がん治療の方針に納得できない時はどうする?主治医との対話とセカンドオピニオン

がん治療の方針に納得できない時はどうする?主治医との対話とセカンドオピニオン

がん治療の方針に納得できないときは、引っかかっている点を主治医に伝え、治療を勧める理由と自分の希望をすり合わせるところから始めましょう。それでも迷いが続くときは、院内の相談先やセカンドオピニオンを利用できます。

説明を受けて帰宅しても「本当にこの治療でよいのか」と迷いが残るなら、その気持ちも話し合う内容です。納得できない気持ちは、決めるための答えがまだそろっていないという合図です。

この記事では、納得できない理由の整理、主治医への伝え方、希望が食い違うときの話し合い、院内の相談先とセカンドオピニオンの使いどころを解説します。

がん治療に納得できないときは主治医との再相談から

最初にするのは、治療方針のどこに迷いがあるかを主治医へ伝えることです。それでも判断に必要な答えが得られないときに、別の医師の意見を聞く順番が基本になります。

今の迷いを診察の話題にする

「納得できていない」と伝えれば、まだ決めかねている状態を主治医と共有できます。治療の効果が疑問なのか、体への負担が怖いのかによって、次の説明で扱う内容も違うものです。

気持ちがまとまっていなくても、引っかかった点を話すだけで再相談を始められます。「説明は聞きましたが、手術のあとの生活を想像すると決められずにいます」といった、自分の状態を表す言葉で十分です。

順番患者さんがすること
疑問を書き出す治療の理由への疑問と、生活上の希望を分ける
主治医に聞く迷っている点を伝え、勧める理由を聞く
ほかの職種に相談する看護師などに、話し合いで困っている点を伝える
別の意見を聞く迷いが残る論点について、別の医師の見解を得る

これは相談を進める順番であり、治療を待てる期間は病状に応じて別途決まります。

結論を出す時期は病状に合わせる

考える時間をどの程度取れるかは、がんの広がりや症状、予定されている治療によって違います。迷いが残るときは、主治医に「いつまでに返事が必要か、待つと何が心配か」を聞きましょう。

すでに治療を受けている患者さんは、疑問が生じた時点で連絡し、次の投薬や通院をどうするかも話し合う必要があります。自己判断で薬を減らしたり中断したりする前に、処方した医療機関へ連絡してください。

次の話し合いで扱う論点を絞る

再相談では、答えが得られると判断が進む疑問を優先します。「ほかの治療より勧める理由が分かれば決められる」のか、「仕事を続けられる見通しが必要」なのかで、主治医に求める答えは違うはずです。

話し合いの終わりには、答えが出た点と保留した点が残ります。保留した点を誰に聞き、いつ再び話すかまで決まると、迷いを抱えたまま次の治療日を迎える負担を減らせます。

納得できない理由を分けると求める答えが見える

説明への疑問、希望とのずれ、強い不安では、必要な対応が違います。いくつかが重なっているときも、まず困っている点から言葉にできます。

治療を勧める理由がつながっていない

治療名は分かっても、なぜ自分にその治療が勧められたのかが分からなければ、決めるための説明が足りていない状態です。診断の内容から治療方針に至る理由を聞くことで、どの部分に疑問が残るかがはっきりします。

説明を聞いた量と、判断に必要な答えが得られたかは分けて扱えます。情報を増やす前に必要なのは、答えが出ていない問いです。「ほかの治療では何が難しいのか」という疑問なら、その点が次の話し合いの中心になります。

納得できない理由次に取る行動
勧める理由が分からない主治医に、自分の病状と治療方針の関係を聞く
大切にしたい生活と合わない主治医に、続けたい活動や避けたい負担を伝える
不安が強く決められない看護師に、迷いの強さと日常生活への影響を伝える

理由を1つに決める必要はなく、説明を聞く途中で別の気がかりが見えてくることもあります。

大切にしたい生活が治療方針に入っていない

効果を期待できる治療でも、仕事や介護、自宅で過ごす時間への影響が大きければ迷いが生まれます。治療を受けたい気持ちと、今の生活を守りたい気持ちは、同時に主治医へ伝えてよい内容です。

「入院が嫌です」という言葉の背景には、家族の世話を代わる人がいない事情や、収入への不安などが隠れているかもしれません。何が困るのかが具体的になるほど、治療内容の話と生活を支える方法の話を分けて進められます。

説明を受けた場面のつらさが残っている

診断を告げられたときの言葉や態度が気になり、その後の治療の説明を受け止めにくくなる場合もあります。治療の内容だけでなく、話された場面で何がつらかったかも、再相談で扱える問題です。

日本の前立腺(膀胱の下にある臓器)のがんの男性51人の語りを分析した研究では、診断時の医師の言葉や態度を否定的に覚えていた人が17人いました1)。対象となった男性の約3分の1にその経験があり、気になる言葉が残るときは、その経験自体を相談の対象にしてよいと受け止められます。

診察後の夜、自宅で治療の予定を思い出して胸が詰まり、聞きたかった疑問を言えなかったと感じるなら、次の診察の前に看護師へその場面を伝えましょう。主治医と話す前に、何がつらかったかを言葉にする時間を持てます。

主治医には疑問と不安を分けて伝える

治療について知りたい点と、治療を受けるうえで怖い点を分けて伝えると、それぞれに答えを求められます。主治医に説明を求め、不安を受け止めてもらうのも、治療方針を決める話し合いの一部です。

診察の初めに迷いが残っていると伝える

診察の初めに「治療方針について、まだ決められない点があります」と伝えると、その日の話題として扱ってもらいやすくなります。終わり際まで待っていると、十分な時間を取れず、再び疑問を持ち帰る状況にもつながります。

忙しそうに見える診察室では、疑問を口にするだけでも負担を感じるものです。話し切れないときには、その場で結論を急ぐより、続きの説明を受ける時間を主治医や看護師と決める方法があります。

責める言葉より自分が困っている点を示す

自分の気持ちと答えてほしい疑問を並べると、主治医が説明すべき点が具体的になります。言いにくいときは、次のように「自分は何に迷っているか」を主語にして伝えましょう。

  • 理由への疑問 … 「私にこの治療を勧める理由を、もう少し聞きたいです」
  • 体への不安 … 「治療後に自分で身の回りのことができるか、心配です」
  • 生活上の希望 … 「家族の世話を続けたいので、治療中の生活も含めて話したいです」
  • 決めかねている状態 … 「説明は聞きましたが、まだ受けると決められずにいます」

話したい内容がいくつもあれば、今の判断を最も妨げている疑問から始めると、診察で扱う優先順位が伝わります。

答えを聞いても残った疑問を言葉にする

説明を聞いても迷いが残るときは、答えのどこが判断につながっていないかを伝えます。「効果は分かりましたが、体への負担を引き受けられるかが決まりません」と言えば、次に扱う問題が絞られるでしょう。

一方、主治医の答えそのものが十分に得られず、話が途中で終わったと感じるときは、その状態を看護師へ伝える方法があります。説明の機会を調整してもらえるかも含め、患者さんだけで話し合いを立て直す負担を抱えずに済むようにするためです。

がん治療の希望と医師のすすめをすり合わせる

希望とすすめが違うときは、治療で目指す結果と、引き受けられる負担を並べて話すと論点が定まります。手術や薬物療法(薬を使う治療)など、医学的に実施できる治療の中で希望を反映する余地を探します。

治療で何を目指しているかをそろえる

同じ治療の話をしていても、がんを取り除くことを期待しているのか、進行を抑えることを目指しているのかで、受け止め方は違います。治療の目標が一致しているかは、効果への期待のずれを扱うために大切な点です。

国やがんの種類が異なる37研究をまとめた検討では、効果や副作用(治療に伴う好ましくない作用)について治療に求めるものが、医師と患者さんで食い違う場合が示されています2)。日本で治療を受ける際にも、希望が一致していると決めつけず、自分が何を重く見ているかを伝える意味があります。

効果と負担を自分の希望と並べる

治療名だけを比べるより、期待する効果、体への負担、生活への影響を同じ項目で並べると、迷いの原因を具体的にできます。空欄は、自分の希望と説明を受けた内容を別々に書き込むための欄です。

比べる項目自分の希望・気がかり勧められた治療の説明
期待する効果目指したい結果(    )治療の目標と見込み(    )
体への負担特に避けたい症状(    )予想される負担と対応(    )
生活への影響続けたい生活や活動(    )通院や入院の影響(    )

答えが出ていない欄があれば、その部分を主治医と話す材料にできます。希望する結果が医学的に難しいときには、その理由も説明の欄に残せます。

譲れない希望と調整できる希望を分ける

希望をすべて同じ重さで扱うと、どこを調整できるかが見えにくくなります。特に守りたい生活と、支援があれば変更できる予定を分けて主治医に伝えましょう。

たとえば自宅で過ごしたい希望が強いなら、通院で受けられる治療が医学的に選べるか、入院が必要なら何が理由なのかが話題になります。体への安全性や期待できる効果のために希望どおりの治療が難しい場合も、負担を和らげる対応は話し合える内容です。

最終的にどこまで自分で決めたいかも、伝えてよい希望です。医師からの提案を重く受け止めたい患者さんも、治療ごとの利点と不利益を比べて決めたい患者さんも、自分に合う関わり方を選べます。

院内では看護師やがん相談支援センターにも話せる

主治医への話しづらさや生活上の困りごとは、看護師やがん相談支援センターにも相談できます。相談内容に合う相手が加わると、治療の説明と生活への対応を並行して進められます。

看護師には診察で言えなかった不安を伝える

看護師には、治療に伴う不安や、主治医に言い出せなかった気がかりを話せます。「治療を受けると返事をしましたが、まだ怖さが強いです」といった、診察のあとで生まれた迷いも対象です。

治療の適否を決める説明は主治医から受けますが、看護師には、再び話す時間や主治医へ不安を伝える方法について頼れます。どこまで伝えてほしいかを自分の言葉で示せば、話したくない内容まで伝わる心配も扱えます。

相談内容に合う相手を選ぶ

病院内の相談先は、医療についての迷い、暮らしの困りごと、病院とのやり取りで役割が分かれます。次の違いは、話し始める相手を選ぶ目安です。

相談できる相手患者さんから頼めること
看護師診察で言えなかった不安を聞いてもらい、主治医と話す機会を調整する
がん相談支援センター治療や療養生活の迷いを整理し、利用できる支援につなげてもらう
病院の相談窓口説明の機会や病院とのやり取りについて、担当部署との調整を頼む

名称や担当する内容は病院によって違うため、相談の受け付け方や費用は、がん相談支援センターまたは病院の相談窓口で確かめましょう。

誰に話すか迷ったら困っている状況から話す

相談先の名前を決められなくても、通院中の診療科の看護師に、今いちばん困っている状況を伝えられます。「説明をもう一度聞きたいのですが、診察では言えませんでした」と、起きた出来事から話し始める方法です。

また、生活上の事情が受診や治療の継続を難しくしているときは、何が妨げになっているかも相談の対象になります。相談相手から別の担当者を紹介される場合には、自分が説明した内容のうち何を引き継いでもらうかを決められます。

セカンドオピニオンは残った迷いを別の医師に聞く機会

主治医と話しても迷いが残るときは、セカンドオピニオンとして別の医師の見解を聞けます。今の診断や治療方針について別の立場から説明を受け、判断に必要な情報を補う機会です。

別の見解を求めたい論点があるときに役立つ

別の医師に聞きたい論点が定まっていれば、相談で得たい答えも具体的になります。治療を勧める医学的な理由への疑問なのか、自分が重く見ている負担への見解なのかを分けて捉えられます。

  • 主治医の説明を受けても、勧められた治療の理由に疑問が残るとき
  • 手術や薬物療法など、実施できる治療の範囲について別の見解を聞きたいとき
  • 治療で期待できる効果と体への負担について、別の医師の評価を求めたいとき

すでに主治医の説明で解決した疑問より、判断が止まっている論点が相談の中心です。安心して治療を受けたいという気持ちも、別の意見を聞こうとする理由になります。

同じ方針への説明も判断の材料になる

セカンドオピニオンでは、現在の主治医と同じ治療方針が示される場合もあります。その際も、どの病状を重視して勧めるのかという説明を聞くことで、治療を受ける理由を自分なりに捉え直せます。

ただし、希望する治療が必ず提案されるとは限りません。別の意見を得る機会と捉え、何を聞ければ今の迷いが整理できるかを言葉にしておきましょう。

転院や治療開始とは区別して利用する

セカンドオピニオンは、一般に別の医師の意見を聞くための相談で、受けたことだけで転院や治療の変更が決まるわけではありません。意見を聞いたあとにも、今後の治療について話し合う機会が必要です。

また、別の見解を聞く予定ができても、治療を待てる期間が延びるとは限りません。予約までの時間と、主治医から示された治療開始の時期が合うかは、現在の診療科との間で調整する必要があります。

がん治療が始まったあとも迷いを話し合える

治療開始後に納得できない気持ちが強くなったときも、再び話し合えます。続ける理由が分からないまま負担を抱え込む前に、何がつらく、何に疑問が残るかを伝える意味があります。

負担が出たときに治療の理由を見失うことがある

受ける理由に迷いが残ったまま体調の変化が起きると、「なぜつらい治療を続けるのか」と感じる場合があります。治療で目指す結果と、今の負担に対応する方法を、同じ診察で話しましょう。

がんに限らない医療全般の研究をまとめた分析では、医師との意思疎通が良好なほど、治療を続けやすい傾向が示されています3)。日本の前立腺がんでホルモン療法(がんの増殖に関わるホルモンの働きを抑える治療)を始める患者さん124人と医師150人への調査でも、説明の十分さや一緒に決めた実感と、治療への満足との関連がみられました4)。今の診療でも、受ける理由と気がかりの両方を話す時間に意味があります。

治療を始めた自分を責めずに迷いを伝える

治療を始めたあとで気持ちが揺れるのは、実際の体への負担や生活への影響を経験し、判断する材料が増えたためでもあります。始める前の自分を責めるより、予想と違った点を伝えるほうが、現在の困りごとを扱えます。

大切なのは、今の体調と続けるうえで困っている具体的な事情です。治療の効果への疑問と、つらい症状への対応を分けて主治医に話すと、どちらにも答えを求められます。

つらさが強く次の服薬や通院を迷う状態なら、自己判断で変更せず、治療を受けている医療機関へ連絡してください。

次の診察で見直す内容を決めておく

話し合いを終えるときには、今の方針で進める理由に加え、どの点を次の診察で話すかが決まっていると、残る不安を扱いやすくなります。症状への対応を受けたあとの変化や、暮らしへの負担など、続けて話す内容は具体的にできます。

納得は、不安がすべて消えた状態だけを指すものではありません。自分にとって大切な希望を伝え、勧められた理由と残っている疑問を分けて捉えられることも、治療方針を選ぶうえで大事な到達点です。

よくある質問

主治医に納得できないと伝えてもよいですか?

伝えて大丈夫です。治療を受けるか迷っている状態や、説明のあとに残った疑問は、治療方針を決めるために主治医が知る必要のある内容です。

言い出しにくいときは「まだ決められない点があります」と、自分の状態から話し始められます。診察で言えずに帰宅した場合も、診療科の看護師に、再び説明を聞きたいと伝える方法があります。

迷っている間、予定された治療を延期してよいですか?

延期できるかは病状によるため、主治医への連絡が必要です。治療を待つ影響と、いつまでに判断する必要があるかを聞けば、相談に使える時間を具体的に把握できます。

予定日が近いときは、連絡せずに受診をやめず、診療科へ迷いが残っていると伝えてください。治療中の薬も、変更前に処方した医療機関へ連絡が必要です。

何に納得できないのか自分でも分からないときはどうしますか?

理由がまとまらなくても、看護師やがん相談支援センターに話せます。「治療の話を聞くと怖くなる」「説明後も決められない」など、今の状態から話す方法です。何を言われた場面で気持ちが強く揺れたかが分かれば、その出来事も伝えると話を進められます。

治療を始めてから再び話し合いを求めてもよいですか?

治療が始まってからも、再び話し合いを求められます。経験して初めて分かる体への負担や、予想より大きかった生活への影響も、治療を続けるうえで扱う必要がある内容です。

次の診察を待てる状態なら、何が予想と違ったかを中心に話せます。つらさが強く、服薬や通院を続けるか迷っているときは、治療を受けている医療機関へ連絡してください。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医