
健康診断でがんを疑うきっかけになるのは、貧血、便潜血の陽性、胸部エックス線の異常、胃の検査の異常などです。結果票に印が付いていても、それだけでがんと確定するわけではありません。
異常を指摘された項目と受診の指示を一緒に読み、結果票に記された時期を基本に予約しましょう。血液検査が正常でも、便や画像の欄に指示があれば受診の対象です。
この記事では、がんの疑いにつながる健康診断の項目、見落とさずに読みたい数値や所見、異常を指摘された後の受診について解説します。
健康診断でがんを疑う項目は、数値と所見を合わせて読む
結果票では、血液の数値だけでなく、便の検査と画像の所見にも目を通しましょう。所見とは、検査で見えた影や形の変化などを言葉で記録したものです。
最初に確認する4つの項目
がんの受診につながる異常には、出血を捉えるものと、臓器の形の変化を捉えるものがあります。血液検査の欄が正常でも、便潜血や画像検査に受診の指示があれば、その項目について調べる必要があるため、総合判定だけで読み終えないようにします。
| 結果票の項目 | 確認したい記載 | 受診で調べる内容 |
|---|---|---|
| 貧血に関する検査 | ヘモグロビンの低下 | 鉄不足や出血などの原因 |
| 便潜血検査 | 陽性の判定 | 大腸などからの出血の原因 |
| 胸部エックス線 | 影の記載、精密検査の指示 | 肺などの形の変化 |
| 胃の検査 | 粘膜や形の異常、精密検査の指示 | 胃の内側の状態や組織 |
複数の項目に異常があるときは、自分で原因を1つにまとめず、結果票全体をかかりつけ医に見せると、どの検査から受けるかを相談できます。
赤字の数値だけではがんと判定できない
基準値を外れた数値は、その項目を詳しく評価するきっかけになります。ヘモグロビンは赤血球の中で酸素を運ぶ成分で、低いと貧血が疑われますが、低下の程度だけで出血の場所やがんの有無までは判断できません。
貧血に加え、血を固める働きを持つ血小板の増加や炎症に関連する数値の上昇も、がんを調べるきっかけになりえます。英国の大腸がんの患者さん約7500人の診断前の記録でも、こうした異常が診断に先立って増えていました1)。すでに大腸がんと診断された人の記録なので、健康診断の数値からがんの確率を計算する用途には使えない研究です。
検査名と実施日を先にそろえる
健康診断は全身の健康状態を確認する検査であり、特定のがんを対象に調べるがん検診を別に受ける必要がある場合があります。結果票が複数届いているなら、検査名と実施日を見比べると、どの臓器について結果が出たのかを整理しやすくなります。
未実施の欄は、その検査を受けていないという意味です。空欄なら、検査済みかどうかを確かめます。たとえば、胃の検査を受けていない年に血液検査だけが正常でも、胃の内側を確認した結果としては扱えないため、受診時には実際に受けた検査名まで伝えると説明が正確です。
貧血と便潜血の異常は、出血の原因を調べる
貧血や便潜血の陽性を指摘されたら、出血の原因を確認するための受診につなげます。食事の不足や痔だと決めつけてしまうと、消化管の病気を調べる機会が遅れるためです。
原因が分からない鉄不足を放置しない
鉄欠乏性貧血とは、赤血球を作るための鉄が足りなくなった状態です。胃や大腸から少量の出血が続くと、目に見える血便がなくても鉄を失い、貧血として見つかる場合があります。
オランダのかかりつけ医で新たに鉄欠乏性貧血と分かった587人の追跡では、原因を調べる過程やその後の経過で大腸がんが見つかりました2)。日本の健康診断で貧血を指摘された人全体の確率とは異なりますが、原因がはっきりしない鉄不足を、補充だけで済ませず調べる判断を支えます。
月経のある人は出血量も判断材料になり、月経のない人では別の出血源などを検討します。ただ、食事や月経の説明がつくと思っていても、以前より悪化している、息切れがある、便に変化があるときは、その経過を受診先へ伝えてください。
便潜血の陽性は便に血液が混じったという意味
便潜血検査は、肉眼では気づきにくい血液が便に混じっていないかを調べる検査です。陽性の原因にはがん以外も含まれますが、便の見た目が普通で体調がよくても、出血した場所を調べる理由は残ります。
精密検査では、大腸内視鏡という、肛門から細いカメラを入れて大腸の内側を観察する検査などを検討します。便潜血をやり直して陰性になっても、最初の陽性で必要になった精密検査の代わりにはなりません。
検査を受ける時期や方法は、結果票を持って消化器内科へ相談すると、持病や服用薬も踏まえて決められます。
貧血と便の変化は同じ受診で伝える
貧血の数値と便潜血は、別々の欄に記載されていても、消化管からの出血を調べる場面では一緒に確認します。数値の説明を受けるときに、便に血が混じる、黒く見える、便通が変わったといった変化も伝わると、必要な検査を検討しやすくなります。
| 結果の組み合わせ | 自分で避けたい判断 | 相談する内容 |
|---|---|---|
| 貧血、便潜血は陰性 | 出血の病気はないと判断 | 貧血の原因、過去からの変化 |
| 便潜血は陽性、貧血なし | 血液が正常なので受診不要と判断 | 大腸の精密検査 |
| 貧血、便潜血も陽性 | どちらか一方だけを申告 | 両方の結果と便の状態 |
強いふらつきや息苦しさを伴う出血があるときは、結果票に書かれた通常の予約時期を待たず、当日中に医療機関へ連絡しましょう。
胸部エックス線と胃の検査は、異常の場所を確かめる
画像に異常があるという結果は、その場所を詳しく調べる必要があるという意味です。胸部なら肺など、胃なら内側の粘膜など、指摘された部位に合わせて追加する検査が変わります。
胸部の影は精密検査の指示と一緒に確認する
胸部エックス線は、胸にエックス線を当てて肺などの状態を画像で確認する検査です。結果票に影を示す言葉があっても、その記載だけでがんの診断にはならないため、呼吸器内科などで、CTという体の断面を撮影する検査が必要かを相談します。
胸部エックス線には早い段階の肺がんを拾い上げる働きがあり、日本の1地域の検診をがん登録と照合した研究で、その割合は73.6%でした3)。この数値は、影を指摘された個人が肺がんである確率を表しているわけではなく、異常なしという結果にも限界があると読むための値です。
胃の異常は内側を直接見て調べる
バリウムを飲む胃のエックス線検査では、胃の輪郭や内側の凹凸などの異常を調べます。異常を指摘された後は、胃内視鏡という口や鼻から細いカメラを入れる検査で粘膜を観察し、必要に応じて組織の一部を採る生検でがんかどうかを確かめます4)。
すでに胃内視鏡を受けている場合は、観察した結果と、生検で採った組織の結果が別の時期に出る場合があります。そのため、検査当日に説明を聞いた後も、組織の結果を聞く予定があれば、その受診まで済ませましょう。
前回の画像や検査報告書も持参する
今回の結果票だけでなく、過去の画像や検査報告書があると、新しく指摘された異常か、以前からある変化かを受診先で確認できます。前年も同じ言葉があったという記憶だけで受診を省かず、精密検査を受けた時期とその結果までそろえると比較に役立ちます。
| 指摘された検査 | 受診先の例 | あると役立つ記録 |
|---|---|---|
| 胸部エックス線 | 呼吸器内科 | 前回の胸部画像、過去の精密検査結果 |
| 胃のエックス線 | 消化器内科 | 今回の所見、以前の胃内視鏡の結果 |
| 胃内視鏡 | 検査を受けた医療機関、消化器内科 | 内視鏡の報告書、生検結果の有無 |
画像を自分で用意できないときは、検診機関に受診先へ渡す資料を依頼できるか確認し、資料がそろうのを待つ間にも予約の相談は進められます。
健康診断の基準値と受診の指示は結果票で確かめる
受診が必要か迷ったら、数値の横にある基準値と、その項目に付いた指示を確認します。基準値や判定の表し方は検診機関で異なるため、インターネット上の数字をそのまま当てはめないのが基本です。
検査値・単位・前回値を同じ欄で見る
見落としたくない数値は、がんを決める共通の境界線ではなく、自分の結果票で基準から外れた値や前回から変わった値です。同じ検査名でも単位が違えば数字の見え方が変わるため、別の施設の結果と比べるときは単位まで確かめます。
今回の値と結果票の基準値、前回の値を並べて比べましょう。前年から下がったヘモグロビンを指摘されたなら、食事の変化だけで説明せず、症状や出血の有無も添えて相談します。
項目ごとの受診指示を読み落とさない
人間ドックの結果票にあるA〜Eなどの区分は、その施設の説明で意味を確認し、がん検診の「精密検査不要・要精密検査」と区別します。要再検査は同じ項目などを再び確認する指示、要精密検査は異常の原因を詳しく調べる指示、経過観察は決められた時期に変化を確認する指示です。
判定不能は検体や画像などの条件から結果を決められない状態で、異常なしとしては扱えません。記号の印象より、該当項目に「いつ、何を受ける」と記されているかが、予約を決める際の優先事項です。
| 結果票の状況 | 受診の扱い | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 具体的な受診時期がある | 記載された時期に合わせて予約 | 指定された受診先 |
| 再検査・精密検査の指示だけがある | 時期と検査内容を確認して予約 | 検診機関、かかりつけ医 |
| 経過観察と時期が記されている | 指定時期の確認を予定 | 検診機関、かかりつけ医 |
| 判定不能や説明のない空欄がある | 検査の成立状況を確認 | 検診機関 |
ただし、新しい症状があるときは、結果票で経過観察になっていても、その症状について受診を相談する判断が加わります。
総合判定と個別の結果が違って見えるとき
総合判定が軽い表現でも、便潜血や画像検査の欄に受診の指示があれば、個別の指示を確かめましょう。健康診断本体と追加したがん検診で用紙が分かれていたり、結果が出る日が違ったりすると、一部の結果を読まずに済ませてしまいがちです。
たとえば、自宅で結果票を開き、血液検査は正常でも便潜血に陽性の印を見つけたら、便潜血の欄の指示を確認して消化器内科へ予約を入れます。受診時期が書かれていなければ、検診機関に陽性だった項目を伝え、いつまでに何の検査を受けるかを聞きます。
異常なしでも、新しく出た症状は受診の対象になる
異常なしという結果があっても、検査後に出た症状や続く症状は改めて診察を受ける理由になります。過去の結果だけで現在の状態を決めず、変化が始まった時期を受診先へ伝えましょう。
検査で捉えられる変化には限りがある
検査は、調べた時点で捉えられる変化を評価しています。便に血液が混じるかを調べる検査と、臓器の形を見る検査では調べ方が違い、ある項目が正常という結果を、別の臓器まで含めた保証には置き換えられません。
便潜血が陰性でも、次の検診までに大腸がんが見つかる例が、欧州などの検診をまとめた研究で報告されています5)。地域や検査条件にばらつきがあるため、日本での発見率に数字を当てはめず、陰性後の血便を放置しない判断に生かします。
検査後に気づいた変化を記録する
体重が意図せず減った、咳が続く、食事のつかえを感じるといった変化があるなら、健診結果とは別に症状を診察してもらいます。がん以外の病気も含めて原因を調べるため、異常なしの用紙が届いていても相談の対象になります。
受診前に残しておきたいのは、症状が始まった時期と日常生活への影響です。体重なら以前の測定日と値、咳なら続き方や血が混じるかなど、実際に観察した内容があると、結果票だけでは分からない変化を伝えられます。
次の検診日まで待たずに相談する症状
便に血が混じる、血を吐く、痰に血が混じるといった出血は、次の定期検診を待たずに医療機関へ相談してください。出血量が多い、立っていられない、息苦しさが強いときは、救急受診を検討する状態です。
また、乳房に新しいしこりを触れるなど、検診後に気づいた変化も受診の対象です。カナダの50〜64歳の女性を対象にした乳がん検診の研究でも、検診と次の検診の間に見つかる乳がんが調べられており、陰性後も症状に応じて受診する判断を支えます6)。
健康診断で指摘された項目は、連絡を待たず受診を予約する
受診の指示があれば、自分から予約を進めます。検診機関からの再通知を待つよりも、結果票の時期に沿って連絡するほうが、必要な確認を先延ばしにせずに済みます。
指示された検査を受けずに待つ不利益
指摘された異常を調べなければ、がんかどうかだけでなく、出血などの原因も分からない状態が続きます。症状がなく生活できていても、精密検査が必要という結果の意味が変わるわけではないため、体調のよさを受診中止の理由にしないようにします。
韓国の便潜血陽性者の検診データでは、精密検査が1年以上後だった群は1年以内の群より、がんが離れた臓器へ広がった状態で見つかる割合が高く、12.5%対8.7%でした7)。受診時期以外の背景の違いもある観察研究ですが、日本でも長期間放置せず受診する理由として受け止められます。
この比較に使われた1年は待ってよい期間を示す数字ではないので、予約は自分の結果票に書かれた時期に合わせましょう。
時期の記載がなければ検診機関へ聞く
受診時期や診療科が不明なら、検診機関に異常を指摘された項目名を伝え、いつまでに、どの診療科で、何の検査を受けるかを確認します。複数の異常があって行き先を決められないときは、かかりつけ医に結果票全体を見せる方法があります。
予約が指定時期より先になる場合も、そのまま待つのではなく、予約先や検診機関に結果の内容を伝えて相談してください。また、仕事との調整が難しければ、職場の健康管理を担う産業医に、受診時間を確保するための相談ができます。
検査を受けた後は結果の説明まで済ませる
精密検査は、受けただけで終わりにせず、結果の説明と次の予定まで確認します。採った組織の結果が後日になる、今回の検査では結論が出ず追加の確認が必要になるなど、次の受診が残る場合があるためです。
がんの疑いという記載を見ると、結果を聞くのが怖くなるのは自然な反応です。予約時に不安が強いと伝え、家族に付き添ってもらう準備をすると、説明を一緒に聞いて次の予定を整理できます。
受診を終える前に、異常の原因が分かったか、残る検査があるか、次はいつ受診するかを確認しましょう。
よくある質問
健康診断の血液検査が正常でも、胃や肺の異常で受診が必要ですか?
胃や肺の検査に受診の指示があれば、血液検査が正常でも受診が必要です。検査ごとに調べている変化が違うため、血液の数値だけで画像の異常は打ち消せません。
画像の所見と受診時期を確認し、胃なら消化器内科、胸部なら呼吸器内科などへ結果票を持参すると、その部位に合った追加検査を相談できます。
貧血を指摘されましたが、食事を変えて様子を見てもよいですか?
受診の指示がある貧血は、食事の改善だけで様子を見ず、原因を確かめましょう。鉄不足かどうかも含めて診察で確かめ、月経や便の変化、過去の数値を一緒に伝えると原因を調べやすくなります。
黒い便や血便に強いふらつきが伴う場合は、通常の予約を待たず、当日中に医療機関へ連絡してください。
胸部エックス線で異常があれば、肺がんが確定したのですか?
胸部エックス線の異常だけで肺がんが確定するわけではありません。結果票に精密検査の指示があれば、呼吸器内科などに予約し、過去の画像と比べる必要やCTを受ける必要があるかを相談する流れになります。
胃の内視鏡検査を受けたら、後日の結果説明も必要ですか?
後日の説明を指示されているなら、その受診も必要です。検査中に採った組織を詳しく調べる結果など、当日には決まらない内容が残っている場合があります。
日程が分からなければ検査を受けた医療機関に連絡し、結果が出る時期と説明を受ける方法を確認します。
去年と同じ項目の異常なら、今年は受診しなくてもよいですか?
今年も受診を指示された項目は、去年と同じでも確認が必要です。前年の精密検査結果と、その後に指定された検査間隔を今回の結果票と一緒に受診先へ示し、次に受ける検査を相談すると、すでに調べた内容も踏まえて予定を決められます。
References
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2) Schop, A., Stouten, K., Riedl, J., van Houten, R., van Rosmalen, J., Wolfhagen, F., Bindels, P. J. E., & Levin, M. D. (2019). Long-term outcomes in patients newly diagnosed with iron deficiency anaemia in general practice: a retrospective cohort study. BMJ Open, 9(11), e032930. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2019-032930
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6) Niraula, S., Biswanger, N., Hu, P., Lambert, P., & Decker, K. (2020). Incidence, Characteristics, and Outcomes of Interval Breast Cancers Compared With Screening-Detected Breast Cancers. JAMA Network Open, 3(9), e2018179. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2020.18179
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医