標準治療・三大療法 10th page

がんの標準治療とは?手術・抗がん剤・放射線の三大療法を解説

がんの標準治療は、多くの研究で得た科学的根拠をもとに、治療効果と安全性を検討したうえで広く勧める治療です。「標準」という言葉から平均的な治療を想像しやすいものの、実際には現在の医療で治療方針を考える際の中心となります。

代表的ながん治療は、手術、抗がん剤などの薬物療法、放射線治療の3つです。がんの種類や進行度によって単独または組み合わせて行います。

治療法は病名だけで決まりません。がんの広がりや性質、体の状態、本人の希望や生活への影響も含め、医師と相談しながら選びます。

がん手術の種類と開腹・腹腔鏡・ロボット手術の違い

がんの手術の種類と特徴|開腹・腹腔鏡・ロボット手術を比較

手術は、がんを周囲の組織ごと切除し、体から取り除く治療です。局所にとどまるがんでは、治癒を目指す治療の柱になります。

  • 開腹・開胸手術は、広い視野を確保しながら直接病変を確認できる
  • 腹腔鏡・胸腔鏡手術は、小さな傷から器具を入れて切除
  • ロボット支援手術は、専用装置を介して細かな操作を行う

術式は傷の大きさだけで選ぶものではありません。がんの部位や広がり、手術歴、全身状態などを踏まえて医療チームが判断します。

手術後は出血や感染だけでなく、臓器の機能低下などにも注意が必要です。治療前に切除範囲と術後の生活への影響を確認しておくと安心です。

抗がん剤(化学療法)の種類と効果・副作用

抗がん剤(化学療法)の種類と効果・費用を解説!点滴と内服薬の違いや副作用の知識

抗がん剤を使う化学療法は、薬を血液に乗せて全身へ届ける治療です。手術が難しいがんや転移がある場合にも治療の候補になります。

  • 点滴薬と内服薬があり、薬ごとに投与方法や治療間隔が異なる
  • 治癒、再発予防、進行を抑えること、症状の軽減など目的はさまざま
  • 吐き気、脱毛、骨髄抑制、しびれなどの副作用は薬の種類で変わる

化学療法は1種類だけでなく、作用が異なる薬を組み合わせる場合があります。手術や放射線治療と併用する治療も珍しくありません。

副作用を我慢する必要はありません。症状に応じて吐き気止めや感染対策などを取り入れ、治療を続けやすい状態を整えます。

がんの放射線治療とIMRT・定位放射線治療

放射線治療の種類と副作用の対策とは?IMRTや定位放射線治療の仕組みを解説

放射線治療は、病変に放射線を当ててがん細胞へダメージを与える局所治療です。臓器を切除せず治療できる点が特徴といえます。

  • 一般的な外部照射では、体の外から病変へ放射線を当てる
  • IMRTは照射の強さを調整し、周囲の正常組織への線量を抑える
  • 定位放射線治療は、多方向から病変へ放射線を集中させる

放射線治療は治癒を目指す場合だけでなく、骨転移による痛みなどを和らげる目的でも使います。薬物療法との併用もあります。

副作用は照射する部位や線量で異なります。治療前に起こりやすい症状と受診の目安を放射線治療の担当医へ確認するとよいでしょう。

分子標的薬の仕組みと抗がん剤との違い

分子標的薬とは?仕組み・副作用・抗がん剤との違いを解説

分子標的薬は、がんの増殖などに関わる特定の分子を狙う薬です。がんの種類や遺伝子、タンパク質の特徴に応じて使い分けます。

  • 治療前に遺伝子検査や病理検査などで薬が合うか調べる場合がある
  • 内服薬と点滴薬があり、単独または別の薬と組み合わせて使う
  • 皮膚症状、高血圧、下痢など、従来の抗がん剤とは異なる副作用も

細胞障害性抗がん薬は増殖が盛んな細胞へ幅広く作用します。一方、分子標的薬は特定の標的を狙う点に大きな違いがあります。

標的が見つかれば必ず効くわけではなく、がん種や治療歴によって適応が変わります。検査結果と診療ガイドラインを踏まえて選びます。

免疫チェックポイント阻害剤の効果と副作用

免疫チェックポイント阻害剤とは?オプジーボ・キイトルーダの効果

免疫チェックポイント阻害剤は、免疫細胞にかかるブレーキを外し、がん細胞を攻撃する力を保つ薬です。薬物療法の1つに含まれます。

  • すべてのがんに使う薬ではなく、がん種や病状によって適応が異なる
  • 単独で使うほか、抗がん剤や別の免疫治療薬と組み合わせる場合がある
  • 免疫が正常な臓器を攻撃し、肺、腸、肝臓、内分泌臓器などに炎症が起こることがある

オプジーボやキイトルーダは、この種類に含まれる代表的な薬です。治療効果には個人差があり、適応条件を満たすか確認が必要になります。

副作用は治療中だけでなく治療後に現れる場合もあります。息苦しさ、強い下痢、だるさなど普段と違う症状があれば早めに医療機関へ伝えます。

がんのホルモン療法と乳がん・前立腺がん

がんのホルモン療法|乳がん・前立腺がんの治療と副作用

ホルモン療法は、ホルモンを利用して増殖するがんに対し、ホルモンの分泌や働きを抑える治療です。主に薬を使って行います。

  • 乳がんでは、ホルモン受容体が陽性の場合に治療効果を期待できる
  • 前立腺がんでは、男性ホルモンの分泌や働きを抑えて進行を抑える
  • ほてり、性機能への影響、骨密度低下など、治療ごとの副作用がある

乳がんでは閉経の前後や受容体の状態、前立腺がんでは病期や治療歴などによって使う薬や治療期間が変わります。

長く続ける治療になることもあるため、副作用と生活への影響を確認することが大切です。気になる症状は早めに担当医へ相談します。

術後補助療法と抗がん剤・放射線による再発予防

術後補助療法とは?抗がん剤・放射線の再発予防効果を解説

術後補助療法は、手術後に体内へ残っている可能性がある微小ながん細胞を抑え、再発する危険を下げる目的で行う治療です。

  • 抗がん剤などの薬物療法を手術後に行う場合がある
  • がんの種類や手術内容によっては放射線治療を追加
  • 病理検査の結果や再発の危険度を踏まえ、治療を行うか判断

手術を受けた全員が術後補助療法を行うわけではありません。再発を減らせる見込みと副作用の負担を比べながら治療方針を決めます。

治療期間もがん種や薬で異なります。治療の目的、期待できる効果、日常生活への影響を確認し、納得できる方針を相談しましょう。

癌診療ガイドラインとエビデンス・推奨度の読み方

癌診療ガイドラインに基づく治療の選び方!エビデンスレベルと推奨度を詳しく解説

癌診療ガイドラインは、研究で得た科学的根拠を評価し、治療による利益と不利益を比べながら診療の推奨を示す資料です。

  • 推奨の強さと、根拠となる情報の確かさは同じ意味ではない
  • 治療効果だけでなく、副作用や患者の価値観なども推奨を考える材料
  • ガイドラインは治療を一律に決める規則ではなく、医療者と患者の判断を支える資料

同じがんでも、病期や遺伝子の特徴、年齢、持病などで治療候補は変わります。推奨度だけを見て自己判断するのは避けたいところです。

複数の治療法を提示された場合は、それぞれの利益と不利益を確認しましょう。迷うときはセカンドオピニオンも選択肢になります。

がんの支持療法と副作用・栄養・痛みへのケア

がんの支持療法とは?副作用ケア・栄養管理・痛みの緩和

支持療法は、がん治療に伴う副作用や合併症、後遺症を軽くし、日常生活を保ちながら治療を続けやすくするための医療やケアです。

  • 吐き気、感染、貧血、口内炎、しびれなどへの予防や治療を行う
  • 食欲低下や体重減少がある場合は、食事の工夫や栄養管理を取り入れる
  • 痛みには鎮痛薬などを使い、原因や強さに合わせて調整

支持療法は治療が終わるまで我慢した人だけが受けるものではありません。症状が軽いうちから相談すると、負担を減らせる場合があります。

医師や看護師だけでなく、薬剤師、管理栄養士、リハビリ職などが関わることもあります。困りごとは遠慮せず伝えることが大切です。

集学的治療で手術・薬物療法・放射線を組み合わせる

集学的治療とは?がん治療チームの役割と治療の組み合わせ方

集学的治療は、手術、薬物療法、放射線治療などを組み合わせ、がんの種類や進行度に応じて治療効果を高める考え方です。

  • 手術前に薬物療法を行い、腫瘍を小さくしてから手術する場合がある
  • 手術後に薬物療法や放射線治療を加え、再発の危険を下げる場合がある
  • 薬物療法と放射線治療を同じ時期に組み合わせる治療も

どの治療をどの順番で行うかは、がんの性質や病期によって変わります。外科、薬物療法、放射線などの専門家が連携して検討します。

治療中は支持療法や栄養管理なども組み合わせます。治療効果だけでなく、体力や生活の質を保つ視点も含めて方針を組み立てます。

この記事を書いた人Wrote this article

前田 祐助

前田 祐助医学博士 / 医師

慶應義塾大学医学部大学院にて、がんの発生メカニズム(発癌機構)や、慢性炎症と腫瘍の関係性に関する基礎研究に従事し、医学博士号を取得。 特に、胃がんにおける炎症微小環境の解析や、細胞シグナル伝達(COX-2/PGE2経路など)による腫瘍形成の研究において実績を持つ。 現在は、大学病院や研究機関で培った「根拠(エビデンス)に基づく医療」の視点を活かし、疾患の早期発見や予防医療の啓発活動を行っている。

【保有資格・所属】
医学博士(慶應義塾大学)/ 医師免許 / 日本内科学会 / 日本医師会認定産業医