
がんと診断されたとき、多くの方が「臓器をどれだけ切除するのか」という不安を抱えるのではないでしょうか。近年、画像診断技術の進歩により早期の小さながんが見つかるようになり、切除範囲を必要最小限に抑える「縮小手術(機能温存手術)」が急速に広まっています。
とくに早期肺がんの領域では、大規模な国際共同試験の結果から、従来の葉切除と同等の治療成績が確認されました。この記事では、肺がんをはじめ乳がん・直腸がん・腎臓がんにおける縮小手術の具体的な方法と根拠を、わかりやすく解説します。
がんの縮小手術は臓器の機能を残しながらがんを根治できる手術法
がんの縮小手術とは、がんの根治性を保ちつつ切除する範囲を従来より小さくすることで、臓器の機能をできるだけ温存する手術の総称です。正式には「機能温存手術」や「縮小切除」とも呼ばれ、肺・乳房・腎臓・直腸など多くのがん種で採用されています。
従来の標準手術と縮小手術はどう違うのか
たとえば肺がんの場合、従来は腫瘍がある肺葉ごと切除する「葉切除」が標準でした。一方、縮小手術では腫瘍を含む区域だけを取り除く「区域切除」や、腫瘍周囲のみを切り取る「楔状切除」を行います。
乳がんでは乳房全体を切除する「全摘術」に対し、腫瘍とその周囲だけを取る「乳房温存手術」が縮小手術にあたります。いずれも切除範囲を小さくすることで、術後の生活の質を高く維持できる点が共通した利点です。
機能温存手術が求められるようになった背景
画像診断技術の発達によって、従来は発見が難しかった1cm〜2cm程度の小さながんが見つかるようになりました。とくにCTスクリーニングの普及は、早期肺がんの検出率を大きく押し上げています。
小さながんに対して大きな切除を行うと、失われる正常組織のほうが圧倒的に多くなります。そのため「必要十分な切除で根治を目指す」という考え方が、世界的な潮流となりました。高齢の患者さんや合併症をお持ちの方にとっても、身体への負担を減らせる縮小手術は大きな選択肢となっています。
がんの縮小手術と従来手術の比較
| 項目 | 従来の標準手術 | 縮小手術(機能温存) |
|---|---|---|
| 切除範囲 | 臓器の大部分を切除 | 腫瘍周囲を限定的に切除 |
| 術後の臓器機能 | 低下しやすい | 温存されやすい |
| 身体への負担 | 大きい | 比較的小さい |
| 入院期間 | 長くなる傾向 | 短縮される傾向 |
| 対象 | 進行がんを含む広い範囲 | 主に早期がんが中心 |
縮小手術の対象となるがんの種類と条件
縮小手術はすべてのがんに適用できるわけではありません。腫瘍の大きさ・位置・リンパ節転移の有無・組織型などを総合的に評価したうえで、適応が判断されます。
一般的に、腫瘍径が2cm以下でリンパ節転移がない早期がんが良い適応とされています。ただし乳がんのように放射線治療との組み合わせで温存が可能になるケースもあり、がん種ごとに条件は異なります。
切除範囲を小さくしても根治性が保たれる理由
「切る量が少ないと再発しないか心配」という声は多く聞かれます。しかし近年の大規模臨床試験では、適切に選ばれた早期がんにおいて、縮小手術と標準手術で生存率に差がないことが繰り返し証明されました。
そのカギは、腫瘍から十分なマージン(安全な距離)を確保して切除することと、術中に迅速病理検査で断端ががん陰性であることを確認する点にあります。こうした精密な手技と判断が、根治性の担保につながっています。
早期肺がんの区域切除・楔状切除で生存率は葉切除と変わらない
2cm以下の早期非小細胞肺がんに対する縮小手術(区域切除・楔状切除)は、従来の標準であった葉切除と無病生存率・全生存率ともに同等であることが、複数の国際的なランダム化比較試験で証明されました。
区域切除と楔状切除の手術手技と違い
区域切除は、肺の解剖学的な区域単位で切除する手技です。区域気管支・区域動脈・区域静脈を個別に処理するため、技術的な難度はやや高くなりますが、十分な切除マージンを取りやすい利点があります。
楔状切除はくさび形に腫瘍周囲を切り取るシンプルな術式で、手術時間が短い傾向にあります。ただし区域切除に比べてマージンが狭くなりやすいため、腫瘍の位置や大きさによって使い分けが必要です。
JCOG0802試験が示した区域切除の優位性
日本で実施されたJCOG0802/WJOG4607L試験は、2cm以下の小型末梢肺がんを対象に区域切除と葉切除を比較した大規模な第3相試験です。70施設・1,106例が登録され、2022年にその結果がLancet誌に報告されました。
驚くべきことに、区域切除群の5年全生存率は葉切除群を上回り、区域切除の非劣性だけでなく優越性まで示されたのです。術後の呼吸機能も区域切除群でより良好に保たれ、肺がん以外の原因による死亡が葉切除群で多かった点も注目されています。
CALGB 140503試験で縮小手術の有効性が確認された
米国・カナダ・オーストラリアの69施設が参加したCALGB/Alliance 140503試験も、2cm以下のT1aN0非小細胞肺がんを対象とした国際共同第3相試験です。区域切除または楔状切除を含む縮小手術と葉切除を比較し、2023年にNew England Journal of Medicine誌に結果が掲載されました。
中央観察期間7年の追跡で、縮小手術群の無病生存率は葉切除群に対して非劣性が示され、全生存率にも有意差はありませんでした。日本のJCOG試験と合わせ、縮小手術を支持するエビデンスが国際的に確立されたといえるでしょう。
2cm以下の小型肺がんには縮小手術が新しい標準治療になりつつある
これら2つの大規模試験の結果を受け、末梢に位置する2cm以下のリンパ節転移のない非小細胞肺がんに対しては、区域切除が新たな標準手術として位置づけられるようになってきました。
日本の各学会ガイドラインでもこの変化は反映され始めています。患者さんにとっては、肺の機能をより多く残しながらがんを根治できる選択肢が増えたことを意味しています。
主要臨床試験の結果比較
| 試験名 | 対象 | 主な結果 |
|---|---|---|
| JCOG0802 | 2cm以下・末梢型NSCLC(日本70施設) | 区域切除が葉切除に対し全生存で優越性を示した |
| CALGB 140503 | 2cm以下・T1aN0 NSCLC(国際69施設) | 縮小手術が葉切除に対し無病生存で非劣性を示した |
胸腔鏡手術やロボット手術で縮小手術の精度は飛躍的に上がった
低侵襲な縮小手術と相性が良いのが、胸腔鏡手術(VATS)やロボット支援手術といった低侵襲アプローチです。小さな傷口から高精度の手術を行えるため、術後の回復が早く患者さんの身体的負担を大幅に軽減できます。
胸腔鏡下手術(VATS)は傷口が小さく回復が早い
VATSは胸壁に数か所の小さな穴を開け、カメラと細い器具を挿入して行う手術法です。従来の開胸手術では15〜20cm程度の切開が必要でしたが、VATSでは合計で数cm程度の傷口で済みます。
出血量の減少、術後の疼痛軽減、入院日数の短縮などが報告されており、早期肺がんの手術ではVATSが主流になりつつあります。縮小手術との組み合わせにより、患者さんの回復はさらに早まるでしょう。
ロボット支援手術が縮小手術にもたらすメリット
ロボット支援手術では、術者がコンソールからロボットアームを操作します。3D高解像度の視野と、人間の手以上に自由度の高い関節を持つ鉗子により、細かい血管やリンパ管の処理が精密に行えます。
とくに区域切除のように解剖学的に複雑な術式では、ロボットの精密さが大きな強みとなります。手ブレ補正機能も備わっているため、安全性の面でも期待されています。
低侵襲手術のアプローチ比較
| 術式 | 傷口の大きさ | 特徴 |
|---|---|---|
| 開胸手術 | 15〜20cm程度 | 視野が広く複雑な症例に対応しやすい |
| 胸腔鏡手術(VATS) | 数cm(数か所) | 回復が早く術後疼痛が少ない |
| ロボット支援手術 | 数cm(数か所) | 精密な操作が可能で手ブレ補正あり |
開胸手術と比べた低侵襲手術の術後成績
複数の研究で、VATSによる肺葉切除は開胸手術と比較して術後合併症の発生率が低いことが報告されています。出血量・感染率・術後の慢性疼痛のいずれにおいても、VATSのほうが良好な成績を示しました。
がんの根治性という点でも、リンパ節郭清の精度や5年生存率に有意な差は認められていません。身体への負担を減らしながら、治療の質を維持できることが科学的に裏付けられています。
術後の呼吸機能を温存できる具体的なデータ
JCOG0802試験では、術後の呼吸機能検査においても区域切除群が葉切除群を上回る結果が報告されました。肺活量やFEV1.0(1秒量)の低下幅が小さかったのです。
呼吸機能の温存は、術後の運動能力や日常生活の質に直結します。とくに高齢の方や肺機能が低下気味の方にとって、呼吸機能を守れることは手術を受けるうえで大きな安心材料となるでしょう。
乳がんの乳房温存手術は縮小手術の代表例として広く普及した
乳がん領域における縮小手術の代表が、乳房温存手術です。腫瘍とその周辺組織のみを切除し、残った乳房に放射線治療を加えることで、乳房全摘術と同等の治療成績が得られることが多くの臨床研究で示されています。
乳房温存手術が乳房全摘と同等の治療成績を示す根拠
乳房温存手術+放射線療法の長期成績が乳房全摘術と変わらないことは、複数のランダム化比較試験とメタアナリシスで繰り返し確認されてきました。全生存率・無再発生存率のいずれにおいても、統計的な有意差は認められていません。
こうしたエビデンスの蓄積により、現在では早期乳がんの手術において乳房温存手術が第一選択とされるケースが増えています。
オンコプラスティックサージャリーで整容性と根治性を両立する
オンコプラスティックサージャリーとは、がんの切除と乳房の形態再建を同時に行う術式です。従来の温存手術では切除後に乳房の変形が残ることがありましたが、この手法では形成外科的なテクニックを組み合わせて自然な形を保ちます。
18,000例以上を対象としたメタアナリシスでは、オンコプラスティックサージャリーの再発率が従来の温存手術や全摘術と比較して差がないことが確認されています。整容性を維持しながら根治を目指せる点が、患者さんにとって大きな利点でしょう。
乳房温存手術を受けるための条件と注意点
乳房温存手術を受けるには、腫瘍の大きさが乳房の大きさに対して適切であること、多発病変がないこと、放射線治療が実施可能であることなどの条件があります。術前の画像検査で病変の広がりを正確に評価することが大切です。
術後には原則として残存乳房への放射線治療が必要となります。主治医と十分に相談し、温存手術が自分に適しているかどうかを確認しましょう。
乳房温存手術の適応条件
- 腫瘍径が乳房サイズに対して十分に小さいこと
- 多発性の病変(多中心性)がないこと
- 術後の放射線治療を受けられる状態であること
- 切除断端でがん細胞が陰性と確認できること
直腸がんの「Watch and Wait」戦略は手術そのものを回避する臓器温存法
直腸がんの治療では、術前に化学放射線療法を行ったあとに腫瘍が完全に消失する「臨床的完全奏効(cCR)」が得られるケースがあります。こうした患者さんに対し、手術をせずに慎重な経過観察で臓器を温存する「Watch and Wait(注意深い経過観察)」戦略が注目を集めています。
Watch and Wait(経過観察)は術前化学放射線療法後に選択できる
局所進行直腸がんに対しては、手術前に化学放射線療法を行うことが標準治療の一つです。治療終了後に内視鏡・直腸指診・MRIなどで評価を行い、腫瘍が画像上消失している場合にWatch and Waitの選択肢が生まれます。
国際Watch & Waitデータベース(IWWD)の解析では、cCRが得られた880例を追跡した結果、2年時点での再増大率は約25%であり、5年全生存率は85%と良好な成績でした。
OPRA試験で臓器温存率と長期予後が報告された
米国Memorial Sloan Kettering Cancer Centerを中心に実施されたOPRA試験は、ステージII〜IIIの直腸がん患者さん324例を対象とした第2相ランダム化試験です。術前に集中的な化学放射線療法(TNT)を行い、良好な反応が得られた場合にWatch and Waitを選択できる設計でした。
OPRA試験と国際Watch & Waitデータベースの主な結果
| 研究 | 対象 | 主な成績 |
|---|---|---|
| OPRA試験 | ステージII/III直腸がん324例 | 3年臓器温存率53〜58%、無病生存率は手術群と同等 |
| IWWD | cCR達成880例(47施設) | 5年全生存率85%、再増大後77%が救済手術で対応 |
再増大した場合でも救済手術で根治を目指せる
Watch and Wait中に腫瘍が再増大(再発)した場合でも、多くのケースで救済手術(サルベージ手術)が実施可能です。IWWDの報告では、再増大した患者さんの約77%が手術による治療を受けることができました。
再増大は多くの場合、経過観察開始から2年以内に確認されます。定期的な内視鏡やMRIによる綿密なフォローアップが、早期発見と適切な対応の鍵となります。
肛門機能と排便機能を守ることで生活の質が保たれる
下部直腸がんの手術では、永久人工肛門が必要となることがあります。Watch and Waitで手術を回避できれば、肛門と排便機能を維持できるため、患者さんの生活の質は大きく改善されるでしょう。
もちろん全員がWatch and Waitの対象になるわけではなく、cCRの判定には高い専門性が求められます。経験豊富な施設で適切に評価を受けることが大切です。
腎臓がんの腎部分切除術は腎機能を守りながらがんを取り除ける
腎臓がん(腎細胞がん)においても、腫瘍だけを取り除いて腎臓を温存する「腎部分切除術(ネフロン温存手術)」が標準治療として確立されています。腎臓を丸ごと摘出する根治的腎摘除術と比較して、腎機能の維持と長期的な生活の質の向上が期待できます。
腎部分切除術(腎温存手術)と根治的腎摘除術の違い
根治的腎摘除術は腎臓を周囲の脂肪組織ごと摘出する術式で、かつてはほぼすべての腎臓がんに対して行われていました。一方、腎部分切除術は腫瘍と周辺の正常組織を一部だけ切除し、残りの腎臓を温存します。
腎臓は一度失われると再生しないため、腎機能を温存することは将来の腎不全リスク低減に直結します。とくに高血圧や糖尿病を合併している方にとって、腎機能の維持は長期的な健康管理上きわめて大切です。
4cm以下の小径腎がんでは腎部分切除が推奨されている
各国のガイドラインでは、腫瘍径4cm以下(T1a)の小径腎がんに対しては、技術的に可能であれば腎部分切除術を行うことが推奨されています。腫瘍の根治性において、腎部分切除は根治的腎摘除と同等であることが多くの研究で示されているためです。
4cm〜7cm(T1b)の腫瘍に対しても、腫瘍の位置や患者さんの状態によっては腎部分切除が選択されることがあります。適応の判断には、腫瘍の位置や形状を評価するスコアリングシステムが活用されています。
ロボット支援腎部分切除術の普及と手術精度
近年、ロボット支援による腎部分切除術が急速に普及しています。ロボットの精密なアーム操作により、腫瘍の切除と腎臓の縫合がスムーズに行え、腎臓を一時的に虚血させる時間(温阻血時間)を短く抑えることが可能です。
温阻血時間の短縮は術後の腎機能温存に直結するため、ロボット支援手術は腎部分切除の成績向上に大きく貢献しています。出血量の減少や合併症率の低下も報告されており、腎温存手術の安全性はさらに高まっています。
腎がんの手術選択と適応
- T1a(4cm以下)の腎がん:腎部分切除術が推奨される
- T1b(4〜7cm)の腎がん:腫瘍の位置により腎部分切除も選択肢となる
- 対側腎の機能低下や単腎の場合:腎温存がとくに重要になる
- ロボット支援手術の普及で技術的なハードルが下がりつつある
がんの縮小手術を検討する前に知っておきたい判断基準と相談先
縮小手術はすべてのがん患者さんに適用できるわけではなく、腫瘍の状態や患者さんの全身状態を総合的に判断して決定されます。縮小手術を希望する場合は、正しい情報を得たうえで主治医とよく話し合うことが大切です。
縮小手術が適応になるかどうかの判断基準
がん種を問わず、縮小手術の適応判断で重視されるのは腫瘍の大きさ・位置・病理学的な性質・リンパ節転移の有無です。術前の画像検査や生検の結果をもとに、根治性が担保できるかどうかを慎重に評価します。
縮小手術の適応判断で確認される主なポイント
| 評価項目 | 確認内容 | 判断への影響 |
|---|---|---|
| 腫瘍径 | 画像検査で腫瘍の大きさを測定 | 一般に2〜4cm以下が適応の目安 |
| リンパ節転移 | CT・PET等でリンパ節への転移を評価 | 転移がなければ縮小手術の候補 |
| 腫瘍の位置 | 臓器のどこに腫瘍があるかを確認 | 末梢・表在性なら技術的に温存しやすい |
セカンドオピニオンを活用して治療の選択肢を広げよう
がんの治療方針は主治医と一緒に決めていくものですが、別の専門医の意見を聞く「セカンドオピニオン」も有効な手段です。とくに縮小手術は施設によって経験や技術に差があるため、複数の意見を聞くことで納得のいく選択につながりやすくなります。
セカンドオピニオンを受けることは主治医に失礼ではありません。多くの医療機関がセカンドオピニオン外来を設けており、紹介状と検査資料を持参すれば受診が可能です。
主治医に確認しておきたい5つの質問
縮小手術を検討する際には、主治医に具体的な質問をすることで理解が深まります。たとえば、「自分のがんは縮小手術の対象になりますか」「縮小手術と標準手術で再発率に差はありますか」といった質問をしてみましょう。
「術後にどの程度の機能が保たれますか」「低侵襲手術(胸腔鏡・ロボット)で対応できますか」「術後の経過観察はどのような頻度で行いますか」といった点も、治療方針を決めるうえで確認しておきたい質問です。ご自身が納得して治療に臨むために、遠慮なく相談しましょう。
よくある質問
がんの縮小手術(機能温存手術)はどのようながんに適用できますか?
がんの縮小手術は、肺がん・乳がん・腎臓がん・直腸がんなど複数のがん種で適用されています。共通する条件として、腫瘍が比較的小さく、リンパ節転移がない早期がんであることが挙げられます。
ただし、がん種ごとに基準は異なりますので、ご自身のがんが縮小手術の対象になるかどうかは、担当医にご相談ください。画像検査や生検の結果をもとに、総合的に判断されます。
がんの縮小手術は従来の手術と比べて再発率が高くなりませんか?
適切に選ばれた早期がんに対しては、縮小手術でも従来の標準手術と再発率に大きな差がないことが大規模臨床試験で確認されています。たとえば早期肺がんのJCOG0802試験やCALGB 140503試験では、縮小手術群と葉切除群の無病生存率に統計的な有意差はありませんでした。
むしろ一部の試験では、縮小手術のほうが全生存率で良好な結果を示したケースもあります。適応を正しく見極めることが、再発リスクを最小限に抑えるうえで重要です。
がんの縮小手術は高齢者でも受けられますか?
はい、縮小手術は身体への負担が比較的小さいため、高齢の患者さんにとってもメリットが大きい治療法です。とくに肺がんの区域切除では、葉切除よりも術後の呼吸機能低下が少なく、高齢者の術後生活の質を維持しやすいと報告されています。
ただし、手術が可能かどうかは年齢だけでなく全身状態や合併症の有無で判断されます。主治医と相談のうえ、ご自身に合った治療法を選んでいただくことをおすすめします。
がんの縮小手術を受けた後の経過観察はどのように行われますか?
がんの縮小手術後は、定期的な画像検査(CT・MRI・超音波など)と血液検査で再発の有無をチェックします。一般的に術後1〜2年間は3〜6か月ごと、その後は6〜12か月ごとの受診が推奨されるケースが多いです。
経過観察の頻度やスケジュールはがん種・ステージ・術式によって異なるため、担当医の指示に従ってください。定期的なフォローアップを続けることが、万が一の再発を早期に発見するうえで大切です。
がんの縮小手術と放射線治療や薬物療法を組み合わせることはできますか?
がんの縮小手術は、放射線治療や薬物療法と組み合わせて行われることが多くあります。乳がんの乳房温存手術では術後の放射線照射が標準的に併用されますし、直腸がんのWatch and Wait戦略では術前に化学放射線療法が必須です。
組み合わせる治療法はがん種やステージにより異なるため、治療全体の計画については担当医としっかり相談しましょう。集学的治療(手術・放射線・薬物の組み合わせ)によって、縮小手術の根治性をさらに高めることが期待されています。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医