がん治療のための休暇制度まとめ|傷病休暇・時間単位有給・失効有給の積み立て

がん治療のための休暇制度まとめ|傷病休暇・時間単位有給・失効有給の積み立て

がん治療で仕事を休むときは、通院や療養に必要な時間を見積もり、勤め先にある休暇制度の取得単位と支給条件に合わせて使い分けます。入院分の休みは用意できても、その後の通院が続くと、有給休暇の残りが気になってくるでしょう。

傷病休暇や病気休暇、時間単位の有給休暇を使えるかは、職場の規定で決まります。失効した有給休暇を蓄える仕組みも含め、名称だけで判断せず、使える目的や給与の扱いまで確かめておくと予定を組みやすくなります。

この記事では、がん治療で必要になる休み方、休暇制度の違い、残日数が不足する前に職場と相談する内容を解説します。

がん治療の休みは入院日だけで決めない

治療のために確保する休みには、受診日だけでなく、自宅で体調を整える日も含めて見積もります。入院、繰り返す通院、治療後の療養では、必要な休みの取り方が変わるためです。

入院から退院後の療養までを見積もる

退院予定日と、仕事へ戻れる見込みは分けて確認しましょう。病院を出たあとも体力や症状に合わせた療養が必要なら、入院期間だけの申請では休みが足りなくなるためです。

がんによる病気休職から仕事に戻るまでの期間は、がんの種類によって異なり、数か月以上を要する場合もあります。ただし、これは日本の休職制度のある大企業の従業員を対象とし、男性が中心の結果です。自分の職場で取れる日数や自分の回復時期に、そのまま当てはめるのは避けます。

主治医には仕事内容も伝え、退院後に休養が必要か、休暇の終了日をいつ再検討できるかを聞いておくと、最初の申請期間を職場と話し合いやすくなります。

外来の治療日は移動と待ち時間も含める

通院に必要な休みは、予約票に書かれた診察時刻だけでは決められません。

病院までの往復に加えて、受付から診察までの待ち時間、検査、会計などにも時間を使います。米国のがんの患者さんや家族らへの聞き取りでも、短い受診のつもりが長時間を要し、付き添う家族の予定にも負担が及ぶ経験が語られています。

休暇を何時間取るかは、所要時間が測定されていない体験談だけでは決められません。初回は病院に当日の流れを尋ね、通院後には実際にかかった時間を記録すると、次回の申請に使えます。

治療後の体調で休暇を延ばす余地を残す

休暇の終了日は、治療の予定に加え、治療後に続く症状を踏まえて見直します。

日本で婦人科がんの治療後に同じ職場へ戻った207人を追った研究では、治療の内容や、治療後に続く副作用によって休む期間の長さが異なりました1)。ただし、対象は婦人科がんの経験者であり、別のがんの休暇期間を決める数字としては使えない結果です。

体調が戻る日を確約するのは不安に感じるかもしれません。見通しが定まらない時期は、終了日を無理に言い切らず、「次の診察後に休みの長さを相談したい」と、職場へ見直しの時期を伝えられます。

がんの通院に使える休暇制度を比べる

同じ治療のための休みでも、年次有給休暇と病気を理由とする休暇では、日数の管理や給与の扱いが異なります。まずは勤め先の制度名と、その規定が載っている就業規則を照合しましょう。

年次有給休暇は残日数と取得単位を確認

年次有給休暇は、賃金を受け取りながら仕事を休める休暇です。これから使える量を把握するには、勤怠管理の画面や人事労務担当への照会で、現在の残日数と次の付与日を確認します。

厚生労働省という国の労働行政を担う機関の「治療と就業の両立支援指針」では、治療に配慮する休暇制度の例として、時間単位の年次有給休暇、傷病休暇、病気休暇が挙げられています。ただ、各職場の実情に応じた導入を想定したもので、記載された制度をすべての勤め先で使えるという意味ではありません。

休暇の種類使い方の確認給与・残高の確認
年次有給休暇日単位などの取得単位残日数、次の付与日、有効期限
時間単位の年次有給休暇制度の有無、申請できる時間の単位使える時間数、日数への換算方法
傷病休暇・病気休暇対象となる療養や通院、必要書類有給か無給か、支給される範囲
積立休暇制度の有無、治療への利用条件積み立て済みの残高、使用時の賃金

名前の似た制度でも、申請できる条件が違えば同じ予定には使えないため、表の項目を自分の職場の規定で埋めて比較します。

傷病休暇・病気休暇は賃金の規定まで読む

傷病休暇や病気休暇は、病気やけがのために休む制度を指す名称です。名称に「休暇」とあっても有給とは限らないので、使える日数や対象となる休み方は勤め先で確かめましょう。

確認の中心は、通院にも使えるか、連続した療養が条件か、診断書の提出が必要かという利用の範囲です。給与が全額支給されるか、一部の支給か、無給かも合わせて把握すれば、休みの日数と家計を結び付けて検討できます。

診断書を頼む前に、人事労務担当へ必要な記載内容と提出期限を確認すると、申請に合わない書類を作り直す負担を減らせます。

パート勤務でも利用対象を照合する

パート勤務でも、治療のために使える休暇があるかを就業規則と自分の労働条件で確認します。

治療と就業の両立支援は、雇用形態を問わず労働者を対象としています。一方で、個々の休暇の対象者や付与の扱いは制度ごとに確かめる必要があり、同僚が使えたという話だけでは自分に適用されるか判断できません。

人事労務担当には、自分の雇用区分で使える制度と日数が分かる資料を求めます。自営業やフリーランスの人は、勤め先の休暇制度を前提にせず、休む間の仕事量と収入の見通しを立てる必要があります。

短い通院が続くときは時間単位で調整する

受診の前後に働ける見通しがあるなら、時間単位の有給休暇が選択肢になります。休む時間を短くする判断は、通院の所要時間と当日の体調を確かめてから行います。

時間単位有給を使える範囲から確かめる

時間単位の有給休暇は、年次有給休暇を時間で区切って取得する仕組みです。導入の有無に加え、使える時間数や申請できる単位を人事労務担当に尋ねると、自分の予約時間に合うかを判断できます。

午前の受診後に出勤したい場合でも、病院を出る時刻と職場に着く時刻には差があります。就業時刻と照らし合わせ、往復の移動を含めて休暇時間を計算しておきましょう。

また、時間単位で申請していた日に診療が長引いた場合の連絡方法も、上司へ確認しておくと当日の変更を伝えやすくなります。

診察後に働けるかを含めて取得単位を選ぶ

短い受診だから短い休暇でよいとは限らず、その後に仕事ができるかまで含めて選びます。

通院日の状況検討する休み方先に確かめる内容
所要時間が見通せて、受診後に働ける時間単位の有給休暇移動時間を含む取得時間
検査などで終了時刻が読めない余裕を持った時間枠、日単位の休暇当日の診療の流れ、延長の連絡方法
治療後に療養が必要当日やその後の休暇主治医に聞いた休養の見通し

有給休暇の残りを守ろうとして、回復に必要な休みまで削らないようにします。治療後に仕事へ戻る予定でよいか迷うときは、仕事内容を主治医に伝えて相談しましょう。

初回の通院記録を次回の申請に使う

たとえば、外来治療を受ける本人が帰宅後に予約票と時計の記録を見て、診察よりも検査待ちと移動に時間がかかったと気づいたとします。次の予約では、その実績を基に必要な休暇時間を見直し、上司へ前回より長い時間枠で申請する方法があります。

記録には、家を出た時刻と帰った時刻に加え、受診後に仕事をできそうだったかも短く残します。通院時間だけが短縮できても、体調が戻るまで休養が必要なら、同じ長さの休みを確保する判断につながるためです。

毎回の診療内容が変わると所要時間も変わるので、前回の実績は予約票にある検査や治療の予定と合わせて使います。

失効した有給の積み立ては社内規定で確認

失効した有給休暇を治療に使えるかは、勤め先に積み立ての制度があるかで分かれます。期限が過ぎた分を自動的に使えるとは考えず、人事労務担当に残高と使用条件を確認します。

通常の有給残高と積立残高を分けて見る

積立休暇は、使わずに失効する年次有給休暇を蓄え、定められた目的で利用する社内制度の呼び名です。制度の有無や名称は勤め先で確かめ、通常の有給休暇とは別に残高を確認しましょう。

過去に使い切らなかった有給休暇があっても、その全量が積み立てられていると推測するのは避けます。積み立ての手続きや上限が規定されているか、自分の残高として記録されているかを照合すると、治療に使える日数が具体的になります。

勤怠管理の画面に見当たらないときは、制度がないと決めず、人事労務担当へ「失効する有給を蓄えて病気の療養に使う制度はありますか」と尋ねられます。

通院にも使えるかを規定の文章で確かめる

積立残高があっても、今回の休みに使えるかは利用目的の規定で判断します。

確認する項目人事労務担当への質問例休暇計画への反映
対象となる休み入院以外の通院や自宅療養も対象ですかどの予定に充てられるか
使用できる単位連続した休みが条件ですか繰り返す受診に使えるか
利用の順序通常の有給休暇との使用順に規定はありますか先に申請する制度の選択
書類と賃金必要書類と使用中の給与の扱いはどうなりますか申請準備と収入の見積もり

日数が多く残っていても短い通院には使えない規定なら、通院分は別に確保する必要があるため、残高だけで安心しないようにします。

使う順番は承認条件を確かめて決める

積立休暇を先に使うか、通常の有給休暇を先に使うかは、勤め先の規定と今後の通院予定を合わせて決めます。使い方に自由度がある場合も、利用できる目的や期限を踏まえて相談しましょう。

確認した条件は、就業規則の該当箇所と人事労務担当からの回答を一緒に残すと、後日の申請時に再確認できます。口頭で聞いた名称だけを頼りにするより、休みたい日が対象になるかを具体的に照合しやすくなります。

がん治療で休暇が足りなくなる前に備える

休暇が不足しそうなら、使い切る日を待たず、休みを続けられる条件と給与が変わる時期を確認します。働けない期間が延びると、治療の予定だけでなく、生活費の見通しにも影響するためです。

無給になる日と給与の支払日を照合する

残日数の確認と並行して、どの休みから給与が減るのかを人事労務担当へ尋ねます。

働けない期間や働き方の変化によって、仕事から得る収入が長く減る場合があるため、入院する月だけの家計で判断するのは避けたいところです。スウェーデンの大腸がんの経験者を追った研究では稼ぎの減少が続きましたが、手当などを含む可処分所得はおおむね保たれており、日本の手取り額の見込みには置き換えられない結果です。

給与の締日と支払日も確認し、収入の変化が家計に表れる月を把握しましょう。傷病手当金は病気で働けない間の所得を支える給付で、休暇の名称とは区別して確認する対象です。

残日数を理由に通院を減らす前に相談する

休暇や収入の不足で通院が難しくなったら、予約を自分だけの判断で減らす前に、主治医へ仕事を休めない事情を伝えます。

治療中に働く量が減ると、費用の負担から治療や薬を控える行動につながり得ます。米国の調査でも両者の関連がみられていますが、医療費の仕組みが異なるうえ、働く量の減少が原因だと断定できる調査ではありません。

そのため、収入への不安と治療日程の相談は、早い段階から並行して進めましょう。職場には休暇の残りと申請できる別の制度を尋ね、病院には通院の継続が難しい理由を具体的に伝えると、相談すべき内容が明確になります。

休職に移る条件と期限を確認する

休暇を使い切ったあとも療養が必要なら、在籍したまま一定期間仕事を休む「休職」の制度があるかを確認します。休職の期限と、期限を過ぎた際の扱いは就業規則で決まるため、人事労務担当から自分に適用される規定を示してもらいます。

確認するのは、休職の開始日と終了予定日、延長の扱い、期限までに必要な手続きです。休暇から自動的に切り替わるかも含めて尋ねておけば、申請が必要な時期を逃さずに準備できます。

人事労務担当や産業医がいない小さな職場では、治療と就業の相談を支える都道府県産業保健総合支援センターを利用でき、個別の労働問題は都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。

休暇の計画は予定表と残高を重ねて作る

休暇の使い方は、治療予定、利用条件、残日数を同じ予定表に整理すると決めやすくなります。先の予定が未確定でも、決まっている受診と次の見直し時期から準備を始められます。

確定した受診日と未定の療養期間を分ける

予約のある日と、体調次第で追加する休みは区別して書きます。

治療直後に多くの休みが必要でも、その後は必要量が減っていく経過があり、スウェーデンの乳がんの経験者を追った研究でも同様の傾向がみられています。海外の休業制度で得られた結果を日本で休む期間の目安にはせず、療養の進み方に合わせて計画を更新する根拠として受け止めます。

予定表の欄記入する内容確認する相手
確定している予定入院や受診の日、移動を含む時間病院の予約に関わる職員
休養の見通し治療後に必要な休み、判断を更新する時期主治医
利用する休暇制度名、申請期限、使用後の残高人事労務担当
予定の変更次に職場へ連絡する日、当日の連絡方法上司

未定の欄は無理に日付で埋めず、「診察後に確認」と残しておけば、確定した予定と混同せずに共有できます。

上司には休みたい日と変更の見込みを伝える

職場へは、治療のために休暇を使いたい意思と、現時点で分かる休みの日程を伝えます。申請先や必要書類は人事労務担当、業務の予定や当日の連絡方法は上司に確認すると、話が具体的に進みます。

日本で婦人科がんの治療を受けた女性194人の調査では、病気休暇を取らなかった人で同じ職場へ戻れていない傾向がみられました2)。単一施設の質問票調査で、制度がなかったのか、申し出にくかったのかは区別されておらず、休暇を取れば職場に戻れると断定する結果ではない点に注意が必要です。

制度名が分からない段階でも、「通院が続くため、使える休暇と手続きを確認したい」と相談を始められます。

治療予定が変わった日に残高も更新する

休暇の計画は、追加の治療や受診日の変更が決まった時点で見直します。最初の申請を守るために療養を切り上げるのではなく、必要な休みと利用できる制度を改めて照合します。

更新時に見るのは、申請済みの休暇、追加が必要な日、変更後の残高です。残りが足りないと分かった段階で人事労務担当へ相談すれば、書類の準備や別の制度の確認に使える時間を確保できます。

受診のたびに全期間を組み直す負担が大きければ、変更のあった日と次の確認日だけを更新する方法でも、職場と見通しを共有できます。

よくある質問

がんと診断されたら、傷病休暇は必ず使えますか?

診断だけで一律に使えると決まる制度ではなく、勤め先の制度の有無と利用条件を確認する必要があります。病気休暇など別の名称になっている場合もあるため、人事労務担当に病気の療養や通院に使える休暇を尋ねます。

申請する前に、対象となる休み方、必要書類、給与の扱いを確認しましょう。制度があると分かってから診断書の記載事項を病院へ伝えると、申請に必要な情報をそろえやすくなります。

短い通院なら時間単位の有給休暇を選べばよいですか?

職場に制度があり、通院の前後に働ける見通しがあれば選択肢になります。診察だけの時間で決めず、移動や検査待ち、治療後の休養も含めて見積もる必要があります。

ただし、初回で終了時刻が読めないときや、受診後の体調に不安があるときは、短い時間枠に収める判断を急がず、主治医に仕事へ戻る予定でよいか相談します。休暇の延長が必要になった場合の連絡方法は、あらかじめ上司と決めておくと安心です。

以前に失効した有給休暇は、あとから治療に使えますか?

使えるかどうかは、勤め先に積立休暇の制度があり、その日数が利用可能な残高として残っているかによります。過去の未使用分を自分で足し合わせず、人事労務担当に積立残高と治療への使用条件を確かめます。

通院の予定が決まる前でも、職場に休暇の相談をしてよいですか?

予定が未確定でも、使える休暇と申請条件の確認は始められます。上司には今分かっている受診予定と次に見通しを伝える時期を示し、人事労務担当には残日数や必要書類を尋ねると、日程が決まったあとに申請しやすくなります。

休みが不足しそうなら、給与が変わる時期や休職制度の有無も早めに確認しておきましょう。見込みと確定した日付を分けて伝えれば、先の予定を確約せずに相談を進められます。

References

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医