
がんの免疫療法は、すべての患者さんに同じように効果があるわけではありません。「自分にはこの治療が合うのだろうか」と不安を感じている方も多いでしょう。
PD-L1・TMB・MSIという3つのバイオマーカーは、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいかどうかを事前に予測するための手がかりになります。
それぞれ異なる角度からがんの特徴を調べるため、組み合わせて活用することで治療方針をより明確に描けるようになりました。
この記事では、3つのバイオマーカーのしくみや検査方法、結果の読み解き方までをわかりやすく解説します。主治医との対話をより実りあるものにするために、ぜひ参考にしてください。
がん免疫療法の「効き目」はバイオマーカーで見極められる
免疫チェックポイント阻害薬の登場により、がん治療の選択肢は大きく広がりました。ただし、この治療が効きやすい方と効きにくい方がいるため、事前にバイオマーカーで「効きやすさ」を見極めることが治療の質を左右します。
免疫チェックポイント阻害薬が登場してがん治療は大きく変わった
従来のがん治療は手術・放射線・抗がん剤が三本柱でした。免疫チェックポイント阻害薬はこれに加わる「第4の治療法」として注目を集めています。
この薬は、がん細胞が免疫の攻撃をすり抜けるために使う「ブレーキ信号」を解除し、患者さん自身の免疫力でがんを攻撃できるようにします。肺がんや悪性黒色腫をはじめ、さまざまながん種で承認が進んでいます。
バイオマーカーで「効きやすさ」を事前に見極められる
バイオマーカーとは、血液や組織を調べることで得られる「治療効果を予測するための生体指標」です。免疫療法においては、がん細胞の表面に出ているたんぱく質の量や、遺伝子の変異の数などが指標として使われます。
「この薬が自分に合うのか」を事前に推測できるため、効果が期待しにくい治療を避け、より適した治療法を選びやすくなるでしょう。
免疫療法で用いられる代表的なバイオマーカー
| バイオマーカー | 何を調べるか | 判定のポイント |
|---|---|---|
| PD-L1 | がん細胞表面のたんぱく質の発現量 | 発現率が高いほど免疫療法が効きやすい傾向 |
| TMB | がん細胞の遺伝子変異の数 | 変異が多いほど免疫に認識されやすい |
| MSI | DNA修復機能の異常の有無 | MSI-Highだと免疫療法への反応が良好 |
PD-L1・TMB・MSIが代表的な3つの指標である
免疫療法の効果予測に使われるバイオマーカーのうち、とくに臨床で広く活用されているのがPD-L1・TMB・MSIの3つです。それぞれが異なる生物学的な側面を評価しており、1つだけでは見えない情報を補い合えます。
PD-L1はがん細胞と免疫細胞の「接点」にあるたんぱく質、TMBは遺伝子変異の「量」、MSIはDNA修復の「質」を見ています。こうした多角的な情報が、治療の精度を高めてくれるわけです。
主治医と一緒に結果を読み解くことが大切
バイオマーカーの結果はあくまで「予測の手がかり」であり、結果だけで治療の成否を断言できるものではありません。がんの種類や進行度、患者さんの体調など、多くの要因を総合的に考慮して治療方針を決めます。
だからこそ、検査結果を主治医と一緒に読み解き、疑問や不安はその場で伝えることが大切です。数値の意味を正しく理解できれば、治療に対する納得感も深まるでしょう。
PD-L1発現率は免疫チェックポイント阻害薬の効果と深く関わっている
PD-L1は、がん細胞が免疫の攻撃から逃れるために利用するたんぱく質です。このたんぱく質の発現率を調べることで、免疫チェックポイント阻害薬がどの程度効きやすいかを推測できます。
PD-L1とはがん細胞が免疫から逃れるために使う「盾」
私たちの体内では、T細胞(免疫細胞の一種)ががん細胞を見つけて攻撃します。しかし、がん細胞の表面にPD-L1というたんぱく質が多く出ていると、T細胞の表面にあるPD-1受容体と結合し、「攻撃するな」というブレーキ信号を送ります。
免疫チェックポイント阻害薬は、このPD-1とPD-L1の結合を妨げることで、T細胞のブレーキを解除する薬です。つまり、PD-L1が多く出ているがんほど、この薬のターゲットが明確になるといえます。
PD-L1検査では腫瘍組織を染色して発現の割合を調べる
PD-L1の発現率は、手術や生検で採取したがん組織を免疫組織化学染色(IHC)という方法で調べます。がん細胞や免疫細胞のうち、PD-L1を発現している細胞の割合をスコア化するのが一般的な流れです。
代表的な指標としてTPS(腫瘍細胞の陽性割合)やCPS(腫瘍細胞と免疫細胞を合わせた陽性割合)があり、がんの種類によって使い分けられています。
PD-L1が高いほど免疫療法が効きやすい傾向がある
非小細胞肺がんでは、PD-L1のTPSが50%以上の患者さんに対して免疫チェックポイント阻害薬の単独療法が承認されています。一般的にPD-L1の発現率が高いほど治療効果が期待しやすいとされています。
ただし、がん種や使用する薬剤によって判定の基準は異なります。PD-L1が高ければ必ず効くというものでもないため、あくまで「効きやすさの目安」として捉えるのが正確です。
PD-L1だけでは判断できないケースもある
PD-L1の発現率は組織を採取した時点での「スナップショット」にすぎません。がんの進行や治療の影響で発現率が変化することもあり、検査時期によって結果が異なるケースがあります。
PD-L1が低い、あるいは陰性であっても免疫療法が効く場合もあるため、TMBやMSIなど他のバイオマーカーと組み合わせて総合的に判断することが望まれます。
| 指標名 | 評価対象 | おもな使用がん種 |
|---|---|---|
| TPS | 腫瘍細胞のみ | 非小細胞肺がんなど |
| CPS | 腫瘍細胞+免疫細胞 | 胃がん・頭頸部がんなど |
| IC | 腫瘍浸潤免疫細胞 | 尿路上皮がんなど |
TMB(腫瘍遺伝子変異量)が高いがんは免疫療法に反応しやすい
TMBは、がん細胞にどれだけ多くの遺伝子変異が蓄積しているかを数値化した指標です。変異が多いがんほど免疫に「見つかりやすく」なるため、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待しやすいと考えられています。
TMBとはがん細胞にたまった遺伝子変異の数を数える検査
がん細胞は正常な細胞と異なり、DNAにさまざまな変異(エラー)を抱えています。TMB(Tumor Mutational Burden=腫瘍遺伝子変異量)は、がんゲノムの一定領域あたりにどれだけの変異があるかを定量的に示す指標です。
通常、次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子パネル検査で解析します。変異数が多いがんを「TMB-High」と呼び、一般的には1メガベースあたり10個以上の変異が1つの目安とされています。
変異が多いがんは免疫に見つかりやすくなる
遺伝子変異が多いと、がん細胞の表面には変異由来の異常なたんぱく質(ネオアンチゲン)が数多く現れます。このネオアンチゲンは、免疫細胞にとって「敵の目印」になるため、T細胞ががんを認識しやすくなります。
免疫チェックポイント阻害薬でT細胞のブレーキを外してあげると、豊富なネオアンチゲンのおかげで攻撃が効率よく進む場合が多いのです。これがTMB-Highのがんで免疫療法の効果が出やすい理由です。
TMBの高低と免疫療法の関係
| TMBの水準 | 変異数の目安 | 免疫療法への反応 |
|---|---|---|
| TMB-High | 10変異/Mb以上 | 奏効率が高い傾向 |
| TMB-Intermediate | 6〜9変異/Mb程度 | 症例によって差がある |
| TMB-Low | 5変異/Mb以下 | 単独では効果が限定的 |
TMB-Highの基準と対象になるがん種
2020年にペムブロリズマブ(キイトルーダ)がTMB-High(10変異/Mb以上)の固形がんに対して承認されたことで、TMBはがん種を問わない横断的なバイオマーカーとして注目度が増しました。
とくに悪性黒色腫や非小細胞肺がん、膀胱がんなどではTMBが高い傾向が報告されています。一方、TMBの測定方法や判定基準はまだ完全には統一されておらず、使用する遺伝子パネルによって数値が多少異なる点には注意が必要です。
TMBと他のバイオマーカーを組み合わせると精度が上がる
TMBが高くても、すべての変異が免疫に認識される「質の高いネオアンチゲン」を生むわけではありません。免疫細胞ががん組織に十分入り込めない「冷たい腫瘍(cold tumor)」の場合、TMBが高くても治療効果が限られる場合があります。
そのため、PD-L1発現率やMSIの結果と合わせて評価することで、予測の精度を高められます。単独の指標に頼りすぎないことが、治療方針を誤らないための大切な視点です。
MSI(マイクロサテライト不安定性)は遺伝子修復の異常を映し出す
MSIは、DNAの複製エラーを修復するしくみに異常があるかどうかを調べる指標です。MSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)と判定されたがんは、免疫チェックポイント阻害薬への反応が良好であることが繰り返し確認されています。
MSIとはDNA修復のエラーが蓄積した状態
細胞がDNAを複製するとき、ごく小さなエラーは日常的に起こります。通常はミスマッチ修復(MMR)と呼ばれるしくみがエラーを直してくれます。
しかし、MMRの機能が失われる(dMMR:ミスマッチ修復欠損)と、DNAの短い繰り返し配列「マイクロサテライト」にエラーがどんどんたまっていきます。
この状態がMSI-Highです。結果として遺伝子変異が急増し、多くのネオアンチゲンが発生するため、免疫による攻撃を受けやすくなります。
MSI-Highのがんは免疫チェックポイント阻害薬の有力な候補になる
2017年、ペムブロリズマブがMSI-High/dMMRの固形がんに対してがん種を問わず承認されました。これはバイオマーカーに基づく「がん種横断的」な承認としては画期的な出来事でした。
大腸がんにおけるKEYNOTE-177試験では、MSI-Highの転移性大腸がん患者さんに対してペムブロリズマブが化学療法よりも無増悪生存期間を改善したと報告されています。
MSI-Highの判定は、PD-L1の発現率が低くても免疫療法を検討できる根拠になるため、見逃さずに検査を受けることが重要です。
MSI検査は大腸がんだけでなく幅広いがん種で実施される
MSI-Highの頻度が高いがん種としては大腸がんと子宮体がんが知られていますが、胃がん・膵がん・胆道がんなど他のがん種でも一定の割合で見つかります。
検査方法は免疫組織化学染色(IHC)によるMMRたんぱく質の評価と、PCRや次世代シークエンサーを用いたマイクロサテライト領域の解析の2種類が代表的です。
どちらの方法でもMSI-Highと判定されれば、免疫チェックポイント阻害薬の対象となり得ます。
- 大腸がん:MSI-Highの頻度がもっとも高い(約15%)
- 子宮体がん:約20〜30%でMSI-Highが見られる
- 胃がん:約8〜20%でMSI-Highが報告されている
- 胆道がん・膵がん:頻度は低いが検査する価値がある
PD-L1・TMB・MSIを組み合わせれば免疫療法の効果をより正確に予測できる
3つのバイオマーカーはそれぞれ異なる生物学的側面を評価しているため、1つの指標だけに頼ると治療の機会を見落とすおそれがあります。複数を組み合わせることで予測の精度が格段に向上します。
1つのバイオマーカーだけでは見落としが生じる
たとえば、PD-L1が陰性であってもMSI-Highであれば免疫療法に良好な反応を示す患者さんがいます。反対に、TMBが高くても腫瘍の微小環境が免疫を排除するタイプであれば、思うように効果が出ないこともあります。
こうした「単独では見えない部分」を別の指標で補い合うことが、より正確な治療効果の予測につながります。3つのバイオマーカーはお互いの弱点をカバーし合う関係にあるのです。
複数のバイオマーカーを掛け合わせれば治療方針がより明確になる
PD-L1・TMB・MSIの3指標がすべて陽性(高値)であれば、免疫療法への反応がきわめて良好と予想できます。一方、いずれか1つだけが陽性の場合でも治療対象になり得るため、「すべて揃わなければだめ」というわけではありません。
結果がバラバラに見えるときこそ、それぞれの指標が何を示しているかを正確に把握し、主治医と方針を擦り合わせることが大切です。
バイオマーカーの組み合わせによる予測パターン
| 組み合わせ | 免疫療法への期待度 | 考えられる対応 |
|---|---|---|
| PD-L1高・TMB高・MSI-High | 非常に高い | 免疫療法を第一選択として検討 |
| PD-L1低・MSI-High | 高い | MSI-Highを根拠に免疫療法を検討 |
| PD-L1高・TMB低・MSS | 中程度 | 併用療法も視野に入れて判断 |
| PD-L1低・TMB低・MSS | やや低い | 他の治療法との比較検討を優先 |
がんゲノムプロファイリング検査で複数の指標を一度に調べられる
近年普及が進む「がんゲノムプロファイリング検査(CGP検査)」では、数百の遺伝子を一度に解析し、TMBやMSIの情報を同時に取得できます。
PD-L1についてはIHCによる追加検査が必要ですが、検体を1回の採取で多くの情報を引き出せる点は大きな利点です。
検査結果はエキスパートパネルと呼ばれる専門家チームによって解釈され、患者さん一人ひとりに適した治療選択肢が提示されます。
バイオマーカー検査のタイミングと方法は治療開始前に確認しておきたい
バイオマーカー検査は、治療方針を決定するうえで欠かせない情報を提供してくれます。治療を始める前に結果をそろえておくことで、初回治療から適切な薬剤を選びやすくなります。
治療を始める前に検査結果をそろえておくと判断が早い
がんと診断されてから治療を開始するまでの間は、多くの検査を並行して進めるため、気持ちが落ち着かない時期でもあるでしょう。しかし、この段階でバイオマーカー検査の結果を得ておけば、免疫療法を含めた治療の選択肢を幅広く検討できます。
とくにMSIやTMBの検査は結果が出るまでに2〜3週間ほどかかる場合があるため、主治医に「バイオマーカー検査はいつ行いますか」と早めに確認しておくと安心です。
組織検査とリキッドバイオプシーの違い
バイオマーカー検査には大きく分けて「組織検査」と「リキッドバイオプシー(血液検査)」の2つの方法があります。組織検査は手術や生検で採取したがん組織を直接分析するもので、PD-L1のIHC検査やMSI検査、遺伝子パネル検査がこれにあたります。
リキッドバイオプシーは、血液中に漂うがん由来のDNA(ctDNA)を解析する方法です。体への負担が少ない一方、組織検査と比べると得られる情報に制約があるケースもあります。状況に応じてどちらを選ぶか、主治医と相談してください。
検査結果が出るまでの期間と注意点
PD-L1のIHC検査は比較的早く、1〜2週間程度で結果が出ることが多いでしょう。がんゲノムプロファイリング検査はより多くの遺伝子を調べるぶん、3〜4週間を要する場合があります。
注意したいのは、検体の品質が結果に影響する点です。採取から時間が経ったホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体ではDNAが劣化している場合があります。
再検査が必要になるケースもあるため、検体の保管状態について不安があれば、遠慮なく医療スタッフに尋ねてみましょう。
- PD-L1(IHC):1〜2週間で結果が出ることが多い
- MSI(IHCまたはPCR):約2週間程度
- がんゲノムプロファイリング検査(TMB・MSI含む):3〜4週間程度
- リキッドバイオプシー:約2〜3週間
バイオマーカーの結果は数値だけで判断せず主治医と一緒に治療方針を決める
検査結果の数値を見て一喜一憂してしまう方は少なくありません。しかし、バイオマーカーは「治療効果を保証するもの」ではなく、「治療方針を検討するための材料」であるという認識が大切です。
数値だけで「効く・効かない」を決めつけない
PD-L1の発現率が低くてもMSI-Highであれば免疫療法が奏効する可能性は十分にあります。逆に、すべてのバイオマーカーが「良好」でも、個人の免疫状態や腫瘍の微小環境によって結果が異なることは珍しくありません。
バイオマーカー検査結果の読み解き方
| よくある誤解 | 正確な捉え方 |
|---|---|
| PD-L1が陰性なら免疫療法は効かない | 他の指標で適応となる場合がある |
| TMBが高ければ必ず効く | 腫瘍微小環境も効果を左右する |
| MSI-Highなら100%奏効する | 高い奏効率だが全員ではない |
主治医とのカンファレンスで総合的に判断する
バイオマーカー検査の結果は、がんの種類・ステージ・患者さんの全身状態・過去の治療歴などと合わせて総合的に評価されます。
この判断は、腫瘍内科医や病理医、遺伝カウンセラーなどが参加する「キャンサーボード(がん診療カンファレンス)」で行われることも多いでしょう。
患者さんご自身も、検査結果のどこが判断の決め手になったのかを主治医に聞いてみてください。治療への理解が深まり、安心感を持って治療に臨めるはずです。
セカンドオピニオンも選択肢に含めて納得のいく治療を選ぶ
バイオマーカーの結果や治療方針について迷いがある場合は、セカンドオピニオンを受けることも検討してみてください。別の医師の視点から結果を見直すことで、新たな治療の選択肢が見つかるかもしれません。
「主治医に失礼ではないか」と感じる方もいるかもしれませんが、セカンドオピニオンは患者さんの権利として広く認められています。主治医も快く紹介状を書いてくれることがほとんどです。納得のいく治療を選ぶために、ためらわずに活用してください。
よくある質問
PD-L1の発現率が低いと免疫チェックポイント阻害薬はまったく効かないのか?
PD-L1の発現率が低い、あるいは陰性であっても免疫チェックポイント阻害薬が効くケースは報告されています。MSI-HighやTMB-Highなど他のバイオマーカーが陽性であれば、免疫療法の対象になり得るためです。
また、PD-L1の発現率は検査のタイミングや採取部位によって変動するため、一度の結果だけで「効かない」と判断するのは早計です。主治医と相談しながら、複数のバイオマーカーを総合的に評価してもらうことをおすすめします。
TMB検査はどのがん種でも受けられるのか?
TMB検査はがんゲノムプロファイリング検査の一部として、多くの固形がんで実施可能です。ペムブロリズマブはTMB-Highの固形がんに対してがん種を問わず承認されているため、検査を受ける意義は幅広いがん種に及びます。
ただし、がんゲノムプロファイリング検査を受けるには一定の条件を満たす必要がある場合もあります。自分のがん種で検査が可能かどうか、主治医に確認してみてください。
MSI-Highと判定された場合にどのような免疫療法薬が使われるのか?
MSI-High/dMMRの固形がんに対しては、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)がもっとも広く使用されている免疫チェックポイント阻害薬です。大腸がんでは、ニボルマブ(オプジーボ)とイピリムマブ(ヤーボイ)の併用療法も選択肢に含まれます。
がんの種類や進行度、患者さんの体調によって使える薬剤は異なるため、具体的な治療薬の選択は主治医とよく相談して決めることが大切です。
PD-L1・TMB・MSIの検査結果が出るまでにどのくらいの期間がかかるのか?
PD-L1のIHC検査は1〜2週間、MSI検査(IHCまたはPCR)は約2週間、がんゲノムプロファイリング検査(TMBとMSIを含む)は3〜4週間ほどが一般的な目安です。検査機関や検体の状態によって多少前後する場合もあります。
治療開始までのスケジュールに関わるため、検査の申し込み時期については主治医や看護師に早めに確認しておくと安心です。
バイオマーカーの検査結果が治療中に変わることはあるのか?
バイオマーカーの値は治療や時間の経過によって変動する場合があります。たとえばPD-L1の発現率は、化学療法や放射線治療の影響で上昇したり低下したりすることが報告されています。
TMBやMSIは遺伝子レベルの特徴であるため大幅に変わることは少ないものの、治療の途中で再検査を行い、改めて治療方針を見直すケースもあります。気になる点があれば主治医に相談してみてください。
References
DUFFY, Michael J.; CROWN, John. Biomarkers for predicting response to immunotherapy with immune checkpoint inhibitors in cancer patients. Clinical chemistry, 2019, 65.10: 1228-1238.
RIZZO, Alessandro; RICCI, Angela Dalia; BRANDI, Giovanni. PD-L1, TMB, MSI, and other predictors of response to immune checkpoint inhibitors in biliary tract cancer. Cancers, 2021, 13.3: 558.
SHI, Haotong, et al. Comparison of different predictive biomarker testing assays for PD-1/PD-L1 checkpoint inhibitors response: a systematic review and network meta-analysis. Frontiers in immunology, 2023, 14: 1265202.
BAI, Rilan, et al. Predictive biomarkers for cancer immunotherapy with immune checkpoint inhibitors. Biomarker research, 2020, 8.1: 34.
URUGA, Hironori; MINO-KENUDSON, Mari. Predictive biomarkers for response to immune checkpoint inhibitors in lung cancer: PD-L1 and beyond. Virchows Archiv, 2021, 478.1: 31-44.
SIVAPIRAGASAM, Abirami, et al. Predictive biomarkers for immune checkpoint inhibitors in metastatic breast cancer. Cancer medicine, 2021, 10.1: 53-61.
GJOERUP, Ole, et al. Identification and utilization of biomarkers to predict response to immune checkpoint inhibitors. The AAPS Journal, 2020, 22.6: 132.
KLEIN, Oliver, et al. Evaluation of TMB as a predictive biomarker in patients with solid cancers treated with anti-PD-1/CTLA-4 combination immunotherapy. Cancer Cell, 2021, 39.5: 592-593.
WANG, Ye, et al. FDA-approved and emerging next generation predictive biomarkers for immune checkpoint inhibitors in cancer patients. Frontiers in oncology, 2021, 11: 683419.
LEFLER, Daniel S.; SNOOK, Adam E.; BASHIR, Babar. Immune checkpoint inhibitors in luminal gastrointestinal malignancies: Going beyond MSI-H/dMMR, TMB and PD-L1. Immunotherapy, 2022, 14.11: 885-902.
この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医