
甲状腺がんと診断されたとき、多くの方が「手術以外にどんな治療法があるのだろう」と不安を感じるのではないでしょうか。分子標的薬は、がん細胞の増殖にかかわる特定のタンパク質を狙い撃ちにする薬です。
手術や放射性ヨウ素内用療法だけでは対応が難しい進行・再発の甲状腺がんに対して、分子標的薬は新たな治療の選択肢として期待を集めています。この記事では、対象となるがんの種類から薬ごとの効果や副作用、治療中の生活上の注意点まで、わかりやすくお伝えします。
治療に向き合ううえでの判断材料として、ぜひ最後までお読みください。
甲状腺がんで分子標的薬治療が検討されるのはどんなとき?
甲状腺がんの治療では、まず手術による切除と放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)が基本となります。しかし、これらの治療で効果が十分に得られない場合や、がんが再発・転移して切除が困難な場合に、分子標的薬が選択肢に入ってきます。
手術と放射性ヨウ素内用療法だけでは対応できないケースがある
甲状腺がんの約90%以上を占める分化がん(乳頭がん・濾胞がん)は、比較的おとなしい性質をもっています。多くの場合、手術で切除すれば良好な経過をたどるでしょう。
ところが、がんが甲状腺の外に広がっていたり、肺や骨に遠隔転移をしていたりする場合は、手術だけでコントロールすることが難しくなります。放射性ヨウ素内用療法もヨウ素を取り込まないがん細胞には効果を発揮できません。
「放射性ヨウ素治療抵抗性」という判断が分子標的薬導入の目安になる
放射性ヨウ素内用療法を受けてもがんが縮小しない、あるいは一度は効いても再び大きくなってくる状態を「放射性ヨウ素治療抵抗性」と呼びます。この状態になると、従来の治療では病気の進行を食い止めることが難しくなります。
担当医がCT画像などで病気の進行を確認し、患者さんの体の状態も考慮したうえで、分子標的薬の導入を検討します。すべての患者さんに一律に使うわけではなく、治療のタイミングを慎重に見極めることが大切です。
分子標的薬が検討される主な状況
| 状況 | 具体的な内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 切除不能 | 手術で取りきれない進行がん | 局所進行・遠隔転移を含む |
| ヨウ素治療抵抗性 | 放射性ヨウ素が効かない分化がん | 画像上の進行が確認された場合 |
| 髄様がん | RET遺伝子変異を伴う進行例 | 放射性ヨウ素治療の適応がない |
| 未分化がん | 急速に進行する悪性度の高いがん | BRAF変異の有無が治療選択に影響 |
分子標的薬を始める前に遺伝子検査を受ける意味
がん細胞がどのような遺伝子の異常をもっているかを調べることで、より効果の期待できる薬を選べるようになります。RET遺伝子変異やNTRK融合遺伝子、BRAF V600E変異など、特定の遺伝子異常に対応した薬が登場しているためです。
遺伝子検査は「コンパニオン診断」と呼ばれ、治療方針を決めるうえで重要な情報をもたらしてくれるものといえるでしょう。
甲状腺がんの分子標的薬にはどんな種類があるのか
甲状腺がんに使われる分子標的薬は、大きく分けて「マルチキナーゼ阻害薬」と「選択的キナーゼ阻害薬」の2つに分類できます。それぞれ標的となる分子や適応となるがんの種類が異なるため、その違いを知っておくと治療への理解が深まります。
マルチキナーゼ阻害薬は複数の分子を同時にブロックする
マルチキナーゼ阻害薬は、がん細胞の増殖や栄養血管の新生にかかわる複数の受容体型チロシンキナーゼ(細胞の表面にあるタンパク質)を同時に阻害する薬です。レンバチニブ(レンビマ)やソラフェニブ(ネクサバール)がこれに該当します。
レンバチニブはVEGFR(血管内皮増殖因子受容体)やFGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)、RETなどを幅広くブロックします。一方、ソラフェニブはRafキナーゼやVEGFR、PDGFRなどを標的とし、がん細胞の増殖と血管新生の両方を抑えます。
選択的キナーゼ阻害薬は特定の遺伝子変異を狙い撃ちする
選択的キナーゼ阻害薬は、がんの原因となる特定の遺伝子変異から作られるタンパク質をピンポイントで阻害します。セルペルカチニブ(レットヴィモ)はRET遺伝子の変異や融合を標的とし、ラロトレクチニブ(ヴァイトラックビ)はNTRK融合遺伝子を標的にした薬です。
マルチキナーゼ阻害薬に比べて標的が絞られているため、副作用が比較的軽い傾向があります。ただし、遺伝子検査でこれらの異常が確認されなければ使うことができません。
バンデタニブは髄様がんに特化した分子標的薬として登場した
バンデタニブ(カプレルサ)は、甲状腺髄様がんに対して承認されたマルチキナーゼ阻害薬です。RETキナーゼのほか、VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)やEGFR(上皮成長因子受容体)のシグナル伝達を阻害し、がんの進行を抑えます。
髄様がんはC細胞(傍濾胞細胞)という甲状腺の特殊な細胞から発生するがんで、放射性ヨウ素内用療法の効果が見込めないため、分子標的薬が特に重要な治療手段となっています。
甲状腺がんに使われる主な分子標的薬の一覧
| 薬剤名 | 主な標的 | 対象となるがん |
|---|---|---|
| レンバチニブ | VEGFR, FGFR, RET等 | 全ての甲状腺がん |
| ソラフェニブ | Raf, VEGFR, PDGFR | 分化がん(乳頭・濾胞) |
| バンデタニブ | RET, VEGFR, EGFR | 髄様がん |
| カボザンチニブ | MET, VEGFR2, RET | 髄様がん |
| セルペルカチニブ | RET | RET変異陽性の甲状腺がん |
| ラロトレクチニブ | TRK(NTRK融合) | NTRK融合陽性の固形がん |
| ダブラフェニブ+トラメチニブ | BRAF, MEK | BRAF V600E陽性未分化がん |
レンバチニブとソラフェニブは分化がんの治療でどう使い分けるのか
放射性ヨウ素治療抵抗性の分化がん(乳頭がん・濾胞がん)では、レンバチニブとソラフェニブがともに治療選択肢となります。それぞれ大規模な臨床試験で有効性が示されていますが、効果の強さや副作用の傾向に違いがあります。
レンバチニブはSELECT試験で高い奏効率と無増悪生存期間の延長を示した
国際共同第III相試験(SELECT試験)では、レンバチニブ群の無増悪生存期間(がんが悪化せずに過ごせた期間)の中央値が18.3か月だったのに対し、プラセボ群は3.6か月でした。奏効率(がんが一定以上縮小した割合)は64.8%という高い数字を記録しています。
FGFRも含めた幅広いキナーゼを阻害できる点がレンバチニブの大きな特徴であり、多くの治療ガイドラインで第一選択の薬として推奨されています。
ソラフェニブはDECISION試験で分化がんへの有効性を証明した
DECISION試験の主な結果
- 無増悪生存期間の中央値はソラフェニブ群10.8か月、プラセボ群5.8か月
- ハザード比0.59で、病気の進行リスクを約40%抑制
- 手足症候群(手のひらや足の裏が赤くなる症状)の発現頻度が高い
ソラフェニブは分化がん(乳頭がん・濾胞がん)のみに適応があり、レンバチニブのように髄様がんや未分化がんには使えません。副作用の種類もレンバチニブとは異なり、手足症候群が特に多くみられます。
両薬を順番に使う「逐次療法」も検討される
一方の薬で効果が得られなくなった場合、もう一方の薬に切り替える方法が臨床で行われています。レンバチニブとソラフェニブは標的とするキナーゼの組み合わせが異なるため、切り替えによって再び効果が得られるケースもあるのです。
どちらを先に使うかは患者さんの全身状態や合併症、がんの進行速度などを総合的に判断して決められます。糖尿病などの血管合併症がある方ではソラフェニブから開始する場合もあり、画一的な答えはありません。
RET遺伝子変異が見つかったらセルペルカチニブが有力な治療候補になる
RET遺伝子の変異や融合は、甲状腺髄様がんの大半と一部の分化がん・未分化がんで認められます。RET阻害薬であるセルペルカチニブは、従来のマルチキナーゼ阻害薬よりも高い奏効率と良好な安全性を示しており、治療の選択肢として注目度が高まっています。
LIBRETTO-001試験で髄様がんへの持続的な効果が確認されている
第I/II相試験のLIBRETTO-001では、バンデタニブやカボザンチニブによる治療歴のない髄様がん患者さんの奏効率が82.5%に達しました。治療歴のあるRET融合遺伝子陽性の甲状腺がんでも奏効率は95.8%と報告されています。
追跡期間の中央値が42か月を超える長期データでも、効果の持続が確認されている点が大きな強みでしょう。
LIBRETTO-531試験ではマルチキナーゼ阻害薬との直接比較でも優位性を示した
第III相試験のLIBRETTO-531では、セルペルカチニブと従来のマルチキナーゼ阻害薬(カボザンチニブまたはバンデタニブ)を直接比較しています。結果は、セルペルカチニブ群の無増悪生存期間が中央値に到達せず、対照群の13.9か月を大きく上回りました。
副作用による減量が必要だった割合もセルペルカチニブ群のほうが低く、治療の継続しやすさという面でも優れた成績を残しています。
RET変異の検出にはコンパニオン診断検査が必要になる
セルペルカチニブの恩恵を受けるためには、がん組織にRET遺伝子の変異や融合があるかどうかを事前に調べる必要があります。検査にはオンコマインDx Target Testなどの遺伝子パネル検査が用いられます。
髄様がんと診断されたら、できるだけ早い段階で遺伝子検査を受けることが治療戦略を立てるうえで重要です。検査結果が出るまでには一定の時間がかかるため、担当医と相談しながらスケジュールを組んでいきましょう。
セルペルカチニブの主な臨床試験結果
| 試験名 | 対象 | 奏効率 |
|---|---|---|
| LIBRETTO-001 | 治療未実施RET変異髄様がん | 82.5% |
| LIBRETTO-001 | RET融合陽性甲状腺がん(治療未実施) | 95.8% |
| LIBRETTO-531 | MKI未治療RET変異髄様がん | 69.4% |
未分化がんのBRAF V600E変異にはダブラフェニブとトラメチニブの併用が有効
甲状腺未分化がんは全ての甲状腺がんのなかで最も悪性度が高く、診断時にはすべてステージIVに分類される極めて予後の厳しいがんです。BRAF V600E変異が確認された場合、BRAF阻害薬のダブラフェニブとMEK阻害薬のトラメチニブの併用療法が承認されています。
ROAR試験で未分化がんに対する初めての有効な全身療法として認められた
第II相ROAR試験のうち未分化がんのコホートでは、ダブラフェニブとトラメチニブの併用により、奏効率(がんが縮小した割合)は56%に達しました。12か月時点の全生存率は51.7%と報告されており、歴史的にみて生存期間中央値が6か月未満とされてきた未分化がんの治療において大きな前進です。
この結果を受けて、2018年にアメリカ食品医薬品局(FDA)が世界に先駆けて承認しました。
ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法で報告された主な副作用
- 発熱(38%)、倦怠感(38%)、悪心(35%)
- 皮膚障害(発疹や乾燥肌など)
- ぶどう膜炎(目の炎症で視力に影響する場合がある)
BRAF変異がない未分化がんにはレンバチニブが提案される
BRAF V600E変異が確認されない未分化がんに対しては、レンバチニブが候補となります。ただし、レンバチニブの未分化がんに対する有効性は分化がんほど明確には示されておらず、エビデンスの確実性は限定的です。
遺伝子パネル検査で他のドライバー遺伝子異常(RET融合やNTRK融合など)が見つかれば、それぞれに対応した選択的キナーゼ阻害薬を試みる道も開かれています。
NTRK融合遺伝子陽性の甲状腺がんにはラロトレクチニブが選択肢となる
NTRK融合遺伝子は甲状腺がん全体の約2%に認められる稀な遺伝子異常ですが、見つかった場合にはTRK阻害薬のラロトレクチニブが高い効果を発揮します。臨床試験データでは79%の患者さんで腫瘍の縮小が確認されました。
がんの種類を問わず使える「臓器横断的」な承認を受けた薬であり、乳頭がんや未分化がんなど幅広い組織型で効果が報告されています。
分子標的薬の副作用と上手に付き合うためのポイント
分子標的薬は従来の抗がん剤とは異なる副作用が生じやすく、その管理が治療を長く続けるための鍵となります。副作用を理由に薬を中断してしまうと、がんが急速に増大するフレア現象を起こす場合もあるため、医療チームと連携した適切な対処が大切です。
高血圧は分子標的薬治療で最も多い副作用の一つ
VEGFRを阻害する薬(レンバチニブ、ソラフェニブなど)では、血管新生を抑える作用の影響で高血圧が高い頻度で出現します。レンバチニブの臨床試験では67.8%の患者さんに高血圧がみられました。
自宅で毎日血圧を測定し、基準値を超えた場合は速やかに担当医に報告しましょう。降圧薬で対処できるケースが多いものの、放置すると心臓や腎臓への負担が大きくなります。
下痢・食欲低下・体重減少には栄養管理が重要になる
下痢や食欲低下はほぼ全ての分子標的薬で報告されている副作用です。体重が著しく減少すると薬の血中濃度が相対的に上がり、さらに副作用が強まるという悪循環に陥りやすくなります。
少量ずつ回数を分けて食事をとる、消化のよい食品を選ぶといった工夫が必要です。管理栄養士のサポートを受けられる医療機関も増えていますので、積極的に相談してみてください。
手足症候群はソラフェニブで特に出現しやすい
手のひらや足の裏が赤くなり、痛みや水ぶくれを伴う手足症候群は、ソラフェニブではほぼ全例で発生するとされています。レンバチニブでも約32%の頻度で報告されていますが、ソラフェニブほど重症化しないケースが多いでしょう。
保湿クリームをこまめに塗る、圧迫を避ける靴を選ぶなど日常的なケアで症状を軽減できます。症状が強い場合は薬の減量や休薬で対応することもあります。
主な分子標的薬と頻度の高い副作用
| 薬剤名 | 代表的な副作用 | 注意点 |
|---|---|---|
| レンバチニブ | 高血圧、下痢、食欲低下 | 蛋白尿の定期検査が必要 |
| ソラフェニブ | 手足症候群、下痢、脱毛 | 皮膚ケアを治療開始前から行う |
| バンデタニブ | 下痢、発疹、QT延長 | 定期的な心電図検査が必要 |
| セルペルカチニブ | 口渇、便秘、肝機能障害 | 肝機能の定期モニタリング |
甲状腺がんの分子標的薬治療中に気をつけたい日常生活の注意点
分子標的薬による治療は、多くの場合、通院しながら自宅で内服を続ける形になります。入院が必要な従来の抗がん剤治療と比べて日常生活を維持しやすい反面、自己管理がこれまで以上に求められます。
内服スケジュールを守ることが治療効果に直結する
分子標的薬は毎日決まった時間に飲み続けることで効果を発揮します。飲み忘れや自己判断による休薬はがんの再増大につながるおそれがあるため、アラーム機能やお薬カレンダーを活用して習慣化する工夫をおすすめします。
日常生活で確認しておきたいチェックリスト
| 項目 | 頻度 | 目安 |
|---|---|---|
| 血圧測定 | 毎日 | 上140/下90mmHg以上で要連絡 |
| 体重測定 | 週2〜3回 | 1週間で2kg以上の変動に注意 |
| 尿の泡立ち確認 | 毎日 | 蛋白尿の早期発見に有用 |
| 手足の状態確認 | 毎日 | 赤み・痛み・水ぶくれの有無 |
休薬が必要になったときは自己判断で再開しない
副作用が強く出た場合、担当医の指示で一時的に薬を休むことがあります。休薬中にがんが急速に増大するフレア現象が報告されているため、自分の判断で飲んだりやめたりすることは避けましょう。
体調に変化があったときは些細なことでも主治医や看護師に伝えてください。早めの対処が治療の継続と生活の質の維持につながります。
かかりつけ薬局との連携で副作用を早期に察知する
分子標的薬は飲み合わせに注意が必要な薬が多く、市販の鎮痛剤やサプリメントでも思わぬ相互作用が起きる場合があります。かかりつけ薬局の薬剤師に治療中であることを伝え、服薬状況を一元管理してもらうと安心です。
地域の薬局でも分子標的薬の副作用管理に関する研修が進んでおり、日々の体調変化を相談できるパートナーとして活用する方が増えています。
よくある質問
甲状腺がんの分子標的薬治療はどのくらいの期間続けるのですか?
甲状腺がんの分子標的薬は、基本的にがんが進行しない限り、あるいは副作用が許容できる範囲である限り、継続して服用します。治療期間に明確な上限はなく、数か月から数年にわたって飲み続ける方もいらっしゃいます。
定期的な画像検査や血液検査で効果と副作用のバランスを確認しながら、担当医と相談のうえで治療の継続・変更を判断していきます。自己判断で中止するとがんが急激に増大するフレア現象のリスクがあるため、必ず医療チームの指示に従ってください。
甲状腺がんの分子標的薬を飲みながら仕事を続けることはできますか?
多くの患者さんが分子標的薬を服用しながら仕事を続けています。内服治療のため入院が不要な場合が多く、通院は数週間に1度の検査が中心です。
ただし、倦怠感や下痢といった副作用の程度には個人差があります。体調が優れないときは無理をせず、職場と相談して勤務時間を調整するなど、柔軟に対応できる環境を整えておくと安心でしょう。担当医から就労に関する診断書や意見書を出してもらうことも可能です。
甲状腺がんの分子標的薬で遺伝子検査を受けるにはどうすればよいですか?
遺伝子検査は、手術やバイオプシー(組織の採取)で得られたがん組織を用いて行います。担当医がコンパニオン診断検査やがん遺伝子パネル検査を依頼し、専門の検査機関で解析される流れです。
がんゲノム医療を行える指定病院は全国に広がっており、かかりつけ医からの紹介で受けることもできます。結果が出るまでに2〜4週間ほどかかる場合が多いため、治療方針を決めるタイミングに間に合うよう、早めに担当医に相談されることをおすすめします。
甲状腺がんの分子標的薬はすべての甲状腺がんに使えるわけではないのですか?
分子標的薬はすべての甲状腺がん患者さんに一律に使われるわけではありません。基本的には、手術や放射性ヨウ素内用療法では制御が難しい進行・再発例に限定して用いられます。
甲状腺がんの多くは手術で良好な経過をたどるため、分子標的薬の副作用と得られる効果のバランスを慎重に検討する必要があるためです。また、薬ごとに対象となるがんの種類や遺伝子変異の有無が異なるため、担当医とよく話し合って適応を確認することが大切です。
甲状腺がんの分子標的薬を服用中に他の薬やサプリメントを飲んでも大丈夫ですか?
分子標的薬は肝臓で代謝される薬が多く、他の薬剤やサプリメントとの相互作用が起きやすい傾向があります。市販の風邪薬や胃薬、健康食品であっても、分子標的薬の血中濃度に影響を与える場合があるため注意が必要です。
新たに薬やサプリメントを飲み始めたい場合は、必ず事前に担当医や薬剤師に相談してください。お薬手帳を常に携帯し、すべての医療機関や薬局で分子標的薬を服用中であることを伝えるようにしましょう。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医