
がんの療養を家で続けるとき、ケアマネジャーに生活の困りごとを伝えれば、病院や訪問の医療職と介護の予定をまとめて調整してもらえます。退院後にトイレまで歩けるか心配、家族が仕事に出ている間の介助が足りない、といった場面から相談を始めてかまいません。
症状の相談は医師や看護師へ、暮らしの段取りはケアマネジャーへと分けておくと、困ったときに誰へ連絡するかで迷いにくくなります。本人と家族の希望が違っても、それぞれの言葉で伝えられます。
この記事では、ケアマネジャーに頼める内容、退院前の話し合いで決める事項、病状に合わせた計画の見直し、希望や不満の伝え方を解説します。
ケアマネジャーには暮らしの調整を頼めます
ケアマネジャーは、介護が必要な暮らしを把握し、利用するサービスの計画を作って関係する職種をつなぐ専門職です。がんの治療予定や体調を踏まえ、家で過ごすために必要な介助を一緒に整理します。
困っている動作から相談を始める
相談時には、できなくなった動作だけでなく、続けたい暮らしも伝えられます。軸になるのは、今の暮らしで困っている場面。通院翌日は着替えを手伝ってほしいなど、体調が変わる時期まで説明し、ケアマネジャーと介助が必要な時間帯を絞りましょう。
ケアプランとは、本人の希望や生活の状態に合わせて、介護の目標とサービスの内容をまとめた計画です。家族に頼める範囲も含めて作るため、同じ病名でも、独居か同居か、夜間に介助を頼めるかによって組み合わせは変わります。
たとえば、家族が仕事に出る日の着替えや排泄の介助については、訪問介護の職員が自宅で手伝う時間をケアマネジャーと相談しましょう。困っている動作を先に伝えれば、サービス名を覚えてから依頼する必要はありません。
医療の判断と生活の調整をつなぐ
痛みや息苦しさの評価や薬の変更は、医師や看護師に相談します。ケアマネジャーは、症状が暮らしにどう影響しているかを受け止め、医療職からの情報を介護の計画に反映します。
| 相談したい内容 | 中心となる相手 | ケアマネジャーに頼む調整 |
|---|---|---|
| 治療後の体調と家での過ごし方 | 病院の主治医 | 生活上の注意点を受け取り計画へ反映 |
| 自宅での診察や薬の相談 | 訪問診療医 | 診療日と介護の予定の調整 |
| 自宅での体調確認や療養上のケア | 訪問看護師 | 看護師が把握した変化の共有 |
| 介助が足りない時間帯 | ケアマネジャー | 家族の予定も踏まえたサービスの再調整 |
在宅療養を支えるチームでは、それぞれの専門職が受け持つ内容を決めておくと、困ったときに相談先を選べます。連絡をすべてケアマネジャー経由にすると医療への相談が遅れるため、症状については医療職へ直接連絡できる先も決めておきます。
がんの療養を相談できる人を探す
探し始めるときは、病院の医療ソーシャルワーカー、すなわち療養生活や制度利用を相談できる専門職に、がんの在宅療養に詳しいケアマネジャーを紹介できるか尋ねられます。高齢者の生活相談を担う地域包括支援センターも相談先です。
紹介を受けたら、がんの療養を担当した経験に加えて、訪問看護師や訪問診療医との連絡方法も確かめておくと安心です。
経験の有無だけで決めず、体調が変わったときに誰と相談して計画を調整するかまで聞くと、依頼後の動きが具体的になります。介護保険が使えない40歳未満の方も、医療ソーシャルワーカーに生活の困りごとを伝え、訪問看護師などと連絡を取り合う相手を確認できます。
病院と在宅で共有したい情報をそろえる
病院で話した内容が、在宅療養に関わる全員へ同じように伝わっているとは限りません。診療の情報に生活の困りごとを添え、誰に渡ったかまで確かめると、退院後の行き違いを減らす準備になります。
紹介状に生活の情報を補う
病院から在宅の医師に渡る紹介状には、病名や治療内容だけでなく、帰宅後に注意する症状や連絡先も必要です。本人や家族が病状をどう受け止めているか、治療後に時間を置いて出る副作用については、情報が十分に伝わらない点があると報告されています。
この報告は医師への質問紙調査に基づくため、実際の紹介状すべてに不足があるという意味ではありません。自分が説明を受けた内容のうち、家での過ごし方に関わる点は、訪問診療医や訪問看護師にも伝えておきましょう。
| 共有する情報 | 本人や家族が伝える内容 | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 治療後の生活 | 説明を受けた注意点、通院の予定 | 主治医・訪問診療医 |
| 体の動かしやすさ | 起き上がりや移動に必要な介助 | 訪問看護師・ケアマネジャー |
| 家族の介護力 | 不在の時間帯、続けるのが難しい介助 | ケアマネジャー |
| 病状の受け止め方 | 説明で分かった点、まだ確認したい点 | 主治医・訪問看護師 |
医療上の注意点に食い違いがあれば、家族だけでどちらに従うか決めず、訪問診療医や主治医に確認してもらいます。
共有する相手と連絡方法を決める
情報共有では、電話や連絡帳などの道具に加えて、伝える相手と返答の方法を決めておきましょう。本人が誰まで何を伝えてよいかを確認し、家族にまだ話していない内容があれば、ケアマネジャーへ個別に相談できます。
薬の内容が変わったときは、変更日が分かる薬の情報を訪問看護師に見せ、介護に影響する点をケアマネジャーとも共有してもらう流れを決めます。連絡帳へ書いただけでは確認が遅れるおそれがあるため、急いで返事がほしい内容は、電話など相手に届いたと分かる方法で伝えます。
返事が必要な用件は期限も添える
連絡するときは、何を決めたいか、いつまでに返答が要るかを具体的に添えます。たとえば「翌日の通院前に移動方法を相談したい」という伝え方なら、ケアマネジャーに調整の期限も伝わります。
また、返事を待ったまま予定が迫る事態を避けるため、担当者が休みの日に誰が受け取るかも決めておきます。訪問看護師と主治医が日ごろから双方向に連絡できる体制も、自宅での療養を支える要素です。
退院前にケアマネを交えて帰宅後の予定を決める
退院日が近づいたら、病院と在宅療養に関わる職種が集まる話し合いで、帰宅後に誰が何をするかを決めます。自宅で過ごす希望を、訪問の予定と連絡先が分かる形にする場です。
参加してほしい職種を病院へ伝える
病院の看護師や医療ソーシャルワーカーに、ケアマネジャーや訪問看護師も参加できる話し合いを希望していると伝えられます。訪問診療医が参加できるか、難しければ決まった内容をどう届けるかも相談しましょう。
本人が長い話し合いに参加すると疲れる場合は、事前に希望を書いて渡す方法や、希望を話す部分だけ出席する方法があります。家族が代理で伝えるときも、本人の希望と家族の心配を分けておくと、どちらの意見かが伝わります。
帰宅した日の生活を順に確かめる
退院前には、帰宅から就寝までの動きを具体的に確認します。準備の抜けがないか、家へ入る動作だけでなく、食事や服薬を誰が手伝うか、最初の訪問までの時間をどう過ごすかも確かめてください。
| 決める場面 | 確認する内容 | 調整を頼む相手 |
|---|---|---|
| 帰宅直後 | 家への入り方、横になれる場所 | ケアマネジャー |
| 服薬や療養上のケア | 家族が担う範囲、説明を受ける日 | 病院の看護師・訪問看護師 |
| 最初の訪問 | 訪問日と時間、それまでの連絡先 | 訪問診療医・訪問看護師 |
| 介助が足りない時間 | 必要な介助と代わりに頼める人 | ケアマネジャー |
また、予定が決まっていない項目は、誰がいつまでに返答するかを残してもらうと、後で確かめやすくなります。
夜間の相談先を紙にも残す
夜間に症状が変わった場合の相談先は、退院前に医療職と確認しておきます。連絡する症状の目安に加え、最初の電話がつながらない場合にどうするかまで決め、紙に残して本人と家族が見つけやすい場所に置きましょう。
ただし、夜間に相談できる体制や実際に訪問できる範囲は、依頼する医療機関や訪問看護の事業所によって違います。ケアマネジャーが連絡先をまとめても、夜間の診察や看護を必ず受けられる保証にはならないため、契約する医療職へ直接確かめます。
体調や介護の負担が変わったら計画を見直す
今の予定では暮らしが回らないと感じたら、定期的な面談を待たずにケアマネジャーへ連絡してください。病状だけでなく、家族の疲労や仕事の変化もケアプランを見直す理由になります。
以前できた動作との違いを伝える
生活の変化は「体力が落ちた」だけでなく、先週は自分でトイレへ行けたが今は立つときに介助が要る、と前後を比べて伝えましょう。困り始めた日や起こる時間帯も伝えると、訪問看護師とケアマネジャーが状況をつかみやすくなります。
たとえば、朝の着替えで立っていられず、家族が支えても移動が難しくなったときは、その場で無理に歩かせず、訪問看護師へ体調の変化を連絡してください。介助が増えた状況はケアマネジャーにも伝え、医療職の評価を踏まえて生活の予定を調整してもらいます。
家族の睡眠や仕事への影響も相談する
家族が夜間に何度も起きている、仕事を休まなければ介助が続かないなどの変化は、本人の体調と同じく計画に反映する情報です。家族がその日だけ頑張れた状態と、続けて担える状態は分けて伝えます。
支えたい気持ちがあっても、疲れを口にすると本人をがっかりさせそうで、言い出しにくい場面はあるでしょう。家族だけでケアマネジャーに話す時間を頼めるため、本人の前では説明しづらい負担も相談できます。
変更後に困りごとが減ったか確かめる
計画を変更した後は、最初に困っていた動作や時間帯がどう変わったかを確かめます。訪問回数が増えても、介助が必要な時間と合わなければ、困りごとが残るためです。
訪問看護師などとケアマネジャーの連携のよさは、本人に必要なケアへの対応と関連するという報告があります。看護師の自己評価による調査なので、連携の効果を断定する根拠ではありません。
暮らしに合う計画へ直していくために、本人や家族からも「朝の介助は楽になったが、夕方は足りない」とサービスを入れた後の感想を返し、残った課題を次の調整につなげましょう。
本人と家族の希望は分けて伝えてよい
自宅で過ごしたい本人の希望と、介護を担う家族の心配は、同じ意見にまとめる必要はありません。違いを伝えたうえで、どの条件が整えば自宅で過ごせるかをチームと相談できます。
大事にしたい日常を具体的に言葉にする
希望は、療養する場所だけでなく、その場所でどんな時間を過ごしたいかまで伝えられます。食卓で家族と食事をしたい、体調のよい日は庭に出たいなど、続けたい日常を言葉にして、チームと介助の目標を共有しましょう。
一方、自宅で過ごしたい気持ちがあっても、苦痛が強いときには入院したいという希望も両立します。どちらかに決め切るよりも、何がつらくなったら相談したいかを訪問診療医や訪問看護師へ伝えるほうが、変化に応じて話し合えます。
家族の心配を本人の希望と並べる
家族の心配は、自宅療養への賛否だけでなく、何を担うのが難しいかに分けて、チームとの調整で話し合う内容を具体的にしましょう。本人の希望を知らずに療養場所を決めた状況や、家族の希望を医療職に伝えていなかった状況は、決定時の家族の負担と関連するという遺族調査の報告もあります。
| 本人の希望 | 家族の心配 | 話し合う内容 |
|---|---|---|
| 日中は自宅で過ごしたい | 仕事中は付き添えない | 不在時間に必要な介助 |
| 家で休む時間を守りたい | 訪問の予定が重なりそう | 休息を挟める訪問時刻 |
| 症状がつらいときは相談したい | 夜間の判断に不安がある | 医療職への連絡方法と相談の目安 |
この調査は遺族が振り返って答えた内容に基づくため、早く話せば必ず負担が軽くなるとは言い切れません。希望が食い違う場合も、ケアマネジャーに間に入ってもらい、双方が困っている理由を整理できます。
決めた希望は体調に合わせて言い直せる
いったん伝えた希望も、体調や家族の状況が変われば言い直せます。自宅療養を選んだ後に不安が強くなったときも、以前の決定を守るために我慢する必要はありません。
希望を書き留めるなら、記入した日を添え、今も同じ気持ちかを話し合う際に確認できます。
本人が疲れて話しにくいときは、短い問いで希望を聞いてもらう方法も選べます。家族が補足する内容と本人が伝えた内容を分けて記録してもらうと、その後の話し合いで意思を確かめやすくなります。
ケアマネと話が合わないときの相談方法
話が合わないと感じたら、困った場面と希望する対応を具体的に伝えられます。連絡の行き違いを直せる場合もあれば、事業所の管理者を交えた調整が必要な場合もあります。
返事や説明の何に困るかを伝える
「話を聞いてもらえない」と感じるときは、希望した内容と実際の対応の差を言葉にして、改善を求めましょう。家族にだけ説明があり本人が予定を把握できないなら、次回は本人にも直接説明してほしい、と頼めます。
ただ、医師との連絡や地域の体制に制約があり、ケアマネジャーだけでは調整が進まない場合もあります。希望が難しい理由と、代わりに何を提案できるかを聞けば、対応への不満と実際の制約を分けて話し合えます。
改善しない場合は管理者にも相談する
直接伝えても説明が得られない、連絡の約束が繰り返し守られないといった場合は、ケアマネジャーが所属する事業所の管理者へ相談してください。いつ何を相談し、どの返答を待っているかを示すと、管理者が対応の経緯を確かめやすくなります。
本人や家族が医療職を信頼できる感覚と、チームの連携のよさは、最期の過ごし方への評価と関連するという報告があります。遺族の振り返りによる結果ですが、相談しづらさを抱えたままにせず、安心して話せる関係を整える意味があります。
担当を替えるときは引き継ぎを整える
ケアマネジャーを替える手続きについては、市区町村や地域包括支援センターが相談先です。
変更を進めるときは、今の訪問予定が途切れないよう、新旧のケアマネジャーに引き継ぎ日を確認します。同じ相談を初めから繰り返す負担を減らすため、本人の希望や医療職の連絡先に加え、調整中の用件も共有してもらいます。
そのうえで、新しい相手との面談では、以前困った点を伝え、返答の目安や本人への説明方法をすり合わせられます。相性を気持ちだけで判断せず、相談した後の対応を見ながら、安心して頼めるかを確かめていきます。
よくある質問
ケアマネジャーに病院の診察内容を毎回伝える必要がありますか?
毎回の説明をすべて伝えるより、生活や介助に影響する変更を優先して共有すると相談しやすくなります。通院の頻度が変わる、帰宅後に注意する症状が増えるなど、介護の予定に関わる内容が対象です。
医学的な説明が難しい場合は、病院から受け取った書面を見せ、主治医や訪問看護師へ確認してもらう方法を相談できます。
退院前の話し合いに家族が参加できないときはどうすればよいですか?
家族の希望や心配を事前に書いて渡し、話し合いの結果を後から聞く方法を病院の看護師へ相談できます。電話やオンラインでの参加が可能かも確かめられます。
家族が行う介助の説明を受けていない場合は、帰宅後にできる前提で予定を決めず、説明を受ける機会を病院に設けてもらいましょう。
本人に言いにくい介護の負担を家族だけで相談してもよいですか?
家族だけでケアマネジャーに相談する時間を頼めます。睡眠が取れない時間帯や、仕事を休む必要がある介助を伝え、本人へどこまでどう説明するかも一緒に相談できます。
ケアマネジャーへ連絡して返事がない間に、体調が悪くなったらどうすればよいですか?
体調への対応が必要なら、ケアマネジャーの返事を待たず、事前に決めた訪問看護師や医師の連絡先へ相談してください。
その後、受けた説明や介助の変更点をケアマネジャーに伝えると、生活の計画へ反映できます。医療への連絡と、介護の予定の調整を分けて進められます。
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この記事を書いた人 Wrote this article
前田 祐助 医学博士 / 医師
慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。 【保有資格・所属】 医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医