障害年金・支援 category

がんの治療や症状で、日常生活や仕事への支障が続いている場合は、障害年金の対象になります。判断の中心は病名や病期ではなく、身の回りのことや働くことにどの程度の制限があるかです。
障害年金がもらえる条件は、初診日に公的年金へ入っていたこと、保険料の納付、障害の程度の3つです。金額は初診日に入っていた制度と等級で決まり、年度ごとに改定があります。
申請は初診日の確認から始まり、医師の診断書と本人の申立書をそろえて年金事務所などへ出す流れになるでしょう。
がんも障害年金の対象になる?

がんも障害年金の対象です。手足の障害だけでなく、がんによる痛みや衰弱、治療後の影響も判断の対象に含みます。
外から見えにくい不調も判断の材料
抗がん剤によるだるさやしびれ、人工肛門を造設したあとの生活上の制限なども、障害の程度を判断する材料です。同じ病期の患者さんでも、食事や着替えを自分で行えるか、通勤や勤務を続けられるかによって状況は異なります。
障害年金の3条件は初診日・保険料の納付・障害の程度

受給の可否は、初診日に関する要件と保険料の納付状況、障害の程度の3つで決まります。
- 初診日 … 原因となった病気や症状で初めて受診した日に、公的年金に加入していたか
- 保険料の納付 … 初診日の前々月までの加入期間の3分の2以上で保険料を納めているか、免除を受けているか、または初診日の前々月までの直近1年間に未納がないか
- 障害の程度 … 日常生活や仕事への支障が、定められた等級に当たるか
初診日と保険料の記録を確かめる
初診日は、現在の病院でがんと診断を受けた日と一致するとは限らず、それ以前に症状を相談した受診が関わる場合もあります。受診先と時期をたどり、その日に加入していた制度と保険料の記録を年金事務所で確認するのが出発点です。
申請は原則として初診日から1年6か月たった障害認定日以降ですが、人工肛門をつくった場合などは、それより早い日が認定日になります。
働いている場合も援助や勤務の制限で判断
1級の目安は身の回りの動作にほぼ常に介助が要る状態、2級は日常生活に大きな制限があり、働いて収入を得るのが難しい状態です。3級は働くうえで大きな制限があり、勤務時間や業務を大幅に減らす必要がある状態などが当たります。
がんの障害年金では、就労の有無だけでなく、短時間勤務や周囲の援助がなければ仕事を続けられない状況も障害等級の判断に関わります。
加入制度と等級で変わる障害年金の金額

金額を確かめる際の基準は、現在ではなく初診日に加入していた年金制度です。障害基礎年金は定額を基本とし、障害厚生年金は過去の報酬や加入期間を反映します。
| 比較する項目 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
|---|---|---|
| 初診日の加入制度 | 国民年金 | 厚生年金 |
| 対象の等級 | 1級・2級 | 1級・2級・3級 |
| 金額の基本 | 等級に応じた定額 | 報酬と加入期間に応じた額 |
家族への加算も含めて受取額を確認
初診日に厚生年金に加入していた場合、1級・2級では障害基礎年金も合わせて受け取る仕組みで、3級とは内訳が異なります。
18歳になった年度の末までの子がいて生計維持などの条件を満たす場合、障害基礎年金に子の加算が付きます。65歳未満の配偶者がいて生計維持などの条件を満たす場合は、1級・2級の障害厚生年金に配偶者の加算が付く仕組みです。
がんでもらえる障害年金の金額は年度ごとに変わります。家計の見通しを立てる際は、その年度の額が基準です。
障害年金の申請は初診日の確認から

初診日の資料と診断書、申立書をそろえて提出し、結果が出るまでの目安はおよそ3か月です。治療と並行して準備を進めます。
受診先をたどって診断書を依頼
受診状況等証明書は、初診日の証明のために最初にかかった医療機関で書いてもらう書類です。提出先は年金事務所や街角の年金相談センターで、初診日に国民年金だけに入っていた人は市区町村の窓口でも提出できます。
申立書には支障の頻度と期間を記す
申立書には、できない動作に加え、家族や職場が代わりに担う作業とその頻度・期間を記します。診断書を頼む医師には、治療後に横になる時間や勤務の変更など、診察室では見えにくい暮らしの支障を伝えます。
がんは障害年金に認定されにくいとの声がある理由の1つは、だるさなどの支障が書類に表れにくく、認定の判断が難しくなるためです。申請の手順に沿って書類をそろえ、仕事を休んだ時期などを診断書と申立書で見比べると、食い違いに気づけます。
障害年金をさかのぼって請求する場合と傷病手当金を受けている場合
障害認定日は、初診日から原則1年6か月後の日です。その時点で受給条件に当たっていた場合は、さかのぼって障害年金を請求できます。
障害認定日当時の状態を資料で示す
さかのぼって請求する際には、障害認定日当時の障害の程度を示す医療記録が必要です。現在の状態だけで過去分の支給は決まらず、過去の分として受け取れるのは5年前の分までです。
同じ期間の給付は傷病手当金側で精算
傷病手当金は、勤め先の健康保険から出る、病気で働けない期間の収入を補う給付です。同じ病気で障害厚生年金と重なる期間は、年金の額が傷病手当金より少なければ差額だけを受け取り、多ければ傷病手当金は出ません。
障害年金の遡及請求で傷病手当金との併用期間が生じる場合は、加入する健康保険の窓口に支給期間と額を伝えると、返還の要否や金額が分かります。
障害年金の相談先と社労士へ依頼する範囲
社労士は社会保険労務士の略で、年金や社会保険の手続きを扱う国家資格です。自分で申請を進める場合も、年金事務所やがん相談支援センターの無料相談を利用できます。
費用と任せる作業を契約前に確認
障害年金申請を社労士に依頼すると、初診日の資料集めや申立書の作成、年金事務所への提出を任せられます。依頼前には費用の決め方と支払いの時期、どの作業まで任せられるかを確かめましょう。
障害年金とは別に使える暮らしと医療費の支援
身体機能の障害への支援と医療費の負担軽減には、障害年金とは別の制度があります。それぞれ基準や窓口が異なるため、年金の結果だけで利用の可否は決まりません。
身体障害者手帳と高額療養費制度
身体障害者手帳は身体機能の障害が基準で、人工肛門をつくった場合などが対象です。がん患者の身体障害者手帳の取得を考える際は、残った機能障害が基準に当たるかが判断の鍵です。
高額療養費制度は、対象となる医療費の自己負担が上限を超えた場合に負担を抑える仕組みで、収入を補う障害年金とは目的が異なります。差額ベッド代や食事代など対象外の費用もあるため、入院費全体が上限内に収まるわけではありません。
よくある質問
最初の病院にカルテが残っていないときはどうしますか?
診察券や紹介状、お薬手帳など、当時の受診が分かる資料を集め、年金事務所へ相談します。カルテがないだけで申請を諦めず、手元の資料で初診日を示せるか、追加で何が必要かを相談すると、次に探す資料や問い合わせ先が分かります。
障害年金の結果に納得できないときはどうしますか?
決定を知った日の翌日から3か月以内に審査請求ができます。不支給や等級の決定に納得できない場合は、通知に記載の理由と提出済みの書類を見比べ、どの判断に異議があるかを整理して、期限内に手続きを進める必要があります。
受け取り始めたあとに状態が変わったらどうなりますか?
定期的に診断書を出す更新があり、その時点の状態に応じて等級も見直します。受給開始時の等級がずっと続くとは限らないため、届いた案内の提出期限を守り、前回から生活や仕事にどんな変化があったかを医師に伝える準備が必要です。
老齢年金を受け取る年齢になったらどうなりますか?
65歳以降は、障害年金と老齢年金の組み合わせを選ぶ形になります。両方をそれぞれ全額受け取れるとは限らず、加入歴などによって選べる組み合わせや額が異なるため、年金事務所で自分の場合の受取額を比べてから選ぶのが大切です。
障害年金に税金はかかりますか?
障害年金は非課税で、受け取った年金自体に所得税や住民税はかかりません。働きながら受給している場合の給与などは別に扱うため、障害年金を受けているから収入全体が非課税になるわけではなく、年金とほかの収入を分けて考えます。
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前田 祐助医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。
【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医