皮がん
子宮頸がん
MSI-High固形がん○(大腸がん)○(臓器横断的)

非小細胞肺がんの免疫療法は単独でも併用でも選べる時代へ

非小細胞肺がんは免疫チェックポイント阻害薬が広く使われているがん種の一つです。PD-L1の発現状況に応じて単独か化学療法との併用かを選べる点が大きな特徴といえます。

PD-L1の発現率が治療選択の鍵を握る

非小細胞肺がんでは、がん細胞表面のPD-L1の発現率が治療方針を決める重要な判断材料です。発現率50%以上であればペムブロリズマブ単独での1次治療が可能になります。

発現率が50%未満でも化学療法との併用で治療効果が期待できます。PD-L1の発現が低くても免疫療法の恩恵を受けられる可能性があるのです。

化学療法との併用で治療効果がさらに高まる

化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用は、非小細胞肺がんの1次治療として広く行われています。がん細胞への直接攻撃と免疫のブレーキ解除が同時に働くため、高い効果が見込めるでしょう。

PD-L1発現率別の治療方針

  • PD-L1発現率50%以上:ペムブロリズマブ単独療法、または化学療法との併用が選択可能
  • PD-L1発現率1〜49%:化学療法とペムブロリズマブなどの併用が標準的な治療
  • PD-L1発現率1%未満:化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用が基本方針

EGFR変異やALK融合遺伝子がある場合は分子標的薬が優先される

EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子が見つかった場合は注意が必要です。免疫チェックポイント阻害薬よりも分子標的薬が効果的なことが多く、まず分子標的薬が選択されます。

遺伝子検査の結果で治療方針が大きく変わるため、診断時には遺伝子検査を受けることが重要です。担当医と話し合い、自分に合った治療法を見極めましょう。

消化器がん(胃がん・食道がん・肝細胞がん)に免疫療法が使える条件とは

消化器領域でも免疫チェックポイント阻害薬の適応は広がっています。胃がんや食道がん、肝細胞がんなどで標準治療に組み込まれていますが、進行度や前治療の有無で条件が異なります。

胃がんではHER2陰性の進行・再発例が主な対象

胃がんの免疫療法は、HER2陰性の切除不能な進行・再発胃がんが主な対象です。ニボルマブやペムブロリズマブを化学療法と併用する1次治療が普及しています。

化学療法後に進行した場合はニボルマブ単独が選択肢に入ります。HER2陽性の場合はトラスツズマブを含む治療が優先されるため、HER2検査が欠かせません。

食道がんは化学療法との併用で1次治療にも導入されている

食道がんの免疫療法も急速に進歩しました。切除不能な進行・再発の食道がんにはニボルマブやペムブロリズマブが化学療法との併用で使われています。

術後の再発予防を目的にニボルマブも承認されており、術後の治療戦略に新たな選択肢が加わった形です。

肝細胞がんでは複数の免疫療法の組み合わせが登場

肝細胞がんでも免疫療法は変革をもたらしています。アテゾリズマブとベバシズマブの併用が切除不能な肝細胞がんの1次治療として広く使われるようになりました。

デュルバルマブとトレメリムマブの併用も承認済みです。肝機能の状態が投与可否に影響するため、肝臓の評価をしっかり行ったうえで方針を決めることになるでしょう。

消化器がんにおける免疫療法の適応条件

がん種使用条件主な薬剤
胃がんHER2陰性の進行・再発ニボルマブ、ペムブロリズマブ
食道がん進行・再発、術後補助ニボルマブ、ペムブロリズマブ
肝細胞がん切除不能、肝機能良好アテゾリズマブ+ベバシズマブなど
大腸がん(MSI-High)MSI-Highを有する切除不能ニボルマブ、ペムブロリズマブ

悪性黒色腫・腎細胞がん・頭頸部がんは免疫療法で治療成績が大きく変わった

悪性黒色腫、腎細胞がん、頭頸部がんは、免疫チェックポイント阻害薬で治療成績が劇的に改善したがん種です。とくに悪性黒色腫は世界初の承認がん種であり、長期生存が可能になった方も珍しくありません。

悪性黒色腫には複数の免疫療法レジメンが使用できる

悪性黒色腫にはニボルマブ単独、ペムブロリズマブ単独、ニボルマブとイピリムマブの併用など複数のレジメンが承認されています。予後がきわめて悪いとされてきたがん種ですが、免疫療法で5年生存率が大幅に向上しました。

術後の再発予防にも両薬剤が使えます。BRAF遺伝子変異の有無で分子標的薬との使い分けが行われるため、遺伝子検査は欠かせません。

腎細胞がんでは免疫療法と分子標的薬の併用が主流に

腎細胞がんでは免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用が、切除不能な進行・再発例の1次治療として普及しています。ニボルマブとイピリムマブの併用、ペムブロリズマブとアキシチニブの併用が代表的です。

免疫療法で治療成績が改善した主ながん種

  • 悪性黒色腫:免疫チェックポイント阻害薬が世界で初めて承認されたがん種で、長期生存例が増加
  • 腎細胞がん:免疫療法と分子標的薬の併用が1次治療の中心に定着
  • 頭頸部がん:再発・転移例でペムブロリズマブが1次治療として導入済み

頭頸部がんではPD-L1陽性例で1次治療から使える

再発・転移を有する頭頸部がんでは、ペムブロリズマブが1次治療として使用可能です。PD-L1発現が高い場合は単独療法、化学療法との併用レジメンも承認されています。

光免疫療法(アルミノックス治療)という新しい治療法も注目されています。切除不能な局所進行・再発の頭頸部がんに承認され、近赤外線でがん細胞を選択的に破壊する仕組みです。

MSI-HighやTMB-Highなど「がん種を問わない」免疫療法の適応条件

免疫療法には、発生部位ではなく遺伝子の特徴で適応が決まる臓器横断的な治療があります。MSI-HighとTMB-Highが代表例です。

MSI-Highとは何か、対象になるのはどんな人か

MSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)はDNA修復機構に異常がある状態です。変異が多く蓄積しているため免疫細胞に認識されやすく、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい傾向があります。

ペムブロリズマブはMSI-Highを有する進行・再発の固形がんに対し、発生部位を問わず使用が認められています。大腸がんに多いですが、子宮体がんや胃がんでも見つかることがあります。

TMB-Highは遺伝子変異の数が多いがんに適用される

TMB-High(高腫瘍遺伝子変異量)はがん細胞の変異が通常より多い状態を指します。変異が多いほど免疫細胞の攻撃目標が増え、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できます。

ペムブロリズマブはTMB-Highの固形がんにも承認されています。がん遺伝子パネル検査で該当するかどうかを調べることが可能です。

がん遺伝子パネル検査で自分のがんの特徴を調べよう

がん遺伝子パネル検査ではがん細胞の遺伝子を網羅的に解析し、治療に結びつく異常がないかを確認します。がん診療連携拠点病院を中心に受検でき、次の治療を見つけるきっかけにもなるでしょう。

MSI-HighやTMB-Highに該当すれば臓器横断的に免疫チェックポイント阻害薬が検討されます。担当医に検査の可否を相談してみてください。

バイオマーカー対象薬剤判定方法
MSI-Highペムブロリズマブ、ニボルマブPCR法、免疫組織化学法
TMB-Highペムブロリズマブがん遺伝子パネル検査
PD-L1発現各種免疫チェックポイント阻害薬免疫組織化学法

免疫療法の副作用「免疫関連有害事象」には早めの対処が欠かせない

免疫チェックポイント阻害薬には従来の抗がん剤と異なる副作用があり、「免疫関連有害事象(irAE)」と呼ばれます。免疫が活発になりすぎて正常な臓器にも炎症が及ぶことがあるため、早期発見と迅速な対応が大切です。

免疫関連有害事象が起こりやすい臓器と初期症状

影響を受ける臓器主な症状注意すべきサイン
皮膚発疹、かゆみ広範囲の赤みや水疱
消化管下痢、腹痛1日4回以上の水様便
肝臓だるさ、黄疸皮膚や白目の黄染
咳、息切れ安静時の呼吸困難
甲状腺倦怠感、動悸急激な体重変動
内分泌系頭痛、吐き気持続的な強い頭痛

副作用が出たら治療を中断することもある

免疫関連有害事象はグレード1から4まで分類されています。軽度なら経過観察で対応できますが、中等度以上ではステロイド薬の投与や休薬・中止が必要になる場合もあります。

心筋炎や1型糖尿病、副腎不全など生命に関わる副作用にはとくに注意が必要です。頻度は高くないものの、早期発見で回復が見込めます。体調の変化を感じたらすぐ医療機関に連絡してください。

治療中の体調管理で気をつけたい生活習慣

治療中は規則正しい生活を心がけましょう。十分な睡眠と栄養バランスの良い食事が基本です。些細な変化でも担当医や看護師に報告してください。

投与終了後数か月経ってから副作用が現れるケースもあります。治療後も定期的な通院と血液検査を続け、異常がないか確認しましょう。

よくある質問

免疫チェックポイント阻害薬はすべてのがん種に使えるのか?

免疫チェックポイント阻害薬は、すべてのがんに使えるわけではありません。日本で標準治療として承認されているのは悪性黒色腫や非小細胞肺がん、腎細胞がん、胃がんなど特定のがん種に限られます。

ただしMSI-HighやTMB-Highといった遺伝子の特徴を持つがんには、がん種を問わず使えるケースもあります。担当医に確認してみてください。

免疫チェックポイント阻害薬の効果が現れるまでどれくらいかかるのか?

従来の抗がん剤に比べ、効果が出るまでに時間がかかることがあります。一般的には投与開始から2〜3か月程度で画像検査による判定を行いますが、半年以上経って縮小が始まる方もいます。

まれに治療開始直後は腫瘍が大きく見える「偽増大」が起こることもあるため、焦らず担当医と経過を見守ることが大切です。

免疫療法と抗がん剤治療は同時に受けられるのか?

免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用は、非小細胞肺がんや胃がん、食道がんなど多くのがん種で標準治療として認められています。1次治療の選択肢に含まれるケースも増えてきました。

併用療法は副作用が増える可能性があるため、全身状態や臓器機能を評価したうえで適応を判断します。主治医としっかり相談してください。

免疫チェックポイント阻害薬の治療中に日常生活で制限はあるのか?

基本的には普段どおりの生活を送れます。外来通院で治療するケースが多く、仕事や家事を続けている方も少なくありません。

ただし免疫関連有害事象が現れた場合は安静が必要になることがあります。日頃から体温や体重、排便回数を記録しておくと変化に気づきやすいでしょう。気になる症状があれば次の診察を待たず連絡してください。

免疫チェックポイント阻害薬とCAR-T細胞療法はどう違うのか?

免疫チェックポイント阻害薬はがん細胞が免疫にかけるブレーキを外し、体内の免疫細胞に攻撃力を取り戻させる薬です。CAR-T細胞療法は患者さんのT細胞を取り出し、遺伝子改変して体内に戻す治療法になります。

CAR-T細胞療法は一部の血液がんに限定されており治療施設も限られています。免疫チェックポイント阻害薬は固形がんを中心に幅広く使われている点が両者の大きな違いです。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医