抗がん剤・化学療法 category

抗がん剤治療の薬は、殺細胞性の薬・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬・ホルモン療法薬の4つに大きく分かれます。点滴と飲み薬があり、2〜4週間を1クールとして繰り返します。
副作用は出る時期がおおむね決まっていて、吐き気は当日から数日、脱毛は2〜3週間後です。費用は高額療養費制度でひと月8万円台に収まることが多く、休職中は傷病手当金も使えます。
薬の種類、点滴と飲み薬の違い、副作用の時期と対処、脱毛、食事、費用、仕事との両立までを順に並べました。
抗がん剤治療の薬は大きく4つに分かれる

殺細胞性の薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法薬の4つです。
殺細胞性は増える細胞をまとめて叩く
シクロホスファミドやシスプラチン、5-FU、パクリタキセルが代表で、分裂の速い細胞に働きます。がん以外の正常な細胞にも当たるため、脱毛や骨髄抑制、吐き気が出やすい薬です。
分子標的薬と免疫療法は的を絞る
分子標的薬はEGFRやHER2といった目印を狙う薬で、飲み薬の「〜ニブ」と点滴の「〜マブ」に分かれます。免疫チェックポイント阻害薬はニボルマブなどで、免疫がはたらく力を取り戻させる薬です。
抗がん剤の種類の分類と、分子標的薬が従来の抗がん剤とどう違うのかを並べて見れば、自分の薬がどこに位置するのかが分かります。
抗がん剤治療は点滴と飲み薬でどう違うか
通院の負担と、副作用に気づけるかどうかが大きな違いです。
飲み薬は通院が減るが飲み忘れが響く
自宅で続けられるぶん通院は減りますが、飲み忘れがそのまま効果の低下につながります。副作用に気づくのが遅れやすく、食事やほかの薬との飲み合わせにも気を配ることになります。
点滴は半日かかるが管理される
1回数時間に待ち時間を足すと半日仕事になる一方、医療スタッフが目の前で管理します。血中の濃度が安定しやすく、吐き気が強いときでも確実に体へ入る利点があるでしょう。
出やすい副作用も違う
飲み薬では下痢や手足症候群、点滴では血管の痛みや薬が血管の外へ漏れることが起こります。骨髄抑制や脱毛、口内炎はどちらにも共通です。
| 項目 | 飲み薬 | 点滴 |
|---|---|---|
| 通院 | 少ない | 1回で半日ほど |
| 副作用の把握 | 自分で気づく | スタッフが確認 |
| 気をつける点 | 飲み忘れ・飲み合わせ | 血管の痛み・漏れ |
抗がん剤の飲み薬と点滴の違い、そのメリットとデメリットを見ておくと、提案されたときに何を聞けばよいかが決まります。
抗がん剤治療は2〜3クールで効果を判定する
1クールは2〜4週間で、2〜3クールを終えた時点で効き目を確かめます。
術後なら3〜12か月が目安
大腸がんの術後は3〜6か月、乳がんは4〜6か月、胃がんは12か月ほどが標準です。休薬の期間は骨髄が回復するために置かれるもので、白血球が戻るまでに2〜3週間かかります。
予定の8割を保てるかが目安
副作用で減量や延期が続くと効果が落ちるため、予定した用量の8割以上を保てるかが一つの目安になります。効果の判定にはRECISTという共通の基準を使います。
抗がん剤治療の期間と回数の目安、休薬期間の意味を知っておけば、先の予定を立てやすくなります。
抗がん剤の副作用は出る時期がおおむね決まっている

当日から数か月まで、症状ごとに現れる時期は別々です。
時期ごとの目安
投与の当日から数日は吐き気と食欲の低下、1〜2週間後に白血球の減少、2〜3週間後に脱毛と口内炎が来ます。手足のしびれは数週間から数か月かけて出てくるものです。
- 当日〜数日 … 吐き気・嘔吐・食欲の低下
- 1〜2週間後 … 骨髄抑制(白血球の減少)
- 2〜3週間後 … 脱毛・口内炎
- 数週間〜数か月 … 手足のしびれ・皮膚の変化
体質でも出方が変わる
薬を分解する酵素の遺伝子の型、肝臓と腎臓のはたらき、筋肉の量によって副作用の出方は変わります。38度以上の熱が出たらすぐ連絡する、という線引きだけは覚えておいてください。
抗がん剤の副作用と対策と発現時期、それに副作用が出にくい人の特徴と体質を知っておくと、自分の番でどこに備えるかが決まります。
抗がん剤の脱毛は終了後1〜2か月で戻り始める
2〜3週間で抜け始め、治療が終われば1〜2か月で産毛が見えてきます。
元に近づくまで1年半から2年
3〜6か月で短い髪が見え、6か月から1年で5〜10cmほどに伸びます。生えはじめはくせ毛や白髪になることもありますが、1〜2年で元の状態に戻る場合がほとんどです。
抜ける前に用意しておく
ウィッグや帽子は抜ける前に用意しておくと、気持ちの準備にもなります。人工毛は形が崩れにくく、人毛は自然な質感でまとめやすいという違いがあるでしょう。
抗がん剤による脱毛からの回復と髪が生え始める時期、それにアピアランスケアでのウィッグとメイクの活用を見ておけば、いつまで続くのかの見通しが立ちます。
抗がん剤治療中の食事は回数を分けて量を稼ぐ

体重が5%減ると治療の中断につながるため、食べ方を変えて量を保ちます。
1日3食を5〜6回に分ける
一度に食べられないときは回数を増やし、栄養補助飲料を1本200〜300kcalの足しとして使います。味覚が変わったときは、レモンや酢で味を立てると食べやすくなるものです。
たんぱく質は体重1kgあたり1.0〜1.5gが目安で、卵1個で約6g、豆腐半丁で約10gが取れます。
抗がん剤治療中の食事の工夫と、食欲不振や味覚障害があるときの対処法を知っておけば、体重を保ちながら治療を続けられます。
抗がん剤治療の費用は高額療養費制度で頭打ちになる
年収370万〜770万円なら、ひと月の自己負担は8万100円ほどで止まります。
薬によって総額は大きく違う
従来型の抗がん剤は1クール数万円から十数万円ですが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は1回で数十万円に達することもあります。年間300万円を超える薬も出てきました。
4回目からはさらに下がる
同じ年に4回以上該当すると、4回目からは約4万4400円まで下がります。年間10万円を超えた自己負担は医療費控除の対象で、休職中は傷病手当金も受け取れます。
抗がん剤治療の費用と、自己負担額を抑える制度を先に押さえておけば、いくら用意すればよいかの見当がつくでしょう。
抗がん剤治療と仕事は両立できる
がんになった人のうち、治療のあとに仕事へ戻る人は約6割です。
副作用の山を避けて予定を組む
投与から2〜3日目が副作用の山になりやすいので、回復する時期へ業務を寄せる組み方があります。レジメンという治療計画書を見れば、いつ何が来るのかを先に読めます。
抗がん剤と仕事の両立、職場の理解と支援制度の活用を知っておくと、休むか続けるかの二択にならずに済みます。
抗がん剤をやめたいと感じたときに考えること

続ける・変える・休むという道があり、やめる一択ではありません。
主治医へ伝えることから始める
つらさを具体的に伝えると、薬の量を減らす、種類を変える、しばらく休むという選択肢が見えてきます。緩和ケアは終末期のものではなく、早い時期から並行して受けられるものです。
抗がん剤をやめたいと感じた時の主治医との話し合いと緩和ケアを読んでおくと、次の診察で切り出しやすくなります。
よくある質問
抗がん剤治療にはどんな種類がありますか?
大きく4つです。分裂の速い細胞をまとめて叩く殺細胞性の薬、EGFRやHER2といった目印を狙う分子標的薬、免疫のはたらきを取り戻させる免疫チェックポイント阻害薬、そしてホルモン療法薬に分かれます。
抗がん剤は点滴と飲み薬でどちらがよいのですか?
がんの種類と進み方で決まるもので、どちらが優れているという話ではありません。飲み薬は通院が減る代わりに飲み忘れが効果に響き、点滴は1回で半日ほどかかる代わりに医療スタッフが目の前で管理します。
抗がん剤の副作用はいつごろ出ますか?
症状ごとに時期が違います。当日から数日は吐き気と食欲の低下、1〜2週間後に白血球の減少、2〜3週間後に脱毛と口内炎、手足のしびれは数週間から数か月かけて出ます。38度以上の熱はすぐ連絡してください。
抗がん剤による脱毛はいつ戻りますか?
治療が終わって1〜2か月で産毛が見え、3〜6か月で短い髪、6か月から1年で5〜10cmほどになります。生えはじめはくせ毛や白髪になることもありますが、1〜2年で元の状態に戻る場合がほとんどです。
抗がん剤治療の費用はどのくらいかかりますか?
従来型は1クール数万円から十数万円、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は1回で数十万円に達することもあります。高額療養費制度でひと月8万100円ほどが上限になり、4回目からは約4万4400円です。
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この記事を書いた人Wrote this article
前田 祐助医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。
【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医