免疫チェックポイント阻害薬の一覧|主要な薬剤名とターゲットとなる分子の違い

免疫チェックポイント阻害薬の一覧|主要な薬剤名とターゲットとなる分子の違い

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫にかけた「ブレーキ」を外し、本来そなわった免疫の力でがんを攻撃しやすくするタイプの薬です。

主な薬はPD-1・PD-L1・CTLA-4という3つの分子のどれかを狙って働き、ニボルマブやペムブロリズマブなど複数の種類があります。

どの薬がどのがんに使われ、何を目印に選ばれるのかは、標的となる分子の違いを押さえると、ぐっと理解しやすくなります。

この記事では代表的な薬剤名を一覧で整理し、分子ごとの働きの違いや副作用とのつき合い方まで、知りたい順にやさしく並べました。

免疫チェックポイント阻害薬とは|がん免疫療法を支える薬の働き

免疫チェックポイント阻害薬は、がんを直接たたく薬ではなく、免疫細胞が再びがんを攻撃できるように手助けする薬です。従来の抗がん剤とは発想が大きく異なります。

がん細胞が免疫の攻撃から逃れる仕組み

私たちの体には、異物やがん細胞を見つけて攻撃する免疫の働きがそなわっています。中心となるのがT細胞という免疫細胞で、敵を認識して排除する役割を担います。

ところががん細胞は、T細胞の表面にある「免疫チェックポイント」という受け手にくっつき、攻撃にブレーキをかけてしまいます。その結果、免疫の監視をすり抜けて増えていくのです。

こうした巧妙な逃げ道が、がんが進行する一因と考えられています。

免疫ががんを攻撃するまでの流れ

  • T細胞ががん細胞を見つける
  • 攻撃のスイッチが入る
  • がん細胞がブレーキ役の分子を差し出す
  • 免疫の攻撃が止められてしまう

この最後の段階を解除するのが、免疫チェックポイント阻害薬の発想です。止められた攻撃を、もう一度動かそうという考え方になります。

阻害薬がT細胞のブレーキを外して攻撃力を取り戻す

免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキ役の分子どうしの結合をさまたげる抗体です。ブレーキが外れると、T細胞は再びがん細胞を敵と認識して攻撃を始めます。

自分自身の免疫を立て直して戦う点が、外から薬の成分でがんをたたく治療との大きな違いといえます。

効果が現れるまでに時間がかかることもあり、効き方には個人差があります。じっくり経過を見ながら使う薬といえるでしょう。

効果が出ているかどうかは、画像検査や血液検査をくり返しながら確かめていきます。あせらず、長い目でつき合っていく治療と考えておくとよいでしょう。

抗がん剤や分子標的薬とはどこが違うのか

抗がん剤は増えつづける細胞をたたき、分子標的薬はがん特有の目印をねらい撃ちします。一方で免疫チェックポイント阻害薬は、がんではなく免疫の側に働きかけます。

標的が「がん」ではなく「免疫のブレーキ」である点が、最大の特徴です。

そのため効果が長く続きやすい例がある反面、免疫が活発になりすぎて起こる副作用にも注意がいります。良い面と気をつける面の両方を知っておくと安心です。

主要な免疫チェックポイント阻害薬の一覧|代表的な薬剤名を整理

国内では現在、PD-1・PD-L1・CTLA-4のいずれかを標的とする複数の免疫チェックポイント阻害薬を、がん治療に用いています。標的とする分子ごとに整理すると、薬剤名の全体像がつかみやすくなります。

標的となる分子一般名代表的な商品名
PD-1ニボルマブオプジーボ
PD-1ペムブロリズマブキイトルーダ
PD-L1アテゾリズマブテセントリク
PD-L1デュルバルマブイミフィンジ
PD-L1アベルマブバベンチオ
CTLA-4イピリムマブヤーボイ
CTLA-4トレメリムマブイジュド

同じ働きの薬でも、一般名と商品名は別々につけられています。それぞれの薬がどの分子を狙うのかを、グループごとに見ていきましょう。

薬の名前が多くて戸惑うかもしれませんが、まずは標的となる3つの分子で大きく分けて捉えると、頭の中が整理しやすくなります。

PD-1を標的とするニボルマブとペムブロリズマブ

ニボルマブとペムブロリズマブは、T細胞の表面にあるPD-1という分子に結合する薬です。PD-1ががん側の相手と結びつくのをさまたげ、T細胞の攻撃が止まらないようにします。

どちらも肺がんや悪性黒色腫など幅広いがんで使われており、代表的な存在といえるでしょう。会話のなかでは、商品名のオプジーボ・キイトルーダと呼ぶこともあります。

同じPD-1を狙う薬でも、投与の間隔や対象となるがんには細かな違いがあります。どの薬を選ぶかは、がんの種類や全身の状態をみて決めていきます。

PD-L1を標的とするアテゾリズマブやデュルバルマブ

アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブは、がん細胞の側に出るPD-L1という分子に結合します。PD-1とPD-L1の結合を、送り手の側からさまたげるイメージです。

同じ通り道を狙いますが、PD-1をふさぐ薬とは結合する相手が異なります。狙う側が違っても、免疫の攻撃を取り戻すという目的は共通しています。

CTLA-4を標的とするイピリムマブとトレメリムマブ

イピリムマブとトレメリムマブは、CTLA-4という別のブレーキ分子に働きかけます。T細胞が活性化する早い段階に関わるため、PD-1をねらう薬とは効き方の傾向が違います。

単独で使うほか、PD-1を狙う薬と組み合わせて用いることもあります。組み合わせることで、より強い効果をねらう狙いがあります。

組み合わせると効果が高まりやすい一方、副作用も出やすくなる傾向があります。利点と注意点の両方をふまえて、使い方を選んでいきます。

一般名と商品名をセットで覚えておきたい理由

同じ薬でも、説明書や問診票では一般名、テレビや会話では商品名と、場面によって呼び名が変わります。両方を結びつけて覚えておくと、情報を取り違えにくくなります。

主治医や薬剤師に質問するときも、どちらの名前でも伝わるよう控えておくと安心です。ネットで調べる際にも、両方の名前で検索すると情報を集めやすくなります。

ターゲットとなる分子の違い|PD-1・PD-L1・CTLA-4を見分ける

「どの薬も同じようなもの」と思われがちですが、狙う分子が違えば、働く場所も効き方も変わってきます。PD-1・PD-L1・CTLA-4という3つの標的の違いを押さえることが、薬を理解する近道です。

PD-1とPD-L1は受け手と送り手の関係

PD-1はT細胞の表面にある受け手で、PD-L1はがん細胞などの表面に出る送り手です。両者がくっつくと、T細胞に「攻撃をやめなさい」という信号が伝わります。

PD-1をふさいでも、PD-L1をふさいでも、この信号を断ち切る点では共通しています。

どちらを狙うかで、対象となるがんや副作用の出方に差が生まれることがあります。同じ通り道でも、入り口をふさぐか出口をふさぐかの違いと考えると整理しやすいでしょう。

受け手と送り手のどちらをふさいでも、止まっていた攻撃を取り戻せる可能性があります。どちらを狙う薬が向くかは、がんの性質によって変わってきます。

CTLA-4はT細胞が活性化する早い段階に働く

CTLA-4は、T細胞がリンパ節などで育ち、戦う準備を整える初期の段階でブレーキをかけます。PD-1がおもに現場でブレーキをかけるのとは、働くタイミングが異なります。

早い段階に関わるぶん、免疫全体への影響が広く、副作用がやや強く出やすい傾向もわかってきました。

標的が違えば効き方も副作用の傾向も変わる

標的とする分子の違いは、効果だけでなく副作用の種類や頻度にも反映されます。CTLA-4を狙う薬では腸の炎症が、PD-1やPD-L1を狙う薬では肺の炎症などの報告があります。

こうした違いを理解しておくと、治療中の体の変化に気づきやすくなります。

標的となる分子ごとの働きの違い

標的となる分子おもに働く場所・段階代表的な薬剤
PD-1がんと戦う現場のT細胞ニボルマブ・ペムブロリズマブ
PD-L1がん細胞などの送り手側アテゾリズマブ・デュルバルマブ
CTLA-4T細胞が育つ早い段階イピリムマブ・トレメリムマブ

同じ「免疫のブレーキを外す」薬でも、狙う場所はそれぞれ違います。この違いが、がん種ごとの使い分けにもつながっていきます。

がん種ごとに広がる免疫チェックポイント阻害薬の使いみち

がんの種類や進行の状態によっては、免疫チェックポイント阻害薬が治療の選択肢に挙がります。当初は悪性黒色腫が中心でしたが、今では多くのがんへ適応が広がっています。

おもながん種よく使われる標的代表的な薬剤の組み合わせ
悪性黒色腫PD-1・CTLA-4ニボルマブ・イピリムマブ
非小細胞肺がんPD-1・PD-L1ペムブロリズマブ・アテゾリズマブ
腎細胞がんPD-1・CTLA-4ニボルマブ・イピリムマブ
胃がん・肝がんPD-1・PD-L1ニボルマブ・アテゾリズマブ

代表的な組み合わせを並べると上のようになります。それぞれのがんで、どの薬がどんな形で使われるのかを順に見ていきます。

肺がんや悪性黒色腫で活躍する薬剤

免疫チェックポイント阻害薬が早くから使われてきたのが、悪性黒色腫と肺がんです。とくに非小細胞肺がんでは、PD-1やPD-L1を狙う薬が治療の柱の一つになっています。

単独で使う場合もあれば、抗がん剤と組み合わせて使う場合もあります。どの形を選ぶかは、がんの状態や全身の調子をふまえて決めていきます。

同じ肺がんでも、PD-L1の発現量によって勧められる治療が変わることがあります。検査の結果を手がかりに、一人ひとりに合った形を選んでいきます。

胃がん・腎がん・肝がんへ広がる適応

近年は胃がん、腎細胞がん、肝細胞がん、頭頸部がんなど、対象となるがんが大きく広がりました。複数の薬を組み合わせる治療を選ぶことも増えています。

どのがんでどの薬が使えるかは、国の承認内容によって決まっています。同じがんでも、進行の度合いによって使える薬が変わることもあります。

遺伝子の特徴で効果を見込めるがんもある

がんの遺伝子の特徴を調べることで、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいかどうかを、ある程度見込める場合があります。マイクロサテライト不安定性やPD-L1の発現量などが目印です。

こうした検査は、薬を選ぶときの大切な手がかりになります。同じがんの名前でも、一人ひとりの特徴に合わせて治療を考えていく流れです。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用|免疫関連有害事象に注意

効果が期待できる薬である一方、免疫が活発になりすぎることで起こる副作用があります。これは免疫関連有害事象と呼ばれ、全身のさまざまな場所に現れる可能性があります。

全身のどこにでも起こりうる炎症のサイン

免疫関連有害事象は、皮膚、腸、肺、甲状腺、肝臓など、体のあらゆる場所で起こりえます。発疹やかゆみ、下痢、息切れ、強い倦怠感などが代表的なサインです。

多くは軽くすみますが、まれに重くなることもあるため、早めの気づきが大切です。

気をつけたい体の変化

  • 皮膚の発疹やかゆみ
  • 続く下痢や腹痛
  • 息切れや空せき
  • 強いだるさや食欲の低下
  • のどの渇きや体重の変化

こうした変化は治療の途中で急に出ることもあります。気になる症状があれば、自己判断で様子を見ず、早めに相談してください。

早めに気づいて主治医へ伝えることが大切

副作用は、出はじめに気づいて対応するほど、軽くおさえやすいと考えられています。気になる変化はメモにとって、受診のときに伝えるとスムーズです。

症状によっては、炎症をしずめる薬を使ったり、治療をいったん休んだりして調整します。担当の医師や看護師と、こまめに様子を共有しておくと安心です。

つらい症状をがまんすると、対応が遅れて重くなることもあります。小さな変化でも、伝えてよいか迷ったら相談しておくほうが安心といえます。

抗がん剤の副作用との性質の違い

抗がん剤の副作用は使ってすぐに現れ、時間がたつと回復することが多いものです。一方、免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、数週間から数か月たって現れることもあります。

治療が終わったあとに出ることもあるため、しばらくは体調を見守っておくと安心です。「いつもと違う」と感じたら、遠慮なく相談してください。

副作用への対応の仕方を、あらかじめ知っておくと落ち着いて対処できます。連絡先や受診のタイミングも、最初に確かめておくとよいでしょう。

免疫チェックポイント阻害薬による治療を始める前に確認したいこと

治療を始める前の準備が、その後の安心につながります。自分のがんに合う薬かどうか、持病との兼ね合いはどうか、確認しておきたい点を整理しておきましょう。

自分のがんに合う薬を選ぶための検査

免疫チェックポイント阻害薬が、すべてのがんに効くわけではありません。まずは、自分のがんが薬の対象になるか、効果を見込める特徴があるかを検査で調べます。

PD-L1の発現量や遺伝子の状態を調べることで、薬を選ぶ手がかりが得られます。検査の結果しだいで、勧められる治療が変わることもあります。

検査には少し時間がかかることもありますが、薬の効きやすさを見きわめる大切な手がかりになります。結果が出るまでの流れも、あわせて確認しておきましょう。

持病やアレルギーは前もって伝えておきたい

もともと自己免疫の病気がある人や、ほかの薬を使っている人は、副作用が出やすい場合があります。お薬手帳や検査結果を持参し、これまでの病歴を主治医へ伝えておきましょう。

妊娠の可能性や授乳の有無など、気になる点も遠慮なく相談してください。心配を一つずつ解消しておくと、落ち着いて治療に向かえます。

治療の見通しを主治医と話し合う準備

どのくらいの間隔で通院するのか、効果はどう確かめるのか、副作用が出たらどうするのか。あらかじめ流れを聞いておくと、落ち着いて治療に取り組めます。

疑問や不安は紙に書き出しておくと、診察の短い時間でも伝えやすくなります。

家族と一緒に説明を聞くと、聞きもらしを減らせます。あとで思い出せるよう、許可を得て内容を書きとめておくのもよい方法です。

受診前に整えておきたいこと

確認したい項目準備しておくこと
これまでの病歴お薬手帳・検査結果を持参する
今ある症状気になる変化をメモにまとめる
聞きたいこと質問を紙に書き出しておく
連絡の方法体調が悪化したときの窓口を確認する

こうした準備を整えておくと、限られた診察時間でも要点を伝えやすくなります。納得して治療を選ぶための、土台づくりといえるでしょう。

よくある質問

免疫チェックポイント阻害薬とはどのような薬ですか?

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫にかけたブレーキを外し、T細胞ががんを攻撃しやすくする薬です。がんを直接たたくのではなく、体にそなわった免疫の力を立て直す点が特徴といえます。

抗がん剤や分子標的薬とは働き方が異なり、効果が長く続きやすい例も知られています。一方で、免疫が働きすぎることで起こる副作用には注意が必要です。

免疫チェックポイント阻害薬の代表的な薬剤名には何がありますか?

代表的なものに、PD-1を狙うニボルマブやペムブロリズマブ、PD-L1を狙うアテゾリズマブやデュルバルマブ、CTLA-4を狙うイピリムマブなどがあります。

それぞれ商品名は別につけられており、オプジーボやキイトルーダといった名前で呼ぶこともあります。一般名と商品名をセットで覚えておくと、情報の取り違えを防げます。

免疫チェックポイント阻害薬のPD-1とPD-L1の違いは何ですか?

PD-1はT細胞の側にある受け手、PD-L1はがん細胞などの側にある送り手で、両者が結びつくと免疫の攻撃が止まります。PD-1を狙う薬とPD-L1を狙う薬は、同じ通り道のどちらをふさぐかという点で異なります。

狙う分子によって、対象となるがんや副作用の出方に差が生まれることがあります。どちらが優れているというより、状況に応じて使い分ける関係です。

免疫チェックポイント阻害薬にはどのような副作用がありますか?

免疫が活発になりすぎることで、皮膚、腸、肺、甲状腺などに炎症が起こることがあり、免疫関連有害事象と呼ばれます。発疹や下痢、息切れ、強いだるさなどがサインです。

数週間から数か月たって現れることもあるため、気になる変化は早めに主治医へ伝えることが大切です。早く気づくほど、軽くおさえやすいと考えられています。

免疫チェックポイント阻害薬はどのようながんに使われますか?

悪性黒色腫や非小細胞肺がんを中心に、胃がん、腎細胞がん、肝細胞がん、頭頸部がんなど、対象となるがんが広がっています。複数の薬を組み合わせて使うこともあります。

ただし、すべてのがんやすべての人に使えるわけではありません。がんの種類や遺伝子の特徴、全身の状態をふまえて、主治医が判断します。

References

免疫チェックポイント阻害薬の一覧を、主要な薬剤名と標的となるPD-1・PD-L1・CTLA-4の違いから整理。がん種ごとの使われ方や副作用までやさしく解説します。

この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医