全ゲノム解析(WGS)とは?がんの全情報を読み解く次世代医療の仕組み

全ゲノム解析(WGS)とは?がんの全情報を読み解く次世代医療の仕組み

全ゲノム解析(WGS:Whole Genome Sequencing)は、ヒトゲノムを構成する約30億塩基対のすべてを一度に解読し、がんに関わるあらゆる遺伝子変異を把握する画期的な検査です。

従来の遺伝子パネル検査がゲノム全体のわずか0.1%以下しかカバーできないのに対し、WGSはタンパク質をコードする領域だけでなく、非コード領域の変異も解析対象に含めます。

治療薬の選択・臨床試験への参加適否・原発不明がんの同定など、精密医療の土台となる豊富な情報を1回の検査で提供できる点がWGSの最大の強みです。一方で、検体の質や解釈の難しさなど、知っておくべき注意点もあります。検査を受けるかどうかを考えるための基礎知識を、できるだけわかりやすく解説します。

全ゲノム解析(WGS)が「がんを丸ごと見る」と言われる理由

全ゲノム解析は、文字通りゲノムの全体を解析対象とします。特定の遺伝子だけを調べる従来の検査と根本的に異なり、がん細胞に生じたあらゆる変異を見落としなく検出できる可能性を持っています。

30億塩基対を一気に読み解くシーケンシングの仕組み

ヒトのDNAはA・T・G・Cの4種類の塩基が約30億個並んだ配列でできています。WGSでは次世代シーケンサー(NGS)と呼ばれる装置を使い、腫瘍組織と正常組織(血液など)のDNAを同時に読み取り、両者を比較することで、がん細胞だけに生じた変異を特定します。

1回の解析で得られるデータ量は100ギガバイトを超えることもあり、解析には高度なバイオインフォマティクス(コンピューターによるゲノム情報解析)技術が欠かせません。クラウドコンピューティングの活用により、1検体あたり平均約13時間での自動解析が可能になってきました。

ゲノムの98%を占める「非コード領域」も解析対象に入る

遺伝子の中でタンパク質をつくる指令を持つ部分(エクソン)は全ゲノムの約1.2%にすぎません。残る98%以上を占めるイントロン・プロモーター・非コードRNA領域なども、がんの発症や進行に深く関わっていることが次々と明らかになってきました。

遺伝子パネル検査や全エクソーム解析ではこうした非コード領域の変異は検出できません。WGSはゲノムの全体像を把握することで、従来の検査では見落とされていた変異を発見できるという強みを持っています。

検査の種類カバー範囲主な特徴
遺伝子パネル検査ゲノムの0.01〜0.1%既知のがん関連遺伝子を効率よく調べる。コスト・時間が比較的少ない
全エクソーム解析(WES)ゲノムの約1〜2%タンパク質をコードする領域全体を解析。非コード領域は非対象
全ゲノム解析(WGS)ゲノムの約100%コード・非コード領域を網羅。変異シグネチャー・構造変異の検出に優れる

WGSはがんゲノム医療の流れの中でどこで使われるのか

がんゲノム医療は「検査→解析→エキスパートパネル(専門家会議)→治療提案」という流れで進みます。WGSはその出発点となる検査です。現在は標準治療が難しくなった段階で用いられるケースが中心ですが、診断の初期からWGSを活用する動きも世界的に広がっています。

日本では、がんゲノム医療の拠点病院(コア拠点病院・拠点病院)を中心に体制整備が進んでいます。WGSは遺伝子パネル検査よりも多くの情報を提供できる次の段階の検査として、急速に注目を集めています。

WGSで見えてくるがんの変異──点突然変異から構造変異まで

WGSが提供する情報の幅広さは、既存の検査とは一線を画します。がんの遺伝子変異には複数の種類があり、それぞれが治療反応性や予後に異なる影響を与えます。WGSはこれらを一度の検査でまとめて評価できます。

点突然変異・コピー数変化・構造変異を一度の検査でカバー

がんゲノムには大きく分けて3種類の変異が存在します。第1は1塩基が変わる点突然変異(SNV)や小さな挿入・欠失(インデル)。第2は特定の遺伝子領域が増幅または欠失するコピー数変化(CNA)。第3は染色体の大規模な再配列が起こる構造変異(SV)です。

遺伝子パネル検査はSNVとインデルの検出に特化しており、CNAや特にSVの検出精度に限界があります。WGSならこれら3種類の変異をすべてカバーでき、融合遺伝子・逆位・転座といった複雑な構造異常も検出できます。パネル検査で見落とされたドライバー変異(がんを直接引き起こす変異)が、WGSで見つかるケースも少なくありません。

変異シグネチャーが語るがんの「歴史」

細胞に変異が蓄積する背景には、紫外線・タバコの煙・DNA修復機能の異常など様々な原因があります。それぞれの原因は特徴的な変異のパターン(変異シグネチャー)を残します。WGSでは全ゲノムの変異を網羅的に解析することで、どの環境因子や分子機序が働いていたかを推定できます。

たとえば、タバコ関連のシグネチャーが強く認められれば、原発が肺がんである可能性が示唆されます。相同組換え修復欠損(HRD)に関連するシグネチャーが検出されれば、PARP阻害薬が効きやすい体質だと判断する根拠になります。変異シグネチャーは、がんの「過去の歴史」を解き明かす手がかりでもあります。

生殖細胞系列変異と体細胞変異を同時に評価できる強み

がんに関わる遺伝子変異には2種類あります。生まれつき持っている「生殖細胞系列変異」(遺伝性変異)と、生後にがん細胞だけに生じる「体細胞変異」です。WGSは腫瘍組織と血液(正常組織)のペア解析を行うため、両者を明確に区別できます。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因であるBRCA1/2の病的変異も、WGSで把握可能です。生殖細胞系列変異が見つかった場合には血縁者への影響も考えられるため、遺伝カウンセリングへのつなぎ役としてもWGSは機能します。

変異の種類生殖細胞系列変異体細胞変異
定義生まれつきすべての細胞に存在する変異生後にがん細胞のみに生じた変異
遺伝の有無血縁者に受け継がれる可能性あり基本的に遺伝しない
代表例BRCA1/2、APC、TP53の病的変異EGFR L858R、KRAS G12C など

全ゲノム解析を受けるにはどうすればいい?検査の流れと必要なサンプル

「実際に検査を受けたい」と思っても、どこで・どのように申し込めばよいのか、わからない方が多いでしょう。現状ではがんゲノム医療の拠点病院を中心に実施されています。流れと必要な準備をあらかじめ知っておくと安心です。

腫瘍組織と正常組織のペア解析が基本のやり方

WGSの精度を高めるには、がん細胞のDNAと、同じ患者さん由来の正常組織DNA(主に血液)の両方をそろえることが重要です。2つのサンプルを比較することで、もともとの遺伝的な個人差と区別しながら、がん細胞に特有の変異だけを抽出できます。

腫瘍サンプルは手術で摘出した組織か、生検によって採取した検体を使用します。新鮮凍結組織(FF)が最も高精度な解析を可能にしますが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織でも解析できるよう技術が進歩しています。

生検・手術・採血──どの検体からでも解析できるか

生検と手術のどちらから採取した検体でも、WGSの解析に利用できます。実際の臨床試験の報告では、生検検体と手術検体の間で腫瘍細胞分率に有意な差は認められませんでした。採血(末梢血)は正常組織のDNA源として使用するものであり、腫瘍細胞のDNA源としては用いません。

サンプルの種類特徴注意点
新鮮凍結組織(FF)DNA品質が高く解析精度が高い採取後の保存管理が必要
FFPE組織病理診断で保存されている検体を再利用できるDNAが断片化しやすく解析に制限が出ることがある
末梢血(正常DNA)採取が容易。正常DNAの比較対照として必須腫瘍DNA源にはならない

検査結果が届くまでの期間と報告書の見方

国内外の臨床試験の報告では、検体採取から報告書の作成まで中央値で11営業日(約2週間)での解析が完了しています。報告書には、検出された変異の種類・治療標的との関連性・変異シグネチャー・参加可能な臨床試験の候補などが記載されます。

報告書の内容は専門用語を多く含むため、担当医または遺伝カウンセラーとの面談で内容を確認することを強くお勧めします。「変異が見つかった=病状が悪い」ではなく、治療の選択肢を広げるための情報と捉えることが大切です。

WGSが精密医療につなぐ情報──治療選択から原発不明がんの同定まで

WGSの解析結果は、単に変異の有無を示すだけではありません。精密医療の核心である「個々の患者さんに合った治療」を選ぶための、豊富な情報を一括で提供します。

治療薬の選択・臨床試験の適合性を判断する根拠になる

WGSで検出されたドライバー変異に対応する分子標的薬が存在する場合、その薬の投与が検討できます。EGFR遺伝子のL858R変異であればエルロチニブ、BRAF遺伝子のV600E変異であればエンコラフェニブ、PIK3CA遺伝子の変異であればアルペリシブといった形で、変異と治療薬が直接つながります。

既存の治療薬が適合しなくても、変異プロファイルに基づいて参加可能な臨床試験が見つかるケースも多くあります。ある研究では、WGSを受けた固形がん患者の約70%で治療の選択肢を広げる有用な情報が得られたと報告されています。

HRD・MSI・TMBが免疫療法の効果予測に役立つ

近年とくに注目されているのが、免疫療法の効果予測指標の評価です。相同組換え修復欠損(HRD)はPARP阻害薬の効果と関連し、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)は免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブなど)の適応と関わります。腫瘍変異量(TMB)も免疫療法の効果予測に活用されます。

これらの指標は通常、それぞれ別の検査で確認する必要がありますが、WGSなら一度の検査でまとめて評価できます。患者さんの身体的負担の軽減と、貴重な検体を無駄なく活用できるという点でも大きなメリットがあります。

原発不明がんの起源を突き止める変異シグネチャーの力

転移性がんや難治性がんの中には、原発巣がどこにあるのか判明していない「原発不明がん」があります。WGSが解析する変異シグネチャーは、そのがん細胞がどの臓器環境で発生したかを示す手がかりになります。

タバコ関連の変異シグネチャーが強く認められれば原発が肺の可能性が高く、組織型を問わず肺がんに準じた治療が奏功するケースも報告されています。従来の病理検査だけでは判断できなかった原発巣の同定において、WGSは強力な補助ツールとなっています。

指標関連する治療法WGSで評価できる理由
HRD(相同組換え修復欠損)PARP阻害薬(オラパリブなど)多種類の変異シグネチャーを統合して高精度で評価できる
MSI-H(マイクロサテライト不安定性高)免疫チェックポイント阻害薬マイクロサテライト座位とMSI関連シグネチャーの両面から判定
TMB(腫瘍変異量)免疫療法の効果予測全ゲノムの変異を数えるためパネル検査より正確に算出できる

遺伝子パネル検査とWGSは何が違う?それぞれの検査の守備範囲

「遺伝子パネル検査を受けた」という方は多くいます。それとWGSは根本的に異なります。どちらを選ぶべきか、正しく知っておくことが大切です。

遺伝子パネル検査はゲノムのほんの一部しか見ていない

遺伝子パネル検査は、あらかじめ決められた数十〜数百のがん関連遺伝子のエクソン領域のみを解析します。カバーする範囲はゲノム全体の0.01%〜0.1%程度です。あらかじめリスト化された遺伝子に絞るため、スループットが少なくコスト効率は高い一方、リストにない変異は検出できません。

パネルのデザインが更新されなければ、新たに発見されたバイオマーカーへの対応が遅れるという弱点もあります。また、正常組織との比較を行わないことが多いため、生殖細胞系列変異と体細胞変異の区別が難しい場合もあります。

WGSが特に力を発揮する場面はここだ

遺伝子パネル検査と比較したとき、WGSが明確に優れている場面があります。ある比較研究では、WGSが遺伝子パネル検査で検出されなかったドライバー変異の80%近くを追加検出できたと報告されています。

WGSが特に有用な場面その理由
構造変異(融合遺伝子・転座)の検出パネル検査では検出精度が低いSVをWGSは高感度で特定できる
原発不明がんの解析変異シグネチャーで腫瘍の起源臓器を推定できる
HRD・MSI・TMBの精密評価全ゲノムのデータを使うことで誤差が少なく算出できる
遺伝性がんの家族歴評価生殖細胞系列変異を正確に同定し遺伝カウンセリングにつなげられる

どちらの検査を選ぶかを主治医と話し合うときのポイント

現状では多くの施設で遺伝子パネル検査が先行して実施されます。WGSを追加で検討する価値があるのは、パネル検査で有用な変異が検出されなかった場合、原発不明がんの解析が必要な場合、HRDやMSIをより精密に評価したい場合、遺伝性変異の有無を確認したい場合です。

「WGSが自分に向いているか」を主治医に積極的に聞いてみることも大切です。がん種・進行度・検体の質・施設の体制などを総合的に考慮して判断が下されます。検査は受けることが目的ではなく、治療につながる情報を得ることが目的です。

WGSには課題もある──検体の質・結果の解釈・遺伝情報の取り扱い

WGSは強力なツールですが、万能ではありません。患者さん自身が期待と現実のギャップをあらかじめ知っておくことが、後悔のない検査体験につながります。

腫瘍細胞分率が低いと結果が得られないことがある

WGSが成功するかどうかは、検体に含まれるがん細胞の割合(腫瘍細胞分率、TCF)に左右されます。TCFが15%未満の場合、シーケンシングは完了しても解析可能な結果が得られないことがあります。

ある臨床研究では、検査を予定した患者さんの約79%で解析可能な報告書が得られた一方、残る約21%では検体の質や量の問題から解析が困難でした。検体採取の時点から十分な量と質を確保することが、解析成功への第一歩です。

変異が見つかっても「すぐに治療につながる」とは限らない

WGSで多くの変異が見つかっても、すべてが直接治療に結びつくわけではありません。「機能的意義不明の変異(VUS)」と呼ばれる、現時点では病的かどうか判断できない変異も多数検出されます。

こうした情報が不安を生むこともあるため、報告書の内容は担当医と一緒に丁寧に確認することが大切です。VUSが見つかったことで治療が変わる可能性は限られており、研究の進展とともに意義が明らかになる場合もあります。

遺伝情報の取り扱いと家族への影響を知っておく

WGSで生殖細胞系列の病的変異が判明した場合、その情報は本人だけでなく血縁者にも関わります。BRCA1/2の変異が判明すれば、親・兄弟姉妹・子どもにも遺伝している可能性があるため、家族への情報提供と遺伝カウンセリングが検討されます。

遺伝情報の共有は、家族関係や心理的な負担も伴うデリケートな問題です。WGSを受ける前に遺伝カウンセラーへ相談できる機会を設けておくことで、こうした問題に落ち着いて向き合えます。

WGSを受ける前に確認しておきたいこと

  • 保存されている腫瘍検体の種類・量・保存状態を事前に担当医に確認する
  • 報告書の結果を一緒に解説してもらえる体制(エキスパートパネル・担当医面談)があるか確認する
  • 生殖細胞系列変異が見つかった場合の遺伝カウンセリング窓口を把握しておく
  • 「変異が多く見つかる=病状が悪い」ではないと事前に理解しておく
  • VUSが検出された場合の対応方針を主治医と話し合っておく

日本でのがんWGS普及はどこまで進んでいるのか

がんのWGSを臨床に取り入れる動きは、日本でも国主導で着実に進んでいます。世界各国の事例と比較しながら、現状を整理します。

国が進める全ゲノム解析等実行計画とは

日本では2019年12月に「全ゲノム解析等実行計画」(初版)が策定されました。2022年の改訂版では、解析結果を患者・国民に迅速にフィードバックすることが目標として掲げられています。

2023年4月には事業実施準備室が設置され、がん診療連携拠点病院を中心に臨床WGSの体制整備が加速しました。2023年9月時点で国内1万2000症例以上のWGSが完了しており、5年以内に10万症例のゲノムデータ収集が目標とされています。

日本のがんWGS推進における主な体制

  • 厚生労働省の専門委員会が実施方針を決定し、がんゲノム医療中核拠点病院12か所・拠点病院33か所が参加
  • シーケンシング企業と中央データ解析センターが連携し、統一パイプラインで変異を解析する体制を構築
  • データ解析センターが結果を専門家パネルへ提出し、医師への報告を通じて新たな治療・臨床試験参加機会を提供
  • 倫理・法律・社会的課題(ELSI)および患者・市民参画(PPI)についても検討が並行して進む

英国・米国・韓国との比較から見えてくる日本の立ち位置

英国では2012年に始まった「10万人ゲノムプロジェクト」を通じて、小児がんや希少疾患のWGSが国家医療サービスとして提供されています。米国では商業的なWGSプラットフォームが先行し、遺伝子パネル検査から移行する施設が増えています。

韓国ではアジョウ大学病院などを中心に多施設共同のWGS臨床試験が進み、採取から報告まで中央値11営業日という実績が報告されています。

日本は後発ながら国家主導の計画が着実に動き出しており、データ共有の仕組みや倫理的な検討も並行して進められています。患者さんにとっては、まず主治医やがんゲノム医療の拠点病院に相談することがWGSへのアクセスへの第一歩です。

よくある質問

全ゲノム解析(WGS)は、遺伝子パネル検査を受けた後でも追加で受けられますか?

はい、遺伝子パネル検査を受けた後でも、原則として全ゲノム解析を追加で受けることは可能です。ただし、腫瘍組織の検体が十分に保存されているかどうかが重要な条件になります。

遺伝子パネル検査で有用な変異が検出されなかった場合や、原発不明がんの解析が必要な場合などに、WGSが次の選択肢として浮上することが多いです。担当医に「WGSの適応があるか」を積極的に相談してみてください。

全ゲノム解析(WGS)の検査結果が届くまで、どのくらいの期間がかかりますか?

国内外の臨床試験の報告では、検体採取から報告書の作成まで中央値で11営業日(約2週間)という結果が示されています。ただし、施設・検体の質・解析機関の状況によって変動します。

ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体を使用する場合は、新鮮凍結組織に比べて解析に時間がかかることがあります。具体的なスケジュールは、検査を依頼した施設に直接確認することをお勧めします。

全ゲノム解析(WGS)で生殖細胞系列変異が見つかった場合、家族にも影響がありますか?

全ゲノム解析で生殖細胞系列の変異(遺伝性の変異)が発見された場合、その変異は血縁者にも受け継がれている可能性があります。たとえばBRCA1/2の病的変異であれば、親・兄弟姉妹・子どもにも遺伝している確率があり、家族への情報提供と遺伝カウンセリングが検討されます。

遺伝情報の共有には心理的・家族関係的な影響も伴うため、全ゲノム解析を受ける前に遺伝カウンセラーへ事前相談の機会を確保しておくことが、落ち着いて向き合うための備えになります。

全ゲノム解析(WGS)は、どのようながんに向いていますか?

全ゲノム解析は固形がん・血液がんを問わず幅広いがん種に適用できます。とくに、標準治療が難しくなった進行・再発がん、遺伝子パネル検査で有用な変異が見つからなかった場合、原発不明がん、小児がんや希少がんなど、既存の検査では情報が十分に得られないケースで力を発揮します。

がんの種類によって適応の優先度が異なるため、担当医との相談のうえで検討してください。全ゲノム解析が受けられる施設(がんゲノム医療の拠点病院など)への紹介を主治医に依頼することもできます。

全ゲノム解析(WGS)で変異がたくさん見つかると、不安になりませんか?

確かに、全ゲノム解析では従来の検査では検出されない多数の変異が見つかります。その中には「機能的意義不明の変異(VUS)」と呼ばれる、現時点では病的かどうかまだ判断できない変異も含まれます。これらすべてが「治療が必要な異常」を意味するわけではありません。

結果を正しく解釈するには、担当医や遺伝カウンセラーとの丁寧な面談が大切です。「変異が多く見つかった=病状が悪い」と早合点せず、専門家とともに一つひとつの意味を確認していくことが、検査を受けた後の不安を和らげる最善の方法です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医