ALK融合遺伝子とは?陽性肺がんに対する最新の治療薬とコンパニオン診断

ALK融合遺伝子とは?陽性肺がんに対する最新の治療薬とコンパニオン診断

ALK融合遺伝子は、非小細胞肺がん(NSCLC)の約3〜5%に見つかる遺伝子異常で、発見から15年余りの間に肺がん治療の概念を根本から変えました。染色体内の微小な逆位によって生じたこの異常遺伝子は、細胞増殖を止める仕組みを失わせ、がんを支え続けます。

適切なコンパニオン診断でALK陽性が確認できれば、標的治療薬によって高い奏効率が期待できます。この記事では、ALK融合遺伝子が肺がんを起こす仕組みから、FISH・IHC・NGSによる診断手法、クリゾチニブ・アレクチニブ・ロルラチニブの各薬剤の特徴、そして耐性後の治療戦略まで、医学的根拠に基づいて丁寧にお伝えします。

ALK融合遺伝子が肺がんを引き起こす仕組みと「陽性」の持つ意味

ALK融合遺伝子とは、染色体2番短腕(2p)の微小な逆位によって生じる異常な遺伝子です。正常な細胞では調節を受けているALK(未分化リンパ腫キナーゼ)という酵素が、融合遺伝子の形成によって制御を失い、がん細胞の際限のない増殖を促します。なぜこの遺伝子が見つかったのか、そしてどんな意味を持つのかを順を追って見ていきましょう。

EML4-ALK融合遺伝子が発見されるまでの科学的経緯

2007年、自治医科大学の間野博行教授らのグループが、非小細胞肺がん患者の腫瘍組織から世界で初めてEML4-ALK融合遺伝子を発見しました。それまでの肺がん治療は細胞傷害性抗がん剤が中心でしたが、この発見が「ALKシグナルだけを頼りに増殖し続けるがん細胞が存在する」という事実を初めて示し、標的治療薬の開発へ道を開きました。

発見当初、ALK遺伝子の再配列は全体のごく一部にしか見られませんでしたが、検出技術の向上とともに世界中でデータが蓄積され、特定の患者像との関連が明らかになっていきました。この基盤の上に、コンパニオン診断と標的治療という現代の治療体系が築かれています。

染色体2番短腕の逆位が生み出す異常タンパク質の働き

ALK遺伝子とEML4遺伝子は、どちらも染色体2番短腕(2p)上に位置しています。通常は反対方向を向いているこの2つの遺伝子が、染色体内の小規模な逆位によって互いの一部を取り込み、融合遺伝子を形成します。その結果、EML4タンパク質のN末端部分とALKタンパク質のキナーゼドメインがつながった異常タンパク質が産生されます。

このタンパク質は細胞外からの刺激がなくても自己リン酸化し、常時活性化した状態でがん細胞の増殖・生存シグナルを発し続けます。薬で「スイッチを切る」ことができれば増殖が止まる、というのがALK阻害薬の発想の原点です。

ALK融合遺伝子の基本データ

項目内容補足
ALK遺伝子の通常の役割神経発達に関わる受容体型チロシンキナーゼ成人の正常組織ではほぼ発現しない
主な融合パートナーEML4(最も多い)、その他20種以上バリアントによって予後が異なる可能性
融合の仕組み染色体2p内の小規模な逆位転座ではなく逆位がほとんど
頻度(NSCLC全体)約3〜5%日本人も欧米人も同程度

全非小細胞肺がんの3〜5%を占めるALK陽性の頻度と日本の状況

世界全体のNSCLC患者のうち、ALK融合遺伝子陽性と診断されるのは約3〜5%です。日本では年間約10万人が肺がんと診断されており、非小細胞肺がんが全体の約80%を占めることを考えると、ALK陽性患者は毎年数千人規模で新たに見つかっています。

EGFRやKRASといった他のドライバー変異と比べると頻度は低いですが、該当する患者には高い治療効果が期待できるため、正確なコンパニオン診断の意義は非常に大きいといえます。

ALK陽性肺がんが若い非喫煙者に多い理由と患者像の実際

ALK陽性肺がんには、通常の肺がんとは異なる患者像が浮かび上がっています。喫煙歴の有無や年齢層、腫瘍の組織型など、複数の臨床的特徴が蓄積したデータで示されており、診断の際の重要な手がかりとなっています。

若年者・非喫煙者・女性に偏在するという疫学データ

複数の臨床試験データを分析すると、ALK陽性肺がん患者には非喫煙者・軽喫煙者が多く、年齢も50歳前後と比較的若い傾向が確認されています。性別では女性がわずかに多いという報告もあります。一方、ALK陰性の典型的な肺がんは高齢の男性喫煙者に多く見られます。

ALK融合遺伝子の形成は、喫煙による遺伝子変異とは異なる経路で起きると考えられており、喫煙量が少ないほど検出率が高くなるという傾向も知られています。若くして肺がんと診断された非喫煙者では、このALK検査を積極的に行うことが重要です。

腺がんが圧倒的多数を占める組織型の特徴

ALK陽性肺がんの組織型は、ほぼすべてが腺がん(adenocarcinoma)です。非小細胞肺がんには扁平上皮がんや大細胞がんなどの型もありますが、ALK融合遺伝子はこれらの組織型ではほとんど見られません。腺がんの中でも腺房型や乳頭型の組織像を示すことが多く、病理医はこうした組織像をもとにALK検査の必要性を判断することがあります。

EGFRやKRASとは排他的な「ドライバー変異」としての性格

ALK融合遺伝子は、EGFR変異やKRAS変異とほぼ同時には見られません。1つのがん細胞が増殖するための「司令塔」(ドライバー変異)は通常1種類であり、ALKが担う場合は他の変異に依存しないためです。

そのため、EGFR変異検査が陰性だったNSCLC患者でALK検査を続けて行うことや、次世代シーケンシングで複数遺伝子を同時に調べることが現在の診断現場では重要です。

主要なドライバー変異の頻度と患者像の比較

遺伝子変異頻度(NSCLC中)多い患者像
EGFR変異約30〜40%(日本人)非喫煙女性・中高年
ALK融合遺伝子約3〜5%若い非喫煙者
KRAS変異約10〜15%喫煙歴のある患者
ROS1再配列約1〜2%若い非喫煙者

コンパニオン診断で使うFISH・IHC・NGS、それぞれの特徴と使い分け

ALK陽性を正確に見極めるには、コンパニオン診断(体外診断)の適切な選択が重要です。FISH法・IHC法・NGS法の3つが主な検査手法で、感度・特異度・所要時間・コストの面でそれぞれ特性が異なります。

参照標準として長らく使われてきたFISH法の精度と課題

蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)は、ALK遺伝子の再配列を直接検出する手法です。切断点の両端をそれぞれ異なる色の蛍光プローブで標識し、蛍光顕微鏡で再配列の有無を確認します。FDA承認のVysis ALKブレークアパートFISHプローブキットは、クリゾチニブのコンパニオン診断として使われてきた参照標準として位置づけられており、長年にわたってALK診断の基準点でした。

ただし蛍光顕微鏡と専門的な判定スキルを要するため、実施できる施設が限られます。検査時間もIHC法に比べて長く、結果が出るまでに時間がかかることも課題です。

VentanaALK(D5F3)CDxアッセイが変えたIHC法の評価

免疫組織化学法(IHC法)は、ALKタンパク質に対する抗体を使って組織を染色し、光学顕微鏡で陽性・陰性を判定します。自動化が進んでおり、通常の病理検査室で対応できる点が大きな利点です。

VentanaALK(D5F3)CDxアッセイは2015年にFDAに承認されたIHC法による唯一のコンパニオン診断薬で、FISH法との一致率が高く(感度約86〜93%、特異度約96%)、陽性・陰性の二値判定で読み手間の再現性も98%以上と報告されています。

3つのALK検査手法の特性比較

検査手法主な特長注意点
FISH法参照標準・高い特異度蛍光顕微鏡が必要・検査時間が長い
IHC法(D5F3 CDx)自動化・迅速・汎用性高い希少バリアントを見逃す可能性あり
NGS法網羅的・融合バリアント全検出コスト高・解析時間がやや長い

NGSが見つけ出す希少な融合バリアントの診断的意義

次世代シーケンシング(NGS)は、数十から数百の遺伝子を一度に解析できる網羅的な検査です。EML4との融合以外にも20種類以上の希少な融合パートナーが存在することが明らかになっており、NGSはそれらを含めて検出できます。FISH法やIHC法で判定が難しい症例や、複数のドライバー変異を同時に調べたい場合に特に有用です。

液体生検(血液中の腫瘍由来DNA)への応用も進んでおり、治療後の耐性変異のモニタリングにも活用されています。現在多くの施設では、IHCによるスクリーニングとNGSによる確認・補完を組み合わせたアルゴリズムが採用されています。

第1世代薬クリゾチニブが証明した標的治療の可能性と乗り越えられなかった壁

クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)は、ALK陽性非小細胞肺がんの治療を初めて可能にした標的治療薬です。2010年に公表されたKwak et al.の臨床試験データは、それまでの肺がん治療の常識を大きく塗り替えました。一方で、同薬が克服できなかった課題が第2世代薬の開発を強く後押しすることになりました。

Kwak試験が証明したALK阻害の奏効率57%が意味すること

Kwak et al.の第I相臨床試験(2010年、N Engl J Med)では、ALK陽性のNSCLC患者82例にクリゾチニブを投与した結果、奏効率(ORR)57%という当時の肺がん治療では例を見ない成績が示されました。細胞傷害性抗がん剤の奏効率が通常10〜20%程度だったことと比べると、この数字の意義は計り知れず、「ALKを標的とする」という戦略の正しさを臨床的に初めて証明した歴史的なデータです。

細胞傷害性抗がん剤との比較で浮かび上がった優位性

その後の第III相試験では、クリゾチニブと標準化学療法(プラチナ製剤ベースの2剤併用)を直接比較した結果、無増悪生存期間・奏効率ともにクリゾチニブが有意に優れていました。患者の生活の質(QOL)の面でもクリゾチニブが有利であることが示され、ALK陽性非小細胞肺がんに対する最初の標準的な第一選択薬として確立されました。

脳転移とクリゾチニブの中枢神経移行性の問題

クリゾチニブの最大の課題は中枢神経系(CNS)への移行性の低さです。血液脳関門を通り抜ける薬物量が少ないため、脳や髄膜への転移を制御しにくいという弱点があります。臨床試験でも、クリゾチニブ治療中の患者の約20〜30%で脳転移が初再発の部位となることが報告されました。さらに、治療開始から約1年以内に多くの患者で耐性が生じることも問題です。これらの課題が第2世代ALK阻害薬の開発を強力に後押ししました。

クリゾチニブで注意すべき主な副作用

  • 視覚障害(フラッシュ様視覚効果・一時的な視力の変化)
  • 悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状(食事と一緒に服用すると軽減することが多い)
  • 浮腫(特に顔面・下肢に出やすく、重篤になることは少ない)
  • 肝機能障害(トランスアミナーゼ上昇、定期的な血液検査でモニタリング)

アレクチニブが肺がん治療の標準を塗り替えた3つの根拠

アレクチニブ(商品名:アレセンサ)は、クリゾチニブの弱点を克服するために設計された第2世代ALK阻害薬です。脳血液関門を越えて中枢神経系に十分量が移行することが確認されており、脳転移への高い効果と全身病変への優れたコントロールが大きな特徴です。現在、ALK陽性非小細胞肺がんにおける主要な第一選択薬として世界的に使われています。

J-ALEXとALEX試験が立証したクリゾチニブへの明確な優位性

日本で行われたJ-ALEX試験(Hida et al. Lancet 2017)では、アレクチニブはクリゾチニブと比較して無増悪生存期間を有意に延長し(ハザード比0.34)、日本での標準治療の地位を確立しました。グローバルな第III相試験であるALEX試験(Peters et al. N Engl J Med 2017)でもハザード比0.47という一貫した結果が示され、クリゾチニブに対するアレクチニブの優位性が複数の独立した試験で証明されています。

脳血液関門を越えるアレクチニブの薬理学的特性

アレクチニブが中枢神経系に移行しやすい理由は、Pグリコタンパク質(P-gp)の基質となりにくい分子構造にあります。P-gpは血液脳関門で薬物を排出する役割を果たしていますが、アレクチニブはこの排出を受けにくいため、脳組織内に高い濃度で到達できます。

ALEX試験では、アレクチニブ群で中枢神経系への最初の再発が12%にとどまった一方、クリゾチニブ群では45%が中枢神経系再発を経験しており、この差は治療戦略の立て方を大きく変えました。

アレクチニブの主要臨床試験の成績比較

試験名比較設定ハザード比(PFS)
J-ALEX(日本)アレクチニブ vs クリゾチニブ(一次治療)0.34(圧倒的優位)
ALEX(グローバル)アレクチニブ vs クリゾチニブ(一次治療)0.47(有意な延長)
ALINA(グローバル)術後補助アレクチニブ vs 化学療法0.24(2年DFS 93.8% vs 63.0%)

根治術後の術後補助療法でも有効と証明されたALINA試験の衝撃

2024年に発表されたALINA試験(Wu et al. N Engl J Med 2024)は、根治切除後のステージIB〜IIIA ALK陽性NSCLCに対して術後補助療法としてアレクチニブとプラチナ製剤化学療法を比較した第III相試験です。2年無病生存率はアレクチニブ群93.8%に対し化学療法群63.0%で、ハザード比0.24という大きな差が示されました。

この結果を受けてFDAは2024年4月にアレクチニブの術後補助療法への適応を承認し、手術後の早期段階からALK阻害薬を開始する新たな治療体系が確立されました。早期のALK陽性肺がんにとって、手術後の再発を防ぐ武器が初めて加わったことになります。

第3世代ALK阻害薬ロルラチニブが持つ2つの強みと注意すべき副作用

ロルラチニブ(商品名:ローブレナ)は第3世代のALK阻害薬で、第1・第2世代薬への耐性後も効果を発揮する広いスペクトラムを持ちます。2020年のCROWN試験の結果が発表されて以降、一次治療での使用も標準的な選択肢のひとつに加わっています。

CROWN試験が示した一次治療での際立った無増悪生存率

Shaw et al.によるCROWN試験(N Engl J Med 2020)では、治療歴のないALK陽性進行NSCLCに対してロルラチニブとクリゾチニブを比較しました。主要評価項目の無増悪生存期間において、ロルラチニブ群はハザード比0.28という大きな差でクリゾチニブを上回り、進行・死亡リスクを72%低下させました。

5年時点の無増悪生存率はロルラチニブ群60%に対してクリゾチニブ群8%と大きく異なっており、特に脳転移のコントロールにも優れた成績を示しています。

既知のすべての耐性変異をカバーするロルラチニブの幅広い活性

第2世代薬に対して最も克服が難しい耐性変異としてG1202Rが知られていますが、ロルラチニブはこの変異にも活性を持ちます。

さらに、第2世代薬への耐性時に出現する複合変異(2か所以上の変異が同時に存在する状態)にも対応できるため、第2世代薬治療後の選択肢として国際的なガイドラインでも推奨されています。ALKキナーゼドメイン内のほぼすべての既知の変異を網羅できる点が、他の世代の薬にはないロルラチニブの強みです。

高脂血症・認知機能変化など見逃せないロルラチニブ特有の副作用

ロルラチニブ特有の副作用として注意が必要なのが高脂血症で、治療中に80%以上の患者で脂質値の上昇が見られます。多くはスタチン系薬剤などで管理できますが、定期的な血液検査でモニタリングすることが大切です。

また、記憶力の変化・集中力の低下・気分の変動といった認知機能・神経系への影響も報告されており、日常生活への影響を観察しながら必要に応じて用量調整を行います。

ロルラチニブで特に注意すべき副作用

  • 高脂血症(80%以上に見られ、スタチン系薬剤による管理が必要になることが多い)
  • 認知機能の変化(記憶・集中力・気分への影響、定期的な評価が必要)
  • 末梢性浮腫(顔面・四肢に出やすく、弾性ストッキングや利尿薬で対応)
  • 体重増加・末梢神経障害(用量調整を検討することがある)

ALK阻害薬への耐性が生じたとき、次の治療をどう選ぶか

ALK阻害薬による治療は高い奏効率が期待できる一方、多くの患者で薬剤耐性が生じます。Gainor et al.が2016年のCancer Discovery誌で報告したように、耐性の分子的な背景を理解することが、次の治療を適切に選択するための第一歩となります。

ALKキナーゼドメイン変異の種類と薬剤感受性の違い

ALK阻害薬への耐性の約30〜50%は、ALKキナーゼドメイン内の変異によって引き起こされます。L1196M(ゲートキーパー変異)はクリゾチニブ耐性として知られ、第2世代薬の多くで克服可能です。一方、G1202R変異は第2世代薬の多くに対しても耐性を示し、ロルラチニブが有効とされています。

複合変異(2か所以上の変異が同時に存在する状態)は第2世代薬治療後に出現することがあり、治療の選択がより難しくなります。

主な耐性変異と薬剤感受性の目安

耐性変異第2世代薬での対応ロルラチニブでの対応
L1196M多くで克服可能有効
G1202R困難(最も難治)有効
F1174C/L一部で克服可能有効
複合変異対応困難なことが多い有効なことが多い

バイパス経路の活性化による「薬剤標的外」の耐性シナリオ

ALKキナーゼドメイン変異以外の耐性として、ALK経路を迂回するバイパス経路の活性化があります。代表的なものにMETアンプリフィケーション、EGFR経路の活性化、KRAS変異の獲得などがあります。これらはALK阻害薬を継続しても効果が得られにくく、別のアプローチが必要となります。ALK融合遺伝子自体が消失してしまう場合もあり、こうした多様な背景が治療を複雑にしています。

耐性後の再生検とNGS解析が治療選択の鍵を握る理由

耐性後に最も重要な取り組みは、再生検による耐性の原因解明です。腫瘍組織の再生検が難しい場合には、血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)を使った液体生検が有用な代替手段となります。NGSによる網羅的解析を行うことで、ALKドメイン変異の有無とその種類、バイパス経路の活性化を同時に評価でき、次の治療薬の選択に直接役立てられます。

耐性が生じた時点での再生検は、現在の診療ガイドラインでも推奨されており、担当医との緊密な連携のもとで薬剤変更の判断を行うことが求められます。

よくある質問

ALK融合遺伝子陽性の肺がんは、どのような患者に多く見られますか?

ALK融合遺伝子陽性の肺がんは、50歳前後の比較的若い患者、喫煙歴のない方または軽喫煙者、女性の割合がやや高い傾向が確認されています。組織型はほぼすべてが腺がんで、EGFR変異やKRAS変異とは同時に見られることがほとんどありません。

日本人を含むアジア人でも欧米人とほぼ同程度の頻度(非小細胞肺がん全体の約3〜5%)で見られます。若くして肺がんと診断された非喫煙者では、ALK検査を積極的に検討することが大切です。

ALK陽性肺がんのコンパニオン診断は、どの検査方法から始めるのが一般的ですか?

多くの施設では、まず免疫組織化学法(IHC法)によるスクリーニングが行われます。VentanaALK(D5F3)CDxアッセイは自動化されており、迅速に結果が得られます。IHC法で陽性または判定が難しい場合は、蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)や次世代シーケンシング(NGS)による確認検査が追加されます。

最近ではNGSによる多遺伝子パネル検査を最初から実施し、ALKを含む複数のドライバー変異を一度に調べるアプローチも広まっています。どの検査を採用するかは、施設の体制や採取できた腫瘍組織の量によっても異なります。

アレクチニブとロルラチニブは、どのような順番で使われますか?

現在の標準的な治療では、アレクチニブを第一選択として使うことが多く、その後に耐性が生じた場合の選択肢のひとつとしてロルラチニブが位置づけられます。一方、特定の状況や患者の背景によっては、ロルラチニブを最初から使うことも選択肢となり得ます。

実際の治療順序は、腫瘍の状態・脳転移の有無・コンパニオン診断の結果・患者の全身状態などを総合的に踏まえ、担当医と十分に話し合った上で決定されます。治療方針に疑問や不安を感じた際は、セカンドオピニオンを利用することも一つの選択です。

クリゾチニブに耐性が生じた場合、ALK融合遺伝子陽性肺がんの治療はどう変わりますか?

クリゾチニブへの耐性が確認された場合、次のステップとして第2世代ALK阻害薬(アレクチニブ・ブリガチニブ・セリチニブなど)への切り替えが検討されます。耐性変異の種類によって有効な薬が異なるため、可能であれば再生検を行い、次世代シーケンシングで耐性の原因を確認することが、より適切な治療選択につながります。

バイパス経路の活性化が耐性の原因となっている場合は、ALK阻害薬の切り替えだけでは対処が難しく、別の治療戦略が必要となることもあります。担当医と再発・耐性後の治療計画について早めに相談することをお勧めします。

ALK融合遺伝子の検査結果が陰性だった場合、他にどのような遺伝子異常を調べるべきですか?

ALK融合遺伝子が陰性だった場合、非小細胞肺がんには他にも複数のドライバー変異が知られており、EGFR変異・KRAS変異・ROS1再配列・RET融合遺伝子・MET変異などの検査が検討されます。特に腺がんの場合は、次世代シーケンシング(NGS)を用いた多遺伝子パネル検査によって、複数の遺伝子を一度に調べることも可能です。

どの検査をどの順番で行うかは、腫瘍の組織型・採取できた組織量・施設の体制によっても異なります。担当医に遺伝子検査の計画について積極的に確認・相談してみることをお勧めします。

References

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医