
ダヴィンチ手術を検討しているけれど、費用がいくらかかるのか不安に感じていませんか。保険が使えるがんの種類や、自己負担額がどこまで抑えられるのかは、多くの患者さんが気になるポイントでしょう。
結論から申し上げると、ダヴィンチ手術は前立腺がんや胃がんをはじめ多くのがん種で健康保険が適用され、高額療養費制度を併用すれば月々の自己負担額を数万円〜十数万円程度に抑えられます。
この記事では、対象となるがんの種類ごとの費用目安から、高額療養費制度の活用法、病院選びのポイントまで、わかりやすく解説します。
ダヴィンチ手術とはどんな手術か?ロボット支援の仕組みと費用の基本
ダヴィンチ手術とは、医師が手術支援ロボット「ダヴィンチ(da Vinci サージカルシステム)」を操作して行う内視鏡手術のことです。ロボットが自動で動くのではなく、あくまで医師の手の延長として精密な動きを補助する仕組みになっています。
医師がロボットを遠隔操作して行う手術
執刀医は手術室内のコンソールと呼ばれる操作台に座り、立体的な拡大映像を見ながらロボットアームを遠隔操作します。患者さんの体に小さな穴を数か所開け、そこからアームを挿入して手術を行う仕組みです。
ダヴィンチ手術が従来の開腹手術と大きく異なる点
開腹手術では体を大きく切り開く必要がありますが、ダヴィンチ手術は数センチ程度の小さな切開で済みます。そのため出血量が少なく、術後の痛みも軽い傾向があり、入院期間の短縮にもつながるといわれています。
また、ダヴィンチのカメラは術野を10倍以上に拡大した3D映像を映し出すため、通常の内視鏡手術よりも良好な視野で手術が行えます。手ぶれを自動補正する機能も備わっており、より繊細な手技が可能となっています。
ダヴィンチ手術と従来の術式の比較
| 項目 | ダヴィンチ手術 | 開腹手術 |
|---|---|---|
| 切開の大きさ | 数センチの穴を数か所 | 大きく切開 |
| 術中の出血量 | 少ない | 比較的多い |
| 術後の痛み | 軽い傾向 | やや強い傾向 |
| 入院期間 | 短め(7〜10日程度) | やや長い |
| 術後の回復 | 早い傾向 | 時間がかかる場合あり |
ダヴィンチ手術を受けられる診療科は年々拡大している
かつてはダヴィンチ手術の対象は泌尿器科領域に限られていましたが、現在は消化器外科、呼吸器外科、婦人科、心臓血管外科など、幅広い診療科で導入が進んでいます。2024年2月時点で、総計29の術式が保険収載されています。
日本国内では約600台以上のダヴィンチが稼働しており、大学病院やがんセンター、大規模な総合病院を中心に導入が広がっています。対象となる疾患や術式は今後さらに増えていくと見込まれるでしょう。
ダヴィンチ手術の費用は保険適用でどれくらい安くなるのか
保険が適用される以前、ダヴィンチ手術は自由診療となり、200万円以上の費用がかかるケースもありました。保険適用後は、従来の腹腔鏡手術とほぼ同等の医療費負担で手術を受けられるようになっています。
保険適用前は全額自己負担で200万円を超えることもあった
ダヴィンチ本体の価格は2億〜3億円にもなり、年間のメンテナンス費用も約2,500万円かかります。保険適用される前の時代には、胃がんの場合で200万円近い自己負担が発生することも珍しくありませんでした。
3割負担で50万〜60万円程度まで費用を抑えられる
保険適用によって、ダヴィンチ手術の診療報酬は従来の腹腔鏡手術と同じ点数に設定されています。70歳未満で3割負担の方の場合、手術費用と入院費用を合わせて50万〜60万円程度が目安となるでしょう。
ただし、この金額には差額ベッド代や食事代は含まれていません。入院期間や使用する薬剤によっても総額は変動するため、事前に医療機関の窓口で見積もりを確認しておくことをおすすめします。
1割負担の方はさらに自己負担額が軽くなる
75歳以上の後期高齢者医療制度に該当する方や、70歳以上で一般所得に区分される方は、窓口負担が1割または2割となります。前立腺がんのダヴィンチ手術を例にすると、1割負担で約11万〜12万円程度が目安です。
高額療養費制度をあわせて利用すれば、実際の自己負担額はさらに低くなるため、経済的な理由でダヴィンチ手術をあきらめる必要はほとんどありません。
前立腺がんにおけるダヴィンチ手術費用の目安
| 負担割合 | 手術・入院費用の目安 |
|---|---|
| 3割負担 | 約33万〜35万円 |
| 1割負担 | 約11万〜12万円 |
ダヴィンチ手術で保険が使えるがん種を年代別に一挙公開
ダヴィンチ手術の保険適用は2012年の前立腺がんからスタートし、段階的に対象が拡大されてきました。現在では泌尿器科、消化器外科、婦人科、呼吸器外科など多くの領域で保険診療として手術を受けられます。
2012年に前立腺がんで初めて保険適用された
日本で初めてダヴィンチ手術が保険適用になったのは、2012年4月の前立腺がん全摘除術です。前立腺は骨盤の奥深くにあり、狭い空間で精密な手技が求められるため、ダヴィンチの特性が発揮されやすい手術として高く評価されました。
その後2016年4月には、腎臓がんの腎部分切除術にも保険が適用されました。泌尿器科領域では現在、前立腺がんの全摘手術の半数以上がダヴィンチで行われるまでに普及しています。
2018年の大幅拡大で胃がん・肺がん・直腸がんなどが対象に
2018年4月の診療報酬改定で、一気に12の術式が新たに保険適用となりました。対象になったのは胃がん、食道がん、直腸がん、肺がん、縦隔腫瘍、膀胱がん、子宮体がんなどです。
この拡大によって、かつて200万円近い自己負担が必要だった胃がんのダヴィンチ手術も、通常の腹腔鏡手術と同程度の費用で受けられるようになりました。
ダヴィンチ手術の保険適用年表
| 年度 | 対象となったがん種 |
|---|---|
| 2012年 | 前立腺がん |
| 2016年 | 腎臓がん(部分切除) |
| 2018年 | 胃がん、食道がん、直腸がん、肺がん、膀胱がん、子宮体がん、縦隔腫瘍 |
| 2022年 | 結腸がん、肝がん、腎盂尿管がん |
2022年以降も結腸がん・肝がんなど適用範囲が広がっている
2022年の診療報酬改定では、結腸がんに対するロボット支援下の切除術が新たに保険収載されました。さらに肝切除術や膵切除術にも適用が広がっており、消化器外科領域全体でダヴィンチの活用が加速しています。
2024年度にはロボット支援下の弁置換術や肺区域切除術なども追加されており、今後も診療報酬改定のたびに新たな術式が加わる見通しです。
高額療養費制度でダヴィンチ手術の自己負担額はさらに下がる
健康保険の3割負担でも50万円を超える場合がありますが、高額療養費制度を使えば月ごとの自己負担に上限が設けられます。多くの方の場合、実質的な負担額は月10万円前後まで抑えられるでしょう。
高額療養費制度で月ごとの上限額が決まる
高額療養費制度とは、ひと月に医療機関の窓口で支払った医療費が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。年齢や年収に応じて自己負担の上限額が段階的に設定されています。
ダヴィンチ手術は保険診療として行われるため、この制度の対象になります。高額な手術であっても、上限額を超えた分は申請すれば返還されるので、安心して治療に臨めるでしょう。
年収約370万〜770万円の方は月額約8万円が上限の目安
69歳以下で年収が約370万〜770万円の区分に該当する方は、ひと月の自己負担上限額が約80,100円(+医療費の1%)となっています。手術と入院の総額が100万円の場合でも、実際の自己負担は約8万円程度で済む計算です。
年収が約370万円以下の方は上限額がさらに低く、月額57,600円が目安です。70歳以上の一般所得者も同額で、住民税非課税の方は月額35,400円や24,600円が上限となります。
限度額適用認定証を事前に取得しておくと窓口負担を抑えられる
高額療養費制度は原則として後から払い戻しを受ける仕組みですが、事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払いを上限額までに抑えられます。手術が決まった時点で、加入している健康保険の窓口に申請しておきましょう。
入院が月をまたぐと上限額が各月ごとに適用されるため、同じ月の中で入退院が完結するよう主治医と相談しておくとよいかもしれません。
69歳以下の高額療養費制度における自己負担上限額
| 年収の目安 | 月額の上限額 |
|---|---|
| 約1,160万円〜 | 約252,600円+α |
| 約770万〜1,160万円 | 約167,400円+α |
| 約370万〜770万円 | 約80,100円+α |
| 約370万円以下 | 57,600円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 |
ダヴィンチ手術のメリットとデメリットを正直に比べた結果
ダヴィンチ手術には多くの長所がありますが、万能な手術法というわけではありません。メリットとデメリットの両面を把握したうえで、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
出血量が少なく術後の回復が早い
複数の研究で、ダヴィンチ手術は開腹手術に比べて術中の出血量が大幅に少ないことが報告されています。体への負担が軽いため、術後の痛みが少なく、回復期間の短縮にもつながります。
前立腺がん手術の場合、開腹手術では術後の排尿障害が6割近くの患者さんに残るとされますが、ダヴィンチ手術では3%程度にまで軽減できるというデータもあります。
手術時間がやや長くなる傾向がある
ダヴィンチ手術は、ロボットのセッティングやドッキングに時間がかかるため、開腹手術や通常の腹腔鏡手術に比べて手術時間がやや長くなります。
ただし、術者の経験を重ねるほど短縮される傾向があり、症例数の多い施設ではこの差は縮まりつつあります。
ダヴィンチ手術の主なメリットとデメリット
- 出血量が少なく、輸血が必要になるケースが極めて少ない
- 傷口が小さいため、術後の痛みが軽減されやすい
- 入院期間が短く、日常生活への復帰が早い
- 手術時間がやや長くなる場合がある
- 触覚フィードバックがないため、術者に高い技量が求められる
すべての患者さんに適応できるわけではない
がんの進行度や患者さんの体格、過去の手術歴などによっては、ダヴィンチ手術が適応にならないケースもあります。たとえば広範囲に転移しているがんや、癒着が強い症例では開腹手術が選択されることもあるでしょう。
主治医と十分に相談し、自分の病状にとって本当にベストな術式は何かを一緒に検討することが大切です。ダヴィンチにこだわりすぎず、総合的な判断のもとで治療法を選びましょう。
ダヴィンチ手術を受ける病院選びで後悔しないための3つの基準
ダヴィンチ手術はどの病院でも受けられるわけではなく、厚生労働省が定めた施設基準を満たした医療機関のみが実施を許可されています。病院選びの段階でしっかり情報を集めておけば、後悔のない治療につながります。
施設基準を満たした医療機関だけが実施できる
ダヴィンチ手術を保険診療として行うには、手術の種類ごとに定められた施設基準を満たす必要があります。たとえば、指導医レベルの経験豊富な医師が常勤していること、一定数以上の手術実績があることなどが求められます。
施設基準を満たしていない医療機関では、たとえダヴィンチを導入していても保険適用での手術は認められません。受診前に、希望する手術が保険診療で受けられるかどうか確認しておきましょう。
症例数の多い施設ほど術者の経験値が高い
ダヴィンチ手術は機械を操作するため簡単に見えるかもしれませんが、実際には高度な技術と経験が必要です。ある外科医は「300例を超えてようやく高い水準に達した」と語っています。
手術実績は各病院のホームページで公開されていることが多いため、事前に確認することをおすすめします。
日本ロボット外科学会の専門医を確認する
日本ロボット外科学会では、ロボット支援手術の実績に応じて専門医の技術力を4段階にランク付けしています。同学会のホームページでは専門医の一覧が公開されているため、手術を担当する医師がどのレベルの認定を受けているかを調べることも可能です。
紹介状をもらう際には、かかりつけ医に「ロボット手術の実績が多い施設を紹介してほしい」と伝えると、適切な医療機関を案内してもらいやすくなります。
病院選びで確認したいポイント
- 希望するがん種のダヴィンチ手術が保険診療で実施されているか
- 当該手術の年間症例数と累計実績はどの程度か
- 執刀医が日本ロボット外科学会の認定を受けているか
ダヴィンチ手術を受ける前に準備しておきたい費用と保険の確認事項
手術が決まってから慌てないよう、費用面と保険の手続きはできるだけ早い段階で準備を進めておくと安心です。主治医との相談、公的制度の申請、民間保険の確認など、やるべきことを整理しておきましょう。
主治医と術式の選択について十分に話し合う
ダヴィンチ手術はあくまで選択肢のひとつであり、開腹手術や通常の腹腔鏡手術と比べてどの術式が自分に合っているかは、がんの種類や進行度、全身状態によって異なります。主治医からそれぞれの方法のメリットとリスクについてしっかり説明を受けましょう。
「ダヴィンチ手術を希望します」と伝えたうえで、適応があるかどうかを判断してもらいましょう。納得してから同意書にサインしてください。
手術前に確認しておきたい費用関連チェックリスト
| 確認事項 | 対応先 |
|---|---|
| 手術・入院費用の概算見積もり | 医療機関の医事課・会計窓口 |
| 限度額適用認定証の申請 | 加入している健康保険組合・協会けんぽ |
| 民間医療保険の給付金請求 | 加入している保険会社 |
| 傷病手当金の受給要件確認 | 健康保険組合・協会けんぽ |
入院期間と術後の生活をあらかじめイメージしておく
ダヴィンチ手術の入院期間はがんの種類や術式によって異なりますが、前立腺がんでおおむね7〜10日、胃がんで10〜14日程度が目安です。開腹手術に比べて短い傾向がありますが、余裕を持ったスケジュールを組んでおくと安心できます。
退院後もしばらくは体力が完全に戻らないため、仕事への復帰時期や家事の分担について、ご家族と事前に話し合っておくことが大切です。とくに一人暮らしの方は、退院直後の生活支援体制を整えておくとよいでしょう。
民間の医療保険でダヴィンチ手術がカバーされるか確認する
民間の医療保険に加入している方は、ダヴィンチ手術が「手術給付金」の対象となるかを保険会社に確認しましょう。保険診療に分類されるため、多くの医療保険で給付金の対象になっています。
入院給付金の適用可否もあわせて確認しておくと、自己負担をさらに軽くできる場合があります。手術が決まったら、なるべく早く保険会社に連絡を取りましょう。
よくある質問
ダヴィンチ手術の費用は全額自己負担になる場合がありますか?
保険が適用されていないがん種や術式の場合、ダヴィンチ手術は自由診療となり全額自己負担になります。施設基準を満たしていない医療機関で受ける場合も同様のため、手術前に保険診療として実施されるかどうかを必ず確認してください。
ダヴィンチ手術は高齢者でも受けられますか?
年齢の制限は設けられていません。一般的に開腹手術や腹腔鏡手術に耐えられる状態の方であれば、ダヴィンチ手術も受けることが可能です。むしろ傷口が小さく体への負担が軽い低侵襲手術であるため、体力が落ちている高齢の方にこそ有用な場合があります。
ただし、患者さんごとの全身状態や持病の有無によって判断が異なるため、主治医と十分に話し合ったうえで術式を決定することが大切です。
ダヴィンチ手術を受けたあとの入院期間はどのくらいですか?
入院期間はがんの種類や手術範囲によって異なりますが、前立腺がんの場合はおおむね7〜10日程度が目安です。胃がんや直腸がんはもう少し長く、10〜14日程度を見込んでおくとよいでしょう。
開腹手術と比べると数日〜1週間ほど短い傾向があり、術後の回復も早いため、早期の社会復帰が期待できます。
ダヴィンチ手術と通常の腹腔鏡手術では費用に差がありますか?
保険診療として行われるダヴィンチ手術の診療報酬点数は、多くの術式で通常の腹腔鏡手術と同額に設定されています。そのため、患者さんが窓口で支払う自己負担額には大きな差が生じないケースがほとんどです。
ただし、一部の術式ではダヴィンチ手術に加算が付く場合もあり、その場合はやや高くなることがあります。具体的な金額は手術内容や入院日数によっても変わるため、担当医や医事課に事前に確認してください。
ダヴィンチ手術の安全性に問題はないのですか?
世界中でダヴィンチの機械的なシステムエラーの報告率は0.2〜0.4%と極めて低く、安全性は高いといえます。認定資格を取得し、十分なトレーニングを積んだ医師が操作する限り、従来の手術と同等以上の安全性が期待できるでしょう。
万が一のトラブルに備え、手術室のスタッフは緊急時の対応訓練を受けており、開腹手術への切り替えも含めた万全の体制が整えられています。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医