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がんの手術の種類と特徴|開腹・腹腔鏡・ロボット手術を比較

がんの手術は、お腹を大きく開く開腹手術、小さな穴から器具を入れる腹腔鏡手術、その腹腔鏡を医師が遠隔で操るロボット手術の3つが柱です。切開は15〜25cmと5〜12mmで、桁が違います。

入院は開腹で10〜14日、腹腔鏡やロボットで5〜10日が目安です。国際的な試験では、長期の再発率や生存率に差は認められていません。

3つの違い、切らずに治すESDや臓器を残す縮小手術、薬との組み合わせ、入院と合併症、費用までを順に並べました。

がんの手術は切開の大きさと視野の広さで分かれる

開腹手術と腹腔鏡・ロボット手術の切開の長さと入院日数の違いを線の長さで比べた図解イラスト

3つの術式を分けているのは、体をどれだけ開くかと、術者がどう見るかです。

開腹手術は視野が広く手で触れる

15〜25cmほど切って、術者が直接目で見て手で触れながら進めます。広い範囲を一度に確かめられるため、進行したがんや、腹腔鏡の途中で難しいと判断したときの受け皿にもなります。

生存率では差が出ていない

複数の国際的な臨床試験で、腹腔鏡やロボットと開腹のあいだに長期の再発率・生存率の差は認められていません。選ぶ基準は「どちらがよく治るか」ではなく、体への負担と、がんの位置や進み方への向き不向きです。

項目開腹腹腔鏡・ロボット
切開15〜25cm5〜12mmを数か所
入院10〜14日5〜10日
社会復帰4〜8週間2〜4週間

がんの手術療法の種類と特徴、開腹・腹腔鏡・ロボット手術のメリットとデメリットを並べて見れば、主治医の説明を受け取る土台ができます。

腹腔鏡手術は傷が小さく回復が早い

5〜12mmの穴を数か所あけ、炭酸ガスでふくらませた空間にカメラと器具を入れます。

大腸・胃・肺で広く使われる

大腸がんと胃がんが中心で、肝臓・腎臓・婦人科のがんにも広がっています。デスクワークへの復帰は術後2〜3週間が目安で、開腹の半分ほどの期間です。

途中で開腹に切り替わることがある

癒着が強い、出血が止まりにくいといった事情で、数%は開腹へ移行します。これは失敗ではなく、安全のために用意されている道です。年間50件以上を手がける施設かどうかが、一つの目安になります。

腹腔鏡手術で傷が小さく回復が早い仕組みを知っておくと、術後の生活を具体的に思い描けます。

ロボット手術は細かい操作と3D映像が強み

術者は離れた操作台に座り、3Dの映像を見ながら手ぶれのない器具を動かします。

2012年の前立腺がんから対象が広がった

2012年に前立腺がんで公的保険に入り、2018年には胃・食道・直腸・肺・膀胱・子宮体など12術式が加わりました。結腸がんや腎盂尿管がんも2022年以降に対象へ入っています。

保険が使えれば3割負担で50万〜60万円

保険が適用される前は200万円を超えていましたが、対象になった術式では3割負担で50万〜60万円ほどに収まります。高額療養費制度を使えば、窓口の負担はさらに下がります。

ダヴィンチ手術の費用と保険適用、対象となるがん種は、主治医に聞く前に一度見ておきたいところです。

切らずに治すESDと臓器を残す縮小手術

ESDと縮小手術と全部を取る手術で切除する範囲の広さが変わることを円の塗り面積で比べた図解イラスト

早期であれば、お腹を開けずに内側から取る道や、臓器の一部だけを切る道があります。

ESDは口や肛門から入れた内視鏡で取る

粘膜の下をはがして病変を一度に切り取る方法で、胃がんなら分化型・潰瘍なし・2cm以下が絶対適応です。入院は3〜7日、一括で切除できた場合の局所再発は1〜2%にとどまります。

縮小手術は機能を残して切る範囲を絞る

早期の肺がんでは、葉ごと取らずに区域だけ切る方法が同等の成績を示しました。乳がんの温存手術に放射線を組み合わせる形や、腎臓の部分切除も同じ考え方です。

  • ESD … 早期の胃がん・大腸がん。切らずに内視鏡で取る
  • 縮小手術 … 腫瘍2〜4cm以下でリンパ節転移がないことが目安
  • 温存手術 … 乳房や腎臓の機能を残し、放射線などを足す

ESDが胃がん・大腸がんを切らずに治す基準と、がんの縮小手術で機能を温存する低侵襲治療を見比べれば、自分の病期でどこまで選べるかが見えてきます。

がんの手術は前後に薬を組み合わせることがある

手術の前と後に薬を組み合わせて切る範囲を小さくし再発を抑える流れを表した図解イラスト

薬で先に小さくしてから切る道と、切ったあとに薬で再発を抑える道の2つです。

術前に小さくすると切る範囲が減る

手術の前に抗がん剤やホルモン剤を使うネオアジュバント療法では、腫瘍が縮んだぶん切除の範囲を小さくできます。乳房や臓器を残しやすくなり、薬が効くかどうかを手術の前に確かめられる利点もあります。

術後の薬は見えない転移に効かせる

取り切れたと判断できた場合でも、目に見えない微小な転移が残っている可能性があります。術後補助化学療法はそこへ効かせるもので、標準的な期間は3〜6か月です。

ネオアジュバント療法で手術前にがんを小さくするメリットと、術後補助化学療法が再発を防ぐ仕組みは、術式の話と合わせて聞いておきたいところです。

がん手術の入院期間と術後の合併症

入院は早ければ2〜3日、長ければ2〜3週間で、術式と部位で幅があります。

部位ごとの目安

胃がんと大腸がんは腹腔鏡で7〜10日、開腹で10〜14日です。肺がんの胸腔鏡は5〜7日、乳がんの温存術なら3〜5日で退院できることもあります。

合併症は術前の準備で減らせる

術後の合併症は手術の種類によって7〜50%と幅があり、食道がんでは30〜40%に達します。手術の前に体力をつけるプレハビリテーションを行うと、発生率がおよそ17%下がったという報告があります。

禁煙は4週間前から、リハビリは術後の翌日から始めるのが推奨です。

がん手術の入院期間と退院後の生活、それに合併症のリスク管理と術前の予防策を押さえておくと、仕事や家庭の段取りを組めます。

がんの手術費用と高額療養費制度

がんの手術の総額が高額療養費制度によって窓口で払う額まで下がることを2本の棒の高さで比べた図解イラスト

10割の総額は50万〜200万円ほどで、実際の窓口負担は制度で頭打ちになります。

部位で総額が変わる

胃がんは80万〜120万円、大腸がんは80万〜130万円、肺がんは100万〜150万円、乳がんは50万〜100万円が目安です。70歳未満の自己負担は3割で、高額療養費制度の上限は所得によって月3万5400円から25万2600円まで分かれます。

入院の前に限度額適用認定証を申請しておけば、窓口での支払いを最初から上限までに抑えられます。

がんの手術費用の自己負担額と高額療養費制度の活用を先に見ておくと、いくら用意すればよいかが決まります。

がんの手術の術式に迷ったらセカンドオピニオン

主治医以外の専門医に方針を聞く制度で、術式や切除範囲が変わることも珍しくありません。

紹介状と画像データを持っていく

まず主治医へ相談し、診療情報提供書と検査データを用意します。海外の研究では23〜57%で方針に変更があったと報告されており、聞くこと自体は失礼にあたりません。

がん手術のセカンドオピニオンを受ける方法と執刀医を選ぶ手順を知っておけば、限られた時間で聞くべきことを整理できます。

よくある質問

がんの手術は腹腔鏡のほうが開腹より治りがよいのですか?

長期の再発率や生存率では、複数の国際的な臨床試験で差が認められていません。違いが出るのは体への負担のほうで、切開は15〜25cmと5〜12mm、入院は10〜14日と5〜10日という差があります。

ロボット手術はどのがんで保険が使えますか?

2012年の前立腺がんを皮切りに、2018年には胃・食道・直腸・肺・膀胱・子宮体など12術式が加わり、結腸がんなども2022年以降に対象へ入りました。対象になれば3割負担で50万〜60万円ほどです。

腹腔鏡手術が途中で開腹に変わることはありますか?

癒着が強い、出血が止まりにくいといった事情で、数%は開腹へ移行します。安全のために最初から用意されている道で、失敗ではありません。年間50件以上を手がける施設かどうかが一つの目安になります。

がんの手術で入院はどのくらいかかりますか?

胃がんと大腸がんは腹腔鏡で7〜10日、開腹で10〜14日が目安です。肺がんの胸腔鏡なら5〜7日、乳がんの温存術では3〜5日で退院できることもあります。ESDは3〜7日で済みます。

がんの手術に向けて自分でできる準備はありますか?

手術の前に体力をつけるプレハビリテーションが挙げられます。合併症の発生率がおよそ17%下がったという報告があり、禁煙は4週間前からが推奨です。術後のリハビリは翌日から始める形が勧められています。

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この記事を書いた人Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。

【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医