放射線治療 category

放射線治療は、体の外から当てる外部照射と、体の中に線源を置く内部照射に分かれます。外部照射のなかでIMRTや定位放射線治療が狙いを絞る技術で、正常な組織に当たる量を減らせます。
標準的な回数は25〜35回、期間にして5〜7週間です。平日に毎日通うのは、正常な細胞が回復する時間を挟むためで、途中で休むと効果が落ちます。
種類、狙いを絞る技術、通院の理由、乳がんでの使い方、副作用、皮膚のケア、手術との比較、費用までを順に並べました。
放射線治療は外部照射と内部照射に分かれる

体の外から当てるか、体の中に線源を置くかで大きく2つに分かれます。
外部照射が治療の中心
腫瘍の形に合わせる三次元原体照射を土台に、線量の分布を細かく操るIMRT、回転しながら当てて時間を短くするVMATがあります。装置から出る高いエネルギーがDNAを傷つけ、がん細胞を死なせる仕組みです。
内部照射と粒子線は別の当て方
内部照射は腫瘍のすぐそばに線源を置く方法で、子宮頸がんや前立腺がんに使われます。陽子線と重粒子線は、止まる直前に線量が集中する性質を利用して、その先の正常な組織を守ります。
放射線治療の種類として、外部照射から内部照射、粒子線治療までを見渡しておくと、提案された方法がどこに位置するのかが分かります。
IMRTと定位放射線治療は狙いを絞る
当てたい場所へ線量を集め、まわりの臓器に届く量を減らす技術です。
IMRTは口の渇きを半分以下にした
頭頸部がんの試験では、強い口腔乾燥が従来の照射で1年後74%だったのに対し、IMRTでは38%にとどまりました。前立腺がんでは86グレイという高い線量を、直腸を避けながら当てられます。
定位放射線治療は1〜5回で終わる
多方向から1点へ集中させる方法で、25〜35回かかる通常の照射に対して1〜5回で完了します。早期の非小細胞肺がんでは3年の局所制御率が90%を超えています。
IMRTががんを狙い撃ちして副作用を抑える仕組みと、定位放射線治療の対象となるがん種を見比べれば、短期間で終わる道があるのかが分かります。
放射線治療で毎日通うのは細胞の回復差を使うため

1回の量を小さく分けると、正常な細胞のほうが先に回復するためです。
標準は25〜35回で5〜7週間
月曜から金曜まで週5回、1回の照射そのものは数分ですが、位置合わせを含めると15〜30分ほどかかります。乳がんは15〜25回、前立腺がんは20〜39回、頭頸部がんは30〜35回が目安です。
回数を減らす寡分割照射
1回の線量を上げて回数を減らす寡分割照射なら、25回5週間だったものを15回3週間に縮められます。緩和が目的の照射は1〜10回で、狙いは痛みを取ることに絞られるでしょう。
放射線治療の回数と期間の目安、毎日の通院が必要な理由を知っておけば、仕事や家庭の予定を組みやすくなります。
乳がんの放射線治療は温存手術のあとに行う

10年以内の局所再発をおよそ半分に減らすために、温存手術に続けて照射します。
再発率は35%から19%へ下がる
照射をしない場合の10年再発率が約35%であるのに対し、照射を加えると約19%まで下がります。乳房全体に当てる方法のほか、腫瘍のあった場所に絞る部分照射という選び方もあります。
1週間で終わる超寡分割も出てきた
従来の5週間25回に加え、3週間15〜16回の寡分割、1週間5回の超寡分割が選べるようになりました。晩期にはリンパ浮腫が5〜10%ほどに起こります。
乳がんの放射線治療で温存手術後の再発を防ぐ考え方と、がんの縮小手術で機能を温存する低侵襲治療を合わせて見ると、乳房を残す道の全体像がつかめます。
放射線治療の副作用は急性期と晩期で分かれる
治療中に出るものと、数か月から数年たって出るものがあります。
急性期は開始から2〜3週間で
皮膚の赤みやかゆみ、口内炎、下痢、倦怠感が中心で、当てた場所によって出るものが変わります。多くは治療が終われば数週間で落ち着くものです。
晩期は6か月以降に組織が硬くなる
放射線性の肺臓炎は10〜30%、心臓への影響は2年から10年以上たって現れることがあります。治療後1〜2年は3〜6か月ごと、その後は年1回ほどの経過観察を続けます。
- 急性期 … 開始2〜3週間後。皮膚炎・口内炎・下痢・倦怠感
- 晩期 … 6か月以降。組織の硬化・肺臓炎・口腔乾燥・リンパ浮腫
放射線治療の副作用と対策、それに晩期障害として数か月から数年後に出る症状を知っておくと、いつまで気をつけるのかがはっきりします。
放射線治療の皮膚炎はケアの仕方で軽くできる

照射を受ける人の85〜95%に起こるもので、防ぎ方もはっきりした副作用です。
ぬるま湯で洗い、こまめに保湿する
36〜38度のぬるま湯と低刺激の石けんで洗い、1日2〜3回の保湿を続けます。保湿は照射の2〜4時間前か照射のあとに行い、直前は避けてください。
アルコールやメントールを含むもの、ピーリング作用のある製品は使いません。水ぶくれや黄色い浸出液が出たときは、自分で判断せず受診します。
放射線皮膚炎のスキンケアで赤みやかゆみを防ぐ方法を先に読んでおけば、治療が始まる前から手を打てます。
放射線治療と手術はどちらを選ぶか
臓器を残せるかどうかと、体への負担の大きさが分かれ目です。
取り切る手術か、残す放射線か
手術はがんを一括で取り切れて、取ったものを調べて正確に評価できます。放射線は臓器を残せて通院で受けられる一方、晩期の副作用と二次がんという別の心配が残ります。
| 項目 | 手術 | 放射線治療 |
|---|---|---|
| 臓器 | 切り取る | 残せる |
| 通い方 | 入院 | 通院で毎日 |
| 気になる点 | 麻酔と機能の障害 | 晩期の副作用 |
がんは放射線治療と手術のどちらがよいのか、その選択の基準を読んでおくと、主治医に聞くべきことが定まります。
放射線治療と抗がん剤を組み合わせる化学放射線療法
薬でがん細胞を放射線に弱くしておき、同じ時期に照射を重ねる方法です。
臓器を残したいときに選ばれる
食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、3期の肺がんなどで、手術が難しい場合や臓器を残したい場合に使われます。期間は5〜7週間で、副作用は放射線だけのときより重なります。
吐き気や粘膜炎、倦怠感が治療中から治療の直後にかけて出やすく、放射線だけの場合より重く感じられがちです。組織の硬化や唾液の減少といった晩期の副作用も残ります。
化学放射線療法の効果と副作用、薬と放射線がどう組み合わさるのかを知っておくと、勧められた理由が飲み込めます。
放射線治療の費用は3割負担で15万〜30万円
保険が使える範囲なら、高額療養費制度でひと月8万円ほどが上限になります。
方法と回数で総額が変わる
通常のX線照射は3割負担で15万〜25万円、IMRTは20万〜30万円が目安です。陽子線や重粒子線は保険が使えれば30万〜60万円で、対象外だと300万円前後になります。
放射線治療の費用と保険適用の範囲を確かめておけば、通院の交通費まで含めた見通しが立ちます。
よくある質問
放射線治療はなぜ毎日通う必要があるのですか?
1回の量を小さく分けると、正常な細胞のほうが先に回復するからです。標準は週5回で25〜35回、5〜7週間かかります。途中で休むと効果が落ちるため、続けて通えるかを最初に相談しておいてください。
放射線治療の副作用はいつごろ出ますか?
急性期は開始から2〜3週間で、皮膚の赤み、口内炎、下痢、倦怠感が中心です。晩期は6か月以降に組織の硬化や肺臓炎、リンパ浮腫として出ます。治療後1〜2年は3〜6か月ごとの経過観察が続きます。
乳がんで放射線治療を受けるとどれくらい再発が減りますか?
温存手術のあとに照射すると、10年以内の局所再発が約35%から約19%まで下がります。従来の5週間25回に加え、3週間15〜16回や1週間5回という短い方法も選べるようになりました。
放射線治療中の肌はどうケアすればよいですか?
36〜38度のぬるま湯と低刺激の石けんで洗い、1日2〜3回の保湿を続けます。保湿は照射の2〜4時間前か照射のあとに行います。アルコールやメントールを含むもの、ピーリング作用のある製品は避けてください。
放射線治療の費用はどのくらいかかりますか?
通常のX線照射は3割負担で15万〜25万円、IMRTは20万〜30万円が目安です。陽子線や重粒子線は保険が使えれば30万〜60万円になります。高額療養費制度でひと月8万円ほどが上限になります。
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この記事を書いた人Wrote this article
前田 祐助医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。
【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医