全ゲノム解析が拓くプレシジョンメディシンの未来|がん克服への新たな戦略

全ゲノム解析が拓くプレシジョンメディシンの未来|がん克服への新たな戦略

全ゲノム解析(WGS)は、がん細胞が持つ30億塩基対の遺伝情報をまるごと読み解く検査です。遺伝子パネル検査では拾いきれなかった変異も捉えられるため、標準治療後の選択肢を広げる手段として注目されています。

検査を受けられるのは、国が指定した「がんゲノム医療拠点病院」などに限られており、全国に整備された専門施設と連携体制がその基盤を支えています。一人ひとりの患者に最適な情報を届けるために、医師・遺伝カウンセラー・バイオインフォマティシャンといった多職種チームが緊密に連携しています。

本記事では、全ゲノム解析を受けられる施設の種類と役割、受診の流れ、対象患者の条件、データ管理まで、患者目線でわかりやすくまとめました。

全ゲノム解析がプレシジョンメディシンの扉を開く理由

プレシジョンメディシンの核心は、患者のゲノム情報に基づく治療の個別化にあります。全ゲノム解析はその要となる技術であり、がん細胞の遺伝的変化を網羅的に捉えることで、治療選択の精度を大幅に高めます。

30億塩基対を読み解くことが、なぜがん克服への突破口になるのか

ヒトのゲノムは約30億塩基対から成り立っています。がん細胞ではこのゲノムに多種多様な変異が蓄積し、それがそれぞれのがんの「個性」を決定づけます。全ゲノム解析はこの30億塩基対を全領域にわたって解読できる技術です。

コーディング領域(タンパク質をコードする遺伝子の部分)だけでなく、非コーディング領域や染色体の大規模な構造変化まで一括して検出できる点が、従来の検査と大きく異なるところです。「隠れたがんの原因」を見つけられる、現時点で唯一の手段といえるでしょう。

従来の遺伝子パネル検査とは決定的に違う情報量

現在、多くのがん患者が受けているのが遺伝子パネル検査です。特定の遺伝子(数十〜数百種)の変異を調べる有用な検査ですが、ゲノム全体のうちタンパク質をコードする領域(約1.2%)しかカバーしていません。

全ゲノム解析はこの枠を大きく超え、残り98%の非コーディング領域も含めた全貌を捉えます。遺伝子パネル検査では検出できなかった治療標的の発見や、薬剤耐性の予測といった情報が初めて得られます。

全ゲノム解析と遺伝子パネル検査の比較

比較項目全ゲノム解析遺伝子パネル検査
解析対象ゲノム全域(約30億塩基対)特定の数十〜数百遺伝子
非コーディング領域検出可能対象外
構造多型の検出包括的に対応検出は限定的
変異シグネチャー解析実施可能一部のみ
遺伝性がんの同時評価可能別途検査が必要

コーディング領域だけでは拾えない変異の存在

TERT(テロメラーゼ逆転写酵素)のプロモーター変異に代表されるように、がんを駆動する変異の一部は非コーディング領域に潜んでいます。こうした変異は遺伝子パネル検査の対象外であるため、これまでは検出できませんでした。

ICGC/TCGAのPCAWGコンソーシアムが2,658例の全ゲノムを解析した大規模研究でも、非コーディング領域に複数のがんドライバー変異候補が確認されています。全ゲノム解析はこうした「見えないリスク」を拾い上げる力を持っています。

ゲノム解析が暴く|あなたのがんがほかの人と違う根本的なわけ

患者ごとに治療反応が異なる根本的な理由は、ゲノムの個性にあります。全ゲノム解析は、がんそれぞれの遺伝的な素顔をあますところなく明らかにし、治療の個別化を強力に後押しします。

ドライバー変異こそがんの本当の原因

がん細胞のゲノムには膨大な数の変異が存在しますが、そのすべてが治療に直結するわけではありません。がんの増殖を直接駆動する変異を「ドライバー変異」、がんの進展に関係しない偶発的な変異を「パッセンジャー変異」と呼びます。

PCAWGコンソーシアムの解析では、がんゲノムには平均4〜5個のドライバー変異が存在することが確認されています。全ゲノム解析はこれらを精密に同定し、治療標的の選択へと直結させます。

構造多型・融合遺伝子・コピー数変異を一括で捉える

がん細胞では、塩基レベルの点変異に加え、染色体の大規模な構造変化も頻繁に起こります。異なる遺伝子が結合してできる「融合遺伝子」や、特定領域が過剰に増幅される「コピー数増幅」も、重要な治療標的となります。

遺伝子パネル検査ではこうした大規模変化の検出に限界がありますが、全ゲノム解析なら染色体全体の変化を一括して評価できます。これまで見逃されてきた治療標的が新たに発見されるケースも報告されています。

変異シグネチャーが教えるがんの発生原因

がんゲノムに蓄積した変異のパターンを解析すると、喫煙・紫外線・BRCA変異など、がんの発生原因に固有の「変異シグネチャー」が浮かび上がります。これは細胞が過去に受けたダメージの記録ともいえます。

変異シグネチャー解析は原因の特定にとどまらず、PARP阻害剤など特定の薬剤への感受性予測にも活用されます。がんがどのように発生したかを理解することが、その人に合った治療法の選択につながるのです。

がんゲノムで検出される主な変異の種類

  • 一塩基変異(SNV):1塩基レベルの置換。がんの原因変異として最も多いタイプ
  • 小規模な挿入・欠失(インデル):数塩基単位の追加または欠損による変異
  • コピー数多型(CNV):遺伝子領域の増幅や欠失。がん遺伝子の過剰発現に関与
  • 構造多型(SV):大規模な染色体再編成。融合遺伝子の原因になることが多い
  • 変異シグネチャー:上記変異の組み合わせパターンから推定されるがんの発生背景

プレシジョンメディシンが患者の選択肢を広げた、その証拠

全ゲノム解析がもたらした変化は、理論にとどまりません。分子標的薬の普及から「臓器を越えた治療」まで、プレシジョンメディシンは患者の治療選択肢を着実に広げてきました。

分子標的薬の登場でがん治療が変わった

かつてのがん治療は、発生した臓器に基づく標準治療が中心でした。しかし分子標的薬の登場により、がん細胞が持つ特定の遺伝子変異を直接狙った治療が可能になりました。HER2陽性乳がんへのトラスツズマブ、EGFR変異肺がんへのゲフィチニブなどがその代表例です。

全ゲノム解析はこうした治療標的変異の同定を飛躍的に効率化し、患者一人ひとりに合った薬を素早く選ぶ道を拓きました。治療の「あたり外れ」を減らし、有効な薬に早くたどり着く力を持っています。

臓器の壁を越える「バスケット試験」という発想

バスケット試験とは、がんの発生部位にかかわらず、同じ遺伝子変異を持つ患者を一括して対象とする臨床試験です。「BRAF V600E変異があれば、肺がんでも大腸がんでも同じ薬で治療できる」という発想はプレシジョンメディシンの象徴的な成果といえます。

こうしたtumor-agnostic(腫瘍非依存的)なアプローチは、全ゲノム解析によって詳細な変異プロファイルが得られるようになったことで初めて現実のものになりました。

tumor-agnosticな承認薬の主な例

薬剤名標的変異・特性対象となる固形がん
ラロトレクチニブNTRK融合遺伝子NTRK融合のある固形がん全般
ペムブロリズマブMSI-H / TMB-HMSI-HまたはTMB-Hを有する固形がん
セルペルカチニブRET融合遺伝子RET融合のある固形がん全般

遺伝性がんリスクを同時に評価できる副産物

全ゲノム解析は、がん細胞の変異だけでなく、患者自身の生まれつきの遺伝情報(生殖細胞系列変異)も同時に評価できます。BRCA1/BRCA2変異など遺伝性腫瘍に関わる変異が見つかれば、本人の今後のがんリスク管理や、血縁者への遺伝カウンセリングの機会にもつながります。

ただし遺伝情報の取り扱いには慎重さが欠かせません。検査前に医師や遺伝カウンセラーと十分に話し合い、「何を知りたいのか」を自分の中で整理しておくことが大切です。

全ゲノム解析でわかるHRD・TMB・MSI|免疫療法と標的治療を左右するバイオマーカー

HRD(相同組換え修復欠損)・TMB(腫瘍変異負荷)・MSI(マイクロサテライト不安定性)は、がんの治療選択を大きく左右するバイオマーカーです。全ゲノム解析はこれらを一度の検査で評価できる、遺伝子パネル検査にはない強みを持ちます。

HRD(相同組換え修復欠損)とPARP阻害剤の関係

HRDとは、細胞のDNA修復機構の一つである相同組換え修復が正常に機能しない状態のことです。BRCA1/BRCA2の変異がその代表的な原因であり、HRDを持つがんは特定のDNA損傷に対して特別な脆弱性を示します。

この脆弱性を利用するのがPARP阻害剤(オラパリブなど)です。全ゲノム解析ではゲノム全体の不安定性スコアを総合的に評価できるため、遺伝子パネル検査では見落としやすいHRDも確実に検出できます。

TMBが高いと免疫チェックポイント阻害薬が効きやすくなる理由

TMB(腫瘍変異負荷)とは、がんゲノムに蓄積した変異の総数を示す指標です。変異が多いほど、がん細胞の表面に異常なタンパク質(新生抗原)が多く生じ、免疫細胞にとって攻撃しやすい状態になります。

そのため「TMB-H(高TMB)の患者では免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい」という関係が生まれます。全ゲノム解析は変異全体を網羅するため、パネル検査よりも正確なTMB値を算出できます。

MSI検査と全ゲノム解析、どちらでどこまでわかるのか

MSI(マイクロサテライト不安定性)は、DNAのミスマッチ修復欠損に起因するゲノムの不安定な状態です。MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)のがんは免疫チェックポイント阻害薬への良好な反応が期待できます。

従来は専用のPCR検査や免疫染色でMSIを評価していましたが、全ゲノム解析では同時にMSIスコアも算出できます。HRD・TMB・MSIの3つを1回の検査でカバーできることは、患者の検査負担の軽減にも貢献します。

HRD・TMB・MSIの概要と関連する治療

バイオマーカー意味関連する治療
HRD(相同組換え修復欠損)DNA修復機構の機能低下PARP阻害剤(オラパリブ等)
TMB-H(高腫瘍変異負荷)変異の総数が多い状態免疫チェックポイント阻害薬
MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)ミスマッチ修復欠損によるゲノム不安定免疫チェックポイント阻害薬

液体生検と全ゲノム解析を組み合わせると何がわかるのか

血液中に漂う微量のがん由来DNA(ctDNA)を解析する「液体生検」と全ゲノム解析を組み合わせることで、がんの状態をリアルタイムで追跡できます。腫瘍組織の採取が困難なケースでも、あきらめない診断を可能にする技術です。

血液検査だけでがんゲノムを追跡できる時代

液体生検とは、血液・尿・胸水などの体液中に含まれるがん由来のDNA断片(ctDNA:循環腫瘍DNA)を解析する技術です。採血だけで行えるため、外科的な生検に比べて患者への侵襲が少なく、繰り返し検査できる利点があります。

治療中にctDNAを定期的に測定することで、薬剤耐性につながる新たな変異の出現をいち早く把握できます。治療効果が落ちてきたタイミングを、画像検査より早く察知できる可能性があります。

循環腫瘍DNAが教える再発の予兆

術後にctDNAが血液中に残存している場合、画像には映らない微小な転移巣(微小残存病変)の存在が示唆されます。ctDNA陽性が持続する患者では、MRIやCTで確認できるより早い段階で再発を予測できる可能性があります。

こうした情報をもとに術後の補助療法の強度を調整し、早期介入のタイミングを判断する研究が世界中で進んでいます。将来的に「ctDNA陰性なら補助療法を省略できる」という判断基準になりうるかどうかの議論も始まっています。

液体生検(ctDNA解析)の主な活用場面

活用場面内容
診断補助組織採取が困難な部位のがん診断を支援
治療効果の判定治療中のctDNA量の増減で治療反応を把握
再発モニタリング術後の微小残存病変(MRD)の早期検出
耐性変異の検出薬剤耐性につながる新たな変異を早期に捕捉

治療効果のモニタリングを血液で行うメリット

固形がんの治療効果は従来、数ヵ月おきのCTやMRIで評価してきました。液体生検を用いたctDNA解析なら、より短い間隔で治療への反応を確認できる場合があります。早めの治療変更判断に役立つと考えられています。

腫瘍組織と血液の両方に全ゲノム解析を適用することで、がんゲノムの全体像を多角的に把握できます。治療中のリアルタイム情報と初回診断時のゲノムデータを合わせて評価する、新しい医療の形が実現しつつあります。

日本が推進するがんゲノム医療と全ゲノム解析プロジェクトの全貌

日本では2019年から、国家プロジェクトとしてがんゲノム医療の普及と全ゲノム解析の臨床実装が進んでいます。英国・オランダなどの先行モデルを参考にしながら、日本独自の体制整備が着実に動いています。

国が動かした「全ゲノム解析等実行計画」とは

厚生労働省は2019年に「全ゲノム解析等実行計画」を策定しました。がんと難病の患者のゲノムデータを大規模に収集・活用する基盤を整備することを目的とし、患者への結果還元と医薬品開発への応用を目指しています。

2023年9月時点ですでに12,000件超の全ゲノム解析が完了しており、5年以内に10万ゲノムの収集を目標としています。解析結果は患者に還元され、新たな治療選択肢の提供につながる仕組みが構築されています。

がんゲノムネットワークの中核病院とエキスパートパネル

日本のがんゲノム医療は、全国12か所のがんゲノム医療中核拠点病院と33か所の拠点病院によるネットワークで支えられています。遺伝子パネル検査の結果はエキスパートパネル(専門家会議)で多職種が議論し、患者への治療提案につなげます。

全ゲノム解析が本格的に実装されれば、エキスパートパネルが扱う情報量は格段に増え、より精密な臨床判断が実現すると期待されています。データに基づいた治療提案の質が、さらに高まっていくでしょう。

遺伝子パネル検査との連携と次のステージ

現在の日本では、CGP(がんゲノムプロファイリング)検査が遺伝子解析の主流です。全ゲノム解析はその上位に位置づけられる手法として、どのがん種・病期で優先的に適用するかの整理が進んでいます。

英国(NHS)やオランダでは全ゲノム解析が日常診療に導入されており、日本もそのモデルを参考に制度設計を進めています。国際的な知見を取り込みながら、日本のがん患者に合ったゲノム医療の形を構築中です。

日本の全ゲノム解析プロジェクトで重点的に対象とされるがん種

  • 血液腫瘍(白血病・悪性リンパ腫など)
  • 骨・軟部腫瘍(複雑な構造多型が多い)
  • 脳腫瘍(メチル化パターンや融合遺伝子の評価に有用)
  • ドライバー変異陰性の非小細胞肺がん
  • 小児・AYA世代(思春期・若年成人)のがん
  • 遺伝性腫瘍(BRCA変異など生殖細胞系列変異が疑われるもの)
  • 一部の婦人科がん・乳がん

全ゲノム解析を受ける前に整理しておきたい、現実的な疑問

全ゲノム解析への関心が高まる一方、「自分は受けられるのか」「どんなことがわかるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。検査を前にして知っておきたい実際的な情報を整理します。

どのようながん種・ステージで特に有用か

全ゲノム解析が特に有用とされるのは、標準的なCGP検査で有効な治療標的が見つからなかった場合や、希少がん・難治性がんのケースです。骨・軟部腫瘍、脳腫瘍など構造変異の多いがん種や、遺伝性腫瘍が疑われる場合にも有効性が報告されています。

進行がんや再発がんで新たな選択肢を求めている方にとっては、主治医への相談が第一歩です。「自分の場合、全ゲノム解析は適応になるか」と率直に聞いてみることで、具体的な道筋が見えてきます。

全ゲノム解析が特に有用とされるがん種と状況

がん種・状況全ゲノム解析の主な利点
希少がん・難治性がん新たな治療標的の発見
骨・軟部腫瘍複雑な構造多型の包括的な検出
脳腫瘍融合遺伝子・メチル化パターンの評価
遺伝性腫瘍が疑われる場合生殖細胞系列変異の同時評価
CGP検査で標的が未検出追加の治療標的候補の探索

検査から結果報告までの流れと期間の目安

全ゲノム解析は、採取した腫瘍組織(生検や手術検体)と正常組織(血液など)をペアにして実施します。シーケンシングから変異解析・レポート作成まで、現在は2週間前後で結果が出るケースが増えています。

日本での実施時はデータ解析センターやエキスパートパネルでの確認が加わるため、患者への最終報告まで相応の時間が必要です。事前に担当医から所要期間の目安を確認しておくと、気持ちの準備がしやすくなります。

未確定変異(VUS)が検出されたとき、どう対応するのか

全ゲノム解析では、臨床的意義がまだ確定していない変異(VUS:意義不明の変異)が検出されることがあります。VUSは現時点では治療の直接の根拠にはなりませんが、研究の進展とともに将来的に意義が明確になる場合があります。

VUSが見つかっても、それだけで焦る必要はありません。遺伝カウンセラーや専門医と相談しながら、「今は保留し、情報として保管する」という対応が一般的です。不安を一人で抱えず、専門家へ相談する姿勢が大切です。

よくある質問

全ゲノム解析とがん遺伝子パネル検査は、どちらを先に受ければよいですか?

一般的には、まずがん遺伝子パネル検査(CGP検査)を受け、有効な治療標的が見つからなかった場合に全ゲノム解析の追加を検討する流れが多いです。ただし、希少がんや骨・軟部腫瘍など、最初から全ゲノム解析が優先される場合もあります。

担当医に「何を知りたいのか」という目標を共有した上で、最善の検査方針を相談してください。ご自身の病状や目的によって、適切なアプローチは異なります。

全ゲノム解析を受けても、必ず治療法が見つかるわけではないと聞きました。それでも検査を受ける意味はありますか?

全ゲノム解析の結果で、すべての患者に新たな治療法が見つかるわけではありません。海外の大規模研究では、検査を受けた患者の約7割に何らかの治療関連バイオマーカーが検出されましたが、実際に治療変更につながる割合はさらに絞り込まれます。

それでも「標的がないことがわかった」という情報も、診療判断において重要な意味を持ちます。また将来新薬が登場したとき、あらかじめ取得しておいたゲノムデータが役立つ可能性もあります。

全ゲノム解析は、がんの再発予防に活用できますか?

術後の液体生検(ctDNA検査)と組み合わせることで、目には見えない微小残存病変の有無を評価し、再発リスクを予測する研究が進んでいます。ただし、この用途は現時点では研究・臨床試験段階のものが多く、すべての患者で標準的に実施されているわけではありません。

再発予防を目的とした全ゲノム解析の活用については、担当医に現状の適応についてご確認ください。担当医を通じて専門施設へ紹介される場合もあります。

全ゲノム解析は、遺伝性がんの診断にも活用できますか?

はい、全ゲノム解析では腫瘍組織の変異と同時に、患者の生まれつきの遺伝情報(生殖細胞系列変異)を評価できます。BRCA1/BRCA2変異をはじめ、遺伝性腫瘍に関連する変異が見つかった場合は、本人の将来のがんリスク管理や血縁者への遺伝カウンセリングにつながります。

ただし遺伝情報はデリケートな性質を持つため、検査前に遺伝カウンセラーと面談し、検査の意義や結果の受け取り方を十分に話し合うことをお勧めします。情報の開示範囲についても事前に整理しておくと安心です。

全ゲノム解析を受けたい場合、どの医療機関に相談すればよいですか?

全ゲノム解析を含むがんゲノム医療は、厚生労働省が指定するがんゲノム医療中核拠点病院および拠点病院で相談できます。まずはかかりつけの担当医に「がんゲノム医療・全ゲノム解析について相談したい」と伝えてください。

適切な医療機関への紹介や、検査適応についての説明が受けられます。かかりつけ医がいない場合は、都道府県のがん相談支援センターへ問い合わせてみてください。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医