介護ベッドのレンタルはがん治療に不可欠|費用・選び方と介護保険適用のルール

介護ベッドのレンタルはがん治療に不可欠|費用・選び方と介護保険適用のルール

がんの療養中に起き上がりや立ち上がりがつらくなってきたら、介護ベッドのレンタルは自宅での動作を助ける選択肢です。朝、布団から起きるだけで疲れる、家族に体を引き上げてもらっているといった状態なら、今の寝具を見直す理由になります。

必要な機能は体の状態で変わり、介護保険で借りられるかどうかは年齢や認定の結果でも変わります。借りる前に、寝床で困っている動作と部屋の広さを確かめておくと、機種を選ぶときに迷いにくくなります。

この記事では、介護ベッドが役立つ場面、機能とマットレスの選び方、保険の条件と費用、設置前の準備を解説します。

介護ベッドを検討したい体の変化

自分で体を起こす力が落ちたり、横になって過ごす時間が増えたりしたら、介護ベッドを検討できます。がんという病名だけで決めず、寝床で困っている動作を確かめるのが出発点です。

起きるたびに疲れるなら寝床を見直す

背中を持ち上げる機能のあるベッドは、上半身を起こす動作を補い、座る姿勢へ移る助けになります。横向きになる途中で力が尽きる、床から立つと膝や腰がつらいなど、困る場面によって必要な調整は違います。

自宅で暮らすデンマークの進行がんの患者さん237人を調べた研究では、39%が電動で調整できるベッドを持ち、27.4%には必要な福祉用具が足りていませんでした1)。福祉用具とは体の動きや日常生活を助ける道具で、この結果は日本の利用割合やベッドの治療効果を示したものではありません。

借りる相談では「体力が落ちた」だけでなく、どの動作で手助けが要るかを伝えると、必要な機能を絞れます。

横になる時間が増えたときの姿勢

長く寝床で過ごすなら、休む姿勢に加えて、食事や家族との会話のために体を起こせるかも見ておきましょう。背中の角度を調整できると、枕を重ねるだけでは保ちにくい姿勢を取りやすくなります。

ただし、痛みや息苦しさをベッドだけで解決しようとせず、症状に合う姿勢や動かしてよい範囲を主治医や看護師に確かめます。骨にがんが広がっているなど動作に制限がある人は、自己判断で背中を大きく曲げる操作は避けます。

なお、急に強い息苦しさが出たときは、用具の調整を待たず医療機関へ連絡してください。

家族に抱き起こしてもらう負担

家族が毎回かがんで体を支えているなら、ベッドの高さを変えられる利点が大きくなります。介助が増えると家族の腰や背中に負担がかかるため、本人の動きだけでなく、支える人の姿勢も選定に含めます。

大きなベッドを置くと、暮らしが病室のようになると感じて迷うかもしれません。選ぶ基準は、自分でできる動作を残しながら休める寝床。寝室をどのように使い続けたいかも伝えると、サイズや置き方を相談しやすくなります。

体を持ち上げる負担が増えているときは、福祉用具の選定や調整を行う福祉用具専門相談員に、普段の介助を見てもらいましょう。

介護ベッドの機能は起き上がりと立ち上がりで選ぶ

背上げ、高さ調整、脚上げは、それぞれ助ける動作が違います。機能の数を先に決めるより、実際に寝て座って動けるかを確かめるほうが、使いやすい機種を選べます。

背上げは上半身を起こす助けになる

背上げとは、寝床の背中側を持ち上げる機能です。上半身を起こす力を補えますが、その後に足をベッドの外へ下ろして座る動作まで、自動で済むわけではありません。

機能助ける場面試すポイント
背上げ横になった姿勢から上体を起こす背中や腹部の圧迫感
高さ調整立ち上がりと家族の介助座ったときの足の接地
脚上げ膝を曲げた姿勢の調整脚の痛みと体のずれ

背中を上げる途中でお尻が足元へずれる人は、機能を足す前に体の位置や操作の順番を見直しましょう。福祉用具専門相談員に、寝返りから端に座るまでを続けて見てもらうと、途中で困る動作も伝わります。

立つときと介助を受けるときで高さを変える

立ち上がるための高さは、ベッドの端に座ったときに足裏が床へつき、体を安定させられる位置を基本に調整します。低すぎる寝床から立つには脚の力が要り、高すぎると足が浮いて体を支えにくくなります。

高さを体に合わせる意義は乗り降りを調べた研究でも示唆されていますが、健康な成人の実験結果をがんの患者さんへそのまま当てはめるのは適切ではありません。身長だけで数値を決めず、マットレスに座って沈んだ状態で調整します。

一方、着替えなどの介助を受ける間は、家族が深くかがまずに済む高さが役立ちます。介助後は本人が降りる高さへ戻すまでを、同じ操作として家族と共有しましょう。

操作のしやすさと手すりの位置も試す

手の力が弱い人や指先がしびれる人は、リモコンのボタンを押し続けられるかが使いやすさを左右します。寝たまま届く位置に置けるか、明るさを落とした寝室でも操作を区別できるかまで確かめると、日中の試用だけでは分からない不便に気づけます。

つかまって立つための手すりと、寝具などの落下を防ぐ柵は、用途の異なる部品です。柵に強く体重をかけてよいかは製品によるため、握る場所を福祉用具専門相談員に指定してもらいます。

多機能でも自分で扱いにくければ、毎日の動作を十分に助けられないため、必要な機能と操作の負担を一緒に比べましょう。

床ずれ対策はマットレスと姿勢の調整を組み合わせる

寝返りが難しい人は、体にかかる圧力を広い面に分散するマットレスが選択肢です。寝具を替えた後も、皮膚の変化や本人の痛みに応じて姿勢を調整します。

お尻やかかとに圧力が集中していないか

床ずれは、同じ場所が長く圧迫されて皮膚やその下の組織が傷つく状態で、褥瘡とも呼ばれます。お尻の中央にある骨の周り、かかとなど、寝具に当たる部分へ圧力が集まるときは注意が必要です。

自分で寝返りを打てるか、体をずらすと痛むかによって、寝具に求める働きが変わります。やせて骨が出てきた人や、同じ姿勢で過ごす人は、柔らかい寝心地だけを基準にせず、体圧分散という圧力を広く逃がす働きを確かめます。

体を浮かせても赤みが続く、皮膚がむける、触れると痛むといった変化があれば、主治医や看護師へ連絡してください。

エアマットレスとウレタンを比べる

体圧を分散する寝具には、空気を使うエアマットレスや、素材と構造を工夫した高機能ウレタンマットレスがあります。長く横になる人の床ずれ予防に役立つ可能性がある一方、製品の種類ごとの優劣は十分に確かとはいえない比較もあります。

寝具の種類選ぶときの視点実物で確かめる点
高機能ウレタン圧力の分散と動きやすさ沈み込みと端で座る安定感
エアマットレス空気で体を支える働き揺れ、音、操作や管理の負担

英国で床ずれの危険が高い人2,029人を調べた比較試験では、エアマットレスと高機能ウレタンの間で、床ずれができるまでの期間に主な解析では統計的な差が示されませんでした2)。がんの在宅療養に限った結果ではないため、寝返りの力や好みも含めて選びます。

空気の揺れで休めない、端に座ると不安定になると感じたら、我慢して使い続けず福祉用具専門相談員へ調整を頼みましょう。

姿勢を変える間隔はつらさに合わせる

体位変換とは、体の向きや姿勢を変えて同じ場所の圧迫を減らす介助です。全員に共通する決まった間隔がよいという根拠は十分ではなく、寝具の働き、皮膚の状態、動かすときの痛みを合わせて調整します。

たとえば、自宅で夜に向きを変えるたびにお尻が痛むなら、痛む場所と姿勢を家族に記録してもらい、看護師へ伝えると相談しやすくなります。自宅で皮膚の観察や療養の手当てを行う訪問看護の看護師にも、無理のない支え方を確認できます。

最期の時期には皮膚の状態が弱り、手当てをしても床ずれを完全には防げない場合があります。本人が眠れる時間や痛みの軽減も大切にし、家族だけで介助の回数を増やし続けないよう調整しましょう。

介護保険で借りる条件は年齢と認定で分かれる

介護保険で介護ベッドを借りるには、制度を利用できる条件と、ベッドの貸与対象になる条件の両方を満たす必要があります。保険上の名称は「特殊寝台」で、原則の対象は要介護2以上です。

65歳以上と40〜64歳で異なる利用条件

要支援・要介護は、暮らしの中でどの程度の手助けが必要かを市区町村が認定した区分です。要支援は1・2、要介護は1〜5に分かれ、この手助けの必要度を示す段階を要介護度と呼びます。

65歳以上は原因の病気を問わず、認定された状態に応じて介護保険を利用します。40〜64歳の医療保険加入者は、特定疾病という制度で定められた病気が原因で介護などが必要になったと認められるのが条件です。

がんを理由に40〜64歳で利用する際は、医学的な知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと医師が判断したものに限られます。診断名だけでは決まらないため、借りたい時期と動作の困難さを主治医に伝え、該当するかを確認します。年齢による条件は、制度を所管する厚生労働省の介護保険の説明に示されています。

要介護2以上なら必要な機能を相談する

特殊寝台やその付属品は、原則として要介護2〜5の人が貸与対象です。要介護度を満たしていても、どのベッドを何のために使うかは、生活の状況に合わせて決めます。

認定の区分特殊寝台の扱い相談する内容
要介護2〜5原則として貸与対象困っている動作と必要な機能
要支援1・2、要介護1原則対象外、例外の制度あり起き上がりや寝返りの困難さ

この区分は厚生労働省の福祉用具貸与の給付対象に基づきます。ケアマネジャーという介護サービスの利用計画を調整する専門職へ希望を伝えると、福祉用具専門相談員と機種や付属品を検討できます。

相談先が決まっていない人は、地域の介護相談を受ける地域包括支援センターに、ベッドを借りたい事情を伝えましょう。

要支援や要介護1でも例外を確認できる

要支援や要介護1でも、日常的に起き上がりや寝返りが難しい状態なら、例外的な給付を検討できます。認定調査の結果で判断する方法と、医師の医学的な所見などを基に市区町村が確認する方法があります。

病状が急速に悪化して近くベッドが必要になると確実に見込まれる状態なども、確認の対象です。後者では医師の所見に加え、ケアマネジャーなどが必要性を検討し、市区町村が書面などで確認します。こうした扱いは、自治体が手続きを示した横浜市の例外給付の説明でも確認できます。

ただし、がんであれば自動的に例外になる制度ではありません。必要書類や利用開始日の扱いは、住んでいる市区町村の運用をケアマネジャー経由で確かめてから契約します。

レンタル費用は付属品を含めた月額で確かめる

毎月払う額は、ベッド本体と付属品の貸与価格、自己負担割合、保険の限度額で決まります。広告の本体価格だけで判断せず、使う組み合わせで見積もりを受け取るのが確実です。

1〜3割負担で月に払う額を計算する

介護保険の自己負担は原則1割で、一定以上の所得がある人は2割または3割です。自分の割合は、利用時に負担する割合を示す「介護保険負担割合証」で確認できます。

月額の見方を示す計算例として、保険対象の貸与価格が合計10,000円なら、支払う額は次のようになります。10,000円は相場や特定の製品価格を表す数値ではなく、厚生労働省のサービス利用料の説明と同じ費用額を用いた例です。

自己負担割合計算月の自己負担
1割10,000円×0.11,000円
2割10,000円×0.22,000円
3割10,000円×0.33,000円

実際の月額は、機種に加えてマットレスや手すりの組み合わせでも変わるため、総額と本人が払う額を分けて提示してもらいましょう。

支給限度額はベッド専用の予算ではない

支給限度額とは、在宅の対象サービスを介護保険で利用できる月の上限です。要介護2では19,705単位で、1単位10円として計算すると197,050円に当たり、厚生労働省の支給限度額の資料にも示されています。

この金額はベッドだけに使える枠でも、現金で受け取れる額でもありません。対象サービスを合計して管理し、限度額を超えた分は全額自己負担となるため、ケアマネジャーにベッドを加えた後の利用額を確認します。

また、サービスによっては地域などで単位の換算額が変わるため、限度額いっぱいまで使った月の支払額を一律には決められません。本人の割合と利用計画を基に、保険対象分と全額負担分を分けて見積もってもらいます。

借り始めと返却時の料金も契約前に聞く

月の途中から借りるときや返却するときの請求方法は、契約内容を確かめます。本体に含まれる付属品、搬入条件による費用、交換時の料金も明細にすると、毎月の請求との差を減らせます。

なお、40歳未満や認定前など介護保険を使えない時点では自費レンタルという借り方があり、自治体の若年がん患者在宅療養支援事業などの有無は住んでいる市区町村で確かめます。

保険の扱いが未確定のまま借りるなら、確定までの請求額と、その後に契約を切り替えられる条件を福祉用具専門相談員へ確認しましょう。手続きが済めば以前の費用も戻ると決めつけず、利用開始日を含む説明を受けてから契約します。

介護ベッドを置く前に部屋と家族の動きを確かめる

ベッドが部屋に収まっても、乗り降りや介助の場所が足りなければ使いにくくなります。搬入経路から夜間の移動まで、実際に使う場面を想定して置き場所を決めます。

玄関から寝室まで運べるかを測る

寝室の広さに加え、玄関や廊下の幅、曲がり角、階段などが搬入の可否に関わります。必要な幅は機種や分解の方法でも変わるため、自己判断で入ると決めず、寸法を福祉用具専門相談員へ渡します。

  • 搬入経路 … 玄関、廊下、階段の幅と曲がり角
  • 設置範囲 … ベッド本体と柵を含めた外寸、扉の開閉
  • 電源 … コンセントの位置とコードを通す場所

また、写真や動画を添えると、寸法だけでは伝わらない家具の位置や出入りのしにくさを共有できます。

降りる側と介助する側に空間を残す

普段どちら側から起きるかを決め、その側へ足を下ろして立てる空間を確保します。車いすへ移る人なら横につけられるか、家族に着替えを手伝ってもらう人なら体へ手を伸ばせるかも、置き方を決める条件です。

家族が反対側から体を支える必要があれば、壁に寄せすぎると介助しづらくなります。ベッドの両側に常に同じ広さを空けるという決め方ではなく、本人と家族が行う動作から必要な空間を確かめます。

さらに、夜にトイレへ向かう経路では、床のコードや家具を避けながら歩く配置になっていないか、照明を落とした状態でも確認しましょう。

柵の隙間と動く部分の安全を確認する

ベッドと柵、マットレスの組み合わせは、製品に適合したものを使います。柵の隙間やベッドとの間へ首や手足が挟まる危険があり、製品事故への注意を呼びかける消費者庁の情報でも確認できます。

背上げや高さの操作では、動く部分へ手足やコードが入っていないかを確かめます。隙間が気になるときは家にある物で埋めず、福祉用具専門相談員に適合する対策を頼んでください。

納品時には、本人と家族が一度操作し、止め方や停電時の扱い、故障時の連絡先まで説明を受けます。使い始めてから動きにくさが出たら、買い替えを急ぐ前に高さや部品の位置、機種の変更を相談できます。

よくある質問

まだ自分で歩けますが、介護ベッドを検討してよいですか?

歩ける人でも、起き上がりや床からの立ち上がりがつらければ検討できます。歩く力だけでなく、寝床でどの動作に疲れや痛みがあるかで判断します。

朝や夜など困る時間帯と、家族に手伝ってもらう動作を福祉用具専門相談員へ伝えると、背上げや高さ調整のうち必要な機能を選びやすくなります。

退院の日に間に合わせたいときは何を伝えますか?

退院予定日、寝床で難しい動作、自宅の搬入経路を、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ伝えます。希望する機種の在庫や設置の準備によって日程が変わるため、納品日が決まっているかを具体的に確かめる必要があります。

納品に立ち会う家族がいる場合は、その人も操作説明を受けられる日時に調整します。予定日に用意できないと分かったら、病院にも伝え、自宅で休む場所と介助方法を相談してください。

借りたマットレスで眠れないときは交換できますか?

交換や調整は相談できますが、対応できる製品や料金は契約によって異なります。音が気になるのか、体が沈んで寝返りしづらいのかを福祉用具専門相談員に伝えると、調整で済むか交換が要るかを検討できます。

皮膚の赤みや痛みを伴う場合は、その場所を主治医や看護師にも伝えてください。寝心地と床ずれの危険を一緒に評価してから、次の寝具を選びます。

介護ベッドが不要になったら、どう返却しますか?

レンタル事業者に連絡し、引き取り日と料金が発生する最終日を確かめます。使わなくなった日と契約上の終了日が同じとは限らないため、返却の連絡方法は契約時に確認しておくと安心です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医