副作用・リスク category

がん免疫療法に興味を持ちながらも、「副作用が怖い」と一歩を踏み出せずにいる方は多いようです。オプジーボやキイトルーダといった免疫チェックポイント阻害薬は、従来の抗がん剤とはまったく異なるしくみで体に作用します。
そのため副作用の出方も独特で、皮膚や甲状腺、肝臓、腸などあらゆる臓器に炎症が起きる可能性があります。ただし、早い段階で気づいて対処すれば、多くの副作用は落ち着きます。
この記事では、がん免疫療法で報告されている主な副作用と、その対処法・日常生活での注意点をわかりやすくまとめます。治療を前向きに検討するための判断材料として、ぜひお役立てください。
がん免疫療法の副作用は「免疫の暴走」から生まれる
免疫チェックポイント阻害薬による副作用の多くは、活性化した免疫細胞が正常な組織まで攻撃してしまう「免疫の暴走」によって起こります。抗がん剤のように薬そのものが細胞を傷つけるのではなく、自分自身の免疫が過剰にはたらくことで症状が出るのが大きな特徴です。
免疫チェックポイント阻害薬が体に与える影響とは
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞がかけている「免疫のブレーキ」を解除する薬です。本来、免疫細胞はがん細胞を異物として攻撃できますが、がん細胞はPD-1やCTLA-4といった分子を利用して攻撃を回避しています。
オプジーボ(ニボルマブ)やキイトルーダ(ペムブロリズマブ)はこのブレーキを外し、免疫細胞を再び活性化させます。がんへの攻撃力が高まる一方で、ブレーキが外れた免疫が健康な臓器にも影響を及ぼすことがあり、これをirAE(免疫関連有害事象)と呼びます。
免疫療法特有の副作用についてさらに詳しく知りたい方へ
がん免疫療法の副作用と薬剤ごとの特徴・早期発見のコツ
従来の抗がん剤との副作用の出方はまったく違う
抗がん剤は細胞分裂が活発な組織(毛根、消化管粘膜、骨髄など)を直接傷害するため、脱毛や吐き気、白血球の減少といった副作用が投与直後から現れます。
一方、免疫チェックポイント阻害薬の副作用は免疫反応の結果として生じるため、投与から数週間〜数か月後に初めて症状が出ることも珍しくありません。
さらに、治療を中止した後でも副作用が遅れて出現するケースがあるのも特徴です。そのため、投与終了後も定期的な検査や体調の自己チェックを継続することが大切でしょう。
免疫療法と抗がん剤の副作用を比べた主な違い
| 項目 | 免疫チェックポイント阻害薬 | 従来の抗がん剤 |
|---|---|---|
| 副作用の原因 | 免疫の過剰活性化 | 薬剤による直接的な細胞障害 |
| 発現時期 | 投与後数週〜数か月 | 投与直後〜数日 |
| 影響する臓器 | 皮膚、肺、肝臓、甲状腺など多岐 | 骨髄、消化管、毛根など |
| 治療中止後の出現 | あり得る | まれ |
免疫療法と抗がん剤の副作用の違いについて詳しくまとめました
免疫療法と抗がん剤で異なる副作用の時期と症状
オプジーボとキイトルーダで気をつけたい副作用と発現のタイミング
オプジーボ(ニボルマブ)もキイトルーダ(ペムブロリズマブ)もPD-1阻害薬という同じ分類の薬ですが、副作用の出やすい臓器や出現する時期には若干の違いがあります。共通して皮膚症状や甲状腺機能の異常が多く、投与開始から3か月以内に出現するケースが目立ちます。
オプジーボ(ニボルマブ)の副作用はいつ頃現れるのか
オプジーボの投与後にまず現れやすいのは、皮疹やかゆみといった皮膚の症状です。多くは投与開始後2〜6週間で出現し、比較的軽度のうちに対処できるケースが多いといえます。
甲状腺機能の異常は投与後6〜12週前後、肝機能障害は8〜12週前後にみられることがあります。間質性肺炎は頻度こそ高くないものの、咳や息切れが長引く場合には早めの受診が必要です。
オプジーボの副作用が出る時期と初期症状を知りたい方へ
オプジーボの副作用の発現時期と初期症状の見分け方
なお、副作用を経験しながらもオプジーボで長期にわたり病勢をコントロールできている方もいます。副作用があるからといって治療の恩恵が失われるわけではなく、適切に管理しながら治療を継続することが長期生存につながるといえるでしょう。
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)で注意したい症状
キイトルーダもオプジーボと同じくPD-1阻害薬であり、副作用のプロフィールは似ています。ただし、キイトルーダでは甲状腺機能低下症の頻度がやや高いとの報告があり、だるさや寒がり、体重増加といった症状に注意が必要です。
消化器症状として下痢や大腸炎が起こる場合もあります。投与前の血液検査で甲状腺ホルモン値や肝機能をベースラインとして記録しておくと、異常を早期に見つけやすくなります。
- 甲状腺機能低下症(だるさ、寒がり、むくみ)
- 皮疹やかゆみ(全身または局所)
- 下痢・大腸炎(腹痛を伴うことがある)
- 肝機能障害(黄疸や食欲低下)
- 間質性肺炎(空咳、息切れ)
キイトルーダの副作用と治療前に知っておくべきリスクをチェック
キイトルーダの副作用とリスク管理のポイント
irAE(免疫関連副作用)を見逃さない|覚えておきたい初期サイン
irAE(immune-related Adverse Events=免疫関連有害事象)は全身のどの臓器にも起こり得ますが、とくに頻度が高いのは皮膚、消化管、内分泌臓器(甲状腺や下垂体)、肝臓、肺です。軽度のうちに発見して対応すれば、重症化を防げるケースが大半を占めます。
皮膚・消化器・内分泌系に出やすい代表的な症状
皮膚症状はirAEのなかで最も頻度が高く、約30〜40%の患者さんに何らかの皮疹やかゆみが現れるとされています。紅斑(赤い発疹)、斑状丘疹状の皮疹、白斑(肌の色が部分的に抜ける)などが典型的です。
消化器症状では下痢や腹痛が多く、ひどくなると大腸炎に進展する場合があります。内分泌系では甲状腺機能の亢進や低下が代表的で、動悸や発汗、逆に極端なだるさや体重変動がサインになります。
irAEの発症の仕組みと注意すべき症状の解説を読む
irAE(免疫関連副作用)の仕組みと警戒すべき症状一覧
| 臓器系 | 主な症状 | 出現しやすい時期 |
|---|---|---|
| 皮膚 | 皮疹、かゆみ、白斑 | 投与後2〜6週 |
| 消化管 | 下痢、腹痛、血便 | 投与後6〜12週 |
| 甲状腺 | 動悸、だるさ、体重変動 | 投与後6〜14週 |
| 肝臓 | 倦怠感、黄疸、食欲低下 | 投与後8〜12週 |
| 肺 | 空咳、息切れ、発熱 | 投与後2〜24か月 |
重症化を防ぐカギは「いつもと違う」に気づくこと
irAEの初期症状は風邪や疲労感と区別がつきにくいケースがあります。だからこそ、「少しいつもと違うな」と感じた時点で主治医や看護師に相談することが何より大切です。
とくに皮膚のかゆみが急に強くなった、下痢が3日以上続く、息切れがだんだんひどくなるといった変化は、軽く考えずにすぐ報告してください。投与後しばらく経ってから出る症状もあるので、治療中だけでなく治療終了後も体調の記録を続けることをおすすめします。
免疫療法で起こる皮膚トラブルのケア方法と受診の目安について詳しくまとめました
免疫療法による皮膚の副作用のケアと受診タイミング
副作用が出ても治療を続けるための対処法と日常生活のコツ
免疫チェックポイント阻害薬の副作用が出たからといって、すぐに治療を断念する必要はありません。グレード1〜2(軽度〜中等度)の副作用であれば、薬の休薬やステロイド投与などで症状を抑えながら治療を再開できるケースが多くあります。
医療チームと連携した副作用管理の進め方
irAEの管理は主治医だけでなく、皮膚科や内分泌科、消化器科など複数の専門科と連携するチーム医療で行います。副作用のグレードに応じて、経過観察のみで済む場合から、ステロイドの全身投与や免疫抑制薬の使用が必要な場合までさまざまです。
患者さん自身にできることは、体温、体重、排便回数、皮膚の状態などを毎日記録して診察時に伝えることです。日々の体調変化を客観的に把握できるようにしておくと、医師も判断しやすくなります。
- 毎日の体温・体重を記録する
- 排便の回数や性状を手帳やアプリでメモする
- 皮膚の変化はスマートフォンで写真を撮っておく
- 些細な体調変化でも次の診察で必ず報告する
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免疫療法中の副作用管理と毎日の暮らしで気をつけること
副作用で免疫療法を中止した後にも治療の選択肢はある
重度の副作用によって免疫療法を中止せざるを得なくなった場合でも、治療の道が閉ざされるわけではありません。ほかの薬剤への切り替え、分子標的薬の使用、化学療法との組み合わせなど、次の治療戦略を主治医と一緒に検討できます。
免疫療法を中止した後でも免疫系の「記憶」が残っているため、中止後に腫瘍縮小が持続するケースも報告されています。中止=すべて終わりではないということを、ぜひ覚えておいてください。
副作用で免疫療法を中断した後の治療選択肢を知りたい方へ
免疫療法中止後に選べる次の治療と今後の進め方
がんワクチン治療のリスクを正しく把握して安心につなげよう
がんワクチンを含む免疫療法は、効果だけでなくリスクもしっかり理解した上で取り組むことが大切です。期待される効果と起こり得る副作用のバランスを冷静に見極め、主治医と十分に話し合って治療方針を決めていきましょう。
自由診療でがんワクチンを検討するなら確認しておきたい注意点
がんワクチン療法には自由診療として提供されているものもあります。自由診療の場合は費用が全額自己負担となるほか、効果を裏づけるエビデンスの質や治療施設の体制について、患者さん自身がしっかり確認する必要があります。
主治医に相談せず自己判断で自由診療のワクチンを始めると、現在の治療計画に影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。かかりつけの医療機関と連携できるかどうかも、施設選びの判断材料にしてください。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| エビデンス | 臨床試験の結果や論文が公開されているか |
| 施設の体制 | 副作用が出た際の緊急対応ができるか |
| 連携 | 主治医との情報共有に協力的な施設か |
自由診療のがんワクチンを検討する際に確認すべきリスクと注意点の解説を読む
がんワクチン(自由診療)のリスクと検討時の確認事項
よくある質問
がん免疫療法の副作用はどのくらいの頻度で発生しますか?
がん免疫療法で何らかの副作用が出る頻度は、使用する薬剤や組み合わせによって異なります。PD-1阻害薬(オプジーボ、キイトルーダなど)の単剤使用では、約60〜70%の方に軽度を含む何らかの免疫関連副作用が報告されています。
ただし、日常生活に支障が出るほどの重度(グレード3以上)の副作用が起きる割合は10〜20%程度です。皮膚症状や甲状腺機能の変化など軽度の副作用が大半を占めるため、定期的な検査と体調チェックで早期に対応すれば、多くの場合は管理可能です。
オプジーボやキイトルーダの副作用が出た場合、治療は中止になりますか?
副作用が出たからといって、必ずしも治療を中止するとは限りません。副作用の程度(グレード)によって対応は異なり、軽度であれば投与を続けながら経過を観察する場合もあります。
中等度の場合は一時的に投与を休止し、ステロイドなどで症状を抑えてから再開を検討するのが一般的な流れです。重度の副作用が生じた際には投与を永久に中止することもありますが、その場合でも別の治療へ移行できる可能性があります。主治医と相談しながら判断していくことが大切です。
がん免疫療法のirAE(免疫関連副作用)は治療終了後にも起こりますか?
irAEは免疫療法の投与を終了した後にも遅発性として出現するケースがあります。免疫チェックポイント阻害薬は体内の免疫システムそのものに作用するため、薬の投与が終わっても免疫の活性化が持続する場合があるのです。
投与終了後3か月〜1年以上経過してから甲状腺機能の異常や皮膚症状が現れた事例も報告されています。治療後も定期的な血液検査や診察を受け、体に変化があればすぐに医療機関に連絡してください。
がん免疫療法の副作用を早期に見つけるために自分でできることはありますか?
日々のセルフモニタリングが早期発見に大きく役立ちます。毎朝の検温と体重測定、排便の回数や性状の記録、皮膚に新しい発疹やかゆみがないかの確認を習慣にしてみてください。
とくに「3日以上続く下痢」「息切れが日に日に強くなる」「急にだるさが増した」「皮膚の広い範囲に赤みが出た」などの変化は、irAEの初期サインである可能性があります。自己判断で我慢せず、気になった時点で主治医や担当看護師に連絡してください。
がん免疫療法で副作用が出た人のほうが治療効果が高いというのは本当ですか?
irAEが出現した患者さんのほうが治療効果(奏効率や生存期間)が良好だったという報告は複数の研究で示されています。免疫が活発にはたらいている証拠としてirAEが出現し、それが抗腫瘍効果にもつながっている可能性が指摘されています。
ただし、重症のirAEが出れば治療を中断せざるを得ず、かえって予後に悪影響を及ぼすこともあります。「副作用が出るほどよい」と単純に考えるのではなく、副作用を適切に管理しながら治療効果を引き出すことが大切です。
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この記事を書いた人Wrote this article
前田 祐助医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。
【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医