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甲状腺がんの症状と検査|しこりの特徴・治療・生存率を解説

甲状腺がんは、首のしこりやのどの違和感をきっかけに見つかることが多いがんです。なかでも大半を占める乳頭がんは進行がとてもゆるやかで、適切な治療を受ければ生存率は高い傾向にあります。

ただし、髄様がんや未分化がんのように性質の異なるタイプもあり、種類やステージによって症状の出方も治療法も変わってきます。だからこそ、早めに正しい情報を知っておくことが安心につながります。

この記事では、しこりの特徴や検査の流れ、手術・放射性ヨウ素・分子標的薬といった治療の選択肢、手術をしない経過観察、そして気になる生存率まで、ひとつずつ丁寧に整理します。

甲状腺がんの症状は首のしこりとして気づくことが多い

甲状腺がんの多くは、首のしこりやのどの違和感がきっかけで見つかります。痛みのない小さなしこりとして現れ、初期は自覚症状に乏しいのが特徴です。

自覚しにくい初期サインと声のかすれ

甲状腺は、のど仏の下にある蝶のような形の臓器です。ここにできたがんは、ごく小さいうちはほとんど症状を出しません。

多くの場合、最初に気づくのは首のふくらみや、触れたときに感じるしこりです。健康診断の超音波検査で、症状がないまま偶然見つかる方も少なくありません。

進行すると、声のかすれが続いたり、のどの圧迫感が出たりすることがあります。こうしたサインは別の病気でも起こりますが、長引くときは耳鼻咽喉科や内分泌の専門医に相談すると安心でしょう。

声のかすれや気づきにくい初期サインの見分け方について詳しくまとめました
甲状腺がんの初期症状と見落としやすいサイン

痛みや違和感が出てきたら注意が必要?

しこりが大きくなって周囲の組織を圧迫すると、飲み込みにくさや息苦しさ、のどの違和感が現れることがあります。

とはいえ、しこりのほとんどは良性であり、しこりがすぐにがんを意味するわけではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず早めに受診することが大切といえます。

受診の目安になりやすいサイン

  • 数週間以上消えない首のしこり
  • 長引く声のかすれ
  • 飲み込みにくさやのどの圧迫感
  • 首のリンパ節の腫れ

これらが当てはまるからといって、必ずがんとは限りません。判断材料のひとつとして、受診のきっかけにしてみてください。

甲状腺のしこりが良性か悪性かを調べる検査の流れ

首のしこりが見つかっても、その大半は良性です。悪性かどうかは、超音波検査と細胞診を組み合わせて確かめていきます。

検査調べること体への負担
超音波検査しこりの大きさ・形・内部の状態痛みなし
穿刺吸引細胞診細胞が良性か悪性か細い針のみ
CT・MRI周囲やリンパ節への広がり造影剤を使うことも
血液検査甲状腺ホルモンや腫瘍マーカー採血のみ

超音波検査と細胞診でわかること

最初に行うのは、首にあてるだけで痛みのない超音波(エコー)検査です。しこりの大きさや形、内部の様子から、悪性が疑わしいかどうかを見ていきます。

疑わしいときは、細い針を刺して細胞を採る穿刺吸引細胞診を行います。採れた細胞を顕微鏡で調べ、良性・悪性・判定保留といった段階に分けて評価します。

細胞診の結果は世界共通の基準で分類され、過不足のない診断につながります。判定が難しいときには、遺伝子を調べる検査を追加することもあります。

血液検査と画像検査でわかること

血液検査では、甲状腺ホルモンの状態や、髄様がんで上がるカルシトニンなどの値を調べます。

CTやMRIといった画像検査は、がんが周囲やリンパ節へどれくらい広がっているかを把握するのに役立ちます。これらを合わせて、治療方針を決めていきます。

良性と悪性をどう見分けるのか、検査での判断基準をチェック
しこりの良性・悪性を調べる検査のポイント

甲状腺がんには4つの種類があり性質が大きく違う

甲状腺がんは大きく4つのタイプに分かれ、その性質はさまざまです。全体の9割ほどはおとなしい乳頭がんで、一部に進行の速いタイプが含まれます。

大半を占める乳頭がんと濾胞がん

乳頭がんは甲状腺がんの約9割を占め、進行が非常にゆっくりです。首のリンパ節へ転移しやすい一方で、適切に手術すれば予後は良好な場合が多いといえます。

濾胞がんは全体の5%ほどで、リンパ節よりも肺や骨へ血流に乗って転移する傾向があります。どちらも甲状腺ホルモンを作る細胞から生まれる「分化がん」に含まれます。

タイプごとに異なる生存率の傾向を詳しく見る
甲状腺がんの種類別にみる生存率の違い

注意が必要な髄様がんと未分化がんとは?

髄様がんは、カルシトニンを出すC細胞から発生します。一部は遺伝が関わるため、血縁者の検査が勧められることもあります。

未分化がんは数としてはまれですが、進行がとても速いタイプです。高齢の方に多く、見つかった時点で早急な対応が必要になります。

遺伝する髄様がんと血縁者の遺伝子検査を知りたい方へ
遺伝性の髄様がんと遺伝子検査の進め方

甲状腺がんのおもな種類と特徴

種類割合の目安特徴
乳頭がん約90%進行がゆるやかで予後良好
濾胞がん約5%肺や骨へ転移することがある
髄様がん1〜2%遺伝が関わる場合がある
未分化がん1〜2%進行が速く治療が難しい

それぞれ悪性度や治療法、予後が異なるため、正確なタイプの診断が治療の出発点になります。

甲状腺がんの治療は手術と経過観察が中心になる

甲状腺がんの治療は、手術で取り除くのが基本です。ただし小さく低リスクのがんでは、すぐ手術せず経過を見守る方法も選べます。

甲状腺を切除する手術と術後の生活

手術では、がんの広がりに応じて甲状腺の片側だけを取る方法と、全体を取る方法があります。リンパ節への転移があれば、あわせて切除します。

おもな手術の種類

  • 片側の切除(葉切除)
  • 甲状腺全摘
  • リンパ節郭清

全摘した場合は甲状腺ホルモンが作れなくなるため、飲み薬で補います。声を動かす神経の近くを操作するので、一時的に声がかすれることもありますが、多くは回復していきます。

手術の種類と術後の回復までの流れの解説を読む
甲状腺がんの手術方法と回復の経過

手術をしない経過観察の進め方

ごく小さく転移のない低リスクの乳頭がんでは、すぐ手術せずに定期的な超音波で見守る経過観察が選べます。日本から提唱され、国内外のガイドラインにも採り入れられた方法です。

半年から1年ごとに大きさや転移の有無を確認し、進行のサインがあれば手術へ切り替えます。手術に伴う負担を避けられる点が利点といえるでしょう。

経過観察が向いている人と注意点について詳しくまとめました
手術しない経過観察の基準と利点

甲状腺がんの手術以外の治療には放射線と薬がある

手術だけで治療が終わらないこともあります。再発のリスクや進行の程度に応じて、放射性ヨウ素や薬による治療を組み合わせます。

治療法おもな対象ねらい
放射性ヨウ素内用療法全摘後の分化がん残ったがんや微小転移の除去
外照射放射線局所の進行・骨転移症状の緩和と進行の制御
分子標的薬ヨウ素が効かない進行がん進行を抑える

放射性ヨウ素を使う治療と外からの放射線

全摘後に行う放射性ヨウ素内用療法は、ヨウ素を取り込む甲状腺の性質を利用し、残ったがん細胞をねらい撃ちにします。飲み薬やカプセルで体に取り込む治療です。

ヨウ素が効きにくいがんや、骨などへの転移には、体の外から照射する外照射放射線を使うこともあります。症状をやわらげる目的で選ばれる場面もあります。

放射性ヨウ素治療の効果と治療後の過ごし方をチェック
放射性ヨウ素内用療法でわかること

体の外から行う放射線治療の対象と進め方の情報を詳しく見る
外照射による放射線治療の使いどころ

進行したがんに使う分子標的薬

ヨウ素が効かなくなった進行がんには、がんの増殖や血管づくりに関わる分子をねらう分子標的薬が使われます。

レンバチニブやソラフェニブといった薬は、進行を抑える効果が臨床試験で示されています。手足の皮膚症状や高血圧などの副作用があるため、医師と相談しながら使っていきます。

甲状腺がんの生存率は高く予後が良いことが多い

がんと聞くと不安になりますが、甲状腺がんの多くは予後が良いことで知られています。とくに乳頭がんの5年生存率は90%以上にのぼります。

種類とステージで変わる5年生存率

生存率は、がんのタイプとステージ(進行度)によって大きく変わります。おとなしい乳頭がんや濾胞がんは良好で、未分化がんは厳しい傾向です。

タイプ別の5年生存率の目安

種類5年生存率の目安進行の特徴
乳頭がん95%以上ゆるやか
濾胞がん90%前後比較的ゆるやか
髄様がん進行度により幅がある中程度
未分化がん大きく下がる速い

これらの数値はあくまで目安で、年齢や転移の有無によっても変わってきます。同じタイプでも、早く見つかるほど見通しは良くなります。

乳頭がんの予後と長期の生存率を知りたい方へ
乳頭がんの予後と生存率の見通し

治療後はどんな通院が続くの?

治療が終わったあとも、再発がないかを確認する定期的な通院が続きます。血液中の腫瘍マーカーや超音波で経過を追っていきます。

甲状腺がんはゆっくり進むタイプが多く、長く付き合っていく前提で考えることになります。心配なことは、遠慮なく主治医に伝えるとよいでしょう。

よくある質問

甲状腺がんのしこりは痛みますか?

甲状腺がんのしこりは、痛みを伴わないことがほとんどです。多くは硬く、押しても痛みのない無痛性のしこりとして現れます。

痛みがないからと安心はできず、むしろ痛みのないしこりこそ注意が必要です。数週間以上消えないしこりに気づいたら、受診をおすすめします。

甲状腺がんは遺伝しますか?

大半を占める乳頭がんや濾胞がんは、基本的に遺伝とは関係なく起こります。多くは体質や環境の影響で発生すると考えられています。

一方で、髄様がんの一部には遺伝が関わるタイプがあります。血縁者に髄様がんの方がいる場合は、遺伝子検査が勧められることもあります。

甲状腺がんの手術後は声に影響が出ますか?

甲状腺の近くには声を動かす神経が通っているため、手術後に一時的に声がかすれることがあります。多くは時間とともに回復します。

経験豊富な専門医のもとでは、永続的な影響が残る割合はわずかです。心配な点は、手術の前に確認しておくと安心でしょう。

甲状腺がんが見つかったらすぐ手術が必要ですか?

甲状腺がんは、必ずしもすぐ手術が必要とは限りません。転移のない小さな低リスクの乳頭がんでは、手術せずに経過を見守る方法も選べます。

ただし進行のサインがある場合や、進行の速いタイプでは早めの治療がすすめられます。タイプや広がりをふまえ、主治医と相談して決めていきます。

甲状腺がんの検査では何をしますか?

まず首にあてる超音波検査でしこりの様子を調べ、疑わしいときは細い針で細胞を採る細胞診を行います。痛みの少ない検査が中心です。

必要に応じて血液検査やCT・MRIを追加し、広がりを確認します。これらを合わせて、がんかどうかと進行度を判断していきます。

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この記事を書いた人Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。

【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医