リンチ症候群と免疫療法の相性|MSI-Highに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果

リンチ症候群と免疫療法の相性|MSI-Highに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果

リンチ症候群は遺伝性のがん体質のなかでも発症頻度が高く、大腸がんや子宮体がんをはじめ複数の臓器にがんを生じやすい疾患です。この疾患の腫瘍はMSI-High(マイクロサテライト不安定性が高い)という分子的特徴を持っています。

近年、MSI-Highの固形がんに対して免疫チェックポイント阻害薬が高い治療効果を示すことが明らかになりました。リンチ症候群のがんと免疫療法は非常に相性が良く、従来の化学療法を上回る成績が報告されています。

本記事では、リンチ症候群とMSI-Highの関係、免疫チェックポイント阻害薬の効果や副作用、診断後に取るべき行動まで、わかりやすく解説します。

リンチ症候群のミスマッチ修復遺伝子異常がMSI-Highを引き起こす

リンチ症候群では、DNAの修復に関わる「ミスマッチ修復遺伝子」に生まれつき変異があるため、細胞分裂のたびにDNAのエラーが蓄積し、MSI-Highという状態が生じます。この分子的特徴こそが、免疫療法の効きやすさに直結しています。

ミスマッチ修復遺伝子の変異が引き起こすDNA修復の破綻

私たちの細胞は分裂するたびにDNAをコピーしますが、コピーの際に小さなエラーが生じることがあります。通常はミスマッチ修復(MMR)と呼ばれる仕組みがこのエラーを見つけて修正してくれます。

リンチ症候群の患者さんでは、このMMR遺伝子のうち1つに生まれつき変異を持っているため、エラー修正の機能が大幅に低下します。その結果、DNAの特定領域にエラーが次々と蓄積していくのです。

マイクロサテライト不安定性(MSI-High)とはどんな状態か

マイクロサテライトとは、DNA上に存在する短い塩基配列の繰り返し部分を指します。MMR機能が低下すると、この繰り返し部分の長さが正常な細胞と異なってしまいます。

こうした変化が腫瘍全体で広範囲に認められる状態を「MSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)」と呼びます。検査ではPCR法や免疫組織化学染色(IHC)を用いてMMRタンパク質の発現消失やマイクロサテライトの変化を調べ、MSI-Highかどうかを判定します。

リンチ症候群に関わる4つの原因遺伝子

遺伝子名頻度の目安関連しやすいがん
MLH1約30〜40%大腸がん、子宮体がん
MSH2約30〜40%大腸がん、尿路がん
MSH6約15〜20%子宮体がん、大腸がん
PMS2約5〜10%大腸がん(浸透率は比較的低め)

遺伝性と散発性のMSI-High腫瘍はどう違うのか

MSI-Highの腫瘍には、リンチ症候群のように遺伝的な原因で生じるものと、MLH1遺伝子のプロモーター領域がメチル化されることで後天的に発生する「散発性」のものがあります。散発性MSI-Highは高齢の方に多く、BRAF V600E変異を伴う傾向があります。

治療効果においては両者に大きな差がないとする報告が多いものの、遺伝性の場合は生涯にわたる発がんリスクの管理が必要となるため、区別して把握しておくことが大切です。

リンチ症候群の腫瘍が免疫チェックポイント阻害薬と好相性である理由

リンチ症候群の腫瘍は、免疫細胞が攻撃しやすい「ネオアンチゲン(新生抗原)」を大量に産生し、腫瘍内にリンパ球が多数浸潤している点が特徴です。この免疫学的な環境が、免疫チェックポイント阻害薬に対する高い反応性を生んでいます。

変異の蓄積がネオアンチゲンを大量に生み出す

MMR機能が失われたがん細胞では、遺伝子変異が急速に蓄積します。変異が積み重なることで、正常な細胞にはない異常なタンパク質(ネオアンチゲン)が次々と生まれます。

免疫系はこのネオアンチゲンを「異物」として認識するため、変異量が多い腫瘍ほど免疫細胞の標的になりやすいのです。実際に、MSI-Highの腫瘍はMSS(マイクロサテライト安定性)の腫瘍と比較して約10〜100倍もの体細胞変異を持つとされています。

腫瘍浸潤リンパ球が集まりやすい免疫環境が整っている

MSI-Highの腫瘍組織を顕微鏡で観察すると、腫瘍の中や周囲に免疫細胞(とくにT細胞)が密集していることがわかります。これは「腫瘍浸潤リンパ球(TIL)」と呼ばれ、身体の免疫システムががんを排除しようとしている証拠です。

しかし、がん細胞はPD-L1というタンパク質を出してT細胞の攻撃にブレーキをかけています。免疫チェックポイント阻害薬はこのブレーキを外すことで、T細胞の攻撃力を回復させます。

PD-1/PD-L1経路の遮断がT細胞を再活性化させる

T細胞の表面にあるPD-1と、がん細胞が発現するPD-L1が結合すると、T細胞は「攻撃をやめよ」という信号を受け取ります。免疫チェックポイント阻害薬はこの結合を阻止し、T細胞を再び活性化させる仕組みです。

リンチ症候群の腫瘍はネオアンチゲンが豊富でTILも多いため、ブレーキを外した途端に強力な抗腫瘍免疫応答が起こりやすいといえます。これが「リンチ症候群と免疫療法は相性が良い」と言われる根拠です。

免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい腫瘍の特徴

特徴MSI-High腫瘍MSS腫瘍
遺伝子変異量多い少ない
ネオアンチゲン量多い少ない
腫瘍浸潤リンパ球豊富乏しい
免疫療法への反応高い低い

MSI-Highがんに使われる免疫チェックポイント阻害薬の種類と臨床成績

MSI-Highの固形がんに対して承認されている免疫チェックポイント阻害薬には、PD-1阻害薬であるペムブロリズマブやニボルマブ、CTLA-4阻害薬であるイピリムマブなどがあります。それぞれの薬剤の特徴と、大規模臨床試験の結果を整理します。

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)は「がん種を問わない」初の承認薬

ペムブロリズマブは2017年にFDA(米国食品医薬品局)からMSI-High/dMMR固形がんに対する「がん種横断的」承認を世界で初めて取得したPD-1阻害薬です。がんの発生臓器に関係なく、MSI-Highであれば治療の選択肢になるという画期的な承認でした。

その後、KEYNOTE-177試験の結果を受けて、2020年にはMSI-High転移性大腸がんに対する一次治療としても承認を取得しています。

ニボルマブ(オプジーボ)単剤でも持続的な腫瘍縮小が得られる

CheckMate 142試験では、治療歴のあるMSI-High転移性大腸がんの患者さんに対してニボルマブ単剤を投与した結果、約31%の奏効率が確認されました。奏効した患者さんでは効果が長期間持続するケースが多く、12か月時点の全生存率は73%に達しています。

  • ペムブロリズマブ:PD-1阻害薬。MSI-High固形がんに対し「がん種横断的」承認を取得
  • ニボルマブ:PD-1阻害薬。MSI-High大腸がんに対して単剤および併用で承認
  • イピリムマブ:CTLA-4阻害薬。ニボルマブとの併用でMSI-High大腸がんに使用
  • ドスタルリマブ:PD-1阻害薬。dMMR局所進行直腸がんで100%の臨床的完全奏効を報告

ニボルマブとイピリムマブの併用療法が示した高い奏効率

CheckMate 142試験では、ニボルマブにCTLA-4阻害薬のイピリムマブを低用量で追加する併用療法も検討されました。治療歴のある患者さんで55%、一次治療では69%という高い奏効率が報告されています。

併用療法は単剤療法と比べて副作用が増える傾向がありますが、より深い腫瘍縮小が得られる可能性が示されています。4年間の長期追跡でも効果は持続しており、治療の持続性においても期待できる結果でした。

MSI-High固形がんへの「がん種横断的」承認が治療を変えた

従来の抗がん薬は「大腸がん用」「肺がん用」と臓器別に開発・承認されてきました。しかし、MSI-Highという分子マーカーに基づく「がん種横断的」な承認は、がんの発生部位ではなく遺伝子の特徴で治療を選ぶという新しいパラダイムを確立しました。

リンチ症候群は大腸がん以外にも子宮体がん、卵巣がん、胃がん、尿路がんなど多様ながんを発症しうるため、がん種を問わず免疫療法が使える点は大きなメリットとなります。

KEYNOTE-177試験が証明したMSI-High大腸がんへのペムブロリズマブの有効性

KEYNOTE-177試験は、MSI-High/dMMR転移性大腸がんの一次治療としてペムブロリズマブと標準化学療法を直接比較した初の第3相ランダム化比較試験です。ペムブロリズマブは化学療法に対して無増悪生存期間で統計学的に有意な優越性を示しました。

無増悪生存期間は化学療法の約2倍に延長された

307名の患者さんを対象としたこの試験では、ペムブロリズマブ群の無増悪生存期間の中央値が16.5か月であったのに対し、化学療法群は8.2か月でした。ハザード比は0.60と、病気の進行や死亡のリスクが40%低減されたことになります。

24か月時点で病気が進行せずに生存していた患者さんの割合は、ペムブロリズマブ群で48.3%、化学療法群で18.6%と大きな差がつきました。

副作用が少なく治療継続しやすい点も強み

ペムブロリズマブ群の治療関連有害事象の発生率は化学療法群より低く、グレード3以上の重い副作用の頻度も化学療法を下回りました。投与期間はペムブロリズマブ群のほうが長かったにもかかわらず、副作用の増加は認められていません。

日常生活への影響が少ないため、治療を中断せずに続けやすいという点は、患者さんのQOL(生活の質)を保つうえで非常に重要です。

リンチ症候群の有無による治療効果の差は認められていない

サブグループ解析では、リンチ症候群に起因するMSI-Highがんと散発性MSI-Highがんの間で、免疫チェックポイント阻害薬の効果に明確な差は見られませんでした。どちらのタイプのMSI-Highがんであっても、ペムブロリズマブの恩恵を受けられることが示されています。

一方で、BRAF V600E変異を持つ散発性MSI-High大腸がんは、化学療法に対して予後不良とされてきたため、免疫療法が受けられることの意義はとりわけ大きいでしょう。

KEYNOTE-177試験の主な成績

評価項目ペムブロリズマブ化学療法
無増悪生存期間中央値16.5か月8.2か月
24か月無増悪生存率48.3%18.6%
ハザード比0.60(95%CI: 0.45–0.80)

リンチ症候群の免疫チェックポイント阻害薬に対する奏効率は高水準

リンチ症候群に伴うMSI-Highがんに対する免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は、大腸がんで46〜71%、大腸がん以外でも14〜100%と、幅はあるものの全体的に高い治療効果が報告されています。

大腸がんでは46〜71%の患者さんで腫瘍が縮小している

複数の臨床試験をまとめたレビューによると、リンチ症候群に伴う大腸がんへの免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は46〜71%と報告されています。ニボルマブとイピリムマブの併用では71%と高い数値が示されました。

完全奏効(腫瘍が画像上消失する状態)に至る患者さんも一定数おり、長期にわたって効果が持続する点が化学療法とは異なる大きなメリットです。

大腸がん以外の臓器でも効果を期待できるケースがある

リンチ症候群は子宮体がん、胃がん、小腸がん、尿路上皮がん、胆道がんなど、大腸以外のがんも発症しやすい疾患です。がん種横断的承認のもと、MSI-Highが確認されればこれらの臓器のがんにも免疫チェックポイント阻害薬を使うことができます。

臓器別に見たリンチ症候群がんの免疫療法への反応

がんの種類奏効率の範囲備考
大腸がん46〜71%併用療法で高い傾向
子宮体がん報告により幅あり症例報告で完全奏効も
胃がん報告により幅ありペムブロリズマブで奏効
胆道がん症例報告レベルMSI-Highなら期待できる

散発性MSI-HighがんとのMSI-High同士の治療成績は同等

リンチ症候群由来のMSI-Highがんと散発性MSI-Highがんの間で、免疫チェックポイント阻害薬に対する奏効率や生存期間に明確な差は報告されていません。むしろ一部の研究では、リンチ症候群群のほうがやや良好な無増悪生存期間を示す傾向が確認されています。

この結果は、リンチ症候群のがんが免疫療法に対して「少なくとも散発性と同等、あるいはそれ以上」に良好な反応を示すことを裏付けるものです。

免疫チェックポイント阻害薬で注意すべき副作用と対処法

免疫チェックポイント阻害薬の副作用は化学療法とは性質が異なり、免疫が自分自身の正常な組織を攻撃してしまう「免疫関連有害事象(irAE)」が中心です。早期発見と適切な対応が求められます。

免疫関連有害事象(irAE)の代表的な症状を見逃さない

irAEは皮膚、消化管、肝臓、肺、内分泌臓器(甲状腺など)など全身のさまざまな臓器で起こりえます。発疹やかゆみ、下痢、倦怠感、息切れなどが典型的な初期症状です。

多くの場合、治療開始から数週間〜数か月以内に発症しますが、治療終了後に遅発性に出現するケースもあるため、治療中だけでなく終了後も体調の変化には注意を払ってください。

甲状腺機能低下症や皮膚症状にはどう対処するか

甲状腺機能低下症は比較的多く見られるirAEの一つで、倦怠感や寒がり、体重増加といった症状が出ます。多くの場合は甲状腺ホルモンの補充療法で管理でき、免疫チェックポイント阻害薬の投与を継続できるケースも少なくありません。

皮膚症状としては発疹やかゆみが多く、ステロイド外用薬で対処することが一般的です。重症化した場合には全身性のステロイド投与や一時的な免疫療法の休止が必要になることもあります。

治療を続けるか中止するかは重症度に応じて主治医が判断する

irAEの多くは軽度から中等度(グレード1〜2)であり、適切な管理のもとで免疫療法を継続できます。一方、グレード3以上の重篤な副作用が出た場合は、一時中断や投与中止を検討します。

CheckMate 142試験では、副作用のために投与を中止した患者さんでも、中止前に得られた治療効果が維持されるケースが報告されています。副作用が出たからといって直ちに治療が無駄になるわけではないので、主治医と十分に話し合って方針を決めることが大切です。

  • 皮膚症状(発疹・かゆみ):ステロイド外用薬で対処。重症時は全身投与を検討
  • 消化器症状(下痢・大腸炎):水分補給と整腸剤。改善しない場合はステロイド内服
  • 内分泌障害(甲状腺機能低下症):甲状腺ホルモンの補充で管理
  • 肝障害:定期的な血液検査でモニタリング。重症時は免疫療法を一時中止
  • 肺障害(間質性肺炎):咳や息切れに注意し、早期発見が極めて重要

リンチ症候群と診断されたら遺伝カウンセリングと定期検診を受けよう

リンチ症候群と診断された場合、免疫療法の選択肢を知ることと同じくらい大切なのが、遺伝カウンセリングを受けることと定期的なサーベイランス(監視検診)を継続することです。生涯にわたるがん発症リスクに備え、計画的に検診を受けていきましょう。

遺伝カウンセリングで自分のリスクを正しく把握する

遺伝カウンセリングでは、遺伝の専門家が患者さんの家族歴や遺伝子検査の結果をもとに、がんの発症リスクやサーベイランスの方針について詳しく説明してくれます。

遺伝子別にみたがん発症リスクの目安

遺伝子大腸がんリスク子宮体がんリスク
MLH1高い(〜70歳で約50%前後)中〜高い
MSH2高い(〜70歳で約50%前後)中〜高い
MSH6やや低い(〜70歳で約20〜30%)高い
PMS2低め(〜70歳で約15〜20%)低〜中程度

大腸内視鏡をはじめとするサーベイランスを定期的に受ける

リンチ症候群の方には、通常20〜25歳頃から1〜2年ごとの大腸内視鏡検査が推奨されます。早期にポリープや前がん病変を発見・切除することで、大腸がんの発症リスクを大幅に低減できます。

女性の場合は、子宮体がんや卵巣がんに対するサーベイランスも並行して行うのが望ましいとされています。具体的な検診内容やスケジュールは、変異している遺伝子の種類によって異なるため、主治医や遺伝カウンセラーと相談してください。

血縁者への遺伝子検査を早めに検討してほしい

リンチ症候群は常染色体優性遺伝で受け継がれるため、患者さんの第一度近親者(親・兄弟姉妹・子ども)が同じ変異を持っている確率は50%です。変異の有無を確認することで、変異を持つ方は適切な検診計画を立てることができ、持たない方は過剰な心配から解放されます。

遺伝子検査は血液検査で実施でき、患者さん本人で特定された変異を調べる方法で行います。家族への説明は心理的な負担を伴うこともありますので、遺伝カウンセリングを活用しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

リンチ症候群の患者が免疫チェックポイント阻害薬で治療を受ける場合、一般的にどのくらいの期間投与を続けますか?

免疫チェックポイント阻害薬の投与期間は薬剤や治療プロトコルによって異なりますが、多くの臨床試験では病気が進行するまで、あるいは許容できない副作用が出るまで継続するという方針が取られています。ペムブロリズマブの場合は2年間を上限とするプロトコルが一般的です。

主治医が画像検査や血液検査の結果をもとに治療効果と副作用のバランスを評価しながら、投与期間を個別に判断します。効果が得られている場合でも、一定期間を超えた時点で休薬を検討するケースもあるため、定期的な受診を欠かさないようにしましょう。

MSI-High検査はどの医療機関で受けることができますか?

MSI検査やMMRタンパク質の免疫組織化学染色は、がん診療を行っている多くの総合病院やがん専門病院で実施されています。とくに大腸がんや子宮体がんと診断された場合は、治療方針の決定に必要な検査として主治医から検査の説明がある場合が多いでしょう。

お住まいの地域にがん拠点病院があれば、そちらで相談されることをおすすめします。かかりつけ医から紹介状を書いてもらい、遺伝子検査や免疫療法に対応できる医療機関を受診するのもよい方法です。

リンチ症候群に伴うMSI-Highがんに免疫チェックポイント阻害薬が効かない場合はありますか?

MSI-Highのがんであっても、すべての患者さんに免疫チェックポイント阻害薬が効くわけではありません。臨床試験では20〜30%程度の患者さんで治療開始後早期に病気が進行するケースが報告されています。

効果が得られない原因としては、腫瘍変異量が相対的に少ないこと、ネオアンチゲンの提示に関わるHLA分子の異常、腫瘍微小環境の免疫抑制的な性質などが考えられています。主治医と連携しながら、治療効果のモニタリングを丁寧に行うことが大切です。

免疫チェックポイント阻害薬はリンチ症候群のがん予防にも効果がありますか?

免疫チェックポイント阻害薬ががん予防にも効果を持つかどうかは、現時点では研究段階にあります。既にがんを発症したリンチ症候群の患者さんが免疫療法を受けた後、新たながんの発生率が変わるかを調べた研究では、内臓の新規腫瘍がやや減る傾向が報告されました。

ただし、大腸ポリープの発生は免疫療法後も続いており、がん予防効果が確立されたとは言えません。現段階では、免疫チェックポイント阻害薬はあくまで治療目的での使用が中心であり、予防としてのサーベイランス(定期検診)は引き続き受けてください。

リンチ症候群で免疫チェックポイント阻害薬による治療を受ける際、化学療法との併用は行われますか?

MSI-High/dMMR転移性大腸がんの一次治療としては、KEYNOTE-177試験の結果をふまえ、ペムブロリズマブ単剤が標準治療の一つとして位置づけられています。現時点では、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用がMSI-Highがんで標準的に推奨されているわけではありません。

一方で、ニボルマブとイピリムマブの「免疫薬同士」の併用療法は承認されており、臨床現場で使用されています。今後、化学療法との併用レジメンについても研究が進む可能性がありますので、治療の選択肢については主治医にご相談ください。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医