
「どの治療薬が自分に合っているのか」——がんと診断されたとき、多くの方が感じる疑問です。コンパニオン診断薬とは、特定の治療薬を使う前に「この薬が効くかどうか」を予測するための体外診断薬(検査キット)のことです。
肺がんのEGFR変異検査や乳がんのHER2検査、卵巣がんのBRCA変異検査など、がん種ごとに対応する薬剤と検査キットが定められています。本記事では、コンパニオン診断薬の一覧をがん種別に網羅し、それぞれの検査の仕組みと受け方をわかりやすく解説します。
がん治療で「コンパニオン診断薬」が必要な理由とその仕組み
コンパニオン診断薬は、対応する治療薬と「セットで使われる」体外診断薬です。薬が効く患者さんを事前に選び出すことで、無効な投与による副作用リスクを避け、より確実な治療を実現します。現在、国内外で50品目以上が承認されており、がん治療の要となっています。
治療薬と「同時承認」される鍵と錠前の関係
コンパニオン診断薬は、対応する治療薬と同時または連動して承認されるのが基本です。HER2を標的にした乳がん治療薬(トラスツズマブ)は、HER2検査キット(HercepTestなど)がなければ正しく使えません。この「薬と検査」の一体承認モデルは、1998年のトラスツズマブ・HercepTest同時承認を機に世界に広がりました。
治療薬が鍵だとすれば、コンパニオン診断薬は錠前にあたります。鍵と錠前が合わない患者さんに治療薬を投与しても、効果が得られないだけでなく副作用のリスクだけが生じます。患者さんに合った治療を届けるためのフィルターとして、コンパニオン診断薬は重要な役割を担っています。
コンパニオン診断薬なしでは治療薬を使えない根拠
多くの分子標的薬は、「特定の遺伝子変異や過剰発現がある患者さんにのみ効果を発揮する」という特性を持っています。EGFR変異がない肺がん患者さんにEGFR阻害薬を投与しても、ほとんど治療効果は得られません。コンパニオン診断薬による事前検査は、治療の有効性と安全性を担保するために法的にも必要とされています。
日本では薬機法に基づき、特定の治療薬はコンパニオン診断薬での検査を必須としています。主治医が治療薬を処方する前に検査を行うのは、医療上定められた手順です。検査なしに当該治療薬を投与することは認められていません。
コンパニオン診断薬の基本情報
| 項目 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 体外診断用医薬品(コンパニオン診断薬) | 英: Companion Diagnostics(CDx) |
| 主な目的 | 特定の治療薬の効果を事前に予測する | 患者の遺伝子・タンパク質情報を解析 |
| 承認形態 | 治療薬と同時またはセットで承認 | 日本・米国FDA・欧州EMAで規制対象 |
| 主な検体 | 腫瘍組織・血液(液体生検) | 検体の種類は薬剤・がん種によって異なる |
コンパニオン診断薬が広がった背景
がん治療は2000年代以降、「がんの臓器・種類」ではなく「がん細胞の遺伝子変異」に注目する方向に大きく変わりました。同じ肺がんでも、EGFR変異型・ALK融合型・免疫チェックポイント阻害薬が有効な型など、遺伝子プロファイルによって治療法が細かく分類されるようになったのです。
精密医療(プレシジョン・メディシン)の発展に伴い、正確な患者選択ツールとしてコンパニオン診断薬の存在感が高まりました。現在、国内外で承認済みのコンパニオン診断薬は50品目を超えており、今後もその数はさらに増えると見込まれています。
肺がんのコンパニオン診断薬一覧|EGFR・ALKほか遺伝子別の薬剤と検査キット
肺がん(非小細胞肺がん)は、コンパニオン診断薬が最も広く使われているがん種です。EGFR・ALK・ROS1・MET・RET・KRASなど多くの遺伝子が治療標的となっており、それぞれに対応した検査キットが承認されています。
EGFR変異を調べる検査キットと対応するEGFR阻害薬
EGFR(上皮成長因子受容体)変異は、日本人の肺腺がん患者の約40〜50%に見られます。この変異がある場合、ゲフィチニブ(イレッサ)・エルロチニブ(タルセバ)・オシメルチニブ(タグリッソ)などのEGFR-TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)が高い治療効果を発揮します。
対応するコンパニオン診断薬としては、「コバスEGFR変異検出キット」「テラスクリーンEGFR変異検出キット v2」などが承認されています。検体は腫瘍組織のほか、血液を用いたリキッドバイオプシー(液体生検)に対応したキットも普及しており、再生検が難しい症例で特に役立っています。
ALK・ROS1・MET・RETなど複数の遺伝子を確認する検査
ALK融合遺伝子を持つ患者さんには、クリゾチニブ(ザーコリ)・アレクチニブ(アレセンサ)・ロルラチニブ(ローブレナ)などのALK阻害薬が使われます。対応する検査キットには免疫組織化学(IHC)法を用いたものと蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を用いたものがあり、複数のALKコンパニオン診断薬が承認されています。
近年はNGS(次世代シーケンス)による多遺伝子パネル検査も肺がんのコンパニオン診断薬として承認されました。FoundationOne CDxは、EGFR・ALK・ROS1・METex14スキッピング変異・RET・BRAFなど300以上の遺伝子を一度に調べられます。少量の検体で複数の標的を確認できるため、腫瘍量が少ない症例や組織採取が困難なケースで活躍しています。
肺がんのコンパニオン診断薬を受けるタイミング
肺がんと診断された後、治療方針を決める前の段階でコンパニオン診断薬による検査を行うのが標準的な流れです。手術や気管支鏡・針生検で採取した腫瘍組織、あるいは採血した血液を用いて検査します。
がんが進行して再生検が難しい場合や、転移巣の採取が困難な場合には、血液のみで検査できるリキッドバイオプシー型の診断薬が特に役立ちます。
肺がんの主なコンパニオン診断薬と対応する治療薬
| 標的遺伝子 | 対応する治療薬(例) | 検査キット(例) |
|---|---|---|
| EGFR変異 | オシメルチニブ・ゲフィチニブ・エルロチニブ | コバスEGFR変異検出キット、テラスクリーンEGFR v2 |
| ALK融合遺伝子 | アレクチニブ・クリゾチニブ・ロルラチニブ | ALK IHCキット(IHC法・FISH法) |
| ROS1融合遺伝子 | クリゾチニブ・エントレクチニブ | ROS1コンパニオン診断薬(IHC法) |
| METex14スキッピング | カプマチニブ・テポチニブ | FoundationOne CDx、Oncomine Focus Assay |
| RET融合遺伝子 | セルペルカチニブ・プラルセチニブ | FoundationOne CDx(RETパネル) |
| PD-L1発現 | ペムブロリズマブ | PD-L1 IHC 22C3 pharmDx |
乳がんのコンパニオン診断薬一覧|HER2検査からBRCA・PIK3CA変異検査まで網羅
乳がんでは、HER2の過剰発現・BRCA1/2遺伝子変異・PIK3CA変異など複数の標的に対してコンパニオン診断薬が確立されています。治療の選択肢が広がるほど、事前検査の種類も増えており、患者さんにとって「どの検査がなぜ必要か」を把握しておくことが大切です。
HER2陽性を判定するIHC・FISH検査の仕組み
HER2検査は、がん細胞の表面にあるHER2タンパク質の量(IHC法)と、HER2遺伝子の増幅の有無(FISH法)を調べます。HER2陽性(IHC 3+、またはFISH陽性)と判定されると、トラスツズマブ(ハーセプチン)・ペルツズマブ(パージェタ)・トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)などの治療薬の候補になります。
代表的な検査キットは「HercepTest」です。1998年のトラスツズマブ承認時に世界初のコンパニオン診断薬として認可され、乳がん治療の精密化を切り開いた歴史的な検査キットです。近年はHER2スコア1+(HER2-low)への対応も求められるようになり、判定基準の整備が続いています。
BRCA変異とPIK3CA変異を調べる分子診断検査
BRCA1/2遺伝子に変異がある転移性乳がんの患者さんには、PARP阻害薬のオラパリブ(リムパーザ)・タラゾパリブが使われます。対応するコンパニオン診断薬としてBRACAnalysis CDxとFoundationOne CDxが承認されています。腫瘍組織または血液中の遺伝子情報を調べ、変異の有無を確認します。
PIK3CA変異はホルモン受容体陽性・HER2陰性の進行乳がんに対するαPI3K阻害薬(アルペリシブ:ピクレイ)の適応を判定するために調べます。PIK3CA変異検査では血液(リキッドバイオプシー)または腫瘍組織から遺伝子を抽出して解析します。
乳がんの主なコンパニオン診断薬と対応する治療薬
| 標的・変異 | 対応する治療薬(例) | 検査キット(例) |
|---|---|---|
| HER2過剰発現 | トラスツズマブ・ペルツズマブ・T-DXd | HercepTest、PATHWAY HER2(IHC法) |
| BRCA1/2変異 | オラパリブ・タラゾパリブ | BRACAnalysis CDx、FoundationOne CDx |
| PIK3CA変異 | アルペリシブ | PIK3CA変異検出(リキッドバイオプシー対応キット) |
ホルモン受容体の確認と組み合わせる理由
乳がんの治療選択では、HER2検査だけでなくエストロゲン受容体(ER)・プロゲステロン受容体(PgR)の発現状況も合わせて確認します。HR陽性・HER2陰性・BRCA変異ありという複数の組み合わせによって治療方針が大きく変わるため、複数の検査を同時に進めるのが一般的です。
主治医と病理医がこれらの検査結果を総合的に評価し、治療の優先順位を決めます。「なぜこの検査が必要なのか」「どの薬の適応を調べているのか」について、遠慮せず主治医に確認することをお勧めします。
大腸がん・胃がんなど消化器系がんのコンパニオン診断薬と検査キット
大腸がん・胃がん・食道がんなどの消化器系がんにも、複数のコンパニオン診断薬が用いられています。特に大腸がんでは、抗EGFR抗体薬を使う前にRAS変異・BRAF変異の検査が法的に必須とされており、治療選択に直結する検査です。
大腸がんのRAS変異・BRAF変異検査と抗EGFR抗体薬
転移性大腸がんの治療では、セツキシマブ(アービタックス)・パニツムマブ(ベクティビックス)などの抗EGFR抗体薬を使う前に、KRAS・NRASのRAS変異検査が必須となっています。RAS変異がある場合、これらの薬は効果を発揮しないため、変異ナシ(野生型)と確認できた患者さんにのみ投与されます。
さらに、BRAF V600E変異の検査も重要です。BRAF変異陽性の大腸がんには、エンコラフェニブとセツキシマブを組み合わせた治療が適応となります。RAS・BRAF変異の両方を同時に検出できる多遺伝子パネル型の検査キットも利用されています。
胃がん・食道がんのHER2検査とMSI検査
HER2陽性の胃がんには、トラスツズマブが使われます。乳がんと同様に、HercepTestなどのHER2コンパニオン診断薬による検査が必須です。IHCスコアが2+の場合はFISH法による確認検査が追加されます。
マイクロサテライト不安定性(MSI)の検査も消化器がんで広く使われます。MSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)と判定されると、免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)の適応となります。大腸がん・胃がん・子宮内膜がんなど多くのがん種でMSI検査が標準化されています。
膵がん・胆道がんにも広がる分子標的治療
膵がんでは、BRCA1/2変異陽性の患者さんに対してオラパリブが使われます。KRAS G12C変異を標的にした治療薬の開発・承認も進んでいます。胆道がんでは、FGFR2融合遺伝子やIDH1変異を標的にした薬剤が登場しており、それぞれにコンパニオン診断薬の整備が続けられています。
消化器系がんで使われる主なコンパニオン診断の標的
- KRAS・NRAS変異(大腸がん)——抗EGFR抗体薬の適応を決める最重要検査。変異型では投与不可。
- BRAF V600E変異(大腸がん)——エンコラフェニブ+セツキシマブ併用療法の適応判定に使用。
- HER2過剰発現(胃がん・大腸がん)——トラスツズマブ・トラスツズマブ デルクステカンの適応確認。
- MSI-High/dMMR(消化器がん全般)——ペムブロリズマブなど免疫チェックポイント阻害薬の適応判定。
- BRCA1/2変異(膵がん)——オラパリブ適応の判定。生殖細胞系列(ゲルムライン)変異の確認が中心。
悪性黒色腫・婦人科がん・血液がんに対応したコンパニオン診断薬の全容
肺がん・乳がん・消化器がん以外にも、悪性黒色腫(皮膚がん)・卵巣がん・子宮がん・白血病・リンパ腫など多くのがん種でコンパニオン診断薬が活用されています。がん種ごとに使われる標的遺伝子と検査キットを把握しておきましょう。
悪性黒色腫(メラノーマ)のBRAF変異検査とBRAF阻害薬
悪性黒色腫の約40〜50%にはBRAF V600E変異が見られます。この変異の有無を調べる検査キット(cobas 4800 BRAF V600 変異検出キットなど)で陽性と確認されると、ベムラフェニブ(ゼルボラフ)・ダブラフェニブ(タフィンラー)などのBRAF阻害薬が使われます。
BRAF阻害薬はMEK阻害薬(トラメチニブ:メキニスト)と組み合わせることで耐性発現を遅らせる効果があります。ダブラフェニブ+トラメチニブの併用療法も、同じBRAF変異検査の結果をもとに適応が判断されます。
卵巣がん・子宮がんのBRCA変異検査とPARP阻害薬
卵巣がん(上皮性)の患者さんのうち、BRCA1/2変異を持つ方はオラパリブ(リムパーザ)・ニラパリブ(ゼジューラ)などのPARP阻害薬の適応となります。BRACAnalysis CDxおよびFoundationOne CDxが日本でも承認されたコンパニオン診断薬として使われています。
生殖細胞系列のBRCA変異は遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と関連するため、遺伝カウンセリングとの連携が大切です。HRD(相同組み換え修復不全)の有無を判定するMyriad myChoice CDxも卵巣がんのオラパリブ+ベバシズマブ療法に使われます。
婦人科がん・皮膚がんの主なコンパニオン診断薬一覧
| がん種・標的 | 対応する治療薬(例) | 検査キット(例) |
|---|---|---|
| 悪性黒色腫 BRAF V600E | ベムラフェニブ・ダブラフェニブ+トラメチニブ | cobas 4800 BRAF V600 変異検出キット |
| 卵巣がん BRCA1/2変異 | オラパリブ・ニラパリブ | BRACAnalysis CDx、FoundationOne CDx |
| 卵巣がん HRD陽性 | オラパリブ+ベバシズマブ | Myriad myChoice CDx |
| 子宮内膜がん MSI-High | ペムブロリズマブ | MSI検査キット(PCR法・NGS法) |
白血病・リンパ腫など血液がんのコンパニオン診断薬
血液がんでも、治療薬の選択にコンパニオン診断薬が使われています。慢性骨髄性白血病(CML)ではBCR-ABL1融合遺伝子の検出が、イマチニブ(グリベック)・ダサチニブ(スプリセル)などの適応判定に用いられます。急性骨髄性白血病(AML)ではFLT3変異やIDH1/IDH2変異の検査がそれぞれの分子標的薬の選択に使われます。
悪性リンパ腫の一部ではBCL2遺伝子異常などを調べる検査が検討されており、血液がん領域でも今後さらなるコンパニオン診断薬の拡充が見込まれます。
コンパニオン診断薬の検査を受けるまでの流れ|検体の種類と注意点も解説
コンパニオン診断薬の検査は、外来や入院中に主治医の指示によって行われます。検体の種類や採取方法は検査キットごとに異なるため、事前に十分な説明を受けて納得した上で臨むことが大切です。
組織生検と液体生検(リキッドバイオプシー)の違いと使い分け
従来のコンパニオン診断薬は、外科手術や内視鏡・針生検で採取した腫瘍組織(FFPE:ホルマリン固定パラフィン包埋標本)を使う「組織生検」が中心でした。組織生検は腫瘍の遺伝子情報を直接調べられる利点がある一方で、患者さんへの身体的負担(侵襲性)が伴います。
近年は採血のみで行える「液体生検(リキッドバイオプシー)」も広がっています。血液中を流れるがん由来のDNA(ctDNA)を解析する方法で、繰り返し検査しやすく、再生検が難しい患者さんにも有効です。ただし、ctDNAの濃度が低い場合は偽陰性のリスクがあるため、組織生検の結果と組み合わせて判断することが推奨されています。
検査前に主治医に確認しておきたいポイント
コンパニオン診断薬の検査を受ける前に、どの遺伝子・タンパク質を調べるのか、検体の採取方法と身体への負担、検査にかかる日数、費用(多くは診療報酬で算定)などを主治医に確認しておくと安心です。過去に手術や生検を受けたことがある場合、保存されている腫瘍組織を流用できることもあります。
再採取が必要かどうかを確認するだけで、検査の手順が大きく変わることがあります。「保存されている組織で検査できますか?」と一言聞いてみることが、患者さんにとって身体的・時間的な負担の軽減につながる場合があります。
結果が出るまでの期間と次のアクション
組織生検を用いた検査は通常2〜3週間で結果が出ます。NGSによる多遺伝子パネル検査の場合は4〜6週間かかることもあります。液体生検型の検査は比較的短期間(1〜2週間程度)で結果が得られる場合が多いです。
結果を受け取ったら、その内容を主治医にしっかり説明してもらいましょう。陽性・陰性それぞれの場合に次の治療選択肢がどう変わるかを事前に把握しておくことで、結果が出たときの判断がスムーズになります。
検査後の流れで確認しておきたい主なポイント
- 陽性の場合——対応する治療薬の候補と期待される効果・副作用について主治医から詳しく説明を受ける。
- 陰性の場合——他の治療薬の選択肢や、次の検査(がんゲノム検査など)を主治医と相談する。
- 結果に疑問がある場合——検体の種類や検査方法を変えて再検査できるかどうかを確認する。
- セカンドオピニオンの権利——どの段階でも別の医師の意見を求める権利があることを知っておく。
がんゲノム検査とコンパニオン診断薬はここが違う
コンパニオン診断薬と「がん遺伝子パネル検査(がんゲノム検査)」は、どちらも遺伝子を調べる検査ですが、目的も調べる遺伝子数もまったく異なります。この違いを理解することで、どちらの検査が今の自分に必要かが見えてきます。
目的と検査対象の遺伝子数が根本的に異なる
コンパニオン診断薬は「特定の治療薬が効くかどうか」を判定するための検査です。調べる遺伝子は1〜数種類に絞られており、「この薬を使う前に、この変異があるかどうかを確認する」という明確な目的があります。対して、がんゲノム検査は数百種類以上の遺伝子を広く調べ、治療の手がかりを探すための探索的な検査です。
コンパニオン診断薬 vs がんゲノム検査の比較
| 比較項目 | コンパニオン診断薬 | がんゲノム検査 |
|---|---|---|
| 検査の目的 | 特定の治療薬の適応を判定 | 多遺伝子を広く調べ治療の手がかりを探す |
| 調べる遺伝子数 | 1〜数種類 | 数百種類以上 |
| 使うタイミング | 特定の薬を使う前(第1・第2選択等) | 標準治療が終了した後または開始前の探索 |
| 適応判定の確実性 | 高い(特定薬の適応に特化) | 中程度(マッチする薬が見つからない場合もある) |
二つの検査を組み合わせて使う場面
がんゲノム検査は、標準治療を受け終わった後に「次の手がかり」を探す目的で使われることが多いです。コンパニオン診断薬が「ピンポイントで特定の薬の鍵を確認する」ツールだとすれば、がんゲノム検査は「広くドアを探す」ツールといえます。両者は競合するものではなく、それぞれの役割を持っています。
まずコンパニオン診断薬で標準的な治療薬の適応を確認し、その後に追加の情報が必要になった段階でがんゲノム検査を受けるという順序が一般的です。主治医が治療計画の中でどちらをいつ行うかを判断しますが、患者さん側からも積極的に質問することが治療への理解につながります。
主治医に相談するときに使える質問リスト
コンパニオン診断薬の検査を受けるべきかどうか迷ったときは、主治医に「この治療薬を使うために必要な検査はありますか?」「検査の結果によって、どのような治療の選択肢が変わりますか?」と聞いてみましょう。
また「結果が陰性の場合、次に考えられる選択肢は何ですか?」と続けることで、検査の意義と治療の流れをより深く把握できます。
よくある質問
コンパニオン診断薬と一般的な遺伝子検査はどう違いますか?
コンパニオン診断薬は、特定の治療薬の適応を判断するために厚生労働省(または米国FDA)が承認した体外診断薬です。調べる遺伝子・タンパク質は1〜数種類に絞られており、「この薬を使う前に必ず実施する」という法的な位置づけがあります。
一方、一般的な遺伝子検査(院内開発検査など)は承認審査を経ていないものも多く、結果の治療への反映に一定の制限がある場合があります。コンパニオン診断薬は精度・信頼性の基準が厳格に定められている点で、一般の遺伝子検査とは明確に異なります。
コンパニオン診断薬の検査はどの医療機関で受けられますか?
コンパニオン診断薬の検査は、がんの診療を行っている病院(がん診療連携拠点病院など)を中心に実施されています。検体は院内の検査室で処理される場合と、外部の専門検査会社に送られる場合とがあります。
実際の検査依頼は主治医が行いますので、まず「コンパニオン診断薬の検査が必要かどうか」を主治医に相談するところから始めましょう。がんゲノム医療拠点病院に指定された施設では、より多くの種類の検査に対応しています。
コンパニオン診断薬の結果が陰性だった場合、対応する薬剤は使えませんか?
基本的には、コンパニオン診断薬で「陰性」と判定された場合、対応する治療薬の投与は行われません。効果が期待できない治療薬を投与することで生じる副作用から患者さんを守るためにも、この原則は重要な意味を持っています。
ただし、液体生検(血液検査)で陰性だった場合は腫瘍組織の再検査で陽性が確認されることもあります。陰性の結果に疑問を感じたときは、検体の種類や検査方法を変えて再検討するよう主治医に相談してみてください。
コンパニオン診断薬の検査結果が出るまでにどのくらいかかりますか?
検査にかかる期間は、使用するキットと検体の種類によって異なります。IHC法やFISH法などの従来型の検査は1〜2週間程度が目安です。NGSを用いた多遺伝子パネル型の検査では2〜4週間、場合によっては6週間前後かかることもあります。
血液を使うリキッドバイオプシー型の検査は比較的短期間で結果が出やすく、1〜2週間程度が一般的です。検査を受ける前に担当医から大まかな目安を聞いておくと、その後の治療計画を立てやすくなります。
コンパニオン診断薬はすべてのがん種に対応していますか?
現時点では、コンパニオン診断薬が承認されているのは、肺がん・乳がん・大腸がん・胃がん・悪性黒色腫・卵巣がん・血液がんなど特定のがん種が中心です。すべてのがん種に対応したコンパニオン診断薬があるわけではありません。
一方で、MSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)やTMB-High(腫瘍遺伝子変異量の高い腫瘍)など、がん種に関わらず適応を判定できる「がん腫横断的」なコンパニオン診断薬も承認されています。対応範囲は年々広がっているため、担当医に現時点での選択肢を確認することをお勧めします。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医