40歳からのがん介護保険ガイド|特定疾病としての申請条件と利用のメリット

40歳からのがん介護保険ガイド|特定疾病としての申請条件と利用のメリット

がんで家での暮らしに介助が要るようになったら、40歳以上なら年齢と病状の条件に応じて介護保険を使えます。通院から帰ると着替えまで家族に頼む、入浴の介助で家族が休めない。そうした負担を、介護サービスと分け合えます。

介護保険の相談は、がんの治療中でも始められます。暮らしに手助けが要るようになったときが、相談を始めるきっかけです。

この記事では、がんで介護保険を使う条件、自宅での療養と家族の休息を支える使い方、治療中から相談する利点、申請から利用開始までの流れと費用を解説します。

がんで介護保険を使う条件は年齢で変わる

40〜64歳では、制度が定める病気が原因で介護や支援が必要になっているかが利用の条件です。65歳以上では、介護が必要になった原因を問わず、日常生活に必要な手助けの程度から認定を受けます。

40〜64歳は病状と介護の必要度を確認

40〜64歳で医療保険に加入している人は、介護保険の「第2号被保険者」に当たります。利用には「特定疾病」と呼ばれる制度所定の病気によって、日常生活の支援や介助が必要になり、要支援・要介護の認定を受ける必要があります。

がんの診断後に介護サービスを利用するには、条件の確認や申請が必要です。病状が特定疾病の条件に当たるか、家での暮らしにどの程度の手助けが要るかを確認するため、主治医への相談と市区町村への申請を進めます。

65歳以上は介護が必要になった原因を問わない

65歳以上は「第1号被保険者」となり、がんが特定疾病の条件を満たしているかにかかわらず、要支援・要介護認定の対象です。要支援は家事や身支度などに支えが必要な状態、要介護は入浴や排泄など日常生活で介助が必要な状態を指します。

年齢制度上の区分利用の基本条件
40〜64歳医療保険加入者は第2号被保険者特定疾病が原因で要支援・要介護の認定を受ける
65歳以上第1号被保険者原因を問わず要支援・要介護の認定を受ける

たとえば、がんの治療を続けていて入浴や身支度に支えが必要なら、65歳以上ではがんの進行度だけを理由に申請を見送る必要はありません。年齢ごとの扱いは、制度を所管する厚生労働省の介護保険の解説に示されています。

40歳未満は病院で利用できる支えを相談

介護保険への加入年齢は40歳からで、40歳未満は被保険者に含まれず、この制度による介護サービスの対象外です。

自宅で介助が必要なら、病院の医療ソーシャルワーカーに年齢と困っている生活動作を伝え、地域で利用できる支えを相談しましょう。医療ソーシャルワーカーは、療養に伴う生活や福祉制度の相談を受ける職種です。

特定疾病のがんに当たる病状と医師の判断

40〜64歳でがんを理由に申請する場合は、医師が医学的な知見に基づき、回復の見込みがない状態に至ったと判断したがんが対象です。病名や検査結果を自分で当てはめず、制度上の条件は主治医に確かめます。

がんという病名だけでは対象は決まらない

特定疾病の「がん」は、制度で定める病状に当たるがんに限られます。

申請では、その病気が原因で支援や介護を要する状態になっているかも確認されるため、病名の確認と生活に必要な介助の確認を進めます。

治療後に家事がつらくなっても、そのつらさだけで特定疾病の条件を満たすとは限りません。対象となるがんの定義に当たるかは、病状についての医学的な判断が必要です。

病期の数字から自分で判断しない

病期は、がんの広がりを示す分類です。介護保険で対象となるかは病期の数字だけで決まるものではなく、がんの状態や治療の経過を踏まえた医師の判断が関わります。

再発や転移があるという情報だけで対象と決めたり、治療を受けているから対象外と決めたりすると、相談の機会を逃しかねません。主治医には「40〜64歳で介護保険を申請する病状の条件に当たりますか」と聞くと、確認したい点が伝わります。

病状について聞くのがつらいと感じるのは自然です。家で過ごすための手助けが欲しいという希望から話し始めれば、治療の話と生活の相談を一緒に進められます。

病状の条件と日常生活の困難を分けて確認

特定疾病に当たるかと、どの程度の介護が必要かは、それぞれ確認される事項です。対象となる病状でも、希望するサービスの量や種類がそのまま認められるわけではありません。

病状の判断は主治医に、申請できる条件や手続きは市区町村の介護保険担当課に確認すると、相談先が明確になります。生活の手助けを求めて相談しても、介護認定だけで治療の継続や中止が決まる仕組みではないため、治療の希望は引き続き主治医と話し合えます。

がんの療養を自宅で続けるための助け

介護保険を利用する利点は、体力が落ちたときの生活動作を他の人と分担し、自宅で続けたい暮らしを支えられる点です。何を全部任せるかより、どの動作に助けがあれば1日を過ごしやすくなるかから選びます。

負担の大きい生活動作から手助けを選ぶ

食事の支度や入浴のために力を使い切るようなら、その動作に手助けを入れると、休息や自分で続けたい活動に時間を振り向けられます。優先したいのは、毎日繰り返して負担になっている動作。家族が代わっている部分も含め、生活のどの場面を支えてほしいかを明確にします。

進行がんでは、体の症状に加えて日常生活の手助けが足りないと感じる人がおり、介護する家族への支えも課題です。治療の相談だけでは暮らしの困難が残ることがあるため、本人の日常生活と家族の介護の両方について、足りない手助けを相談しましょう。

暮らしの場面支えが必要な状態相談するときの目標
身支度着替えで疲れて休息が要る無理のある動作を手伝ってもらう
食事用意する力が残らない食べるまでの負担を減らす
入浴家族の介助だけでは負担が大きい体調に合う方法で清潔を保つ

困りごとが重なるときは、食事や清潔など日々の生活を保つうえで優先したい場面をケアマネジャーに伝えると、計画の順番が決めやすくなります。ケアマネジャーは、必要な介護サービスの計画を作り、利用の調整を担う専門職です。

自分で続けたい動作を残す

介護を受けるときも、自分でできる部分や続けたい習慣を希望として伝えましょう。着替えは途中まで自分で行いたい、食事は家族と同じ場所で取りたいなど、暮らしの希望に沿って助けが必要な部分を相談します。

すべてを家族に任せて疲れを我慢する形から、つらい動作だけを分担する形へ変えると、本人も家族も何を手伝うかを決めやすくなります。体調のよい日の能力だけで毎日の生活を組み立てず、疲れが強い日にも過ごせる方法を用意しておきます。

利用後は、望んだ時間に休めているか、自分で続けたい動作が保てているかを確かめ、サービスの回数だけでは分からない使い心地を伝えましょう。

介護の手助けと症状への診療を組み合わせる

訪問介護や福祉用具の利用などの介護サービスは、生活を支える手段です。痛みや息苦しさなどの症状への診療も続けると、動作を手伝ってもらうだけでは解決しにくい療養上の困難に対応できます。

自宅で専門職による緩和ケアを受ける仕組みには、自宅で過ごしたい希望を支え、症状の負担を和らげる方向の研究結果があります。緩和ケアとは病気に伴う体や気持ちのつらさを軽くする医療で、主に欧米の研究をまとめた結果のため、日本の介護保険サービスだけの効果を示すものではありません。

介助を増やしても動作時の痛みが強くて生活が成り立たないときは、サービスの相談に加えて主治医へ症状を伝えてください。介護の計画と症状への対応は、並行して整えていきます。

家族が介護を続けられる分担と休息

家族の負担を減らすときは、介助の量に加えて、休めない時間や仕事への影響まで含めて分担を決めます。介護サービスで任せられる場面を決め、家族が休息を取る時間も予定に組み込みましょう。

要介護度だけで家族の余裕を判断しない

要介護度は必要な介護の程度を示す区分で、家族の疲れはそれとは別に確かめます。同じように手助けを必要としていても、日中は家族が働いている家庭と、交代できる人がいる家庭では、介護を担う人の時間的な負担が変わります。

日本で在宅の緩和ケアを受けるがんの患者さんの家族を調べた研究では、時間に追われる負担は要介護度の段階によって異なり、中程度の段階で重くなっていました。ある時点の状況を調べた研究のため、認定の区分が負担を生むという因果関係までは分からない結果です。

認定の程度が軽いから家族も楽なはずと捉えず、家族の睡眠や食事が後回しになっているなら、必要な介護を分担できているか見直す理由になります。

交代できる時間を具体的に決める

家族が休める時間は、介助を任せる時間帯まで決めて確保します。家族が最も負担を感じる動作と、外せない仕事や休息の時間を照らし合わせ、サービスで分担する範囲を相談しましょう。

家族の負担決めておきたい分担利用後に確かめる点
外出や休息の時間が取れない介助を任せる時間帯安心して離れられる時間があるか
体を支える動作がつらい負担の大きい動作への手助け家族の身体的な負担が残っていないか
1人に介護が集中している家族内での交代と外からの手助け特定の人だけが予定を変えていないか

日本の在宅療養中のがんの患者さんを介護する家族の調査では、交代できる人の有無や在宅サービスへの満足が、家族の生活の質と関わっていました。小規模な調査なので、交代する人を増やせば必ず生活の質が改善するとは言い切れないものの、分担を相談する際に見落としたくない点です。

頼んでも休めないときは使い方を見直す

サービスを始めても家族の疲れが続くなら、任せた内容と本当に重い負担が合っているかを確かめます。訪問がある時間だけが空いても、その時間に別の介護の準備を詰め込んでいれば、休息は十分に取れないためです。

がんの患者さんを介護した英国の家族を調べた研究では、介護に費やす時間の長さが心身の健康に関わり、外からの支えや休息との関連も示されています。観察研究なのでサービス利用による改善を保証する結果ではなく、家族の休める時間も療養計画に含めるための根拠です。

ケアマネジャーには、家族が休めるようになったか、引き続き付き添いが必要な時間があるかを伝え、本人の生活を保ちながら分担を見直しましょう。家族の負担を話すのも、自宅での療養を続けるための相談です。

治療中から相談すると利用の準備が進む

介護保険の相談は、がんの治療を続けている間にも始められます。年齢と病状の条件を確認しながら早めに相談すれば、介助が必要になった生活に合わせて申請やサービス利用を準備できます。

暮らしで助けが必要になった時点が相談の目安

相談を始める目安は、家での生活に手助けが必要になったときです。自分で行っていた身支度が難しくなった、家族が介助のために予定を変え続けているなど、普段の暮らしの変化から判断できます。

たとえば、通院から帰宅して着替えようとすると疲れて途中で休み、家族が毎回手伝うようになったなら、その場面を次の診察で主治医に伝え、病院の医療ソーシャルワーカーへの相談も申し出られます。病院から制度の話が出るのを待たず、日常の困難を相談のきっかけにしてよいのです。

体調の変化に伴って暮らしが成り立ちにくくなったら、治療日程とは別に、家で必要な介助の相談を始めましょう。

認定後に使う時間を確保する

申請からサービスの利用までは、認定のための確認や利用内容の調整が必要です。生活の負担が増えてから初めて制度を調べるより、必要性が見えた時点で準備するほうが、利用に向けて相談できる時間を持てます。

日本の末期がんの患者さん10,491人の請求データを調べた研究では、62.0%が亡くなる前の3か月以内に初めて介護認定を受けていました1)。認定が療養の終わりに近くなりやすい集団の観察結果で、早く申請すればどれだけ長く利用できるかを直接証明した研究ではありません。

そのため、必要な支えを使える期間を確保するには、治療中でも申請に関する相談を始める意味があります。今の病状で申請の条件に当たるかが分からなければ、まず主治医と市区町村の介護保険担当課に確かめます。

相談時に自宅で続けたい生活を伝える

早めの相談では、利用の目的を共有するため、困っている動作とともに、自宅でどのように過ごしたいかも伝えましょう。家族と食事を続けたい、通院のない日に休める時間が欲しいなど、本人が大切にしたい生活が出発点です。

申請は、家族が限界まで介助した後にだけ行う手続きではありません。必要な認定や利用の条件を確認したうえで、本人の希望と家族が担える介護の両方から、無理なく使える支えを検討します。

相談した時点で全部のサービスを決める必要はありません。優先したい生活の場面から話を進めましょう。希望が変わったときも、当初の計画に合わせて我慢を続けず、利用の調整を相談できます。

申請から利用開始までの流れと費用の確認

利用に向けた手続きは、市区町村への申請、認定、介護サービスの計画作成、契約という順に進みます。相談の入り口と、利用前に確認する負担額を押さえると、次に誰へ連絡すればよいかが明確になります。

申請は市区町村の介護保険担当課へ

申請先は、住んでいる市区町村の介護保険担当課です。地域包括支援センターでも相談でき、申請の代行を行う場合もあるため、自分で出向くのが難しいときは連絡方法を確認しましょう。

相談したい内容相談先最初に確認する点
介護保険を申請したい市区町村の介護保険担当課申請方法と必要書類
地域で申請の相談をしたい地域包括支援センター利用条件の相談と申請の手助け
病院から生活の相談を始めたい医療ソーシャルワーカー自宅で困る場面と地域への相談先

必要書類は市区町村に確認し、40〜64歳では医療保険への加入を確認できる書類などを用意します。介護保険証の手元の有無だけで相談を止めず、年齢と居住地を伝えて申請方法を尋ねてください。

認定を受けて利用するサービスを決める

申請後は、心身の状態についての認定調査と主治医意見書をもとに審査が行われ、要支援・要介護などの結果が通知されます。結果の通知は原則として申請から30日以内とされています。

ただし、認定結果が届く日と、希望するサービスを開始できる日は同じとは限りません。利用内容の調整や事業者との契約も必要なので、結果を待っている間に、介護保険担当課へその後の相談先を確認しておくと見通しを持てます。

要介護と認定されたらケアマネジャーに、要支援と認定されたら地域包括支援センターなどに、ケアプランの作成を相談します。ケアプランは利用するサービスの内容や回数を決める計画です。この計画をもとに事業者と契約し、利用を始めます。

自己負担の割合と追加費用を利用前に確認

介護保険サービスの自己負担は、40〜64歳の第2号被保険者では所得にかかわらず1割、65歳以上では所得などに応じて1〜3割です。実際に適用される割合は、介護保険負担割合証で確認してください。

ただし、自己負担の割合だけで月々の支払総額は決まりません。サービスの種類や量に加え、食費などの別途負担や、居宅サービスで定められた支給限度額を超える利用分も確認が必要です。

利用する前にケアマネジャーへ、毎月の見込み額と別途支払う費用を確認しましょう。希望する介助と家計の両方に合わせて、利用内容を相談します。

よくある質問

治療中でも、介護の相談を始めてよいですか?

治療を続けている間でも、日常生活の介助について相談を始めてよいです。診察では体の症状に加えて、家でどの動作に手助けが必要かを伝えると、生活上の問題を共有できます。

病院の医療ソーシャルワーカーには、療養を続ける場所や家族が担える介護を相談できます。治療の予定が落ち着くのを待つより、暮らしの負担が増えた時点で話し始めると、必要な準備を進めやすくなります。

本人が申請のために出向けないときはどうすればよいですか?

市区町村の介護保険担当課に連絡し、家族による申請や申請を手伝ってもらう方法を確認できます。地域包括支援センターでも相談できるため、入院中なのか、自宅からの外出が難しいのかを伝えると、状況に合う手続きの相談ができます。

家族が介護できる日とできない日があっても相談できますか?

家族が介護できる時間に差がある場合も相談できます。毎日同じ分担にするより、仕事などで介助が難しい時間帯を含めて利用内容を決めるほうが、実際の生活に合わせやすくなります。

ケアマネジャーには、家族の予定に加えて、本人が手助けを必要とする時間帯も伝え、利用の調整を相談しましょう。家族が空いている時間だけに本人の生活を合わせる形になっていないかも確認したい点です。

サービスを使い始めても家族の疲れが続くときはどうすればよいですか?

家族が休めていない時間や負担の重い介助を、ケアマネジャーに伝えて利用内容を相談しましょう。サービスの回数が増えていても、家族が困っている場面に手助けが届いていなければ、疲れは残りえます。

家族が睡眠や食事の時間を取れているかまで振り返ると、分担を変えるべき部分が具体的になります。本人が望む過ごし方も共有したうえで、任せる内容や時間帯を見直していきます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医