BNCTを受けられる病院・施設一覧|治療の相談ができる医療機関と紹介の手順

BNCTを受けられる病院・施設一覧|治療の相談ができる医療機関と紹介の手順

BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、切除がむずかしい局所進行や局所再発の頭頸部がんに対して国内で受けられる放射線治療の一つです。2020年に公的医療保険の対象になりましたが、実施できる病院・施設はまだ限られています。

そのため、まずどこに相談し、どんな手順で実施施設へたどり着くのかを知っておくと安心です。治療までの道のりは、かかりつけ医への相談から紹介、受診、適応の判定へと進みます。

この記事では、BNCTを受けられる病院・施設の一覧と、治療を相談できる医療機関、紹介状から治療日決定までの流れをまとめました。情報を集めている方が次の一歩を判断しやすいよう、順を追って説明します。

ホウ素中性子捕捉療法BNCTとはどんな治療法なのか

BNCTは、がん細胞に集まる薬剤と中性子を組み合わせ、細胞の一つ分ほどの範囲でがんをたたく放射線治療です。正常な組織への影響を抑えながら、狙ったがん細胞を選んで攻撃できる点に特徴があります。

ホウ素薬剤と中性子が反応する仕組み

BNCTは2種類の要素を組み合わせる治療です。まずホウ素を含む薬剤(一般名ボロファラン)を点滴で投与すると、薬剤ががん細胞に多く集まります。

その状態でエネルギーの低い中性子を当てると、がん細胞の中のホウ素が反応し、ごく小さな粒子が飛び出します。この粒子が届く範囲はおよそ細胞1個分のため、薬剤がたまったがん細胞をねらって壊せます。

こうした働きから、BNCTは正常な細胞への影響を抑えやすい治療といえます。薬剤が集まっていない細胞では反応が起こりにくく、ねらった場所に作用を集めやすいのです。

薬剤が体に入ってから照射までの流れ

治療当日は、ホウ素薬剤の点滴からはじまります。薬剤ががん細胞へ十分に行きわたるまで、点滴はおよそ2時間かけて続きます。

薬剤が届いたことを確認したあとに、中性子の照射へ移ります。照射そのものは長くても1時間ほどで、横になった姿勢を保ったまま受ける流れです。

従来のX線治療やほかの放射線治療との違い

一般的なX線治療は、体の外から放射線を当てて広い範囲のがんを治療します。一方でBNCTは、薬剤がたまった細胞だけで反応が起きるため、ねらいを細胞単位までしぼれる点が異なります。

X線治療とBNCTの違い

比較する点一般的なX線治療BNCT
照射の回数数週間にわたり複数回多くは1回
ねらう範囲病変とその周辺薬剤がたまった細胞が中心
主な対象幅広いがん切除しにくい頭頸部がんなど

どちらが向いているかは、がんの種類や位置、これまでの治療によって変わります。担当する医師が検査の結果をふまえ、一人ひとりに合う方法を判断します。

放射線の種類や当て方が違うため、治療にかかる期間や通院の負担も変わってきます。自分の状態にどちらが合うのかは、検査の結果を見ながら医師と確かめていくものです。

1回の照射で治療が完了する理由

BNCTは多くの場合、中性子の照射を1回行って治療を終えます。薬剤ががん細胞に集まった一度のタイミングで、ねらった細胞へまとめて作用させられるからです。

通院回数が少なくてすむため、体への負担や生活への影響を抑えやすい面があります。ただし照射の前後には検査や経過の確認が必要で、当日だけで全てが終わるわけではありません。

当日を落ち着いて迎えられるよう、前もって食事や服薬の注意点を確かめておきましょう。気がかりなことは事前の診察でたずねておくと、安心して治療に臨めます。

BNCTを受けられる病院・施設は今どこにあるのか

公的医療保険でBNCTを受けられる施設は、2020年の保険適用から現在まで国内で2か所にとどまります。福島県と大阪府にあり、いずれも病院や大学に併設された専用の施設です。

施設名所在地主な特徴
南東北BNCT研究センター福島県郡山市総合南東北病院に併設
関西BNCT共同医療センター大阪府高槻市大阪医科薬科大学に併設
国立がん研究センター中央病院東京都中央区臨床試験として実施

各施設では、受け入れの条件や相談の窓口が少しずつ異なります。受け入れ状況は時期によって変わるため、受診を考えるときは各施設へ直接確認してください。

南東北BNCT研究センターの特徴

南東北BNCT研究センターは、福島県郡山市の総合南東北病院に併設された施設です。加速器を使って中性子を作る方式を採り、原子炉がなくても治療を行える体制を整えています。

頭頸部がんを中心に治療の相談を受け付けています。遠方から通う方に向けた案内もあり、受診の前に窓口へ問い合わせると流れがつかみやすいでしょう。

初めて問い合わせる方にも、受診までの流れをかみくだいて案内してくれます。気になることは小さなことでも、遠慮せずたずねてみてください。

関西BNCT共同医療センターの特徴

関西BNCT共同医療センターは、大阪府高槻市の大阪医科薬科大学に併設されています。こちらも加速器による中性子源を備え、保険診療としてBNCTを行っています。

大学病院と連携しているため、ほかの診療科とのつながりがある点も心強いところです。受診を希望する場合は、紹介状を用意するか事前に相談しておくと進めやすくなります。

臨床試験として実施している医療機関

保険診療の2施設とは別に、臨床試験(治験)としてBNCTに取り組む医療機関もあります。国立がん研究センター中央病院は、研究目的の枠組みで装置を備えています。

臨床試験は対象となるがんの種類や条件が細かく決まっています。一般の診療として誰でも受けられるわけではなく、参加できるかどうかは個別の判断になります。

BNCTを実施できる施設がまだ少ない理由

BNCTには、中性子を作る大型の装置と、安全に扱うための専門の体制が必要です。装置の導入や運用には大きな費用と人材がかかり、どの病院でもすぐに設置できるわけではありません。

保険で受けられる対象が頭頸部がんに限られている点も、施設数が増えにくい背景にあります。そのため、住んでいる地域によっては通院に工夫が要る場合もあるでしょう。

BNCTの対象になるがんと受けられる人の条件

BNCTを保険で受けられるのは、切除がむずかしい局所進行または局所再発の頭頸部がんに当てはまる場合です。そのうえで、がんの大きさや位置、体の状態などの条件を満たす必要があります。

保険で受けられる頭頸部がんの範囲

頭頸部がんとは、のどや口、鼻、舌などにできるがんをまとめた呼び方です。BNCTの保険診療は、この頭頸部がんのうち手術で取りきれない、あるいは再発したものが対象になります。

脳腫瘍などほかの部位については、現時点では臨床試験の段階にとどまります。保険で受けられる範囲とは分けて考えておくとよいでしょう。

同じ頭頸部がんでも、できた場所や進み具合は人によってさまざまです。手術や薬物療法、ほかの放射線治療との組み合わせも含めて、どの方法が向くかを総合的に見ていきます。

がんの大きさや位置で適応が決まる理由

BNCTは中性子を当てられる範囲が決まっているため、がんの大きさや深さによって向き不向きがあります。装置で照射できる範囲に病変が収まることが、治療を行う一つの目安になります。

そのうえで、ホウ素薬剤ががんにどれくらい集まるかも判断の材料です。治療の前に専用の検査で取り込みのぐあいを調べ、効果が見込めるかどうかを確かめます。

受けられないことがある人の特徴

条件によっては、BNCTをすすめにくい場合もあります。たとえば、がんが広い範囲に転移しているときや、照射の姿勢を保つのがむずかしいときなどです。

適応の判断で確かめる主な点

  • 遠くの臓器への転移の有無
  • 病変が照射できる範囲に収まるか
  • 一定の時間、姿勢を保てるか
  • ホウ素薬剤の取り込みぐあい

これらは検査と診察を通じて総合的に確かめます。当てはまらない項目があっても、ほかの治療と組み合わせる道が残る場合もあるため、医師とよく話し合うことが大切です。

BNCT治療の相談はどの医療機関にすればいいのか

どこに相談すればよいか迷う方は多いものです。まずは今かかっている主治医やかかりつけ医に伝えることが、BNCTへの近道になります。

相談先役割相談に向くタイミング
主治医・かかりつけ医紹介状の作成や情報の橋渡し治療方針に迷ったとき
実施施設の相談窓口受け入れ可否や手順の案内施設を具体的に検討するとき
がん相談支援センター一般的な情報や制度の案内何から始めるか分からないとき

相談先によって受けられる助けが変わります。状況に合わせて使い分けると、必要な情報に早くたどり着けるでしょう。

まず主治医やかかりつけ医に相談する

BNCTを考えはじめたら、最初に相談したい相手が今の主治医です。これまでの治療の経過やがんの状態を把握しているため、BNCTが向いているかどうかの見立てを聞けます。

主治医は実施施設への紹介状を書く役割も担います。気になる点はメモにまとめて持参すると、限られた診察の時間でも話を進めやすくなります。

相談のときは、いつから症状があるか、これまでどんな治療を受けてきたかを整理して伝えると役立ちます。家族に同席してもらうと、聞き逃しを防ぎやすくなるでしょう。

実施施設の相談窓口へ問い合わせる

実施施設には、治療に関する問い合わせを受ける窓口があります。受け入れの条件や受診の流れ、必要な書類などを、電話や専用のフォームで確かめられます。

窓口に問い合わせると、紹介の手順や準備するものが具体的に見えてきます。遠方から通う場合の案内を受けられることもあり、不安をやわらげる助けになるでしょう。

セカンドオピニオンで選択肢を広げる

今の治療方針に迷いがあるときは、別の医師の意見を聞くセカンドオピニオンも選べます。BNCTを含めた選択肢を、改めて整理する機会になります。

意見を聞くときも、現在の主治医からの資料があると話がスムーズです。納得したうえで治療を選ぶことが、その後の安心につながります。

かかりつけ医からBNCT実施施設へ紹介してもらう手順

紹介の流れは、相談、紹介状の作成、受診、適応の判定という順に進みます。一つずつ確かめながら動けば、初めてでも迷いにくい道のりです。

段階やること用意するもの
相談主治医にBNCTの希望を伝えるこれまでの検査結果
紹介紹介状を書いてもらう診療情報提供書
受診実施施設を予約して受診する画像データや紹介状
判定適応を調べる検査を受ける体調の記録など

各段階でつまずきやすい点を知っておくと、準備がはかどります。それぞれの場面で大切になることを順に見ていきます。

紹介状(診療情報提供書)を用意する

実施施設の受診には、主治医が書く紹介状(診療情報提供書)が必要です。これまでの診断やがんの状態、受けてきた治療がまとめられた大切な書類です。

紹介状があると、実施施設の医師が状況をすばやく理解できます。作成に数日かかることもあるため、早めに主治医へ依頼しておくと安心です。

検査資料や画像データをそろえる

紹介状に加えて、CTやMRIなどの画像データもそろえておきましょう。これらは適応を判断するうえで、文章だけでは伝わりにくい情報を補ってくれます。

画像はディスクなどに記録してもらい、受診時に持参するのが一般的です。どの資料が必要かは、前もって施設の窓口で確かめておくと手戻りが減ります。

受診の予約から初診までの流れ

書類がそろったら、実施施設へ受診を予約します。窓口で日程を調整し、初診の日に紹介状と資料を持って受診する流れです。

初診では、医師が資料をもとに状態を確認し、今後の検査の予定を相談します。遠方の場合は、通院の回数や宿泊についてもこの日に話しておくとよいでしょう。

予約の時点で、当日の持ち物や所要時間を確かめておくと、受診の日にあわてずにすみます。通院に時間がかかる場合は、午前や午後といった受診の時間帯も相談しておきましょう。

適応判定の検査と治療日の決定

初診のあとは、BNCTが向いているかを確かめる検査へ進みます。専用の検査でホウ素薬剤の取り込みぐあいを調べ、効果が見込めるかを判断します。

適応が認められると、体調や施設の予定に合わせて治療日を決めます。判定を終えれば、当日へ向けた具体的な準備に取りかかれます。

BNCT治療の費用と通院で気をつけたいこと

BNCTは公的医療保険の対象で、医療費の自己負担には高額療養費という仕組みがあります。費用の見通しに加えて、遠方からの通院や治療前後の生活も、早めに考えておくと負担を減らせます。

費用の目安と高額療養費の仕組み

BNCTは保険診療のため、かかった医療費の一部を自己負担する形になります。実際の負担額は、年齢や所得、加入している制度によって変わります。

1か月の自己負担が一定の上限を超えた場合、高額療養費の制度で払い戻しを受けられることがあります。前もって手続きをすると窓口での支払いを抑えられる場合もあるため、加入先の窓口で確かめておきましょう。

費用の見通しが立たないと、気持ちの負担も大きくなりがちです。実際の金額は施設や個々の状況で変わるので、見積もりについても受診のときに相談しておくと安心です。

遠方からの通院や宿泊の準備

実施施設が限られているため、遠くから通う方も少なくありません。検査や治療で複数回の来院が必要になることもあり、移動の計画は早めに立てておくと安心です。

付き添いの家族の予定や、近くの宿泊先も合わせて考えておきましょう。施設によっては相談窓口で案内を受けられるので、遠慮なくたずねてみてください。

移動の負担を減らすには、通院の日程をまとめて組めないか相談する手もあります。交通費や宿泊費の見通しを先に立てておくと、治療そのものに気持ちを向けやすくなります。

治療の前後に生活で意識したいこと

治療の前後は、体調を整えて臨むことが回復の助けになります。睡眠や食事を無理のない範囲で見直し、気になる症状は早めに医師へ伝えましょう。

治療前後に心がけたい生活の工夫

  • 十分な睡眠と休養をとる
  • 栄養のバランスを意識した食事
  • 口の中を清潔に保つ
  • 体調の変化をメモに残す

こうした心がけは、副作用とつきあううえでも役立ちます。何をどこまでやればよいか迷ったら、担当の医師や看護師に具体的にたずねてみてください。

BNCTのメリットと知っておきたい副作用やリスク

BNCTは体への負担が比較的少ない治療ですが、副作用がまったくないわけではありません。利点と起こりうる症状の両方を知ることが、納得して治療を選ぶ支えになります。

体への負担が比較的少ない利点

BNCTは多くの場合1回の照射で終わるため、通院の回数を抑えやすい治療です。薬剤がたまったがん細胞を中心に作用するので、まわりの正常な組織への影響を小さくしやすい点も利点といえます。

これまでの治療で放射線を受けた部位でも、状況によっては検討できる場合があります。手術がむずかしいケースの選択肢として考えられることに、大きな意味があります。

起こりやすい副作用とその対応

BNCTでも、治療のあとにいくつかの副作用が起こることがあります。口の中の炎症やだ液腺の腫れ、皮膚の症状、脱毛などが報告されています。

主な副作用と対応の例

起こりやすい症状主な内容対応の例
口内炎口の中の痛みや荒れやわらかい食事と口腔ケア
だ液腺の腫れあごの下の腫れや痛み医師に相談し経過を確認
皮膚の症状照射した部位の赤みなど刺激を避けて保湿を心がける

多くの症状は時間とともに落ち着いていきます。気になる変化が続くときは我慢せず、担当の医師へ早めに伝えることが回復への近道です。

効果には個人差があること

BNCTの効果の出方には、一人ひとり差があります。がんの種類や進み具合、薬剤の取り込みぐあいなどによって、結果は変わってきます。

治療を受ければ必ず同じ結果になる、とは言いきれません。だからこそ、検査の結果や見通しについて医師とていねいに話し合い、自分に合う選択をすることが大切です。

治療のあとは、定期的な検査で経過を見守っていきます。不安に感じることがあればその都度医師に伝え、次の方針を一緒に考えていくと心強いでしょう。

よくある質問

BNCTはどんながんで受けられる治療ですか?

BNCTは、切除がむずかしい局所進行または局所再発の頭頸部がんに対して行われています。のどや口、舌などにできたがんで、手術で取りきれない場合や再発した場合が主な対象です。

脳腫瘍などほかの部位は、現時点では研究的な枠組みでの実施にとどまります。受けられるかどうかは、検査と診察を通じて医師が個別に判断します。

BNCTを受けられる病院はどこにありますか?

BNCTを実施している施設は国内でも限られており、福島県と大阪府に専用の施設があります。いずれも病院や大学に併設され、頭頸部がんの治療に取り組んでいます。

このほかに、臨床試験としてBNCTを行う医療機関もあります。受け入れの状況は時期によって変わるため、受診を考えるときは各施設へ直接たずねてみてください。

BNCTの治療はどのくらいの回数や時間がかかりますか?

BNCTは多くの場合、中性子の照射を1回行って治療を終えます。治療当日は、まずホウ素薬剤の点滴をおよそ2時間かけて行います。

そのあとの照射そのものは、長くても1時間ほどです。ただし前後には検査や経過の確認があるため、当日だけで全てが完結するわけではありません。

BNCTを受けるにはまずどこに相談すればよいですか?

BNCTを考えはじめたら、まずは今かかっている主治医やかかりつけ医に相談してください。これまでの経過を知る医師なら、向き不向きの見立てや実施施設への紹介を相談できます。

何から始めるか分からないときは、がん相談支援センターで一般的な情報を得る方法もあります。実施施設の窓口へ直接問い合わせて、手順を確かめるのもよいでしょう。

BNCTにはどのような副作用がありますか?

BNCTのあとには、口の中の炎症やだ液腺の腫れ、皮膚の症状、脱毛などが起こることがあります。多くは時間の経過とともに少しずつ落ち着いていきます。

症状の出方には個人差があり、強さや続く期間も人によって異なります。気になる変化が続くときは、担当の医師へ早めに伝えることが大切です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医