
がんの手術を提案されたとき、「本当にこの方針で大丈夫だろうか」と不安を感じるのは自然なことです。セカンドオピニオンは、別の専門医から意見をもらい、自分が心から納得できる治療を選ぶための仕組みといえます。
この記事では、セカンドオピニオンの受け方から、執刀医を選ぶうえで確認しておきたい具体的な手順までを、患者目線でわかりやすく解説しています。一歩踏み出す勇気を、この記事が後押しできれば幸いです。
がん手術前にセカンドオピニオンを受ける患者が増えている理由
がんと診断された患者の中で、手術前にセカンドオピニオンを求める人は年々増加しています。その背景には、治療方針への納得感が術後の生活の質に直結するという認識の広がりがあります。
セカンドオピニオンとは「主治医以外の専門医に治療方針を相談する」制度
セカンドオピニオンとは、現在かかっている主治医とは異なる医師に、診断や治療方針について意見を求める制度です。転院を前提としたものではなく、あくまでも「もう一つの医学的な見解」を得ることが目的となります。
がんの手術では、術式(手術のやり方)や切除範囲によって体への負担が大きく変わるため、複数の専門医の見解を聞くことが、治療の満足度を高める手段になり得ます。主治医から提示された方針に疑問を感じたときだけでなく、「この方針で正しいと背中を押してほしい」という気持ちで受診する方も少なくありません。
手術方針が変わったケースは決して珍しくない
海外の研究報告では、セカンドオピニオンを受けた患者のうち、診断や治療方針に臨床的に意味のある変更が生じた割合が23%から57%に及んだとする報告もあります。手術の範囲が縮小されたり、手術そのものが経過観察に切り替わったりすることも含まれます。
日本でも、がん診療連携拠点病院を中心にセカンドオピニオン外来が整備されつつあり、患者が主体的に治療方針を確認できる環境は広がっています。「聞いてよかった」という声が多いのも、こうした変更の実績が裏付けになっているからでしょう。
セカンドオピニオンで生じうる変更の例
| 変更の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 術式の変更 | 開腹手術から腹腔鏡手術への切り替え |
| 切除範囲の縮小 | 臓器の全摘から部分切除への変更 |
| 治療方針の転換 | 手術から放射線治療や薬物療法への変更 |
| 経過観察への移行 | 手術を急がず定期検査で経過をみる判断 |
「別の医師に聞く」ことへの心理的ハードルは下がっている
かつては「主治医に失礼ではないか」と感じて、セカンドオピニオンをためらう患者が多くいました。しかし近年は、医師側もセカンドオピニオンを受けることに肯定的な姿勢を示すケースが増えています。
国内の多くのがん専門病院では、セカンドオピニオン外来を常設しており、紹介状の作成にも協力的です。「聞いてみたい」と思ったタイミングこそが、行動を起こすべきときだといえます。
セカンドオピニオンは主治医との信頼関係を損なわない
セカンドオピニオンを受けたからといって、主治医との関係が悪化するわけではありません。むしろ、別の専門医に相談した結果を主治医に伝えることで、治療方針をより深く話し合う機会が生まれます。
主治医にとっても、患者が納得したうえで手術に臨んでくれることは望ましいことです。遠慮せず、率直に「セカンドオピニオンを受けたい」と伝えて問題ありません。
セカンドオピニオンを受けるまでの具体的な手順と準備
セカンドオピニオンを受けるには、主治医への相談から始まり、紹介状の取得、受診先の選定、当日の準備までいくつかの段階を踏む必要があります。事前に流れを知っておくだけで、気持ちの負担がぐっと軽くなるはずです。
まずは主治医に「セカンドオピニオンを受けたい」と率直に伝える
セカンドオピニオンを受ける第一歩は、主治医に意思を伝えることです。「別の先生にも意見を聞いてみたい」と素直に話せば、多くの医師は快く対応してくれます。
もし直接言いにくい場合は、看護師やがん相談支援センターの相談員を通じて伝える方法もあります。大切なのは、自分の不安や疑問を押し殺さないことです。
紹介状(診療情報提供書)と検査データを準備する
セカンドオピニオン先の医師が正確に判断するためには、これまでの診療経過をまとめた紹介状と、画像データや病理検査の結果が必要です。紹介状は正式には「診療情報提供書」と呼ばれ、主治医に依頼すれば作成してもらえます。
CT画像やMRI画像はCDやDVDに焼いて渡されることが一般的です。血液検査の結果なども合わせて受け取っておくと、セカンドオピニオン当日の相談がスムーズに進みます。
セカンドオピニオン先の医療機関を探す方法
受診先の選び方にはいくつかの方法があります。がん診療連携拠点病院のウェブサイトでセカンドオピニオン外来の有無を確認するのが手軽な方法です。がん相談支援センターに電話で問い合わせれば、地域の候補を案内してもらえることもあります。
自分のがんの種類(部位)を専門とする医師がいるかどうかを事前に調べておくと、より的確な意見を得やすくなります。遠方の病院でも、オンラインで対応しているケースが増えていますので、候補を広げて検討してみてください。
受診当日に持っていくものと心構え
当日は、紹介状・検査データのほかに、自分が聞きたいことをメモにまとめておくことをおすすめします。限られた診察時間の中で質問し忘れを防ぐためです。
家族と一緒に受診すると、医師の説明を複数人で聞けるため、あとから内容を振り返りやすくなります。録音の可否は事前に確認しておくとよいでしょう。
セカンドオピニオン受診時の持ち物一覧
| 持ち物 | 備考 |
|---|---|
| 紹介状(診療情報提供書) | 主治医に依頼して取得 |
| 画像データ(CD/DVD) | CT・MRI・PETなど |
| 血液検査・病理検査の結果 | コピーでも可 |
| 質問メモ | 聞きたいことを事前に整理 |
| 保険証・お薬手帳 | 念のため持参 |
がん手術の執刀医を選ぶときに確認しておきたいポイント
セカンドオピニオンを受けたあと、最終的にどの医師に手術を任せるかは患者自身が決めることです。執刀医を選ぶ際には、手術実績や専門性に加え、患者との対話姿勢も大切な判断材料となります。
がん診療連携拠点病院の手術実績は公開情報で確認できる
がん診療連携拠点病院は、国が指定した専門的ながん治療を提供する医療機関です。各病院のがん種ごとの手術件数は、国立がん研究センターの「がん情報サービス」などで公開されています。
手術件数が多い病院ほど、難易度の高い症例にも慣れている傾向があるため、一つの目安になります。ただし、件数だけでなく、自分のがんの種類に対して豊富な経験を持つかどうかを重視してください。
執刀医の専門領域と経歴を事前に調べる
病院のウェブサイトには、医師のプロフィールや専門領域が掲載されていることが多いです。日本外科学会や各がん関連学会の専門医・指導医資格を持っているかどうかも参考になります。
遠慮せずに医師の経歴を確認することは、命を預ける相手を選ぶ行為として当然のことです。
執刀医選びで確認したい項目
| 確認項目 | 調べ方 |
|---|---|
| 手術実績(年間件数) | 病院HPやがん情報サービス |
| 専門医・指導医の資格 | 病院HPの医師プロフィール |
| 該当がん種の経験 | セカンドオピニオン外来で直接質問 |
オンラインセカンドオピニオンなら遠方の専門医にも相談できる
近年はビデオ通話を活用したオンラインセカンドオピニオンを導入する医療機関が増えています。地方にお住まいの方や、体調的に遠方への移動が難しい方でも、都市部の専門病院の医師に相談できるのは大きな利点です。
オンラインの場合も紹介状と検査データの送付が必要になりますが、郵送やデータ転送で対応している施設がほとんどです。
家族と一緒に受診すると冷静な判断がしやすい
がんの手術に関する説明は専門用語が多く、一人で聞いているとすべてを正確に理解するのが難しいこともあります。家族や信頼できる方と一緒に受診すれば、あとから家庭内で話し合う土台ができます。
受診後に「先生はどう言っていたっけ」と記憶が曖昧になることを防ぐ効果もあります。
セカンドオピニオン外来で医師に聞いておくべき質問とは
セカンドオピニオン外来の診察時間は限られています。あらかじめ聞きたいことを整理しておくことで、短い時間の中でも自分にとって必要な情報を引き出せます。
手術の術式・切除範囲について具体的に尋ねる
主治医が提案した術式と、セカンドオピニオン先の医師が考える術式を比較するために、「自分の場合、どのような手術方法が考えられますか」と質問してみてください。切除する範囲が異なれば、術後の生活への影響も変わります。
臓器の温存が可能かどうか、リンパ節をどの範囲まで切除するかなど、具体的な部分まで踏み込んで質問することが大切です。
手術以外の治療選択肢があるかどうかを確かめる
がんの治療は手術だけとは限りません。放射線治療、薬物療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬など)、あるいはこれらを組み合わせた集学的治療が選択肢になる場合もあります。
「手術をしない場合、どのような治療が考えられますか」と尋ねることで、主治医からは提示されなかった選択肢が見えてくるかもしれません。治療の幅を広く把握しておくことが、後悔のない決断につながります。
合併症やリスクについて率直に尋ねる
手術にはどんなものであれリスクが伴います。「この手術で起こりうる合併症にはどのようなものがありますか」「術後にどのくらいの期間で日常生活に戻れますか」といった質問は、術後の生活設計にも直結する内容です。
医師に遠慮して聞けなかったことが、のちのち大きな不安の種になることがあります。良い医師ほど患者の疑問に丁寧に向き合ってくれるものです。
セカンドオピニオン外来で聞きたい質問の例
- 自分のがんの進行度(ステージ)に対して、どの術式が適しているか
- 手術をしない場合の治療法と、その治療成績
- 手術の合併症が起こる確率と、起きた場合の対処法
- 術後の回復期間と日常生活への制限
二人の医師の意見が食い違ったとき、どう判断すればよいか
セカンドオピニオンを受けた結果、主治医と異なる意見が出ることは珍しくありません。意見が分かれたとき、どのように考え、どう行動すればよいかをあらかじめ知っておくと、冷静に対処できます。
意見が異なること自体は医療では日常的なこと
がんの治療には、唯一の正解があるわけではありません。同じがん種・同じステージであっても、医師の経験、所属する病院の設備、専門領域の違いによって推奨する治療法が異なることがあります。
意見が分かれた場合、それは「どちらかが間違っている」のではなく、「医学的に複数の妥当な選択肢がある」と捉えるのが適切です。複数の見解を知ることで、自分にとっての優先順位を考える材料が増えたと前向きに受け止めてください。
判断に迷ったら第三の医師に意見を求めることもできる
二人の医師の見解を聞いてもなお迷いが残る場合、さらにもう一人の専門医に相談する「サードオピニオン」を検討する方法もあります。特に、手術の有無や術式の選択が大きく異なるケースでは、第三者の冷静な意見が判断の助けになることがあります。
ただし、あまりに多くの医師に相談を繰り返すと、情報過多で混乱しやすくなります。2〜3名の専門医の見解を比較するのが現実的でしょう。
意見が食い違ったときに確認すべき項目
- それぞれの医師が推奨する術式と、その根拠
- 推奨する治療法の治療成績(生存率や再発率)
- 術後の生活の質(QOL)への影響の違い
- 自分自身が最も優先したいこと(根治性か、体への負担の軽さか)
執刀医を決めるときは「この先生になら命を預けられる」と思えるかが基準
最終的に誰に手術を任せるかは、患者自身が決断することです。医師の説明がわかりやすかったか、質問に誠実に答えてくれたか、自分の不安に寄り添ってくれたか — こうした対話の質も、執刀医選びの判断材料として軽視できません。
手術実績や専門性はもちろん大切ですが、「この先生になら安心して任せられる」という信頼感を持てるかどうかが、術前・術後の精神的な安定にもつながります。データだけでなく、自分の直感も大事にしてください。
セカンドオピニオンへの不安を解消して一歩踏み出すために
セカンドオピニオンを受けたいと思いながらも、さまざまな不安から行動に移せない方は少なくありません。よくある心配事とその解消法を整理しておくと、気持ちが楽になります。
「主治医に申し訳ない」という遠慮は手放してよい
セカンドオピニオンを受けたいと言い出すことに、罪悪感を覚える患者は多いです。しかし、医師の立場から見ても、患者が十分に納得したうえで治療に臨んでくれることは歓迎すべきことです。
セカンドオピニオン制度は、患者の権利として広く認められています。遠慮して聞けなかった疑問を胸に抱えたまま手術を受けるよりも、別の医師にも相談して納得感を得るほうが、治療の質にとってもプラスに働きます。
治療の開始が遅れるのではないかという焦り
「セカンドオピニオンに時間をかけている間に、がんが進行してしまうのではないか」と心配される方もいるかもしれません。たしかに、がんの種類によっては早期の治療開始が望ましいケースがあります。
けれども、多くの場合、セカンドオピニオンの受診には1〜2週間あれば十分です。主治医に「いつまでに治療を始めるのが望ましいか」を確認しておけば、焦らずに行動できます。
情報が増えすぎて頭が整理できなくなったら
複数の医師から異なる情報を受け取ると、かえって混乱してしまうことがあります。そんなときは、がん相談支援センターの相談員に相談してみてください。相談員は医療の知識を持つ専門職で、情報の整理を一緒に手伝ってくれます。
また、受け取った情報をノートや表にまとめて可視化するだけでも、頭の中がすっきりします。急いで結論を出す必要はありません。
不安を感じたときの相談先
| 相談先 | 対応内容 |
|---|---|
| がん相談支援センター | 治療の選択肢や情報整理のサポート |
| 主治医・担当看護師 | スケジュールや治療方針の確認 |
| 患者会・サポートグループ | 同じ経験をした方からの体験共有 |
よくある質問
がん手術のセカンドオピニオンを受けるには、どのようなタイミングが適切ですか?
がん手術のセカンドオピニオンは、主治医から手術の方針を提示された直後が受けやすいタイミングです。手術日が決まる前であれば、スケジュールにも余裕を持って動けます。
ただし、手術日が決まったあとでもセカンドオピニオンを受けることは可能です。主治医に「治療開始までにどのくらい猶予があるか」を確認したうえで、受診を検討してみてください。
がん手術のセカンドオピニオンを受けたら、必ず転院しなければなりませんか?
転院する必要はありません。セカンドオピニオンはあくまで「別の医師の意見を聞く」ための制度であり、受診したからといって転院を強制されることはないです。
セカンドオピニオン先の意見を持ち帰り、主治医と改めて治療方針を話し合うことが一般的な流れとなります。その結果、やはり主治医のもとで手術を受けると決める方も多くいらっしゃいます。
がん手術のセカンドオピニオンに必要な紹介状は、主治医にどう依頼すればよいですか?
主治医に「セカンドオピニオンを受けたいので、紹介状を書いていただけますか」と伝えるだけで大丈夫です。多くの医師はセカンドオピニオンの依頼に慣れているため、快く対応してくれます。
直接言いにくい場合は、外来の看護師やがん相談支援センターの相談員を通じて伝えることもできます。紹介状とあわせて、画像データや検査結果の提供もお願いしておくとスムーズです。
がん手術のセカンドオピニオンはオンラインでも受けられますか?
はい、オンラインでセカンドオピニオンを実施している医療機関は増えています。ビデオ通話を使って自宅から専門医に相談できるため、遠方にお住まいの方や体調的に移動が難しい方にとって便利な選択肢です。
オンラインの場合でも、紹介状や画像データの事前送付が必要です。受診を希望する病院のウェブサイトで、オンライン対応の有無や予約方法を確認してみてください。
がん手術のセカンドオピニオンで主治医と違う意見が出た場合、どちらを信じればよいですか?
どちらか一方を「正しい」と判断するのではなく、両方の意見を比較して自分にとって納得できる治療方針を選ぶことが大切です。それぞれの医師がなぜその治療法を勧めるのか、根拠を確認してみてください。
それでも迷いが残る場合は、第三の専門医に意見を求める方法もあります。がん相談支援センターに相談すれば、情報を整理する手助けをしてもらえます。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医