胃がんは遺伝する?家系内に患者がいる場合のリスクと検診の重要性

胃がんは遺伝する?家系内に患者がいる場合のリスクと検診の重要性

「家族に胃がんの人がいるから、自分もなるのでは」と不安を抱えていませんか。胃がんの発症には遺伝的な要素が一部関与していますが、遺伝だけで発症が決まるわけではありません。

ピロリ菌の家族内感染や食生活の共有など、環境的な要因も大きく影響しています。家族歴がある方こそ、正しいリスクの把握と定期的な検診が、早期発見・早期対処への近道です。

この記事では、胃がんと遺伝の関係を医学的な根拠にもとづいてわかりやすく解説し、家系内に患者がいる場合に取るべき具体的な行動をお伝えします。

胃がんと遺伝の関係|「がん家系」だからといって悲観する必要はない

結論からお伝えすると、胃がんは遺伝だけで発症する病気ではありません。遺伝的な体質が一定のリスクとなることは事実ですが、がん全体のうち遺伝が直接的な原因となるのは5〜10%程度です。

「がん家系」という言葉に必要以上に振り回されない

「うちはがん家系だから」という言葉をよく耳にするかもしれません。たしかに血縁者にがん患者が多い家系は存在しますが、それがすべて遺伝によるものとは限らないのです。

家族は同じ食卓を囲み、同じ生活環境で長年過ごします。塩分の多い食事や喫煙習慣など、がんリスクを高める生活習慣が家族内で共有されているケースも少なくありません。

遺伝が直接関わる胃がんはがん全体の5〜10%にとどまる

がんの発症は、細胞分裂の際に生じる遺伝子の変異によって起こります。細胞の増殖をコントロールする遺伝子に変異が蓄積すると、正常な制御が効かなくなり、がんが発生するのです。

生まれつき特定の遺伝子に変異を持っている場合、がんを発症しやすい体質を親から子へ受け継ぐことがあります。ただし、遺伝が主な原因となるがんはがん全体の5〜10%にとどまると報告されています。

胃がんの主な発症要因の内訳

発症要因影響の大きさ具体例
ピロリ菌感染非常に大きい慢性胃炎から萎縮性胃炎への進行
生活習慣大きい塩分過多、喫煙、過度な飲酒
遺伝的要因一部関与CDH1、BRCA1/2などの遺伝子変異
環境的要因中程度衛生環境、食文化の共有

家族で共有しやすい生活環境こそ胃がんリスクの本当の原因であることも多い

国立がん研究センターの大規模疫学調査では、食生活や喫煙・飲酒の影響を統計的に除外してもなお、家族歴と胃がんリスクには関連が認められています。ただし、ピロリ菌の家族内感染が関連の一部を説明している可能性も指摘されています。

つまり、「遺伝」と「家族内で共有する環境」の両方がリスクに関わっているのです。家族歴があるからといってすぐに悲観するのではなく、自分にできる対策を一つずつ始めることが大切でしょう。

胃がん発症に関わる遺伝子|CDH1やBRCA1/2の変異がもたらすリスク

胃がんの発症リスクを高める遺伝子変異はいくつか特定されており、なかでもCDH1遺伝子、BRCA1/2遺伝子、ミスマッチ修復遺伝子が代表的です。それぞれの遺伝子が異なるタイプの胃がんリスクに関与しています。

遺伝性びまん性胃がんを引き起こすCDH1遺伝子の変異

CDH1遺伝子はE-カドヘリンという細胞同士をつなぎとめるタンパク質を作る設計図にあたります。この遺伝子に生まれつき変異がある場合、「遺伝性びまん性胃がん(HDGC)」を発症するリスクが高まります。

日本人の胃がん患者を対象にした研究では、びまん性胃がん(低分化型胃がん)の約13%でCDH1遺伝子に変異が認められたと報告されています。東アジア特有の変異パターンがあることもわかっており、日本人にとって見過ごせない遺伝子の一つです。

BRCA1やBRCA2の変異は胃がんリスクも高める

BRCA1やBRCA2は乳がんや卵巣がんとの関連でよく知られていますが、胃がんのリスクにも影響します。これらの遺伝子はDNAの損傷を修復する働きを持っており、変異があるとDNA修復がうまくいかず、がんが発生しやすくなるのです。

理化学研究所などの国際共同研究では、ATM、BRCA1、BRCA2、PALB2などの遺伝子変異とピロリ菌感染が組み合わさると、胃がんリスクが相乗的に高まることが明らかになりました。

リンチ症候群と胃がんの深い結びつき

リンチ症候群は、ミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6など)に生まれつきの変異がある遺伝性の疾患です。大腸がんのリスクが特に高いことで知られていますが、胃がんや子宮がんなど複数のがんリスクも上昇します。

全大腸がんの2〜5%がリンチ症候群によるものと推定されています。家族に大腸がんや子宮がんの方が複数いる場合は、胃がんのリスクも合わせて検討する必要があるでしょう。

胃がんに関連する主な遺伝子と特徴

遺伝子名関連する胃がんのタイプその他のがんリスク
CDH1びまん性胃がん(HDGC)乳がん(小葉がん)、大腸がん
BRCA1/2胃がん全般乳がん、卵巣がん、前立腺がん
MLH1/MSH2リンチ症候群関連の胃がん大腸がん、子宮がん
APC家族性大腸腺腫症関連の胃がん大腸がん、十二指腸がん

ピロリ菌の家族内感染が胃がんリスクを大きく押し上げる

胃がんの発症原因として圧倒的に大きいのがヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の感染です。そしてピロリ菌は家族間で感染しやすいため、「遺伝」と思われている胃がんの多くが、実はピロリ菌の家族内感染によるものである可能性があります。

ピロリ菌は約8割が母親から子どもへ感染する

ピロリ菌は免疫が未発達な2歳未満の乳幼児期に、口から侵入して胃に定着します。感染経路の約8割は母親からの経口感染と考えられており、家族の中で菌が受け継がれていく構図があるのです。

かつては井戸水など衛生環境の問題も感染経路の一つでしたが、現代では家族間の経口感染が主な原因とされています。高齢者ほどピロリ菌の感染率が高い傾向があり、祖父母世代から親世代、そして子世代へと家族内で広がるケースが典型的です。

ピロリ菌と遺伝子変異が重なると胃がんリスクは22倍に跳ね上がる

2023年に発表された理化学研究所などの国際共同研究では、ピロリ菌の感染状況と遺伝子変異の有無を組み合わせた胃がんリスクが算出されました。その結果は驚くべきものです。

ピロリ菌感染がなく遺伝子変異もない人のリスクを1.00とした場合、ピロリ菌に感染し、かつ特定の遺伝子変異を持っている人のリスクは22.45倍に達しました。一方、ピロリ菌感染がない状態で遺伝子変異のみの場合は1.68倍にとどまっています。

ピロリ菌感染と遺伝子変異の組み合わせ別リスク

条件胃がんリスク(倍率)
ピロリ菌なし・遺伝子変異なし1.00(基準)
ピロリ菌なし・遺伝子変異あり1.68倍
ピロリ菌あり・遺伝子変異なし5.78倍
ピロリ菌あり・遺伝子変異あり22.45倍

若いうちにピロリ菌を除菌すれば胃がんリスクは大幅に下がる

ピロリ菌による胃がんリスクは、感染期間が長いほど蓄積されていきます。逆に言えば、若い年齢で除菌を行うほど、将来の胃がんリスクを効率的に下げることができるのです。

家族に胃がん患者やピロリ菌保菌者がいる場合は、自分自身がピロリ菌に感染しているかどうかを早めに調べることをおすすめします。除菌治療は内服薬を一定期間服用するだけで完了するため、身体への負担も小さい治療法です。

家族に胃がん患者がいると、あなたのリスクは何倍になるのか?

家族歴がある人の胃がんリスクは、家族歴がない人と比べて約1.36倍に上昇するという日本人10万人以上を対象とした大規模調査のデータがあります。さらに続柄や性別、年齢によってリスクの大きさは大きく変動します。

父親・母親・兄弟姉妹の胃がん家族歴とリスク倍率

大規模な疫学研究によると、男性の場合は父親に胃がんがあると死亡リスクが2.1倍に上昇します。女性の場合は母親に胃がんがある場合で5.4倍、姉妹にある場合で2.9倍、父親にある場合で2.0倍という結果が報告されています。

男女ともに同性の家族に胃がんの既往があると、リスクがより強く上昇する傾向がみられます。遺伝的な素因に加え、同性の家族同士で生活習慣が似やすいことも要因の一つと考えられています。

若い女性は同性の家族歴で胃がんリスクが10倍以上になることも

40〜59歳の比較的若い年代に限った分析では、家族歴を持つ女性の胃がんリスクは5.9倍まで高まります。特に母親に胃がんの既往がある場合は10.5倍、姉妹にある場合は13.4倍と、驚くほど強い関連が認められました。

若年で発症する胃がんほど遺伝的な素因が関与している可能性が高いとされており、40代以下の女性で同性の親族に胃がん患者がいる方は、より早い段階から定期検診を始めるべきでしょう。

両親ともに胃がん経験者の場合は女性で約17倍のリスク

両親の双方が胃がんに罹患した場合のリスクは、男性で2.4倍、女性では16.9倍にまで跳ね上がります。女性でこれほどリスクが高くなる背景には、遺伝的素因に加えてホルモンなどの影響も推察されていますが、まだ完全には解明されていません。

家族歴はあくまでリスク指標であり、「必ず発症する」ことを意味するものではないという点も忘れないでください。定期的な検診で早期に発見できれば、胃がんは治癒を目指せる病気です。

家族歴と胃がん死亡リスクの関連(続柄別)

家族歴の対象男性のリスク倍率女性のリスク倍率
父親に胃がん2.1倍2.0倍
母親に胃がんデータ限定的5.4倍
兄弟・姉妹に胃がんデータ限定的2.9倍
両親ともに胃がん2.4倍16.9倍

遺伝性びまん性胃がん(HDGC)は通常の胃がんと何が違うのか?

遺伝性びまん性胃がん(HDGC)は、CDH1遺伝子の変異によって引き起こされる特殊なタイプの胃がんです。通常の胃がんとは発症のしかたや好発年齢が大きく異なり、全胃がんの1%未満と推定されていますが、該当する方にとっては極めて深刻な疾患といえます。

HDGCは胃壁の中に広がるタイプのがんで発見が難しい

通常の胃がんは粘膜の表面に腫瘤(しゅりゅう=かたまり)を作ることが多いのに対し、HDGCでは明確な腫瘤を形成しません。がん細胞が胃壁の中に浸潤し、粘膜の下で広がっていくため、内視鏡検査でも見つけにくいという特徴があります。

胃壁が全体的に厚く硬くなっていく「革袋胃(リニティスプラスティカ)」と呼ばれる状態になることもあり、早期発見が非常に困難です。だからこそ、家族歴から遺伝的リスクを事前に把握しておくことが、対策のカギとなります。

発症年齢は30〜40代が中心で、80歳までの累積リスクは約80%

HDGCは通常の胃がんよりも若い年齢で発症する傾向があり、好発年齢は30代後半から40代前半です。大部分の患者が40歳以前に発症するとされており、80歳までの累積リスクは男女ともに約80%と推定されています。

HDGCと通常の胃がんの比較

項目HDGC通常の胃がん
主な原因遺伝子CDH1ピロリ菌感染が主
好発年齢30〜40代50代以降
がんの形態びまん性(胃壁内に広がる)腫瘤形成型が多い
遺伝形式常染色体優性遺伝(50%の確率で遺伝)多因子性

CDH1遺伝子検査で将来のリスクを見極められる

CDH1遺伝子の変異は血液検査で調べることができます。HDGCは常染色体優性遺伝の形式で遺伝するため、親がこの変異を持っている場合、子どもに50%の確率で受け継がれます。

家系内にびまん性の胃がんを若くして発症した方や、乳がん(乳腺小葉がん)を発症した方が複数いる場合は、遺伝カウンセリングを受けることで、遺伝子検査を受けるべきかどうかを専門家と一緒に検討できます。

胃がんの家族歴がある人が受けるべき検診と検査はこれだ

家族歴のある方にとって、定期的な検診は胃がんを早期に発見するための強力な武器です。40歳を過ぎたら、まずは胃内視鏡検査を一度受けておくことが推奨されています。

40歳を過ぎたら胃内視鏡検査(胃カメラ)を一度は受けておく

胃がんは40歳以降から発症率が上昇する病気です。家族歴のある方は、症状がなくても40歳前後で一度は内視鏡検査を受けておくとよいでしょう。

内視鏡検査では、胃の粘膜を直接観察し、微小な病変や前がん状態(萎縮性胃炎や腸上皮化生など)を発見できます。自覚症状のない早期の胃がんを見つけた場合、内視鏡での治療で完治が期待できるケースも少なくありません。

ABC検診(胃がんリスク層別化検査)で自分のリスクを把握する

ABC検診は、血液検査でピロリ菌の感染の有無と胃粘膜の萎縮度を調べ、胃がんリスクをA〜D群に分類する検査です。バリウムを飲んだり胃カメラを入れたりする必要がないため、手軽に受けられます。

ただし、ABC検診はあくまでリスクの分類であり、現在がんがあるかどうかを直接診断するものではない点に注意が必要です。リスクが高いと判定された場合は、速やかに内視鏡検査を受けましょう。

遺伝カウンセリングで一歩踏み込んだ対策を取れる

家系内に若くして胃がんを発症した方が複数いる場合や、乳がん・大腸がんなど他のがんも多い家系の場合は、遺伝カウンセリングの受診を検討してみてください。

遺伝カウンセリングでは、家系図をもとにした遺伝リスクの評価や、遺伝子検査を受けるかどうかの判断を専門のカウンセラーと一緒に行えます。結果に応じて、個別の検診スケジュールや予防策を組み立てることが可能です。

家族歴がある場合に検討したい検診・検査

  • 胃内視鏡検査(胃カメラ):40歳以降、定期的に受診
  • ABC検診:血液検査でピロリ菌感染と胃粘膜の状態を評価
  • ピロリ菌検査:家族にピロリ菌保菌者がいる場合は早めに確認
  • 遺伝カウンセリング:若年発症や複数のがん家族歴がある場合に推奨

胃がんリスクを下げるために今日から変えたい生活習慣

家族歴がある方でも、生活習慣の改善によって胃がんリスクを大きく下げることができます。遺伝はコントロールできませんが、日々の食事や嗜好品との向き合い方は自分で変えられるものです。

塩分の摂りすぎと喫煙は胃がんリスクを確実に高める

疫学研究によって、塩分の過剰摂取と喫煙は胃がんのリスクを明確に上昇させることがわかっています。漬物や塩辛、干物などの塩蔵食品を毎日大量に食べる習慣がある方は、少しずつ量を減らしていくことが大切です。

胃がんリスクを高める生活習慣と対策

  • 塩分の過剰摂取:漬物や塩蔵食品を控え、薄味に慣れる工夫を
  • 喫煙:禁煙が理想だが、本数を減らすだけでもリスクは下がる
  • 過度な飲酒:1日あたりの飲酒量を適正範囲にとどめる
  • 野菜・果物の不足:緑黄色野菜や柑橘類を意識的に食事に加える

野菜・果物を意識して摂り、バランスのよい食事を心がける

緑黄色野菜や柑橘系の果物に含まれるビタミンCやカロテノイドには、胃がんリスクを下げる効果があると報告されています。毎食に野菜を1品追加する、おやつにみかんやキウイを取り入れるなど、無理のない範囲で始めてみてください。

食事全体のバランスも大切です。加工食品やインスタント食品に頼りすぎず、主食・主菜・副菜を揃えた食事を意識するだけでも、胃の粘膜を守る力が高まるでしょう。

飲酒量を減らすことでALDH2遺伝子多型のリスクを抑えられる

日本人を含む東アジアの人々には、アルコール分解酵素であるALDH2の遺伝子多型(お酒に弱い体質)を持つ方が多く存在します。この遺伝子多型を持つ方が飲酒と喫煙の両方の習慣を持っていると、胃がんの原因となるゲノム変異が相乗的に蓄積されることが研究で明らかになっています。

お酒を飲むと顔が赤くなりやすい方は、ALDH2遺伝子の不活性型を持っている可能性があります。該当する方は、できるだけ飲酒量を抑え、禁煙を心がけることで、胃がんリスクの上昇を食い止めることにつながります。

よくある質問

胃がんの遺伝的リスクがあるかどうかを調べるにはどうすればいい?

胃がんの遺伝的リスクを調べる方法はいくつかあります。まず、家系内に胃がん患者が複数いる場合や、若くして胃がんを発症した方がいる場合は、医療機関の遺伝カウンセリング外来を受診するのがよいでしょう。

遺伝カウンセラーが家系図をもとにリスクを評価し、必要に応じてCDH1やBRCA1/2などの遺伝子検査を提案してくれます。血液検査で調べられるため、大がかりな検査ではありません。

胃がんの家族歴がある場合、何歳から検診を受け始めるべき?

一般的には40歳を目安に胃内視鏡検査を受け始めることが推奨されています。ただし、家系内に40歳未満で胃がんを発症した方がいる場合は、もっと早い時期から検診を開始したほうがよいかもしれません。

まずはかかりつけ医に家族歴を伝え、適切な検診開始時期と頻度について相談してみてください。ピロリ菌の検査は年齢に関係なく受けられるため、気になったタイミングで検査を受けることも一つの選択肢です。

胃がんとピロリ菌感染の関係はどれくらい強い?

胃がんの発症原因として、ピロリ菌感染が占める割合は非常に大きいとされています。ピロリ菌に長期間感染していると胃の粘膜に慢性的な炎症が生じ、萎縮性胃炎から腸上皮化生を経て、がんが発生する流れが知られています。

研究データでは、ピロリ菌に感染している方は感染していない方に比べて胃がんリスクが約5〜6倍になることが示されています。家族にピロリ菌保菌者がいる方は、自分も感染している可能性が高いため、一度検査を受けることをおすすめします。

胃がんの遺伝リスクが高い人でも予防は可能?

遺伝的なリスクを完全にゼロにすることは難しいですが、生活習慣の改善や定期検診によってリスクを下げることは十分に可能です。特にピロリ菌の除菌は、遺伝子変異を持つ方にとっても胃がんリスクを大きく低減させる手段となります。

塩分の摂取を控え、禁煙し、野菜や果物を積極的に摂るといった日常的な取り組みの積み重ねが、遺伝的なリスクを補って余りある予防効果をもたらすでしょう。家族歴がある方こそ、定期検診と生活改善の両輪で、積極的に胃がん対策に取り組んでください。

胃がんの遺伝性びまん性胃がん(HDGC)は日本人にもみられる?

遺伝性びまん性胃がん(HDGC)は全胃がんの1%未満と少数ですが、日本人にもみられます。日本人の胃がん患者を対象にした研究では、びまん性胃がんの約13%にCDH1遺伝子の変異が確認されています。

過去には日本人のHDGC家系でCDH1変異が見つからなかったとする報告もありましたが、近年の研究では日本人における症例報告も発表されており、東アジア特有の変異パターンが存在することもわかってきました。家系内にびまん性胃がんの方がいる場合は、医師に相談するとよいでしょう。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医