
がんによる障害年金の金額は病名だけで一律に決まるのではなく、認められた等級と、原因となった病気で初めて受診した時点に加入していた年金制度によって決まります。国民年金に対応する障害基礎年金は定額で、厚生年金に対応する障害厚生年金は過去の報酬と加入期間を反映する仕組みです。
2026年度の障害基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれなら2級が年847,300円、1級が年1,059,125円です。対象となる子や配偶者がいると加算される一方、働いて得た賃金だけを理由に一律で減額する仕組みとは別です。
治療費に加えて仕事を休む期間が重なると、家計への負担は患者さん本人だけでなく世帯全体に及びます。年額、実際の振込額、加算、支給調整を分けて確認すると、毎月使える金額を現実に近い形で見積もれます。
がんの障害年金は加入制度と等級で金額が決まる
金額を調べる最初の分岐は、障害基礎年金だけを受ける形か、障害厚生年金が上乗せされる形かという点です。次に1級から3級のどこに認められたかを当てはめると、計算の土台が見えてきます。
最初に加入していた制度を確かめる
国民年金の加入中に原因となる病気で初めて受診した場合は、原則として障害基礎年金の1級または2級が対象です。会社員や公務員として厚生年金に加入中だった場合は、1級から3級の障害厚生年金が対象となり、1級または2級では障害基礎年金も合わせて受け取ります。
退職後にがんと診断されたとしても、金額の種類を決める基準は診断時の肩書ではなく初診日の加入記録です。転職や退職を挟んでいるときは、ねんきん定期便やねんきんネットの記録と受診日を照らし合わせると整理しやすくなります。
等級によって受け取る層が変わる
| 認められた等級 | 国民年金が基準 | 厚生年金が基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 障害基礎年金 | 障害基礎年金と障害厚生年金 |
| 2級 | 障害基礎年金 | 障害基礎年金と障害厚生年金 |
| 3級 | 対象なし | 障害厚生年金 |
1級は2級より障害の程度が重い区分で、障害基礎年金は2級額の1.25倍です。3級は厚生年金にだけ設けられており、報酬比例の年金額には年度ごとの最低保障があります。
がんの部位や治療名から等級を自動的に当てはめる仕組みではなく、認められた等級が決まったあとに、その区分を金額表へ当てはめます。
年額と月額換算を分けて読む
公表額は年額が基本であり、家計表へ入れる際は年額を12で割った月額換算が便利です。ただし、実際には毎月同額が振り込まれるのではなく、原則として偶数月に2カ月分ずつ支払われます。
年額を12で割ると1円未満の端数が出る場合があり、単純な月額換算と各回の振込額は一致しないケースがあります。生活費の見通しには、年金証書や年金額改定通知書に記載された年額を基準として、次の支払月までの資金を配分する視点が必要です。
障害基礎年金の定額を2026年度で確認
障害基礎年金は過去の収入額で増減せず、等級と生年月日の区分に応じた定額です。2026年4月分からは前年より改定されており、古い年度の案内との混同を避ける必要があります。
1級と2級の年額
| 生年月日 | 1級の年額 | 2級の年額 |
|---|---|---|
| 昭和31年4月2日以後 | 1,059,125円 | 847,300円 |
| 昭和31年4月1日以前 | 1,056,125円 | 844,900円 |
昭和31年4月2日以後生まれの年額を12で割ると、1級は約88,260円、2級は約70,608円です。これは加算前の概算であり、2カ月ごとの振込額とは分けて扱います。
生年月日で金額が分かれるのは、過去の年金額改定で年齢区分ごとの改定率に差が生じたためです。本人の年齢が高いほど障害が重いという意味ではなく、等級判定とは切り離して読みます。
納付月数では基本額が減らない
老齢基礎年金は納付した月数によって満額から変わります。これに対し、障害基礎年金の基本額は納付月数に比例する制度とは異なります。受給要件を満たして1級または2級に認められれば、表の定額が計算の出発点です。
保険料の納付状況は、受け取れるかどうかを確認する要件として別に扱われます。金額の見積もりでは「納付が少ないから年額も同じ割合で下がる」と計算しないよう注意が必要です。
税引き後ではなく非課税の給付
障害基礎年金と障害厚生年金は、所得税および住民税の課税対象にならない年金です。公表された年額から所得税が差し引かれる前提を置かずに家計を組めます。
一方、税法上の所得に含まれない点と、ほかの制度が用いる収入判定は別の基準です。利用中の給付や扶養の認定がある場合は、その制度が障害年金を収入として扱うかを個別に確かめます。
障害厚生年金は報酬比例で金額が変わる
障害厚生年金の中心は、厚生年金に加入していた期間の標準報酬を基に計算する報酬比例部分です。同じ等級でも給与や賞与の記録、加入期間が異なれば受給額に差が出ます。
1級から3級までの計算の骨格
| 等級 | 障害厚生年金の本体 | 合わせて受ける年金 |
|---|---|---|
| 1級 | 報酬比例額×1.25 | 1級の障害基礎年金 |
| 2級 | 報酬比例額 | 2級の障害基礎年金 |
| 3級 | 報酬比例額 | 障害基礎年金なし |
1級と2級では、表の障害厚生年金に同じ等級の障害基礎年金が加わるため、片方だけを見た試算では不足します。さらに1級または2級で条件に合う配偶者がいれば、障害厚生年金側へ加給年金が上乗せされます。
3級は障害厚生年金だけで、障害基礎年金と配偶者の加給年金は対象外です。年金額を比べる際は、等級ごとに受け取る層の数が違う点まで含めます。
報酬比例額が人によって違う理由
報酬比例額には、保険料計算の基礎となった給与と賞与の記録、厚生年金の加入月数が反映されます。単純な直近の手取り月収だけでは計算できません。同じ会社や同じ職種であっても年額は個人ごとに異なります。
加入期間が300月に満たない場合は、障害厚生年金の計算上300月とみなす扱いがあります。受診後の加入期間は計算の基礎に入らないため、現在の給与だけを25年分へ引き延ばす試算も実額からずれます。
3級には最低保障額が設定される
2026年度の3級最低保障額は、昭和31年4月2日以後生まれで年635,500円、同年4月1日以前生まれで年633,700円です。計算した報酬比例額が最低保障額を下回る場合に、この金額が年額の基準となります。
最低保障は3級の全員へ別枠で加える金額ではなく、報酬比例額が低いときの下限です。1級または2級では障害基礎年金も支給されるため、この3級用の最低保障は重ねる対象外です。
子の加算と配偶者の加給年金
家族がいるだけで一律に増えるのではなく、子の加算は障害基礎年金へ、配偶者の加給年金は1級または2級の障害厚生年金へ付きます。対象者の年齢や生計維持の条件を満たしているかが金額を左右します。
子の加算額と対象年齢
| 対象 | 2026年度の年額 | 加算先 |
|---|---|---|
| 1人目・2人目の子 | 1人につき243,800円 | 障害基礎年金 |
| 3人目以降の子 | 1人につき81,300円 | 障害基礎年金 |
| 65歳未満の配偶者 | 243,800円 | 1級・2級の障害厚生年金 |
子は、原則として18歳になった後の最初の3月31日までが対象です。20歳未満で1級または2級の障害の状態にある子も含まれ、受給者によって生計を維持されている必要があります。
第1子と第2子は各243,800円ですが、第3子からは各81,300円へ変わります。人数を掛ける前に、年度末の年齢と障害の状態に関する条件を1人ずつ確認します。
配偶者の加給年金が付く範囲
配偶者の加給年金は年243,800円で、障害厚生年金の1級または2級を受ける方に生計を維持されている、原則65歳未満の配偶者が対象です。障害基礎年金だけを受ける方や、障害厚生年金3級の方は対象に含まれません。
配偶者が一定の老齢厚生年金を受ける権利を持つときや、障害年金を受けられる間は、加給年金が支給停止となる場合があります。実際に老齢厚生年金が振り込まれていなくても、受給権の有無が影響する点に注意が必要です。
世帯の概算は本体と加算を分ける
昭和31年4月2日以後生まれで障害基礎年金2級を受け、対象となる子が2人いる場合は、847,300円に243,800円を2人分加え、年1,334,900円が概算です。月額換算では約111,242円ですが、実際の振込は2カ月単位となります。
障害厚生年金2級で対象配偶者と子がいる場合は、障害基礎年金、子の加算、報酬比例額、配偶者の加給年金を別々に確認します。年齢到達、離婚、死亡、生計維持関係の変化により加算が終わると、世帯の受取総額も変わります。
働いて得る収入で障害年金の支給額はどう変わる?
障害年金は、一般には給与があるという理由だけで機械的に減額する制度とは異なります。仕事を続けながら受け取る方もいますが、20歳前の傷病による障害基礎年金には本人所得による支給制限があります。
給与額だけで一律停止にはならない
老齢厚生年金には賃金との合計で支給を調整する在職老齢年金がありますが、障害年金は同じ計算の対象外です。厚生年金へ加入して働き続けても、それだけで障害基礎年金や障害厚生年金を自動減額する扱いにはなりません。
一方、仕事内容、勤務時間、職場から受ける配慮などは、障害の状態を確認する際の資料になり得ます。収入の数字と医学的・生活上の状態は別の論点なので、働いている事実だけから支給継続や停止を断定するのは避けます。
20歳前の傷病では前年所得を確認
20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には、本人所得による支給制限があります。前年所得が3,761,000円を超えると2分の1が支給停止となり、4,794,000円を超えると全額停止となります。扶養親族がいない場合の2026年4月時点の基準であり、給与の額面ではなく税法上の所得額で判定します。
扶養親族がいる場合は、親族の区分に応じて所得制限額が加算されます。前年所得に基づく停止期間は10月分から翌年9月分までなので、就職や勤務時間の増加があった年は翌年の判定時期まで見込みます。
勤務状況が変わったときの確認先
収入が増えたときは、受給している年金が20歳前の傷病による障害基礎年金かを年金証書で確認します。該当する場合は、前年所得と扶養親族の人数をそろえて年金事務所へ照会すると、支給停止の見込みを具体的に確認できます。
勤務時間の増減や退職が直ちに翌月の年金額へ連動する扱いではなく、障害状態の確認時期と所得制限の判定時期は分かれます。届いた通知書に記載された対象期間と金額を読み取りましょう。
支給開始月と実際の振込周期
年金を受ける権利が発生する月と、銀行口座へ入金される月にはずれがあります。何月分から支給されるかを確認し、原則として偶数月に前2カ月分が入る周期へ置き換えると、当面の資金繰りを立てやすくなります。
支給対象は権利発生の翌月分から
障害認定日に等級へ該当していると認められた場合は、原則としてその翌月分から年金が発生します。その後に状態が重くなって該当した場合は請求日の翌月分からとなるため、同じ決定日でも支給対象の始まりが違います。
決定通知が届いた月だけでは、初回振込に何カ月分が含まれるかの判断は困難です。年金証書にある受給権発生日と、支給開始年月を確認し、初回の支払額の内訳と照合します。
偶数月に前月までの2カ月分を受け取る
| 支払月 | 原則として含まれる分 | 家計上の扱い |
|---|---|---|
| 2月 | 12月・1月分 | 2カ月分を配分 |
| 4月 | 2月・3月分 | 2カ月分を配分 |
| 6月 | 4月・5月分 | 改定後の初回 |
| 8月・10月・12月 | 直前の2カ月分 | 次回まで配分 |
支払日は原則として偶数月の15日です。金融機関の休業日に当たる場合は直前の営業日となります。月額換算をそのまま毎月の収入欄へ置くなら、振込直後に2カ月分を分けて管理すると使い過ぎを防げます。
初回振込と端数は通知書で確かめる
初回は通常の定期支払とは別の日に振り込まれたり、複数月分がまとめられたりする場合があります。加算の開始や支給調整が同時に反映されると、年額を6等分した数字と一致しないケースも生じます。
通帳の入金額だけで内訳を推測せず、年金支払通知書や年金振込通知書を保管して照合します。金額の根拠が読み取れないときは、基礎年金番号を用意したうえで、ねんきんダイヤルまたは年金事務所へ支払対象月を確認してください。
年度改定と他の給付で障害年金の受取額が動く
決定時の年額が将来も固定されるわけではなく、毎年度の改定や家族状況の変化により金額は動きます。さらに同じ傷病や同じ期間を対象とする公的給付があると、一方が調整される場合もあります。
年金額は原則として毎年度改定
公的年金額は、物価や賃金の変動と年金制度の調整ルールに基づき、原則として年度ごとに見直されます。2026年度は基礎年金が前年度比1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%引き上げられました。
4月分から変わった年額は、通常6月の支払いから反映されます。前年の案内にある数字をそのまま家計表へ残さず、毎年届く年金額改定通知書で基本額と加算額を更新します。
同じ期間の公的給付は単純合算しない
労災保険の障害補償年金など、障害年金と同じ傷病を支給理由とする給付を同じ期間に受けると、制度に定められた調整が行われます。両方の決定額をそのまま足した金額が世帯収入になるとは限りません。
児童扶養手当も、公的年金の受給開始や年額改定によって全部または一部が停止される可能性があります。併用している給付があるときは、給付名、対象傷病、対象期間、決定年額を整理します。その内容を双方の窓口へ伝えます。
通知が届いたら世帯の手取りを更新
確認する書類は、年金証書、年金額改定通知書、年金振込通知書、併用する給付の決定通知です。書類ごとに年額と支払額が混在するため、対象期間をそろえてから比較しましょう。
治療中に収入の見通しが変わる不安は、数字が確定するまで待つほど大きくなりがちです。現時点の確定額と未決定の加算を分け、未決定分を生活費へ先に組み込まない形なら、治療と暮らしの選択肢を狭めにくくなります。
よくある質問
がんで障害年金2級なら毎月いくら受け取れますか?
障害基礎年金2級は、昭和31年4月2日以後生まれなら2026年度の年額847,300円で、月額換算は約70,608円です。対象となる子がいれば加算され、厚生年金加入中に初診日がある方は報酬比例の障害厚生年金も加わります。
働き始めると障害年金はすぐ減りますか?
給与を得たという理由だけで、障害年金がすぐ一律に減る制度とは異なります。20歳前の傷病による障害基礎年金には前年所得の制限があり、勤務状況は障害状態を確認する資料にもなり得ます。
年金証書で年金の種類を確認し、20歳前の傷病による給付なら前年所得と扶養人数を年金事務所へ伝えて、10月分以降の見込みを確かめましょう。
配偶者がいれば必ず加給年金が付きますか?
配偶者がいるだけでは付かず、障害厚生年金1級または2級の受給者に生計を維持されている、原則65歳未満の配偶者が対象です。配偶者が一定の老齢厚生年金の受給権を持つ場合や障害年金を受けられる間は、加給年金が停止される場合があります。
配偶者の生年月日と受給中または受給権のある年金名を確認し、年金事務所で加算の可否を照会してください。
年金額は一度決まったら同じままですか?
同じままではなく、公的年金は原則として毎年度改定され、等級や家族状況が変わった場合にも受取額が動きます。4月分からの改定は通常6月支払いに反映されるため、年金額改定通知書が届いたら家計表の年額と月額換算を更新しましょう。
振込額が年額の6分の1と合わないときはどうしますか?
初回のまとめ払い、加算の開始・終了、別の給付との調整、端数処理があると、単純な6分の1と一致しない場合があります。通帳だけで判断せず、年金振込通知書で対象月と各種調整額を確認します。
内訳が判別できない場合は、年金証書と通知書を手元に置き、ねんきんダイヤルまたは年金事務所へ対象月ごとの支払額を問い合わせてください。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医