リキッドバイオプシーの費用はいくら?保険適用の範囲と自由診療の料金相場

リキッドバイオプシーの費用はいくら?保険適用の範囲と自由診療の料金相場

リキッドバイオプシーの費用は、保険適用の場合で3割負担約168,000円、自由診療では約30万~100万円以上と幅があります。血液検査でがんの遺伝子情報を調べられるこの技術は、身体への負担が少なく注目を集めています。

しかし「自分は保険が使えるのか」「自由診療だといくらかかるのか」といった費用面の不安を感じている方は少なくないでしょう。この記事では、保険診療と自由診療それぞれの費用や条件、経済的な負担を軽くする制度について、わかりやすく解説します。

リキッドバイオプシーとは?血液でがんの遺伝子変異を調べる検査の基本

リキッドバイオプシーは、血液などの体液から、がん細胞が放出したDNA(ctDNA)や細胞を検出・解析する検査です。

従来の組織生検(針やメスでがん組織を直接採取する方法)と異なり、採血だけで検査が完了するため、患者さんの身体にかかる負担が小さいという特徴があります。

従来の組織生検との違いと、血液検査ならではの利点

組織生検では、がんの疑いがある部位に直接アプローチして組織を採取します。臓器の位置や患者さんの体力によっては、検体採取が困難なケースもあるでしょう。リキッドバイオプシーは腕からの採血で済むため、検査の身体的な負担が大幅に軽減されます。

加えて、繰り返し採血ができるので、治療の経過に合わせて複数回の検査が行いやすい点も強みです。がんは治療の過程で遺伝子変異が変化することがあるため、タイミングを見て検査を繰り返せるのは臨床上大きなメリットといえます。

リキッドバイオプシーで調べられる内容と対象となるがん

この検査では、血液中に微量に存在するがん由来のDNA断片(ctDNA)を解析し、がんの原因となっている遺伝子変異を一度に複数調べることが可能です。肺がん、大腸がん、乳がんなど多くの固形がんが対象で、原発不明がんの診断にも活用されています。

項目組織生検リキッドバイオプシー
検体の採取方法針やメスで腫瘍組織を採取腕からの採血のみ
身体への負担やや大きい小さい
結果が出るまでの期間2~6週間程度1~3週間程度
繰り返し検査患者さんの負担が大きい比較的容易

検査結果からわかることと、治療への活かし方

検査の結果、がんの遺伝子変異が特定できた場合、その変異に対応した分子標的薬の候補が見つかることがあります。標準治療が終了した患者さんにとって、新たな治療選択肢を探る手段になるでしょう。

ただし、遺伝子変異が見つかっても治療薬が保険適用外だったり治験中だったりするケースもあります。検査前に、結果に基づいた治療がどこまで可能かを主治医に相談しておくことが大切です。

リキッドバイオプシーの保険適用は条件つき|対象になる人・ならない人

がん遺伝子パネル検査の一環としてリキッドバイオプシーを受ける場合、一定の条件を満たせば健康保険が適用されます。ただし、すべてのがん患者さんが対象になるわけではなく、いくつかの要件をクリアする必要があります。

保険適用で受けるための3つの条件

保険診療でリキッドバイオプシーを受けるには、原則として以下の条件を満たすことが求められます。まず、病理学的に悪性固形腫瘍と診断されていること。次に、標準治療がない、もしくは標準治療が終了している(終了が見込まれる)状態であること。さらに、全身状態(パフォーマンスステータス)が良好であることです。

小児の悪性固形腫瘍(脳腫瘍を含む)も対象に含まれます。条件に該当するかどうかは、主治医と相談のうえ判断してもらいましょう。

血液検体による検査が認められるケースとは

保険適用のがん遺伝子パネル検査には、腫瘍組織を使うタイプと血液を使うタイプがあります。血液検体が認められるのは、腫瘍組織の採取が医学的に困難な場合や、組織検体で検査を行ったものの十分な結果が得られなかった場合です。

保険診療の枠組みでは血液検体が「第一選択」にはなりにくい状況です。まず組織検体での検査が検討され、それが難しいときに血液検体が選ばれるという流れを覚えておいてください。

がんゲノム医療の拠点病院でないと受けられない

保険診療でがん遺伝子パネル検査を受けるには、厚生労働省が指定した「がんゲノム医療中核拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」「がんゲノム医療連携病院」のいずれかを受診する必要があります。

検査結果は専門家による「エキスパートパネル」で検討され、治療方針の提案が行われます。

条件内容補足
疾患悪性固形腫瘍と診断済み血液がんは対象外
治療歴標準治療なし、または終了(見込み含む)主治医の判断が必要
全身状態ECOG PS 0~1日常生活が概ね送れる状態
実施施設がんゲノム医療指定病院全国に約250施設

保険適用時のリキッドバイオプシー費用|自己負担額と高額療養費制度の活用法

保険適用でがん遺伝子パネル検査を受ける場合、検査費用は56,000点(1点=10円で計算すると560,000円)です。3割負担の方であれば約168,000円が自己負担額となりますが、高額療養費制度を利用すれば実際の支払い額はさらに抑えられます。

保険点数56,000点の内訳と支払いタイミング

56,000点の内訳は「がんゲノムプロファイリング検査」44,000点と「がんゲノムプロファイリング評価提供料」12,000点の合計です。多くの医療機関では、検体提出時に44,000点分、結果説明時に12,000点分と2回に分けて請求されます。

支払いが2回に分かれるため、月をまたぐ場合は高額療養費の計算に影響する可能性があります。可能であれば同月内にまとめられるよう、スケジュールを相談してみるとよいでしょう。

高額療養費制度を使えば自己負担はここまで下がる

高額療養費制度は、1か月間の医療費が一定額を超えた場合に、超過分が後から払い戻される制度です。自己負担の上限額は年齢や所得区分によって異なりますが、一般的な所得の方であれば月額80,000円前後に抑えられるケースが多いでしょう。

事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払い自体を上限額までにとどめることも可能です。手続きは加入している健康保険の窓口で行えます。

  • 69歳以下・年収約370万~770万円の場合:月額上限は約80,100円+α
  • 69歳以下・年収約370万円以下の場合:月額上限は57,600円
  • 70歳以上の一般区分の場合:月額上限は57,600円

検査費用以外にかかる諸費用も見落とさない

がん遺伝子パネル検査の費用には、診察料や遺伝カウンセリング料は含まれていません。紹介先の病院への交通費や宿泊費がかかる場合もあり、トータルの出費を把握しておくことが必要です。検

査後に見つかった治療薬が保険適用外である場合には、別途高額な治療費が発生する可能性もあります。

自由診療でリキッドバイオプシーを受けるときの料金相場と注意点

保険適用の条件を満たさない場合でも、自由診療としてリキッドバイオプシーを受けることは可能です。ただし費用は全額自己負担となるため、検査の種類や医療機関によって大きく異なります。

自由診療での費用は約30万~100万円以上と幅がある

自由診療のがん遺伝子パネル検査は、医療機関や検査の種類によって費用が異なります。たとえば、Guardant360による検査は約42万円前後、より広範囲の遺伝子を調べるエクソーム解析では60万~100万円を超えることもあります。

さらに、がんゲノム外来の診察料(33,000円前後)が別途必要な施設もあり、合計すると相当な金額になる場合があるでしょう。費用の詳細は、検査を希望する医療機関に直接問い合わせることをおすすめします。

スクリーニング(がん検診)目的は保険が効かない

健康な方が「がんの早期発見」を目的としてリキッドバイオプシーを受ける場合、保険は一切適用されません。近年、一部のクリニックでは予防医療としてctDNAやマイクロRNA検査を提供していますが、すべて自由診療扱いです。

スクリーニング目的の検査は数万円から数十万円と価格の幅が広く、検査精度や対象がんの範囲も異なります。受ける前に、どのバイオマーカーをどの技術で解析するのかを確認し、期待できる結果と限界を理解しておきましょう。

検査の種類(例)費用の目安(税込)検体
FoundationOne Liquid CDx(保険)3割負担:約168,000円血液
Guardant360 CDx(保険)3割負担:約168,000円血液
がんゲノムパネル(自由診療)約40万~60万円血液/組織
エクソーム解析(自由診療)約60万~100万円超血液/組織

自由診療のリスクと、検査前に確認すべきこと

自由診療では検査結果に基づく治療も自費になることが多いため、経済的な負担が想定以上に膨らむケースがあります。検査を受ける前に「どこまでの情報が得られるか」「結果に基づく治療は保険で受けられるのか」を主治医に確認しておくことが賢明です。

日本で保険適用されているリキッドバイオプシー検査の種類を比較する

国内で保険収載されているリキッドバイオプシー関連の検査は複数あり、対象疾患や検査の目的によって使い分けられます。代表的な検査の特徴と保険適用の経緯を整理しました。

FoundationOne Liquid CDxは2021年に保険収載された初の血液検体パネル検査

FoundationOne Liquid CDxは、324個のがん関連遺伝子を血液から一度に解析できる包括的ゲノムプロファイリング検査です。2021年8月に保険適用となり、組織検体の採取が難しい固形がん患者さんに新たな選択肢を提供しました。

血液検体のため採取が容易で、結果が出るまでの時間も組織検体と比べて短い傾向にあります。一刻も早く治療方針を決めたい患者さんにとって、大きなメリットといえるでしょう。

Guardant360 CDxは2023年に保険適用された2番目の血液パネル検査

Guardant360 CDxは、74個のがん関連遺伝子を解析する血液ベースの遺伝子パネル検査で、2023年7月に保険収載されました。FoundationOne Liquid CDxに続く2番目の血液検体によるパネル検査です。

検査名保険収載年解析遺伝子数
FoundationOne Liquid CDx2021年8月324遺伝子
Guardant360 CDx2023年7月74遺伝子
GenMine TOP2023年737遺伝子

コンパニオン診断としてのリキッドバイオプシーも保険で利用できる

包括的な遺伝子パネル検査とは別に、特定の遺伝子変異を調べる「コンパニオン診断」としてもリキッドバイオプシーが使われています。たとえば肺がんのEGFR変異を血液で調べるコバスEGFR変異検出キットは、治療薬の選択に直結する検査として広く活用されています。

コンパニオン診断は特定の薬剤とセットで承認されるため、遺伝子パネル検査とは保険上の位置づけが異なります。主治医が適切な検査を選んでくれるので、どの検査が自分に合っているか相談してみましょう。

リキッドバイオプシーの費用負担を少しでも抑えたい方へ|使える制度と工夫

リキッドバイオプシーの費用は決して安くはありませんが、公的制度や民間の仕組みを活用することで負担を軽減できる可能性があります。使える制度を整理しておきましょう。

高額療養費制度の「限度額適用認定証」を事前に取得する

先述した高額療養費制度は、保険適用の検査に対して利用可能です。事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払いを自己負担上限額に抑えられます。手続きは加入先の健康保険組合や市区町村の国民健康保険窓口で行えます。

医療費控除で翌年の税金を軽くする

自由診療であっても、治療目的で受けた検査費用は医療費控除の対象になる場合があります。年間の医療費が合計10万円(または総所得金額の5%)を超えた分について、確定申告で還付を受けられます。領収書は必ず保管しておきましょう。

  • 交通費(公共交通機関利用分)も医療費控除の対象
  • 高額療養費で戻ってきた金額は差し引いて計算する
  • 生計を一にする家族分の医療費も合算できる

民間の医療保険やがん保険で保障されるケースもある

近年の医療保険やがん保険の中には、がん遺伝子パネル検査やその後の治療を保障する商品が増えています。先進医療特約が付帯されている場合、自由診療の検査費用の一部がカバーされることもあるでしょう。

一方、リキッドバイオプシーの検査を受けたことで保険料が安くなる仕組みは、現時点で国内では確認されていません。加入中の保険の保障内容を改めて確認してみてください。

よくある質問

リキッドバイオプシーの検査費用は医療費控除の対象になりますか?

治療目的で医師の判断のもと受けたリキッドバイオプシーであれば、保険診療・自由診療を問わず医療費控除の対象になる可能性があります。年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告によって所得税の一部が還付されます。

ただし、予防や健康診断目的の場合は控除対象外となるケースがあるため、税務署や税理士に事前に確認することをおすすめします。

リキッドバイオプシーの検査結果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか?

検査の種類や医療機関によって異なりますが、一般的には採血から結果報告まで2~4週間程度です。Guardant360のように比較的短期間(約10日前後)で結果が出る検査もあります。

結果報告後にエキスパートパネルでの検討が行われるため、治療方針の提案を受けるまでにはさらに数週間かかる場合もあるでしょう。スケジュール感は事前に担当医に確認しておくと安心です。

リキッドバイオプシーを受けても治療薬が見つからないことはありますか?

はい、検査を受けても治療に直結する遺伝子変異が見つからないケースは珍しくありません。がんゲノム医療推進コンソーシアムのデータによると、遺伝子パネル検査を経て実際に治療薬の投与に至った割合は全体の約10%前後にとどまっています。

検査費用は結果の如何にかかわらず発生するため、費用対効果を含めて主治医とよく話し合ったうえで検査を受けるかどうか判断することが大切です。

リキッドバイオプシーは健康な人のがんスクリーニングにも使えますか?

技術的には、血液中のctDNAやマイクロRNAなどを解析することで、がんの早期発見を目指すスクリーニング検査が一部のクリニックで提供されています。ただし、これらはすべて自由診療の扱いとなり、保険は適用されません。

現時点では感度(がんを正しく検出する確率)に課題が残っており、偽陰性(実際にはがんがあるのに陰性と出る)のリスクもあります。既存のがん検診を定期的に受けたうえで、補助的な位置づけとして検討するのがよいでしょう。

リキッドバイオプシーを受けたいとき、まず何をすればよいですか?

まずは現在の主治医に「がん遺伝子パネル検査に関心がある」と伝えてください。保険適用の条件に該当するかどうかを主治医が判断し、該当する場合はがんゲノム医療を実施している指定病院への紹介状を書いてもらえます。

自由診療を希望する場合は、がんゲノム医療を提供しているクリニックや大学病院のゲノム外来に直接問い合わせることも可能です。費用や検査の流れについて、事前に十分な説明を受けてから判断しましょう。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医