irAE(免疫関連副作用)とは?発症の仕組みと注意すべき症状を徹底解説

irAE(免疫関連副作用)とは?発症の仕組みと注意すべき症状を徹底解説

免疫チェックポイント阻害薬によるがん治療が広がるなかで、irAE(免疫関連副作用)という言葉を耳にする機会が増えています。irAEとは、免疫の働きが活性化しすぎることで自分自身の臓器に炎症が起こる副作用の総称です。

皮膚や肺、甲状腺、肝臓など全身のあらゆる臓器に影響が及ぶ可能性があり、軽度で済む場合もあれば、早急な対応が求められる重い症状が出ることもあります。

この記事では、irAEが起こる仕組みから代表的な症状、発症しやすい時期、重症度に応じた対応の考え方までをわかりやすくまとめました。がん免疫療法を受けるご自身やご家族が安心して治療に臨めるよう、ぜひ最後までお読みください。

irAEとは免疫チェックポイント阻害薬が引き起こす副作用のこと

irAE(immune-related adverse event)は、がん治療に使われる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)によって生じる副作用の総称です。従来の抗がん剤とはまったく異なる仕組みで起こるため、症状の出方も管理の方法も大きく違います。

irAEの正式名称と読み方を確認しよう

irAEは「immune-related adverse event」の頭文字をとった略語で、「アイアールエーイー」と読みます。日本語では「免疫関連有害事象」または「免疫関連副作用」と訳されるのが一般的です。

がん免疫療法の普及に伴い、学会や病院の資料でもirAEという略称が定着してきました。主治医や看護師との会話でこの言葉が出てきたときに戸惑わないよう、読み方と意味をセットで覚えておくと安心でしょう。

免疫チェックポイント阻害薬とはどんな薬なのか

免疫チェックポイント阻害薬は、体の免疫にかけられた「ブレーキ」を外すことで、がん細胞への攻撃力を高める治療薬です。がん細胞は、免疫細胞の表面にあるPD-1やCTLA-4といった分子を利用して攻撃を逃れています。

この薬はPD-1やCTLA-4の働きを阻害することで、免疫細胞が本来の力を取り戻してがんと闘えるようにします。日本ではニボルマブ(オプジーボ)やペムブロリズマブ(キイトルーダ)など複数の薬剤が承認されており、肺がんや胃がん、悪性黒色腫をはじめ多くのがん種に使われています。

免疫チェックポイント阻害薬の主な種類

分類標的分子代表的な薬剤名
抗PD-1抗体PD-1ニボルマブ、ペムブロリズマブ
抗PD-L1抗体PD-L1アテゾリズマブ、デュルバルマブ
抗CTLA-4抗体CTLA-4イピリムマブ

irAEと従来の抗がん剤の副作用はまるで違う

従来の殺細胞性抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃するため、吐き気や脱毛、白血球の減少といった副作用が代表的でした。一方、irAEは免疫の過剰な活性化によって自分自身の臓器に炎症が起こるという、まったく異なる仕組みで発症します。

そのため、irAEの症状は皮膚の発疹や甲状腺の機能低下、肺の炎症など、自己免疫疾患に似た多彩な形で現れます。「抗がん剤の副作用」という従来のイメージとは大きく異なる点を押さえておきましょう。

irAEが発症する仕組み|免疫のブレーキが外れると何が起こるのか

irAEは、がんへの攻撃力を高めるために外した免疫のブレーキが、正常な臓器にまで影響を及ぼすことで生じます。免疫の活性化はがん治療において大きな武器ですが、その力が自分の体に向いてしまう点がirAEの本質です。

がん細胞が免疫から逃げる巧妙な手口

通常、体内に異常な細胞が発生すると、免疫細胞(T細胞)がそれを見つけ出して排除します。しかし、がん細胞はPD-L1というたんぱく質を表面に出すことで、T細胞のPD-1と結合し「攻撃しなくていいよ」という偽の信号を送ります。

こうしてT細胞にブレーキをかけることで、がん細胞は免疫の監視をすり抜けて増殖を続けるのです。CTLA-4という別のブレーキ分子を使って免疫の初動段階から抑え込む手口もあり、がん細胞は複数の方法で免疫を無力化しています。

免疫チェックポイント阻害薬がブレーキを解除するとき

免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキを物理的にブロックして外す薬です。PD-1やCTLA-4に抗体が結合することで、がん細胞からの「攻撃するな」という信号が遮断され、T細胞が再び活発にがんを攻撃し始めます。

ただし、薬はがんに対する免疫だけをピンポイントで活性化することはできません。全身の免疫が広く活性化されるため、T細胞がさまざまな臓器に入り込んで炎症を引き起こすリスクが生まれます。これがirAEの発症につながるわけです。

自分の臓器を攻撃してしまう4つの経路

irAEの発生には、大きく分けて4つの経路が関わっていると考えられています。1つ目は全般的な免疫の活性化で、関節や筋肉に炎症が波及するケースです。2つ目は、薬の抗体が正常な細胞にも結合してしまう直接的な影響です。

3つ目は、もともと体内に潜んでいた自己免疫の素因が顕在化する場合で、たとえば関節リウマチが誘発されることがあります。4つ目は、がんに向けられていたT細胞の標的が広がり、心筋や肺などの正常組織を攻撃するパターンです。

irAEの主な発症経路

経路概要代表例
全般的な免疫活性化免疫細胞が全身で過剰に働く多発性筋痛症、関節炎
抗体の直接的な影響薬が正常細胞にも作用する下垂体炎
潜在的な自己免疫の顕在化隠れていた素因が表面化する関節リウマチ
T細胞の標的の拡大がん以外の組織も攻撃対象になる心筋炎、間質性肺炎

irAEの症状は全身に及ぶ|臓器別に出やすいサインを見逃さない

irAEは特定の臓器だけに現れるものではなく、皮膚から内臓、内分泌系、神経まで、体のあらゆる部位に影響する可能性があります。よく見られる症状を臓器ごとに把握しておけば、異変に気づく手がかりになるでしょう。

皮膚に現れるirAEの初期サイン

irAEのなかで頻度が高いのが皮膚症状です。発疹やかゆみ、乾燥、発赤が治療開始から比較的早い時期に出やすいとされています。多くの場合は軽度で、塗り薬や保湿で対処できるケースが中心です。

ただし、広範囲にわたる紅斑や水疱が生じた場合は、重症の薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群など)の可能性もあるため、すみやかに医療機関を受診してください。皮膚の変化は目に見えるため、患者さんご自身が早期に発見しやすい症状ともいえます。

消化器・肝臓・呼吸器に生じるirAEの特徴

消化器系のirAEとして代表的なのは大腸炎で、水のような下痢や腹痛、血便が主な症状です。肝臓のirAEは自覚症状が乏しいことが多く、血液検査でAST・ALTの上昇として見つかるケースが大半を占めます。

呼吸器のirAEである間質性肺炎は、乾いた咳や息切れ、微熱として始まることがあります。とくに間質性肺炎は重症化すると命に関わるため、些細な呼吸の変化でも主治医に伝えるようにしましょう。

臓器別にみたirAEの主な症状

影響を受ける臓器代表的な症状気づきやすさ
皮膚発疹、かゆみ、紅斑目視で確認しやすい
消化管(大腸)下痢、腹痛、血便比較的気づきやすい
肝臓倦怠感、黄疸、肝機能値の上昇血液検査で判明しやすい
乾いた咳、息切れ、微熱風邪と区別しにくいことがある
甲状腺体重変化、疲労感、動悸自覚しにくいことが多い
下垂体頭痛、倦怠感、視野の異常自覚しにくい

内分泌系・神経系のirAEは自覚しにくい

甲状腺や下垂体、副腎といった内分泌系に起こるirAEは、倦怠感や体重の変化、気分の浮き沈みなど、日常のストレスや疲れと区別しにくい症状が多い点が厄介です。甲状腺機能が低下すると慢性的な疲労感やむくみが出ますが、「なんとなくだるい」程度で見過ごされがちでしょう。

神経系のirAEは頻度こそ低いものの、重症筋無力症やギラン・バレー症候群のように急速に進行するケースがあります。手足のしびれや筋力の低下、ものが二重に見えるといった神経症状は、早い段階で主治医に報告することが大切です。

irAEはいつ発症する?治療中も終了後も気を抜けない理由

irAEは治療を始めてから約2か月以内に現れることが多いとされていますが、発症のタイミングには個人差が大きく、投与終了後の数か月後に生じる場合もあります。「治療が終わったから安心」とはいえない点がirAEの特徴です。

治療開始後2か月以内に多いが例外も少なくない

統計的にみると、irAEの多くは免疫チェックポイント阻害薬の投与開始後2か月以内に発症する傾向があります。皮膚症状は比較的早期に現れやすく、内分泌系のirAEはやや遅れて出る傾向です。

しかし、これはあくまで目安であり、投与3回目以降や半年以上経ってから発症した報告も珍しくありません。「まだ副作用が出ていないから大丈夫」と油断せず、治療期間を通じて体調の変化に注意を払い続けることが大切です。

投与を終えた後もirAEが顔を出すことがある

免疫チェックポイント阻害薬は、投与を終えた後も体内で免疫の活性化が続く場合があります。そのため、治療が終了してから数週間、ときには数か月後にirAEが初めて出現するケースが報告されています。

とくに甲状腺や副腎の機能異常は、治療終了後しばらくしてから血液検査で判明することがあるため、治療後の定期検査を怠らないようにしましょう。主治医から「治療後も半年程度は経過観察が必要」と説明されるのは、こうした遅発性のirAEに備えるためです。

薬の種類や併用療法で発症リスクが変わる

使用する免疫チェックポイント阻害薬の種類によって、irAEの出やすさや症状の傾向が異なります。たとえば、抗CTLA-4抗体は皮膚症状や大腸炎が比較的多く、抗PD-1抗体は甲状腺機能異常や間質性肺炎が目立ちやすいとされています。

また、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を併用する治療法では、単剤に比べてirAEの発症率と重症度が高まる傾向があります。併用療法を受ける場合は、より一層こまめな体調チェックと主治医との連携が欠かせません。

irAEの発症に関わる主な要因

  • 使用する薬剤の種類(抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA-4)
  • 薬剤の併用の有無(単剤か併用か)
  • もともとの自己免疫疾患の有無
  • 年齢や全身状態

irAEの重症度グレードで治療方針はこう変わる

irAEにはGrade 1(軽度)からGrade 4(生命を脅かす重度)までの4段階の重症度分類があり、グレードに応じて免疫チェックポイント阻害薬の継続・休止・中止の判断が分かれます。早期発見と重症度の正確な評価が、安全な治療の継続を左右します。

Grade 1の軽度irAEなら治療を続けられることが多い

Grade 1のirAEは症状が軽く、日常生活に大きな支障がないレベルです。たとえば軽い皮膚の発疹や、わずかな検査値の変動がこれに当たります。多くの場合は免疫チェックポイント阻害薬を継続しながら、経過を慎重に観察する対応がとられます。

とはいえ、「軽度だから放っておいてよい」わけではありません。Grade 1のうちに気づいて主治医と共有しておくことで、症状が悪化した場合にもすばやく次の手を打てます。日々の体調記録が早期発見の第一歩です。

Grade 2以上では薬の休止やステロイド治療を検討する

Grade 2になると症状がはっきりしてきて、一部の日常活動に支障が出る段階です。このグレードでは免疫チェックポイント阻害薬を一時休止し、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)の投与を開始することが一般的です。

重症度グレード別の対応方針

グレード症状の程度主な対応
Grade 1軽度・無症状薬を継続し経過観察
Grade 2中等度・日常生活に一部支障薬を休止しステロイド投与
Grade 3重度・入院が必要薬を休止し高用量ステロイド投与
Grade 4生命を脅かす薬を中止し集中的治療

Grade 3・4の重度irAEは迅速な対応が命を守る

Grade 3以上のirAEは、入院が必要になるほどの重い症状です。高用量の副腎皮質ステロイドが投与され、48~72時間で改善が見られない場合はインフリキシマブなどの免疫抑制薬が検討されます。

Grade 4に達すると、ホルモン補充で管理可能な内分泌障害を除き、免疫チェックポイント阻害薬は原則として永久に中止されます。心筋炎や劇症型1型糖尿病など、Grade 4に至りうるirAEは命に直結するため、わずかな体調変化も見逃さない姿勢が求められるでしょう。

irAEの早期発見に直結する患者自身のセルフチェック法

irAEの重症化を防ぐ鍵は、何よりも早い段階で異変に気づくことです。定期的な検査と並行して、患者さんご自身が日々の体調変化を記録・観察するセルフチェックの習慣を身につけることで、irAEの早期発見につなげられます。

毎日チェックしたい体の変化リスト

免疫チェックポイント阻害薬の治療中は、「いつもと違う」感覚を大切にしてください。皮膚の発疹やかゆみ、下痢の回数、息切れの有無、体のだるさ、体重の増減など、些細に思えることでもメモに残す習慣が効果を発揮します。

とくに呼吸の苦しさや強い腹痛、急な視力の変化、手足の力が入りにくいといった症状は、重篤なirAEの初期サインである可能性があります。「気のせいかもしれない」と自己判断で済ませず、すみやかに医療機関へ連絡しましょう。

定期的な血液検査でわかるirAEの兆候

肝臓や腎臓のirAEは自覚症状が出にくいため、定期的な血液検査が発見の要になります。AST・ALT(肝機能)、クレアチニン(腎機能)、TSH(甲状腺機能)、血糖値などを2~4週ごとにチェックすることが一般的です。

検査値に異常が見つかった場合でも、早い段階であれば適切な治療によりコントロールできるケースが多いため、「検査で何か引っかかるのが怖い」と通院を避けるのは逆効果です。むしろ定期検査は、安心して治療を続けるための味方だと考えてください。

家族が気づけるirAEのサインもある

irAEのなかには、本人よりも家族が先に異変に気づくケースがあります。たとえば、「最近やけに疲れているようだ」「肌の色が黄色っぽくなった」「以前より息が荒い」といった変化は、そばにいる人のほうが感じ取りやすいものです。

治療を始める前に、ご家族にもirAEの代表的な症状を共有しておくと、二重のチェック体制が築けます。患者さん本人が「大丈夫」と思っていても、家族の目が早期発見の決め手になることは珍しくありません。

日常的に意識したいirAEのセルフチェック項目

  • 皮膚の発疹やかゆみの有無・範囲
  • 下痢の回数や便の性状の変化
  • 息切れや空咳の出現
  • 倦怠感や体重の急な増減
  • 手足のしびれや筋力低下
  • 視力や視野の変化

主治医への相談を迷わないで|irAEと上手に付き合う心構え

irAEは早く見つけて適切に対処すれば、多くの場合コントロールが可能です。「こんな些細なことで相談してもいいのか」と遠慮せず主治医に伝える姿勢が、がん治療を安全に続けるうえで何より大切です。

「我慢しなければ」という思い込みが一番危ない

がん治療中は「副作用は仕方がない」「主治医に迷惑をかけたくない」と感じる方が少なくありません。しかしirAEに関しては、早めの報告が重症化を防ぐ最大の対策です。

irAEについて主治医に伝える際のポイント

伝える項目具体的な内容の例
いつから「3日前から」「先週の投与後から」
どんな症状か「水っぽい下痢が1日5回以上」
どの程度つらいか「家事ができないほどだるい」
変化の経過「日に日にひどくなっている」

体調の変化を具体的に伝えることで、主治医はirAEかどうかの判断を早くつけられます。口頭で伝えにくい場合は、日々のメモや体調日記を診察時に持参する方法もおすすめです。

irAEが出たからといって治療が「失敗」ではない

「irAEが出た=治療がうまくいっていない」と不安になる方がいますが、むしろ一部の研究では、irAEが出現した患者さんのほうが治療効果が高い傾向を示す報告もあります。irAEは免疫が活発に働いている証ともいえるのです。

もちろん重症のirAEは治療の中断を余儀なくされるため喜ばしいとはいえませんが、軽度から中等度のirAEは適切に管理しながら治療を継続できるケースが多いことを知っておくと、精神的な支えになるかもしれません。

多診療科のチーム連携で患者を守る体制が広がっている

irAEは全身のさまざまな臓器に影響するため、腫瘍内科だけでは対応しきれない場合があります。近年は多くの医療機関で、皮膚科・消化器内科・内分泌内科・呼吸器科などが連携してirAEに対応するチーム体制が整備されつつあります。

たとえば京都大学病院では「irAEユニット」と呼ばれる多診療科横断の部門が設置され、原因がはっきりしない全身の炎症が起きた患者さんの診療をサポートしています。患者さんご自身が複数の科を駆け回る必要がないよう、医療側の連携体制は着実に進歩しているといえるでしょう。

よくある質問

irAE(免疫関連副作用)はすべての患者に発症するものなのか?

irAEはすべての患者さんに必ず起こるわけではありません。免疫チェックポイント阻害薬を使用しても、irAEが出ない方もいれば、複数の臓器に症状が現れる方もいます。

発症の有無や程度には個人差が大きく、使用する薬の種類や投与量、もともとの免疫状態などによって変わります。治療前に主治医とリスクについて話し合い、万が一に備えておくことが大切です。

irAE(免疫関連副作用)が出たら免疫チェックポイント阻害薬は中止になるのか?

irAEが出たからといって、ただちに薬が中止になるとは限りません。軽度(Grade 1)であれば、多くの場合は経過を観察しながら治療を続けられます。

中等度(Grade 2)では一時休止してステロイドで対応し、改善すれば再開を検討するのが一般的です。ただしGrade 4の重度のirAEでは、内分泌障害の一部を除いて薬の永久中止が原則となります。重症度に応じた判断は主治医が行いますので、自己判断で服薬を止めないようにしましょう。

irAE(免疫関連副作用)の症状が出たときに自宅でできる応急処置はあるのか?

irAEの症状が出た場合、自己判断での市販薬の使用や民間療法は推奨されません。irAEは免疫の過剰な反応であるため、一般的な対症療法では十分に対処できないことがほとんどです。

まず優先すべきは、症状の種類・程度・発症時期を記録したうえで、なるべく早く主治医や担当の看護師に連絡することです。とくに強い息切れ、激しい腹痛、急激な血糖値の上昇が疑われる症状がある場合は、緊急で受診してください。

irAE(免疫関連副作用)は一度治まった後に再発する可能性はあるのか?

irAEは、一度症状が治まった後に再び現れる可能性があります。ステロイドの減量中に症状がぶり返すケースや、治療を再開した際に異なる臓器にirAEが出現するケースが報告されています。

そのため、症状が落ち着いた後も主治医の指示に従って定期的な検査と経過観察を続けることが求められます。自覚症状が消えたからといって通院を中断しないことが再発の早期発見につながります。

irAE(免疫関連副作用)と通常のアレルギー反応はどこが違うのか?

アレルギー反応は外部から入ってきた特定の物質(アレルゲン)に対して免疫が過剰に反応するもので、主にIgE抗体やマスト細胞が関わります。一方、irAEは免疫チェックポイント阻害薬によってT細胞の活動が全体的に活発になり、自分自身の臓器を攻撃してしまう現象です。

アレルギーは原因物質を避ければ予防できますが、irAEは治療そのものが引き金となるため、完全な予防が難しい点が大きな違いです。症状の現れ方も、アレルギーは蕁麻疹や呼吸困難が急性に出るのに対し、irAEは数日から数か月かけてじわじわと進行する傾向があります。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医