がんの訪問看護は医療保険?介護保険?知っておきたい優先順位と使い分けのルール

がんの訪問看護は医療保険?介護保険?知っておきたい優先順位と使い分けのルール

がんで訪問看護を使うとき、介護保険の認定があれば原則は介護保険、末期がんなど制度で定められた状態なら医療保険と、使う保険は認定と病状で決まります。費用の安さや希望だけで選べる仕組みではありません。

退院後の痛みや薬の管理が心配なら、どちらの保険になるか分からない段階でも主治医へ相談できます。保険の区分を確かめるのは、そのあとでもかまいません。

この記事では、訪問看護で受けられる手当て、保険の優先順位、回数と費用の違い、利用開始の準備と夜間の連絡方法を解説します。

訪問看護で受けられる手当てと暮らしの相談

訪問看護では、自宅に来る看護師が体調を確かめ、主治医の指示に沿った処置や療養生活の相談に応じます。痛みの変化から家族の介助の負担まで、家で過ごすうえで困っている場面を伝えられます。

痛みや息苦しさを日々の生活と合わせて確認

痛みや息苦しさは、強さに加えて、食事や睡眠にどれほど響いているかも看護師が確かめます。

診察室でうまく説明できなかった症状も、自宅なら寝返りやトイレへの移動など、実際につらくなる動作を見てもらえます。食べられた量や薬を使った後の変化を共有すると、主治医へ伝える情報が具体的になり、次の診察までの対応を相談しやすくなります。

また、定期訪問の日に症状が軽くても、前の晩に眠れなかった痛みや、動いたときだけ生じる息切れを伝えましょう。

薬や点滴の管理は主治医の指示に沿って行う

薬が予定どおり使えているかの確認や、指示された点滴の管理も訪問看護で相談できます。皮膚に傷がある場合は、傷の状態を見ながら必要な処置や手入れの方法を確認します。

ただし、看護師の訪問だけで薬の処方や量の変更が決まるわけではありません。吐き気で薬を飲めない、痛み止めを使ってもつらいといった変化は、主治医への報告と指示の確認につながります。

訪問看護と主治医が日ごろから双方向に連絡を取る体制は、自宅での療養を支えます。日本の訪問看護事業所を対象とした研究でも自宅での看取りとの関連が報告されていますが、事業所単位の調査であり、個人の療養先を予測する根拠としては弱い結果です。

身の回りの介助と家族の不安も相談できる

体を拭く方法や楽な姿勢への整え方など、病状に合わせた介助を看護師と確認できます。どこまで自分で動けるか、どの動きに手助けが要るかを一緒に確かめると、家で続けられる方法が具体的になります。

夜を越せるか心配なまま家族だけで介助を担うのは、心身ともに負担の大きい状況です。家族が眠れていない、処置が怖いといった不安も、訪問看護師が一緒に対処を考える相談の対象です。

家族の気持ちを支える関わりは、日本の訪問看護師への調査でも整理されています。この研究は関わりを評価する尺度の開発を目的としており、不安を軽くする効果の検証は対象外です。

訪問看護の保険は認定と病状で決まる

使う保険を確かめるときは、介護保険の認定の有無と、医療保険になる例外に当たるかを確認します。年齢だけで決めず、現在の病状と主治医の指示を合わせて判断する仕組みです。

要支援・要介護の認定があれば介護保険が原則

要支援・要介護は、日常生活でどれほど手助けが必要かを市区町村が認定する区分で、この認定を受けた方の訪問看護は原則として介護保険が優先です。がんの診断名が付いているだけで、すべて医療保険に切り替わるわけではありません。

一方、認定があっても、病状が末期がんなど制度上の例外に該当すれば、訪問看護は医療保険で扱われます。

現在の状態訪問看護で使う保険の原則確認する情報
要支援・要介護の認定があり、医療保険の例外に当たらない介護保険認定内容と訪問の計画
末期の悪性腫瘍に該当する医療保険主治医の病状判断と指示
一時的に頻回の看護が必要で、特別な指示書が出ている指示期間中は医療保険指示書の期間と終了後の予定
40歳未満、または要支援・要介護の認定がない医療保険の対象となるかを確認訪問看護の必要性と主治医の指示

表の区分に当たるか判断しにくいときは、年齢、認定の有無、主治医から受けた病状の説明を訪問看護師へ伝えると確認が進みます。

40歳未満でも医療保険で相談できる

40歳未満で介護保険を使えない方も、主治医が必要性を認めるなどの条件を満たせば、医療保険で訪問看護を受けられます。

相談するときは、診断名だけでなく、自宅で薬を管理できない、体調が変わると通院が難しいなど、看護を必要とする場面を添えると具体的です。年齢を理由に相談を控えず、家で受けたい手当てを主治医へ伝えられます。

急な悪化では一定期間だけ扱いが変わる

病状が急に悪くなり、一時的に頻回の訪問が必要と認められた場合は、特別訪問看護指示書という医師の書面に基づき医療保険での看護が行われます。介護保険で利用していた方も対象になり得ます。

ただし、特別な指示には期間があり、終了後は病状と認定の状況に応じて使う保険を確認します。末期がんとして医療保険で扱われる場合と、一時的な指示期間だけ扱いが変わる場合は、切り替わる理由が異なるためです。

保険が変わると説明を受けたら、適用の開始日、終了の予定、翌月の請求の見通しを訪問看護師に確かめましょう。

末期がんでは医療保険が優先される

末期がんの訪問看護が医療保険になる直接の理由は、制度上の例外として定められているためです。症状が変化しやすい時期の看護は、介護保険の認定がある方も医療保険の仕組みで受けます。

「厚生労働大臣が定める疾病」に含まれる

制度の「厚生労働大臣が定める疾病」は、訪問看護を医療保険で扱う例外となる病気などを指定した区分です。その中に「末期の悪性腫瘍」、つまり末期がんが含まれています。

どの状態に該当するかは、病状を踏まえた主治医の判断を訪問看護の指示に反映して確認します。病状は、転移の有無や痛み止めの使用だけでなく、診療で得た情報を合わせて評価するためです。

この扱いは、医療保険を所管する厚生労働省の地方機関、近畿厚生局の対象者の説明で確認できます。保険区分について尋ねる際は、現在の訪問看護がどの病状の判断に基づいているかを主治医へ確かめると、説明の行き違いを減らせます。

症状が変わる時期は訪問の予定も見直す

末期がんでは痛みや食欲の低下が進む時期に、必要な手当てと訪問の組み合わせを見直します。予定表の回数を守るために、つらさの相談を次の訪問日まで待つ必要はありません。

カナダで在宅ケアを受けたがんの患者さん2万7,295人の死亡前の記録を調べた観察研究では、痛みや食欲低下などが最後の1か月に増えていました1)。これは病状変化への備えを支える結果であり、日本で使う保険や訪問回数を決める根拠とは区別します。

食事量が急に落ちた、薬を使う回数が増えたなどの変化は、訪問看護師へその日の状態として伝えると、主治医への相談や訪問計画の調整につながります。

医療保険への切り替えは看護の打ち切りではない

保険の切り替えは費用を扱う制度の変更であり、看護を終えるという意味ではありません。継続する処置や訪問予定を、切り替えの日付と合わせて確認できます。

訪問看護が医療保険になっても、訪問介護でホームヘルパーが身体の介助を行うなど、別の介護保険サービスを条件に応じて組み合わせられます。同じ訪問看護を希望で両方の保険に分けて利用するのとは異なり、それぞれのサービスの保険区分に従う扱いです。

訪問看護の回数と費用の見通し

来てもらえる回数は、保険の区分に加えて、病状に必要な看護と事業所の受け入れ体制で決まります。月の費用は回数だけでは決まらないため、訪問予定と追加費用を合わせた見積もりを出してもらいましょう。

週の日数の原則と末期がんの例外

医療保険の訪問看護は原則として週3日以内ですが、末期がんなどでは必要に応じて週4日以上の訪問が認められます。介護保険では週3日という共通の枠ではなく、ケアプランと呼ぶサービス利用計画や月の利用限度に沿って組み立てます。

区分日数の基本予定を決める際の確認
医療保険の原則週3日以内処置と症状に必要な頻度
医療保険の末期がんなど必要に応じて週4日以上主治医の指示と受け入れ体制
介護保険利用計画に沿って設定月の利用限度と他のサービスの利用量

日数の原則は厚生労働省の訪問看護対象者の図に示されており、「週3日」と「週3回」は同じ意味ではありません。同じ日に複数回来てもらいたい場合も、病状と制度上の条件を別に確かめます。

なお、例外に該当しても希望した日数が自動的に確保されるわけではなく、必要な看護に応じた計画が前提です。近畿厚生局の訪問看護療養費の説明でも、状態を踏まえず一律に回数を決めない扱いが示されています。

自己負担は割合と月の利用量を合わせて見る

介護保険の自己負担は原則1割で、一定以上の所得がある方は2割または3割です。医療保険の負担は加入している保険や年齢などで異なるため、訪問看護ステーションへ資格情報を示して自分の割合を確かめます。

介護保険には、介助の必要な程度を示す要介護度などの区分ごとに、月の支給限度額という利用量の枠があります。以下は厚生労働省の介護サービス情報公表システムの利用料説明に基づき、1単位10円で換算した例です。

認定区分の例月の支給限度額枠いっぱい利用した場合の1割相当額
要支援150,320円5,032円
要介護1167,650円16,765円
要介護5362,170円36,217円

この枠は対象となる在宅サービス全体で使うもので、訪問看護だけの月額料金ではなく、利用しない分の支払いも不要です。地域やサービスで単位の金額が変わり、枠を超えた分は全額自己負担となるため、介護の利用計画を作るケアマネジャーに現在の利用量を確認できます。

夜間の体制と臨時訪問の費用を分けて確認

夜間の相談体制を整えるための加算と、実際に臨時訪問を受けたときの費用は、分けて説明を受けると月の見通しを立てやすくなります。加算とは、一定の体制や対応に対して基本の費用に上乗せされる料金です。

夜間対応の有無は保険の種類だけでは決まらず、契約する事業所の体制や利用の同意によって変わります。医療保険の24時間対応体制については、近畿厚生局の説明に、時間外の連絡方法を記した文書の交付と同意が示されています。

契約前には、定期訪問だけの月額見込み、臨時訪問で増える項目、交通費など保険外の費用を訪問看護師と確認しましょう。

利用開始は主治医への相談から

自宅で看護を受けたいときは、まず主治医に生活上の困りごとを伝え、訪問看護の指示を相談します。訪問先が決まった後は、必要な手当てと訪問日、緊急時の連絡方法を具体化します。

診察で困っている場面と希望を伝える

主治医には「家で何が難しいか」と「どのように過ごしたいか」を伝えると、看護を必要とする状況が明確になります。

たとえば、退院前の診察で、本人が夜の痛みで薬の使い方に迷っているなら、その時間帯と迷う理由を説明し、自宅で服薬を見てもらいたいと相談できます。家族が薬を準備している場合も、本人がどこまで扱えて、どの作業を家族に任せているかを伝えましょう。

また、外出のために体力を残したい、入浴後にひどく疲れるといった生活の希望も、訪問で優先する看護を決める材料になります。

指示書と初回訪問の予定を確かめる

訪問看護には、主治医が看護上の注意や処置などを伝える訪問看護指示書が必要です。指示書と訪問看護の計画に基づいて開始する流れは、厚生労働省・近畿厚生局の概要にも示されています。

初回に備える情報は、薬の内容、最近の症状、必要な処置、家族が在宅できる時間です。自宅で使っている薬を見せられるようにしておくと、飲み忘れや処方の変更を確認しやすくなります。

開始日が決まったら、初回までに症状が変わった場合の連絡先も主治医と確認しましょう。

自宅の処置と時間外対応を受けられるか確かめる

訪問先を決める際は、住所への訪問が可能かに加えて、必要な処置を継続できるか、時間外に相談できるかを確かめます。昼間の定期訪問と夜間の対応を一緒に確認すると、家で困ったときの空白を減らせます。

自宅で最期まで過ごす希望には、訪問診療を行う医師と訪問看護が組み合わさり、夜間も連絡がつく体制が支えになります。日本で退院したがんの患者さんを対象とした研究でも自宅での看取りとの関連が示されていますが、関連する条件を調べた研究であり、自宅で過ごせる結果を保証するものではありません。

夜間や休日に容体が変わったときの連絡

夜間や休日の変化は、事前に決めた訪問看護の緊急連絡先へ相談し、電話での助言や訪問の要否を確認します。生命に関わる急変では、連絡の順番にこだわらず救急要請します。

休日にもつながる番号を手元に置く

普段の事業所の電話番号と、時間外の緊急連絡先が同じかを利用開始時に確かめます。本人の携帯電話に登録するだけでなく、家族が見つけられる紙にも残しておくと、本人が話せないときも連絡できます。

また、電話がつながらない場合の次の連絡先と、主治医へ直接連絡する場面も訪問看護師と決めておきましょう。留守番電話になった際の折り返し方法や、待っている間に悪化したときの対応まで決めておくと、連絡を取る家族も迷いにくくなります。

いつから何が変わったかを電話で伝える

電話では名前と現在地を伝えたうえで、いつもの状態との違いを説明します。記録するのは、症状が始まった時刻、薬を使った時刻、使った後の変化。数字が分からない項目は無理に測ろうとせず、目の前の様子を優先して伝えられます。

伝える内容説明するポイント
変化が始まった時期夕食後から、眠っていた途中からなど
今の様子会話の可否、呼吸の苦しさ、普段との違い
行った対応使った薬の名前と時刻、その後の変化
家で対応できる状況本人が1人か、付き添える家族がいるか

訪問看護師から助言を受けた後は、どの変化で再び電話するかも確かめると、その後の観察につながります。

シンガポールの在宅ホスピス、つまり自宅で終末期のケアを行う事業所の電話記録では、時間外の相談が家族の不安を受け止め、必要時の訪問や入院につながっていました。単独の事業所の結果ですが、電話で状況を確かめて対応を選ぶ働きを示しています。

強い呼吸困難や意識の変化は待たずに対応

呼びかけに反応しない、突然強い息苦しさが出て会話できないなど生命に関わる急変では、119番へ救急要請してください。自宅での看取りに備えた具体的な対応を主治医と決めている場合は、その方針に沿って指定の緊急連絡先へ直ちに連絡します。

日本の在宅医療で臨時往診を調べた研究でも、発熱や息苦しさは急な対応につながる症状でした。医師の往診の記録であり、訪問看護師が来る回数を示す結果ではありません。

たとえば、休日の夜に自宅で痛みが強まり、指示どおりに薬を使ってもつらさが続くなら、本人か家族が薬の名前と使用時刻を手元に置いて緊急連絡先へ電話します。訪問の曜日や残りの利用回数を気にして待たず、今の症状を伝えて必要な対応を確かめます。

よくある質問

訪問看護を頼みたいとき、主治医には何と伝えればよいですか?

「自宅で看護師に体調や薬の使い方を見てもらいたい」と伝え、生活で困っている場面を添えると相談が進みます。夜に痛みが強くなる、吐き気で薬を飲みにくいなど、いつ何が難しいかが伝わる説明で十分です。

相談の際に、指示書を依頼する医師と、初回訪問までの連絡先も確認しましょう。

夜間に電話したら、必ず看護師が来てくれますか?

電話の内容をもとに必要な対応を判断するため、毎回の訪問が約束されるわけではありません。電話での助言、臨時の訪問、主治医への相談などから、その時点の状態に応じて対応が決まります。

家で様子を見る説明を受けたら、どの症状が出たら再度連絡するかを確かめると、その後も判断しやすくなります。

次の訪問日より前に痛みが強くなったら、予定を早めてもらえますか?

訪問を早められるかは、症状の緊急性と必要な看護、事業所の体制を確認して決まります。まず訪問看護師に、痛みが変わった時刻と使った薬、その後の変化を伝えると、追加の対応を相談できます。

指示された薬を使ってもつらさが続くなら、予定日を待たずに連絡してください。

毎回、家族が訪問に同席する必要がありますか?

同席が必要かは、本人の体調と受ける看護、家族へ確認する内容によって決まります。家族が留守になる時間を訪問看護師に伝え、本人だけで対応できるか、鍵の開け方や訪問後の連絡をどうするかを開始前に相談できます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医