
今年もがん検診を受けるかどうかは、がんの種類と検査方法で答えが変わります。対象年齢は、胃が原則50歳以上、肺・大腸が40歳以上、乳がんが40歳以上の女性、子宮頸がんが20歳以上の女性です。
間隔は、肺・大腸が年1回、胃・乳・子宮頸部の細胞診が原則2年に1回です。子宮頸がんのHPV検査単独法は30歳以上が対象で、原則5年に1回となります。昨年も受けたのに今年も案内が届いて迷ったら、前回受けた検査の名前と見比べてみましょう。
この記事では、5つのがん検診の対象年齢と推奨間隔、短い間隔で受ける不利益、年齢の基準から外れるときの判断を解説します。
がん検診の対象年齢と間隔を一覧で確認
年齢だけで受診時期を決めず、検査方法と前回受けた時期を合わせて確認します。胃と子宮頸がんは、同じがんの検診でも方法によって対象や間隔が変わるためです。
5つのがんで異なる開始年齢と受診間隔
市区町村の実施基準を定める厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の2025年7月1日一部改正版では、対象年齢と間隔を次のように定めています。対象者は、その市区町村に居住する人です。
| 検診の種類 | 対象年齢 | 原則の間隔 |
|---|---|---|
| 胃がん | 50歳以上 | 2年に1回 |
| 肺がん | 40歳以上 | 年1回 |
| 大腸がん | 40歳以上 | 年1回 |
| 乳がん | 40歳以上の女性 | 2年に1回 |
| 子宮頸がん・細胞診 | 20歳以上の女性 | 2年に1回 |
| 子宮頸がん・HPV検査単独法 | 30歳以上の女性 | 5年に1回 |
「子宮の検診」という呼び方だけでは検査の対象が曖昧になるため、案内では子宮頸がん検診かを確認します。子宮頸部とは、腟につながる子宮の入り口付近で、この検診は子宮全体の病気をまとめて調べる検査とは異なります。
胃のエックス線検査には例外がある
胃がん検診のうち胃部エックス線検査は、当分の間、40歳以上を対象にしてもよく、年1回の実施も認められています。
ただし、この例外は胃内視鏡検査にはそのまま当てはまらないので注意しましょう。
たとえば、45歳で胃の検診の案内を受け取った人は、年齢の誤りだと判断する前に、検査名が胃部エックス線かを見ます。50歳以上で胃内視鏡を受ける人は原則2年に1回を基準にし、通院中に別の時期を指定されていれば、その理由を受診先で確認しましょう。
対象者と特に受診を勧める年齢は別の区分
「受診を特に推奨する年齢」は、検診の対象者の中で特に受診を勧める範囲を示します。その年齢を過ぎたら一律に対象外になる、という意味ではありません。
| 検診の種類 | 特に受診を勧める年齢 | 区分を読む際の注意 |
|---|---|---|
| 胃がん | 50〜69歳 | エックス線の40歳以上という例外とは区別 |
| 肺がん・大腸がん・乳がん | 40〜69歳 | 乳がんは女性が対象 |
| 子宮頸がん・細胞診 | 20〜69歳 | 対象自体は20歳以上の女性 |
| 子宮頸がん・HPV検査単独法 | 30〜60歳 | 61歳以上の追跡検査対象者も含む |
検診の対象者であれば、特に受診を勧める年齢の範囲外でも、受診の機会を提供する扱いです。「69歳まで」という数字だけを見て検診を終える判断をせず、年齢と体の状態を合わせて検討する区分です。
案内の検査名から調べる内容を読み取る
受診間隔を正しく当てはめるには、実際に受けた検査名が必要です。胃の内視鏡とエックス線、子宮頸がんの細胞診とHPV検査のように、名称の違いが次の予定に関わります。
胃は画像で内側の表面を調べる
胃がん検診は、問診に加えて胃部エックス線検査か胃内視鏡検査のいずれかを行います。問診とは、これまでの病気や体の状態などを質問して確認する診察の一部です。
胃部エックス線検査は、バリウムという造影剤を使って胃の形や表面の状態を画像に映す検査で、胃内視鏡検査は細い管状のカメラで胃の内側を観察します。検査の仕組みが異なるため、以前「胃の検査を受けた」という記憶だけでは、今回の案内と同じ方法か判断しにくくなります。
前回の結果に書かれた検査名を受診日と一緒に残しておくと、原則の間隔とエックス線の例外を取り違えずに済みます。前回が検診だったのか、病気を調べる診療だったのかも確かめておきましょう。
肺は胸の画像、大腸は便の中の血液を調べる
肺がん検診では胸部エックス線検査、大腸がん検診では便潜血検査を用い、同じ年1回の検診でも調べる場所や提出するものが異なります。
| 検診 | 指針にある検査方法 | 検査名の意味 |
|---|---|---|
| 肺がん | 問診・胸部エックス線検査 | 胸の画像を撮影して調べる |
| 肺がんの一定の対象者 | 喀痰細胞診 | たんに含まれる細胞を調べる |
| 大腸がん | 問診・免疫便潜血検査2日法 | 2日分の便を採取して血液の有無を調べる |
喀痰細胞診は、原則として50歳以上で、喫煙指数が600以上の人に行います。喫煙指数は1日に吸う本数に吸っていた年数を掛けた数で、肺の検診を受ける全員がたんの検査の対象になるわけではありません。
大腸の検査でいう「2日法」は便を採る日数を指し、検診を2年に1回にする意味とは異なります。肺と大腸の予定を一緒に管理する人も、どちらか一方を受けた日で両方を受診済みにせず、それぞれの記録を残す方法が確実です。
乳房と子宮頸部は検査方法まで照合する
乳がん検診は問診とマンモグラフィという乳房のエックス線撮影を行い、40歳以上50歳未満では2方向から撮影します。視触診という目で見たり触れたりする診察は推奨されておらず、それだけを受けた記録はマンモグラフィの記録と区別が必要です。
子宮頸部の細胞診は、入り口付近から採った細胞の形を調べる検査で、問診に加えて見た目の観察や内診も行います。内診は腟などを通じて骨盤内の状態を確認する診察で、HPV検査単独法では問診と見た目の観察に加え、子宮頸がんに関係するヒトパピローマウイルスへの感染を調べます。
子宮頸がん検診を受けたという記録だけでは、次回が2年後なのか5年後なのかを区別できないため、結果の検査名と次回予定を一緒に確認しましょう。検査方法が書かれていないときは、受診した医療機関へ照会できます。
がんの種類で受診間隔が違う理由
受診間隔は、がんの進み方だけでなく、何を調べる検査か、繰り返す利益と負担がどう釣り合うかを踏まえた設定です。年1回の検診が2年に1回の検診より優れている、という比較とは異なります。
回数よりも死亡を減らす利益で判断する
がん検診の目的は、早期発見と早期治療を通じて、そのがんで亡くなる人を減らすことです。見つかった数の多さだけを評価すると、検査やその後の対応で生じる負担を見落としてしまいます。
胃内視鏡と胃部エックス線による検診は、いずれも胃がんによる死亡の減少との関連が日本の住民の研究で報告されています。受けた人と受けなかった人の健康状態などの違いを含む観察研究のため、この結果だけから受診頻度を増やせば利益が増すとは判断できません。
通常の予定を立てるときは、国内の対象年齢と推奨間隔を基準にします。研究で利益が示された検査でも、対象者や受け方が違えば得られる結果も変わります。市区町村で示された方法と間隔を照合する際も、海外の研究の頻度をそのまま当てはめずに読む必要があります。
定期的に続ける意味と間隔を縮める意味は異なる
大腸がんの便潜血検査は、1回受けて終わりにせず、決められた間隔で継続する検診です。繰り返し受けていた人ほど大腸がんで亡くなる危険が低いという関連が、日本の住民を追った研究で報告されています。
ただし、受診回数の多い人で利益が見られたという結果は、年1回の検査をさらに短い間隔に変える根拠とは異なります。受けたかどうかを本人の回答で把握した観察研究であり、同じ人が間隔を縮めたときの効果を直接比べた結果ではないためです。
受診する年が抜けてしまった人は、過去の回数を埋め合わせようと短期間に集中させるより、今年の対象を確認して継続できる予定を立てます。年1回か2年に1回かを混同しないためにも、がんの種類ごとに次回の時期を記録しましょう。
検査の結果によって次の予定が分かれる
一覧の間隔は、通常の検診を繰り返す際の原則です。
一方、結果に応じた追加の検査や、すでに病気がある人の経過観察は、その人に指定された時期に受けます。
とくにHPV検査では、陰性だった人と陽性だった人で、その後の確認の時期が分かれます。「5年に1回」という数字だけを書き写すと、陽性後に必要な追跡検査まで先延ばしにしかねないため、予定は結果の説明とセットで受け取りましょう。
がん検診の間隔を短くしすぎる不利益
不安が強いと、検査を増やして安心したくなるのは自然な気持ちです。受診回数を増やす前に、何が心配なのかを整理すると、通常の検診を続けるのか、症状について診療を受けるのかを選びやすくなります。
追加の検査や結果待ちの負担が重なる
短い間隔で検査を受けるほど、追加の確認を求められる機会も重なります。がんがないのに疑いがあると判定される「偽陽性」が起きると、詳しく調べる精密検査の負担に加えて、結果を待つ間の不安も生じます。
米国で乳がん検診を受けた903,495人の観察研究では、10年間に一度でも偽陽性を経験する確率は、毎年の受診で約50〜56%、2年ごとの受診で約36〜38%でした1)。この数値は米国の検査や受診状況で得られたもので、日本で同じ割合になるという意味ではありません。
毎年受ける場合の利益を判断するときには、発見できる病変だけでなく、追加の検査を経験する人が増える点も比べて考えましょう。特に症状がなく、検査後に別の指示も受けていないなら、自己判断で次回を早める前に通常の間隔を確かめるのが基本です。
撮影回数が増えると放射線の負担も積み重なる
マンモグラフィはエックス線を使うため、回数が増えれば放射線を受ける機会も増えます。その不利益は検診の利益に比べて小さいと推定される一方、頻度や追加の撮影によって積み重なると、米国の女性を想定した計算による研究で示されています。
これは実際に全員を追跡して測った発生数ではなく、条件を置いて計算した推定です。放射線への心配だけで必要な検診をやめる判断にも、負担が小さいから回数を増やしてよいという判断にも、単独で用いるには限界があります。
心配の内容に合わせて相談先を選ぶ
次の検診まで待つのが不安なときは、受診間隔への疑問と、現在の体の変化を分けて伝えると相談が具体的になります。予定の確認なら市区町村の健康づくりの担当課、体調や通院中の検査との関係ならかかりつけ医が相談先です。
| 気になっている点 | 整理する情報 | 相談先 |
|---|---|---|
| 前回から十分に間隔が空いているか | 前回の検査名・受診日 | 市区町村の健康づくりの担当課 |
| 通院中の検査と次の検診の関係 | 診療で受けた検査・次回の指示 | かかりつけ医 |
| 年齢と持病から受診を続けるか | 過去の結果・体調・検査の負担 | かかりつけ医 |
症状があるときは検診の日を待たず医療機関を受診し、たんに血が混じる血痰や、月経以外の出血である不正性器出血が最近6か月以内にあった人は、指針でも医療機関への受診が優先されています。
HPV検査で5年の間隔を空けられる条件
子宮頸がん検診のHPV検査単独法では、陰性だった人のその後の危険が低いという性質が、長い間隔を支えています。陽性後の追跡検査が必要な人には、通常の5年間隔を当てはめないよう気をつけましょう。
細胞の変化とウイルス感染では調べる対象が違う
細胞診は採った細胞に異常な形があるかを調べ、HPV検査はがんに関係するウイルスへの感染を調べます。どちらも同じ子宮頸部を対象にしていても、検査が答えている問いが異なります。
スウェーデンの32〜38歳の女性12,527人を含む試験の長期追跡では、HPV検査で陰性だった女性は、その後にがんになる前の異常である前がん病変が生じにくく、細胞診より長い間隔でも同程度の安全性を保てる結果でした2)。対象の年齢が限られた海外の研究であり、日本で何歳から何年ごとに受けるかは国内の指針で定められています。
陰性と陽性で次回の時期を分ける
HPV検査単独法で陽性の場合は、採取した試料である検体を使って追加の細胞診を行い、その結果に応じて次の対応を決めます。この細胞診が、次に必要な検査を振り分けるトリアージ検査です。同じ検体を使うため、HPV陽性と分かった時点で細胞診のために採り直す仕組みとは異なります。
| 検査結果の状態 | 次の対応 | 間隔を読む際の注意 |
|---|---|---|
| HPV検査が陰性 | 通常の検診へ戻る | 原則5年に1回 |
| HPV検査が陽性 | 同じ検体で細胞診を行う | 陽性だけで5年後と決めない |
| 陽性後の細胞診が陰性 | 翌年度に追跡検査 | 細胞診が陰性でも通常の5年間隔とは異なる |
同じ「陰性」という言葉でも、HPV検査そのものが陰性なのか、HPV陽性の後の細胞診が陰性なのかで予定が違います。結果を読むときは陰性・陽性の文字だけを抜き出さず、どの検査の判定かと次回の指定を一緒に見ましょう。
検査方法が不明なら5年後と決めない
以前の子宮頸がん検診が細胞診だった人は、HPV検査があると聞いたという理由だけで次回を5年後へ延ばさないようにします。細胞診なら原則2年に1回で、HPV検査単独法の間隔へ自動的に変わるものではありません。
結果を手元で確認できないときは、前回の医療機関に検査名と次回の指定を尋ね、市区町村の健康づくりの担当課で自分が受ける検査の種類を確認できます。追跡検査の対象になっている人は、案内に書かれた時期を優先してください。
対象年齢に当てはまらないときの受け止め方
開始年齢より若い人と、特に受診を勧める年齢を超えた人では、確認する点が異なります。前者は検診の方法と対象の確認、後者は受診機会に加えて体の状態から見た利益と負担の検討が中心です。
開始年齢より若い人は検査ごとの基準を使う
乳がんの40歳以上という基準を子宮頸がんに当てはめるなど、ほかのがんの開始年齢から自分の予定を決めないようにします。女性は子宮頸部の細胞診が20歳以上で対象となり、HPV検査単独法では30歳以上という違いがあります。
胃がんも原則の開始は50歳ですが、40歳以上で胃部エックス線を受けられる例外があるため、対象年齢より若いという判断には検査名の確認が必要です。国の基準と市区町村の案内を照合したうえで、該当する検査が分からなければ健康づくりの担当課へ問い合わせます。
30歳代の女性は、乳房の普段の状態を意識して変化に気づくブレスト・アウェアネスを心がけ、異常に気づいたら専門の医療機関を早く受診するよう、指針で示されています。
70歳以降は体調と過去の受診歴も材料にする
70歳になっただけで、胃・肺・大腸・乳がんの検診や子宮頸部の細胞診が一律に終了する扱いではありません。受診の機会と、本人にとって続ける利益がどれほどあるかは、分けて考えましょう。
高齢の人では、これまで陰性が続いているか、持病が多いかによって、検診を追加する利益と負担の釣り合いが変わります。大腸がん検診を追加する利益は、陰性が続き持病の多い高齢者ほど小さいと、米国のデータを用いた計算による評価で推定されています。
この推定から日本の終了年齢を決めるのではなく、通院先で過去の結果と現在の体調を共有し、検査やその後の対応をどこまで受けられるかも相談しましょう。年齢だけで一律に続けたりやめたりするより、自分の状態に沿って判断できます。
年齢と前回の記録を合わせて今年の予定を決める
今年受ける検診を整理するときは、案内の対象年齢に加え、前回の検査名と受診年を照合します。
たとえば、52歳の女性が自宅で案内を開いたとき、昨年のマンモグラフィと胃内視鏡の結果を見つけたら、この2つは原則2年に1回として次回を整理します。肺と大腸は年1回として今年の対象を確認し、子宮頸がんは前回の方法が細胞診かHPV検査単独法かを結果で確かめる流れです。
通院中の検査に別の指定がある人は、その予定を通常の検診へ置き換えず、かかりつけ医に相談します。市区町村へ確認するときも「今年受けられるか」だけでなく、前回の受診日と方法を伝えると、確認が具体的になります。
よくある質問
40歳になったら5つのがん検診をすべて毎年受けますか?
すべてを毎年受ける基準ではありません。40歳以上で肺・大腸は年1回、女性の乳がんは2年に1回が原則で、胃は原則50歳以上から2年に1回です。
胃部エックス線には40歳以上や年1回の例外があり、子宮頸がんは方法に応じた対象年齢と間隔で予定を立てます。案内の検査名と、前回の受診年を照合しましょう。
去年、子宮頸がん検診が陰性なら5年間空けてもよいですか?
5年間空ける基準が当てはまるかは、陰性だった検査の種類で決まります。細胞診なら原則2年に1回、HPV検査単独法でHPV陰性なら原則5年に1回です。
HPV陽性の後に行った細胞診が陰性だった人は、翌年度の追跡検査が必要です。検査名が分からなければ受診した医療機関へ確認し、結果に書かれた次回の時期に従ってください。
69歳を過ぎると市区町村の検診を受けられなくなりますか?
69歳を過ぎても、対象者には受診機会を提供する扱いです。特に受診を勧める年齢の上限と、検診の対象年齢を区別します。
市区町村の健康づくりの担当課で受診機会を確認し、持病や検査の負担が気になるときは、過去の結果を持ってかかりつけ医へ相談できます。受けられるかという制度の確認と、体調から見て続けるかという判断を合わせて進めます。
受けそびれた分を短い間隔でまとめて受けたほうがよいですか?
受けそびれた回数を埋めるために短い間隔でまとめて受ける方法は、通常の推奨間隔とは異なります。今年受ける対象と前回の記録を確かめ、検査方法に合う間隔で続ける予定を立てましょう。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医