便潜血陽性から大腸がんが見つかる確率は?検査の重要性と再検査の流れ

便潜血陽性から大腸がんが見つかる確率は?検査の重要性と再検査の流れ

健診の結果票で便潜血が陽性でも、大腸がんと決まったわけではありません。痔などがん以外の出血で陽性になる場合もある一方、がんや前がん病変が見つかる人もいるため、便に混じった血液の出どころは大腸内視鏡で確かめます。

確率が低そうだという理由で、精密検査を見送るのは避けましょう。精密検査とは、最初の検査で見つかった異常の原因を詳しく調べる検査です。

この記事では、便潜血陽性から大腸がんが見つかる割合、陽性になるほかの理由、検査を先延ばしにする影響、大腸内視鏡を受けるまでの流れを解説します。

便潜血陽性から大腸がんが見つかる割合

陽性という判定は、がんの確定診断とは異なります。大腸がんだけでなく、将来がんになるおそれのある病変も含めて調べるため、陽性後は腸の中を直接観察する検査へ進みます。

海外の検診では大腸がんが3.9%に見つかった

イタリアの地域検診で便潜血陽性となり、大腸内視鏡を受けた50〜69歳の123,138人では、大腸がんが3.9%に見つかったと報告されています1)。

ただし、この検診は2年ごとの実施で、日本とは便潜血を陽性とする基準値も異なります。3.9%を、そのまま日本の検診の割合や自分自身のがんの確率に当てはめないようにしましょう。

数字から読み取れるのは、陽性の全員にがんがあるわけではない一方、内視鏡で確認すべき割合でがんが見つかる点です。検査を受けるかどうかは、この平均値だけで決めず、陽性という結果に沿って判断します。

がんになる前の腺腫も検査の対象

同じ123,138人では、高リスク腺腫が24.8%に見つかりました1)。腺腫とは大腸の内側を覆う粘膜にできる腫瘍の一種で、高リスク腺腫は大きさや細胞の性質などから、がんにつながる危険が比較的高いと判断される病変です。

見つかった病変研究での割合数字を読むときの注意
大腸がん3.9%陽性後に内視鏡を受けた人が分母
高リスク腺腫24.8%がんそのものとは区別
対象となった集団50〜69歳の123,138人イタリアの地域検診での結果

前がん病変は、まだがんと診断される状態に至っていない病変を指します。腺腫が見つかった場合は、その形や大きさなどを踏まえて切除の必要性を判断するため、「がんでなかった」という結果にも、その後の対応が伴います。

集団の割合と個人の診断を分けて受け止める

上の割合は、便潜血陽性のあとに実際に内視鏡を受けた人を対象にした値です。便潜血検査を受けた人全体の割合とは異なり、陽性でも内視鏡を受けなかった人の状態は含まれていません。

自分の結果を相談する際には、年齢に加えて、これまでの大腸内視鏡の結果やポリープ切除歴も伝えます。ポリープは粘膜から盛り上がった病変の呼び名で、すべてが腺腫とは限らず、過去に何を切除したかも診療の判断に関わります。

結果票に便中の血液量が書かれていても、その数字をがんの確率へ直接読み替えるのは避けましょう。

血液量の測定と病変の診断は、調べている対象が異なります。

便潜血が陽性になる、がん以外の理由

痔など、がん以外の出血でも便潜血は陽性になります。思い当たる原因があっても、それだけで大腸の病変を除外できないため、採便時の状況を伝えたうえで内視鏡による確認へ進みます。

痔の出血があっても腸の中を確認する

肛門の血管が腫れたり、肛門付近が切れたりする痔は、便に血液が混じる原因の1つです。韓国の健診で便潜血検査と内視鏡を受けた3,946人では、進行した病変がないのに陽性となった割合が、痔のある人で24.7%、痔のない人で10.5%でした2)。

ただし、韓国の1施設の結果なので、日本の陽性者の何割が痔による出血かは、この数字からは分かりません。日本で受診を判断する際にも使えるのは、痔が陽性の原因になり得るという点までです。

また、痔がある人にも、大腸の別の場所に病変が見つかる可能性はあります。肛門に痛みがあった日や紙に血が付いた状況を受診時に伝え、痔の治療だけで今回の陽性への対応を終えないようにします。

月経中の採便は受診先へ伝える

月経中の採便は、月経血が混じると大腸からの出血と区別しにくくなるため、避けるのが望ましいとされています。健診に関する情報を公開する日本人間ドック・予防医療学会のQ&Aでは、一律の規定は設けず、施設の判断に任せるとしています。

採便できる時期は、受ける施設や自治体の検診の注意事項で確かめましょう。すでに月経中に採便して陽性だった場合も、月経血だけが原因とは言い切れないため、大腸内視鏡を受ける扱いです。

受診の連絡では、陽性の結果に加え、採便日と月経が重なっていた旨を伝えましょう。便を採り直す扱いと、陽性後の内視鏡をどう手配するかを分けて確認すると、便の再提出だけで対応が止まるのを防げます。

服用している薬だけを原因にしない

抗凝固薬は血液が固まるのを抑える薬で、血液をさらさらにする薬とも呼ばれます。抗凝固薬やアスピリンなどを服用していても、便潜血陽性後に進行した病変が見つかる割合は、服用していない人と同程度と考えます3)。ただし、比較の対象は便潜血陽性の3,563人に限られるため、服用している人すべてに同じ結果が当てはまるとは言い切れません。

欧州などの研究をまとめた結果なので、日本の服用者に同じ割合を当てはめるためではなく、陽性を薬のせいと決めつけない判断に使います。薬を飲んでいる場合も、大腸の病変を内視鏡で確かめる流れは同じです。

薬を自己判断で中止せず、予約時に薬の名前を伝えてください。

内視鏡で組織を採るか、ポリープを切除するかによって服薬の扱いを検討するため、お薬手帳を使った確認が役立ちます。

便潜血検査のやり直しでは精密検査を代えられない

陽性のあとに便潜血をやり直して陰性になっても、最初の陽性を取り消す判断には使えず、陽性後の精密検査を便潜血の再検査で代えることもできません。精密検査の第一選択は全大腸内視鏡検査です。

便の血液と腸の病変は別の検査で調べる

便潜血検査は、目に見えないほど少量の血液が便に混じっているかを調べます。検査の対象は、採取した便に含まれる血液。大腸のどの場所に何があるかを確かめるには、肛門から細いカメラを入れて粘膜を観察する大腸内視鏡が必要です。

病変から常に同じ量の血液が出るとは限らず、別の日の便では血液が検出されない可能性があります。陰性という結果は、その日に採った便の判定であり、大腸全体に病変がないという診断とは異なります。

全大腸内視鏡とは、直腸だけでなく大腸全体を観察する検査を指します。便をもう一度提出する手軽さと、腸の中を確認できる範囲は、別の物差しで考えます。

2日分のうち1回だけ陽性でも受診する

2日分の便を調べる方法では、片方が陰性でも、もう片方が陽性なら精密検査の対象になります。両方が陽性になるまで待ったり、陰性の回数が多いという理由で様子を見たりせず、結果票の案内に沿って予約を取ります。

便潜血の結果受け止め方次の対応
2日分の両方が陽性出血の原因を調べる対象大腸内視鏡の受診を手配
2日分の片方が陽性陰性の1回で陽性は取り消せない同じく精密検査へ
陽性後の採り直しで陰性前の陽性の原因は未確認両方の結果を持参して受診

結果票の「要精密検査」は、原因を詳しく調べる検査が必要という意味です。「要再検査」は再び検査を受ける指示ですが、便潜血陽性に添えられていたら、便の提出を繰り返す意味だと自己判断せず、検診機関に大腸内視鏡の受診先を確認します。

陰性でも前がん病変が残る可能性がある

免疫法という、人の血液成分に反応させる便潜血検査の31研究をまとめた解析では、がんに比べて、進行した腺腫を検出する力が低いと報告されています4)。このため、陰性になったという理由だけで、腺腫まで含めた病変を否定するのは困難です。

また、便潜血の検査性能は、使用する検査や陽性とする基準値によって変わります4)。基準値を少し超えただけの陽性でも、自分で基準を引き直すのではなく、判定された結果に沿って腸を確認します。

海外を含む解析の検出率は、日本の検診の数字とは分けて読みます。陽性後の再検査が陰性でも内視鏡を省略しないという、次の行動を判断する根拠になります。

内視鏡を受けにくい事情は予約前に相談できる

仕事や前処置への不安があるときも、まず消化器内科へ連絡すれば、受診のために調整すべき点を具体的にできます。前処置とは、食事の調整や下剤によって腸を空にする検査前の準備です。

受診しない人の割合は安心材料にならない

米国の退役軍人の医療機関で便潜血陽性だった916人を調べた研究では、大腸内視鏡を受けた割合は62.1%でした5)。受けなかった理由の分類では、本人の気持ちや都合などに関わる事情が49.3%を占めました5)。

米国の特定の医療制度に属する人の結果なので、日本の受診率とは分けて考えます。日本での受診に役立つ点は、医学的に不要だから受けないとは限らず、気持ちや生活上の事情が受診を妨げ得ると分かる点です。

周囲に精密検査を受けていない人がいても、その人の腸の状態まで確認されたとは限りません。自分の予約は周囲の行動と切り離して、陽性の結果を根拠に進めます。

怖さや負担を具体的な相談に変える

がんが見つかる怖さと、検査そのものへの怖さが重なると、電話をかけるだけでもためらうものです。予約の連絡で不安の内容を伝えれば、鎮静薬の使用や前処置の受け方など、受診先で対応できる範囲を確認できます。

受診をためらう事情消化器内科に確認する内容
検査中の痛みが不安鎮静薬の選択肢と注意点
下剤を自宅で飲むのが心配前処置を行う場所と相談方法
仕事や家事の予定を立てにくい受診当日の所要時間の目安
帰宅時の移動が心配付き添いの要否と交通手段

鎮静薬は眠気を促すなどして検査中の苦痛を和らげる薬で、使用後は車の運転を控えます。そのため、利用の可否だけでなく帰宅方法まで確認しておくと、当日に交通手段を変更する負担を減らせます。

紹介状や案内が届くのを待ち続けない

検診機関から受診先の紹介があるか分からない場合は、陽性の結果票を手元に置いて自分から問い合わせます。確認したいのは、消化器内科を直接予約できるか、紹介状が必要か、結果の詳しい資料を受け取れるかです。

たとえば、平日の夜に健診結果の陽性を見つけたら、結果票に書かれた連絡先と受付時間を確認し、翌営業日に検診機関へ大腸内視鏡の受診先を尋ねます。予約先が決まったら、仕事の調整が必要な日程や、普段飲んでいる薬も合わせて相談する流れです。

予約日を決められない事情が残るときは、何を解決すれば予約できるかを消化器内科に伝えましょう。

また、日程変更が必要になった場合も、予約を取り消すだけで終えず、次の候補日を相談します。

精密検査の先延ばしと受診時期の決め方

陽性後の大腸内視鏡は、結果票に示された時期を基本に手配します。待ってよい期限を自己判断で決めるより、受診の案内を受けた段階で予約に取りかかるのが確実です。

長い遅れは進んだがんの発見と関連する

米国で便潜血陽性となった70,124人の観察研究では、早い時期に内視鏡を受けた人と比べ、10〜12か月後の受診で大腸がんが見つかるオッズ比は1.48、進んだがんでは1.97でした6)。オッズ比は事象の起こりやすさを比較する指標で、1より大きい値は比較対象より高い関連を示します。

ただし、これは受診を遅らせるよう割り付けた試験ではなく、実際の受診時期と診断結果を比べた観察研究です。遅れだけが原因だと断定したり、個人のがんの確率がそのまま1.48倍になると読み替えたりはできません。

日本での受診を決めるうえでは、海外の月数を安全な待機期限にするのではなく、大きく先延ばしにしない根拠として受け止めます。すでに時間がたっていても検査を諦めず、今から受診の手配を進めましょう。

時期の記載がなければ検診機関へ連絡する

結果票に受診時期が書かれていない場合は、検診機関へ「便潜血が陽性だったので、いつを目安に大腸内視鏡を受けるか」と確認します。実際の予約は消化器内科へ連絡し、陽性の結果を受け取った日や、現在の症状を伝えて調整する流れです。

予約が希望する時期に取れないときは、検診機関やかかりつけ医に別の受診先を相談できます。空きが出るまで連絡を待つだけにせず、いったん取れた予約でよいかも含めて確認すると、見通しが立ちます。

無症状だから翌年の検診まで待つという判断は避けてください。

便潜血が陽性となった理由を確認する検査と、次の定期的な検診は目的が異なります。

症状があるときは予約日まで待たずに伝える

目に見える血便が続く、腹痛が続く、便通が変わったなどの症状があれば、内視鏡の予約先に連絡して診察の時期を相談します。症状がある場合は、検診結果への対応だけでなく、その症状に対する診療も必要です。

大量の出血にふらつきや失神が伴う場合、強い腹痛がある場合は、通常の予約日を待たずに救急受診してください。電話では便潜血陽性に加え、出血の量や症状が始まった時期も伝えると、緊急性を判断する材料になります。

大腸内視鏡の予約から結果確認まで

大腸内視鏡は、予約後に薬や持病を確認し、腸を空にする準備をしてから受けるのが一般的です。検査前に必要な説明と、検査後に結果を聞く予定までをそろえておくと、受診を途中で終えずに済みます。

予約時に結果票と服薬情報をそろえる

予約時には便潜血陽性であると伝え、結果票を持参します。事前診察が必要か、紹介状を用意するかは受診先によって違うため、電話や予約案内で確認する項目です。

用意する情報確認に役立つ内容
健診の結果票陽性の判定と検査日
お薬手帳や薬の一覧検査前後の服薬の扱い
過去の内視鏡結果以前の病変や切除歴
持病・アレルギーの情報下剤や鎮静薬を使う際の注意点

特に血液を固まりにくくする薬や糖尿病の薬は、検査前の食事制限も含めて扱いの確認が必要です。持病の薬を一律に止めるのではなく、内視鏡を受ける消化器内科と処方元で調整した指示に従います。

前処置は受診先の方法に沿って行う

前処置で便が十分に出ないと粘膜を観察しにくくなるため、指定された食事内容や下剤を飲む時刻を守りましょう。下剤の種類や量、飲む場所は施設や体調によって変わります。

確認する項目は、前日の食事、当日の水分、薬の服用時刻、体調不良時の連絡先です。水分や服薬の指示は持病によって調整されるため、過去の検査で使った説明だけで準備せず、今回の受診先の指示に沿って行います。

下剤を飲んでいる途中に強い腹痛や繰り返す嘔吐が起きた場合は、無理に飲み続けず、受診先へ連絡してください。指定量を飲めないなど準備が進まない場合も、自分で下剤を追加せず、消化器内科に対応を確認します。

組織を調べた場合は後日の説明まで受ける

内視鏡では大腸の粘膜を観察し、必要に応じて生検やポリープ切除を行います。生検は病変の一部を採取して細胞や組織を顕微鏡で調べる検査で、見た目だけでは確定できない病変の診断に使います。

観察した結果は当日に説明されても、生検や切除した組織の結果は後日になる場合があります。帰宅前に確認したいのは、結果を聞く日と連絡方法。組織の検査が残っているなら、その説明を受けるまで予定を確保しておきます。

病変が見つからなかった場合も、大腸全体を十分に観察できたか、次の検査をいつ受けるかを確認しましょう。便が残った場合や奥まで観察できなかった場合には、再度の内視鏡などが必要になるため、「異常なし」という言葉だけを聞いて受診を終えないようにします。

よくある質問

便潜血が陽性なら、大腸がんの確率は高いのでしょうか?

陽性だけで大腸がんと決まるわけではなく、イタリアで陽性後に内視鏡を受けた123,138人では、がんが見つかった割合は3.9%でした1)。日本の個人の確率とは区別が必要ですが、原因を確認する検査を省いてよい割合ともいえません。

自分に病変があるかどうかは、大腸内視鏡で確認する必要があります。結果票の時期を確認し、記載がなければ検診機関へ受診の目安と受診先を問い合わせる流れです。

2日分のうち1日だけ陽性なら、もう一度便を出せばよいですか?

1日だけ陽性でも、便の採り直しではなく大腸内視鏡による精密検査が必要です。出血は毎日同じように起きるとは限らず、後日の陰性で前の陽性を打ち消す判断はできません。結果票を持って消化器内科を受診します。

痔があるので、痔の治療が終わるまで待ってもよいですか?

痔を理由に大腸内視鏡の手配を遅らせず、痔の症状も合わせて消化器内科に相談するのが適切です。痔が陽性の原因になり得ても、大腸の別の病変がないと判断するには内視鏡による確認が必要になります。

出血や肛門の痛みが強いときは、その程度を予約時に伝えます。痔の治療と内視鏡の実施時期を一緒に相談すれば、自己判断で長く待たずに対応を決められます。

症状がなく、予約も先になりそうなときはどうすればよいですか?

症状がなくても精密検査の予約を取り、結果票で示された時期に間に合わない場合は検診機関やかかりつけ医へ受診先を相談します。翌年の便潜血検査を待つより、今回の陽性の原因を確かめる対応が優先です。

内視鏡の予約後に血便や腹痛などが現れた場合は、予約先へ症状を伝えて診察の時期を確認してください。症状の有無と予約の取りにくさを分けて相談すると、必要な対応が明確になります。

References

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この記事を書いた人 Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助 医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医