放射線治療の回数と期間の目安|なぜ毎日の通院が必要?治療スケジュールの理由

放射線治療の回数と期間の目安|なぜ毎日の通院が必要?治療スケジュールの理由

放射線治療を受けることになったとき、「何回くらい通院するのか」「どれくらいの期間がかかるのか」という疑問は、多くの方が真っ先に感じる不安のひとつでしょう。

一般的な放射線治療では、平日に毎日通院し、1回あたり数分の照射を25回から30回ほど繰り返すのが標準的な流れです。治療期間はおよそ5週間から6週間にわたります。

回数を分けるのには放射線医学上の明確な根拠があり、正常な組織を守りながらがん細胞に十分なダメージを与えるための工夫です。この記事では、治療回数や通院スケジュールの仕組みをわかりやすく解説します。

放射線治療は平均何回・何週間かかるのか|通院期間の全体像

放射線治療の平均的な回数は25回から35回程度で、平日に1回ずつ照射を行い、おおむね5週間から7週間で完了します。がんの種類や進行度、治療の目的(根治か緩和か)によって回数は変動するため、一律ではありません。

標準的な放射線治療は1日1回・週5回の照射が基本

多くの放射線治療では、月曜から金曜まで毎日1回の照射を行い、土日は休みとするスケジュールが採用されています。1回の照射にかかる時間は通常10分から20分程度ですが、実際に放射線が出ている時間は数分にすぎません。

残りの時間は体の位置を正確に合わせるための準備に使います。照射の精度が治療効果に直結するため、毎回の位置合わせが丁寧に行われます。

根治目的と緩和目的で通院回数は大きく変わる

がんの完全な消失や制御を目指す根治照射の場合、高い線量が必要なため回数も多くなり、30回前後の照射が行われることが一般的です。一方、痛みの緩和や出血のコントロールを目的とした緩和照射では、5回から10回と少ない回数で終わるケースもあります。

患者さん一人ひとりの体調や生活状況を考慮しながら、主治医が照射回数と期間を決定します。

根治照射と緩和照射の回数比較

照射の目的回数の目安期間の目安
根治照射25〜35回5〜7週間
術後照射15〜30回3〜6週間
緩和照射1〜10回1日〜2週間

1回あたりの照射時間は短くても通院の手間は毎日かかる

照射時間そのものは短いものの、着替えや位置合わせ、待ち時間を含めると、病院での滞在は30分から1時間程度になることが多いでしょう。毎日これを繰り返すため、通勤や家事との両立に悩む方は少なくありません。

治療開始前に職場や家族との調整を済ませておくことで、精神的な負担をかなり軽減できます。

なぜ毎日照射するのか|放射線治療を回数に分ける医学的な根拠

放射線治療で毎日の照射が求められるのは、がん細胞を確実に死滅させつつ、周囲の正常な細胞が回復する時間を確保するためです。この「分割照射」という考え方は、放射線医学の基礎理論に基づいています。

正常細胞の回復力を利用する「分割照射」の仕組み

放射線を1回で大量に照射すると、がん細胞だけでなく正常な細胞まで深刻なダメージを受けてしまいます。少量ずつ毎日照射すれば、正常細胞は24時間の休息の間にDNAの傷を修復できるのに対し、がん細胞はその修復能力が低いため、照射のたびにダメージが蓄積していきます。

この正常細胞とがん細胞の修復力の差を利用することが、分割照射の根幹にある発想です。

放射線医学を支える「4つのR」が毎日の照射を裏付ける

放射線治療のスケジュールは、Repair(修復)、Redistribution(再分布)、Reoxygenation(再酸素化)、Repopulation(再増殖)という4つの生物学的効果に基づいて設計されています。

照射と照射の間に正常細胞は損傷を修復し、がん細胞は細胞周期の中で放射線に弱い時期へ移動します。さらに、腫瘍内部の酸素が乏しい部分にも酸素が届くようになることで、次回の照射効果が高まるのです。

週末の休みにも治療効果を下げない工夫がある

土日の2日間は照射を行いませんが、これは正常組織が回復する時間として医学的にも有効に働きます。がん細胞がこの休息中に増殖し直すリスクも考慮されており、全体の治療日数が長引きすぎないよう綿密に計画されています。

治療期間の延長はがん制御率の低下につながる可能性があるため、やむを得ない事情で休んだ場合は、担当医と相談してスケジュールの調整を行います。

分割照射を支える4つのR

要素意味治療への影響
Repair(修復)正常細胞のDNA修復副作用の軽減
Redistribution(再分布)細胞周期の変動がん細胞の感受性向上
Reoxygenation(再酸素化)腫瘍への酸素供給照射効果の増強
Repopulation(再増殖)細胞の増殖治療期間管理の指標

がんの部位ごとに異なる放射線治療の照射回数と期間

放射線治療の回数は、がんが発生した部位や組織の放射線感受性によって大きく異なります。同じ放射線治療でも、乳がんと前立腺がんでは照射スケジュールがまったく違うことも珍しくありません。

乳がんの術後放射線治療は15回から25回が一般的

乳房温存手術後の放射線治療では、従来は50Gyを25回に分けて5週間かけて照射するのが標準でした。近年は40Gyを15回に分割し3週間で完了する「寡分割照射」が広く普及しており、従来法と同等の治療効果が確認されています。

さらに英国で行われた臨床試験では、26Gyを5回の照射で1週間のうちに完了するスケジュールでも、同様の有効性と安全性が示されました。

前立腺がんの放射線治療は20回から39回と幅が広い

前立腺がんの放射線治療では、従来の標準スケジュールとして74Gyから78Gyを37回から39回に分けて照射する方法が用いられてきました。前立腺がんは放射線に対する感受性が高く、1回あたりの照射量を増やして回数を減らす寡分割照射との相性が良いとされています。

現在は60Gyを20回に分ける4週間のスケジュールが新たな標準として定着しつつあり、患者さんの通院負担も軽減されています。

主ながんの部位別照射回数と期間

がんの部位照射回数の目安期間の目安
乳がん(術後)15〜25回3〜5週間
前立腺がん20〜39回4〜8週間
頭頸部がん30〜35回6〜7週間
肺がん(根治)30〜33回6〜7週間
子宮頸がん25〜28回5〜6週間

頭頸部がんや肺がんでは30回以上の照射が必要なことも多い

頭頸部がんの放射線治療では、70Gyを35回に分けて7週間かけるのが代表的な照射スケジュールです。咽頭や喉頭の粘膜は放射線に敏感なため、1回あたりの照射量を抑えながら回数を重ねることで、副作用を管理しやすくしています。

肺がんの場合も同様に30回を超える照射が標準的ですが、早期の小さな腫瘍では体幹部定位放射線治療(SBRT)により3回から5回の照射で治療を完了できるケースも増えてきました。

放射線治療の副作用と照射回数の関係|からだへの負担を減らす分割の工夫

放射線治療では照射の回数を適切に分けることで、副作用の程度をコントロールしています。1回あたりの照射量と総回数のバランスが、治療効果と安全性の両立を左右する鍵となります。

急性期の副作用は治療回数が進むにつれて出やすくなる

放射線治療の副作用は「急性期」と「晩期」の2種類に分かれます。急性期の副作用は照射開始から2週間から3週間後に現れ始め、照射部位の皮膚の赤みや粘膜の炎症、倦怠感などが代表的な症状です。

これらの多くは治療終了後、数週間かけて徐々に回復していきます。急性期の反応は正常細胞への影響の表れですが、分割照射により重症化を防いでいるのです。

晩期の副作用を防ぐには1回ごとの照射量が重要になる

晩期の副作用は治療終了から数か月以上たってから出現するもので、照射部位の線維化(組織が硬くなること)や神経障害などが含まれます。晩期障害の発生リスクには、1回あたりの照射量が深く関わっています。

1回ごとの線量を抑えて回数を増やすほど晩期障害のリスクは低くなりますが、治療期間は長くなるため、両者のバランスを慎重に見極める必要があるでしょう。

副作用のセルフケアで日々の通院を乗り切る

照射部位の皮膚を清潔に保ち、保湿剤を塗ることで皮膚トラブルを軽減できます。口腔内に照射を受ける方は、こまめなうがいと刺激の少ない歯磨き粉の使用が助けになるでしょう。

倦怠感を感じたときは無理をせず、日中に短い休息を取り入れることも大切です。困ったことがあれば、遠慮なく看護師や放射線技師に相談してください。

  • 照射部位への直射日光を避け、ゆったりした衣類を着用する
  • 刺激の強い石鹸やローションの使用を控える
  • 水分と栄養をしっかり摂り、体力の維持を心がける
  • 疲労がひどい日は予定を調整して休養を優先する

寡分割照射で通院回数を減らせるケースが増えている

近年、1回あたりの照射量を増やして総回数を減らす「寡分割照射(かぶんかつしょうしゃ)」が広まり、これまで5週間から7週間かかっていた治療を3週間から1週間に短縮できるケースが増えています。

寡分割照射は従来の治療と効果・安全性が同等であることが証明された

英国のSTART試験やFAST-Forward試験をはじめとする大規模な臨床試験により、乳がんの術後照射では寡分割照射が従来法と同等の治療成績を示すことが確認されました。副作用の面でも悪化しないことがデータとして裏付けられています。

前立腺がんにおいても、CHHiP試験の結果、60Gyを20回に分ける寡分割照射が従来の37回照射と同等の制御率を達成したことが報告されています。

通院負担が軽くなることで治療を完遂しやすくなる

治療の回数が減ると、通院にかかる時間や交通費、体力的な負担が目に見えて軽減されます。仕事を持つ方や遠方から通院する方にとって、通院回数の削減は治療を最後まで続けるための大きな助けとなるでしょう。

放射線治療において途中の休止や中断は治療効果を下げる原因になるため、通院しやすいスケジュールの確立は医学的にも意義があります。

従来照射と寡分割照射の比較(乳がん術後の場合)

照射方法回数期間
従来照射25回5週間
寡分割照射15回3週間
超寡分割照射5回1週間

すべてのがんに寡分割照射が適用できるわけではない

寡分割照射が安全に行えるかどうかは、がんの種類や部位、腫瘍の大きさ、周囲の臓器への影響によって判断されます。頭頸部がんのように周囲に放射線に弱い組織が多い場合、1回あたりの線量を上げることが難しいケースもあります。

治療法の選択は担当医が総合的に判断しますので、寡分割照射に興味がある方は診察時に率直に相談してみてください。

放射線治療中の仕事や日常生活と通院スケジュールは両立できる

多くの患者さんが放射線治療を受けながら仕事や家事を続けています。毎日の通院は負担になりますが、1回の治療時間が短いため、スケジュールの工夫次第で日常生活との両立は十分に可能です。

通院時間帯の調整で仕事への影響を最小限にする

放射線治療の照射時間は多くの場合、予約制で設定されます。早朝や夕方の枠を希望すれば、出勤前や退勤後に通院できるケースがあります。

治療開始前に担当医や放射線技師に仕事の都合を伝えておくと、できる限り配慮してもらえることが多いでしょう。職場にも治療スケジュールの概要を共有しておくと安心です。

体調の変化に合わせて無理のない予定を組む

治療が進むにつれて倦怠感が増すことがあります。特に3週目以降は疲れやすくなる方が多いため、この時期は予定を詰め込みすぎないようにすることをおすすめします。

買い物や食事の支度など、日々の家事も家族に分担してもらうことで、体力を温存しながら治療を続けやすくなります。

治療を受ける本人だけでなく家族のサポート体制も整えておく

通院の送迎や食事の準備など、家族ができる具体的なサポートを治療開始前にリスト化しておくと、いざというときにスムーズに動けます。「何を手伝えばいいかわからない」という家族の声は多いため、具体的に頼むことが助けになります。

地域の相談窓口やがん診療連携拠点病院の相談支援センターでは、通院や生活面の悩みについてアドバイスを受けることもできます。

  • 治療の開始前に利用できる社会的支援制度を確認しておく
  • 通院の交通手段を複数確保し、体調に合わせて使い分ける
  • 食事は消化の良いものを中心にし、栄養バランスを意識する

放射線治療の回数・期間について主治医に聞いておきたい確認事項

治療方針を十分に理解してから臨むことは、安心して治療を続けるために欠かせない準備です。疑問点や不安を事前に解消しておけば、毎日の通院にも気持ちの余裕を持って取り組めるでしょう。

治療計画の段階で確認すべき5つの質問

主治医への確認ポイント

質問項目確認する内容
照射回数と期間何回の照射を何週間にわたって行うか
1回あたりの所要時間照射と位置合わせを含めた病院滞在時間
予想される副作用照射部位に応じた副作用の種類と時期
スケジュール変更の可否体調不良時の予約変更や振替の方法
寡分割照射の選択肢回数を減らした照射法が適用できるか

セカンドオピニオンで照射回数や方法を比較検討する

放射線治療のスケジュールは施設によって異なる場合があります。特に寡分割照射や体幹部定位照射など、比較的新しい治療法を検討したい場合は、別の放射線治療専門施設の意見を聞いてみることも選択肢のひとつです。

セカンドオピニオンは主治医への不信を示すものではなく、ご自身が納得して治療に臨むための前向きな行動といえます。

治療スケジュールの見直しが必要になるケースも知っておく

副作用の強さや体調の変化によって、途中で照射の間隔を空けたり、スケジュールを調整する場合があります。また、化学療法を併用する場合は、両方の治療スケジュールを同時に管理する必要が生じます。

どのような状況であれ、治療チームと密に連携を取りながら進めれば、安全に治療を完遂できる可能性は高いでしょう。

よくある質問

放射線治療の照射1回あたりの時間はどれくらいですか?

放射線治療の1回あたりの照射時間は、実際に放射線が照射されている時間だけであれば数分程度です。準備を含めた全体の所要時間は15分から30分ほどになります。

体の位置を精密に合わせる工程に時間がかかりますが、これは正確な照射のために欠かせない作業です。初回は治療計画の最終確認もあるため、通常より長くなることがあります。

放射線治療の途中で通院を休んだ場合、治療効果に影響はありますか?

放射線治療の中断や長期の休止は、がん細胞が再増殖する時間を与えてしまう可能性があり、治療効果に影響を及ぼすことがあります。特に頭頸部がんなどでは、治療期間の延長が制御率の低下につながることが報告されています。

体調不良などでやむを得ず休む場合は、担当医がスケジュールの調整を行います。自己判断で通院を中断せず、必ず医療チームに相談してください。

放射線治療の回数を少なくする「寡分割照射」はどのようながんに使えますか?

寡分割照射は、乳がんの術後照射や前立腺がんの根治照射を中心に、臨床試験で有効性と安全性が確認されたがんの種類に対して適用されています。肺がんの早期病変に対する体幹部定位放射線治療も、少ない回数で行う照射法のひとつです。

一方、周囲に放射線の影響を受けやすい臓器がある場合や、広い範囲に照射が必要な場合は、従来の分割スケジュールのほうが安全とされることもあります。適用の可否は担当医の判断によりますので、ご自身の治療に使えるかどうか確認されるとよいでしょう。

放射線治療の通院中に仕事を続けることはできますか?

放射線治療を受けながら仕事を続けている方は多くいらっしゃいます。1回の照射は短時間で済むため、予約時間を早朝や夕方に設定すれば、勤務時間への影響を抑えられるケースがあります。

ただし、治療後半には倦怠感が強まることもあるため、体力的に無理のない範囲で業務量を調整することが大切です。職場の上司や人事担当者に通院スケジュールを事前に伝えておくと、柔軟な対応を得やすくなるでしょう。

放射線治療は全身に影響がありますか、それとも照射した部分だけですか?

放射線治療の効果と副作用は、基本的に照射を行った部位とその周辺に限定されます。全身に放射線が当たるわけではないため、照射範囲から離れた臓器に直接的な影響が出ることは通常ありません。

ただし、全身的な倦怠感や食欲の低下といった症状は、放射線治療に伴う一般的な反応として現れることがあります。これは体がダメージを修復するためにエネルギーを使っている結果であり、治療が進む中で徐々に改善していくことが多いです。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医